2006年1月〜2月

2月24日(金)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜。

美姫 「はじまるわよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナを略奪してお届けしています>



もう二月も終わりだよ。

美姫 「英語で言うと、February lastね」

ぬぐおぉぉぉ、い、言われた…。

美姫 「やっぱり、言うつもりだったんだ」

うぅぅ。

美姫 「因みに言っておくけれど、間違ってるからね」

ぬぐぐぐ。
と、まあ、それはさておき。

美姫 「って、立ち直るのが早すぎるわよ」

いや、そこまで真剣に落ち込んでないし。

美姫 「そうなの。それじゃあ、現在の進捗状況でも聞こうかしら?」

ぐ〜、す〜、むにゃむにゃ…。

美姫 「起きなさい! 本番中よ!」

うげっ! …………あ、ああぁ。

美姫 「おはよう」

お、おはよ…。って、違う眠りにつくわ!
思わず三途の川でバタフライして、「あ、俺、バタフライなんか出来ないや」って溺れかけたぞ!

美姫 「ちっ」

ちっ、ってなんだよ!

美姫 「ううん、何でもないわよ。で、どうなのよ」

ふっ、極上が2割。リリカルが2割。
デュエルは今日アップする予定。

美姫 「で、他は?」

え、えっと、キリリクを考え中って所です、はい。

美姫 「威張れるような状況なの?」

ご、ごめんなさい…。

美姫 「ったく、ふっ。何て言うから、もっとやってるかと思ったのにね〜」

う、うぅぅ。

美姫 「ま〜〜ったく、この頭はどうなってるのかしら?」

うぅぅ(涙)

美姫 「ほらほら」

反省……。

美姫 「お手!」

バウッ!

美姫 「おかわり」

クゥ〜〜ン。

美姫 「SS!」

ない!

美姫 「……」

し、仕方ないだろう。

美姫 「問答無用!」

のぉぉぉぉぉぉ〜〜!!

美姫 「皆さんは、CMをどうぞ〜」







それは、大学へと入学した春の出来事。
一人暮らしを始めた恭也の前に、一人の美女が現れる。
全身を恭也と同じく、黒で統一した服を纏い、その手には鈍い銀色のケースを持って。

「これは、士郎さんからあなたへと預かっていたものよ」

「…ちょっと待ってくれ。どうして、今になって」

「士郎さんに頼まれていたのよ。あなたが今の年齢になるまで預かっておいてくれって」

「……何かいやな予感がするので、これはいりません」

「そうは言われてもね〜。私も預かっていただけだしね」

言って女は恭也の顔を見た後、ややその横、肩よりも少し上の何もない上空を見て、小さく微笑む。
それに気付き、恭也は少しだけ腰を落とす。
そんな恭也に気付いていないのか、女性はそのケースを玄関先に置くと、踵を返す。

「それじゃあ、確かに渡したからね。あ、そうそう。
 私の名前は、朱浬。黒崎朱浬よ」

言って手を振ると、朱浬と名乗った女性は立ち去るのだった。
朱浬が立ち去ってから、恭也へと話し掛ける声があった。

「恭ちゃん、どういう事? 今の人、私のことが見えていたみたいだけれど…」

「分からん。ただの勘違いか、もしくは霊感が強いのか」

「でも、今まで退魔士の人たちでも、那美さんでさえ、私を見えた人は居ないのに」

恭也の背後に浮かぶ一人の少女がそんな事を言う。
薄っすらと身体の透けている少女の名前は美由希と言い、見えるのなら見ての通り、普通の人でない。
約一年程前、実の母親が居る香港へと行くべく、恭也と共に乗った飛行機が墜落。
その事故での生き残りは恭也、ただ一人という大惨事が起こった。
それ以来、美由希は恭也へと憑いたようで、こうして常に傍に居る。
ただし、その姿は親友で退魔士でもある那美にも見えず、彼女の姉にも見ることが出来なかった。
故に、恭也の主張は誰にも受け入れてもらえなかったのだが。
唯一、美沙斗だけは恭也の言葉を信じてくれたが、あの口調からして、
折角会えた娘を亡くした親として未だに信じられないという気持ちもあったのだろうと、
今の恭也は冷静に分析していた。
ともあれ、今まで誰にも見ることの出来なかった美由希を、もしかしたら見えたかもしれない女性。
恭也は士郎からの預かり物という、そのケースをもう一度眺め、嫌な予感を感じていた。



「アスラ・マキーナは何処ですか?」

深夜、行き成り忍び込んで来た緑の瞳を持ち、自称悪魔を名乗る巫女 嵩月奏

「あらら。昨日の今日で、名前のヒントだけでここまで辿り着くなんてね〜。
 流石は、あの士郎さんの息子だわ」

謎めいた言動を繰り返す美女 黒崎朱浬


静かなに新たな生活を始めるはずの恭也の日常は、入学してすぐさま一転する。


「恭ちゃんは私が守るって決めたんだから!」

恭也に憑く浮遊霊 高町美由希

「高町恭也、我々の仲間として歓迎しますよ」

恭也を大学自治会へと誘う会長 佐伯玲士郎


士郎からの預かり物という、あのトランクを受け取ったあの日から…。


『闇より昏き(くらき)絶望より穿し――
 ――其は科学の光に背く牙!』

「こい、闇姫!」

機巧魔神アスラ・マキーナのハンドラーとして、知らぬ間に巻き込まれた青年 高町恭也

一体、これからどうなってしまうのか!?

アスラ・ハート 第一話 「お届け物は騒動の種」 近日…………。







…………ピクピク

美姫 「ふんふんふ〜ん♪」

…………。

美姫 「って、CMは終わったみたいね。えっと、他には……。
    うん、特に連絡事項もないみらいだし、今回はこの辺…」

だぁぁぁー!
はぁー、はぁー。川を渡ってお花畑で首飾りを作ろうとして、
「そんなの作り方知るか!」とか思わず叫んでしまったわ!

美姫 「元気ね〜」

何処が!?

美姫 「はいはい。それじゃあ、また来週ね〜」

って、もう終わりなのかよ!?


2月17日(金)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜。

美姫 「はじまるわよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナを頂いてお送りしています>



もう二月も半分を過ぎたよ。
英語で言うと、February half。

美姫 「まだそのネタを引き摺るの! って言うか、その英語間違ってるし」

良いんだよ、大体こんな感じってのが伝われば。

美姫 「いやいや、それは駄目でしょう」

うぅぅ。美姫が苛める……。

美姫 「人聞きの悪い。と、それよりも、今はどんな感じなのよ」

ふっ。何も出来ていないさ。

美姫 「って、威張るな!」

ぷろぐろわぁ!

美姫 「まったく、このバカだけは…」

う…うぅぅ、冗談だったのに。

美姫 「アンタが悪い! で、実際は?」

ふっ。全て一割さ。

美姫 「それも悪いわ!」

げがっ!
…じ、事実なのに。

美姫 「だから、悪いって言ってるのよ!」

うげっ! お、追い討ちですか…。

美姫 「とりあえず、CMよ、CM!」







「あ、あの坂井くん、これ!」

いつものように昼食を食べ終えた面々が屋上で寛いでいた所、その中の一人、
吉田一美が坂井悠二へと一つの包みを差し出す。
あまり考えずにそれを受け取ったのを見て、吉田はほっと胸を撫で下ろす。

「これは?」

思わず聞き返した悠二の言葉に、吉田は顔を真っ赤にして俯く。
そんな悠二へと、池が肘を入れる。

「って。何するんだよ、池」

「あのな、坂井。今日が何の日か忘れているのか?」

文句を言ってくる悠二に、池は小声で問いただす。

「何って、2月の14日だろう。それが…あっ」

ようやく今日がバレンタインだと気付いた悠二は、受け取ったものを見て、照れたように笑うと、礼を述べる。

「ありがとう、吉田さん」

「い、いえ。そ、そんな。あ、それで、皆の分も作ってきたから」

言って吉田は、悠二のよりも小さな包みを、その場にいた池たちへと渡す。
口々に礼を言いながらそれを受け取った田中たちは、自然とシャナへと視線を移す。

「なに?」

「い、いや、何にも」

やや不機嫌そうに問い掛けるシャナに、田中たちは言葉を濁して曖昧な笑みを見せるのだった。



放課後の帰り道。いつものように一緒に帰宅する悠二とシャナ。
昼から何処か不機嫌そうなシャナに、悠二は声を掛けたものかどうかずっと考えていた。

(うーん。今日の訓練のこともあるし、出来るだけ早くに機嫌を直しておいてもらった方が良いしな)

そんな事を考えつつ、いつもの分かれ道へと差し掛かった頃、不意にシャナが立ち止まる。
怪訝そうな顔を見せつつも、悠二もそれに合わせて足を止めて後ろを振り返る。
と、その眼前にやや乱雑にラッピングされた包みが差し出される。

「えっと、これは?」

「あげる」

「はい?」

「だから、あげる。いいから、受け取りなさい!」

言ってやや乱暴に悠二にその包みを渡すと、シャナはこの少女にしては珍しく顔を伏せる。
訝しげにそれを受け取りつつ、悠二はまさかと思って尋ねてみる。

「もしかしてチョコレート」

「そうよ。一美のよりも、絶対に、絶対にぜーったい美味しいんだから」

「開けても良いかな」

「えっ。い、良いわよ!」

悠二の言葉に意外そうな声を上げるが、すぐに許可を出す。
悠二がラッピングを解いていくのをちらちらとシャナは落ち着きなく見る。
やがて、ラッピングが全て解かれ、出て来た箱も開ける。
中から現れたいびつな形にチョコに、悠二は微笑を洩らしながらも、
一生懸命さが伝わって来るそれに、心からの礼を口にする。
シャナは照れつつも、早く食べるように急かす。
急かされて悠二は苦笑しつつも、そのチョコを口に入れる。
途端…。

「っ! ……シャナ、これって、ひょっとして卵?」

「正解! 悠二好きでしょう。他にも、ウィンナーや焼きそばとかも入ってるのよ」

自慢するように胸を逸らすシャナに、悠二は恐る恐るといった感じで尋ねる。

「このチョコを作るとき、誰かに作り方聞いた?」

「うん。ヴィルヘルミナに教わった」

「…これを入れるように言ったの?」

「ううん。私が入れても良いかと聞いたら、
 ヴィルヘルミナが、チョコフォンデュというのがあるから、問題ないって」

「ちょっと違うって、それ。いや、ひょっとしてわざとなのか」

シャナを溺愛しているメイド姿の女性を浮かべながら、悠二は判断に迷う。
そんな悠二を見上げながら、シャナが期待するように尋ねる。

「美味しい?」

「えっと、こ、個性的な味かな。チョコは美味しいよ、うん」

「そう。良かった」

「でも、出来れば、来年は普通のチョコにして欲しいかな、なんて。
 ほら、シャナも幾ら好きだからって、メロンパンをチョコに包まれると嫌だろう」

「そんなのは邪道よ!」

「だろう。だから、来年は」

「うん、分かった。来年は…」

そこまで言って二人は同時に気付く。

「来年も悠二と一緒…」

「うん、来年もシャナと一緒」

思わず零れ出た言葉に悠二がはっきりと告げたことに、シャナは嬉しさと気恥ずかしさを感じて背を向ける。

「そ、それじゃあ、私は帰る。すぐに悠二の家に行くから!」

「うん、待ってるよ」

悠二の返事を背中で聞きながら、走り去るシャナの顔は来年の約束に綻んでいた。







CM終了〜。
美姫 「って、時期がずれすぎよ!」
いや、だって、ねえ。
美姫 「ねえじゃないわよ。三日前にやりなさいよね、三日前に!」
あははは〜。
美姫 「あはは、じゃないわよ」
まあまあ。
美姫 「ったく、このバカは」
反省…。
美姫 「はいはい。と、今回はここまでのようね」
た、助かった〜。
美姫 「アンタには、後で話があるから」
ええっ!
美姫 「それじゃあ、また来週〜」
いや、ちょ、え、えぇ〜!


2月10日(金)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜。

美姫 「はじまるわよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナからお送りしています>



もう二月だよ。
英語で言うと、February。

美姫 「出だしが先週と同じよ!」

な、何を言う! 英語だぞ、英語!

美姫 「あ〜、はいはい。それよりも…」

うわっ! 流された!

美姫 「それよりも、SSはどうなってるの」

誠心誠意頑張っています!

美姫 「それと、あれは?」

あ、あれって?

美姫 「勿論、秘密の部屋のアレよ」

あ、あれは、本当にやるのか?

美姫 「当たり前よ〜」

えっと、何とか今月中には。

美姫 「本当に?」

た、多分。

美姫 「ふ〜ん。まあ、良いわ、それじゃあ、CM〜」







秘密の部屋のアレとは一体何なのか!?
またもや、フィクションと唱え続けなければいけないような事が怒るのか!?

美姫 「おこるの字が違うわよ!」

ほら、やっぱり怒った……。

美姫 「あー、はいはい。って、まさか、これがCMじゃないでしょう」

ふっ。

美姫 「却下よ、却下!」

無茶言うなー!
お前の所為で、今日は時間がないんだぞ!

美姫 「くっ。仕方ないわね。でも、今回だけだからね」

分かったよ。って、いつの間にか、ネタSSは決まりごとになってるし!

美姫 「ふふふ」

シクシク。

美姫 「今日は短いけれど、この辺で」

シクシク。また、来週(涙)


2月3日(金)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜。

美姫 「はじまるよ〜ん」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナを徴収してお送りいたしております>



もう二月だよ。
別の言い方をすると、如月。

美姫 「何で、陰暦なのよ」

いや、何となく。

美姫 「何で、素直に豆まきの話にならないの?」

豆まき? お、おお、おお! そういえば、節分だな。
そういえば、そうだ。

美姫 「あ、本当に気付いてなかったのね」

あははは〜。

美姫 「季節の行事に疎すぎるわよ」

それは違うぞ! 単に忘れっぽいだけだ。

美姫 「それって、自慢にもならないわよ。せめて、日本の大きな行事ぐらい覚えてなさいよね」

失礼な。大晦日や正月はちゃんと分かってるじゃないか。

美姫 「いや、まあ、別にいいけれどね」

それに、節分の豆まきは追儺という行事で、中国から伝わったんだぞ。

美姫 「そんなしょうもない事だけは知ってるのね…」

昔、式に聞いた事があってな。
節分って、一年で四回あるんだぞ。

美姫 「へー、そうなんだ」

おう。季節の分かれ目である「立春」「立夏」「立秋」「立冬」の前日を指すらしい。

美姫 「その割には、今日の節分しかあまり知られてないわね」

まあ、節分がこの時期を指すようになったのは、
冬から春になる時期を一年の境としたかららしいけれどな。

美姫 「ふーん。それも、式から?」

おう。

美姫 「偶に式って、嘘を教えるじゃない。
    今回のは大丈夫なんでしょうね」

…多分、大丈夫だと思う。

美姫 「まあ、別に私は良いけどね。それはそうと、何で豆をまくの?」

…………さあ?

美姫 「いや、そこの方が大事じゃないの。
    さあさあ!」

え、えっと。よし、分かったぞ!
きっと、豆屋さんがそういう風に広めたんだ!

美姫 「何よ、それは! この馬鹿! 浩は外〜」

い、いててて! や、やめっ。
って、本気でぶつけるな〜。

美姫 「この豆の弾薬、躱せるものなら、躱してみなさい!」

ふっ、その程度の弾幕。
さっ、<ドガッ!>
ささ<ドガガッ!>
さささ<ドガガガガッ!>
…………ふっ、どうだ!

美姫 「どうも何も、ぶつけている私が言うのも何だけれど、よくも全弾当たれるわね。
    ある意味、凄いわあんた」

いや〜、褒めるなよ〜。

美姫 「いや、馬鹿にしてるんだけど…。にしても、避けるの下手過ぎるわよ!」

シューティングゲームが下手なのは伊達じゃないぜ!

美姫 「いやいや、そこは威張る所じゃないから」

くぅ、何て世知辛い世の中に…。

美姫 「いや、全く関係ないから」

こうなったら、俺も豆をまいてやる〜。

美姫 「はい、どうぞ」

ふっふっふ。いくぞ〜。
み…。

美姫 「あ、そうそう。冗談でも、私を外なんて言って、投げてきたら……。
    分かってるわよね〜。クスクス。今日も紅蓮と蒼焔は綺麗な輝きだわ」

…………。

美姫 「あ、ごめんね〜、中断させて。で? み、の次は?」

み、み、身のほど知らずの俺は外〜(涙)

美姫 「クスクス。自分でもよく分かってるのね。
    でも、そこまで卑屈にならなくても良いのよ」

う、うぅぅぅ。大人しく、豆を食べてます……。
ぽりぽり……。あ、あれれ? この豆、塩味がちょっときついよ……。

美姫 「そう? 私のは美味しいけれどね」

うぅぅ。とりあえず、CMにいってください。

美姫 「それじゃあ、CM〜」







それは、いつもと変わらない下校の風景だった。

「恭也〜、久しぶりに臨海公園の屋台に行こう」

「そうだな、久しぶりにたい焼きでも…」

「私はたこ焼きにしようっと」

「私は普通に餡子で」

「うちもたこ焼きにしようっと」

恭也の言葉を聞いた途端、美由希たちはすぐにメニューを決める。
別に強要するつもりなどなかった恭也だったが、それが暗に恭也の頼むものを否定しているようで、
恭也は思わず晶を見てしまう。
恭也の視線に気付いた晶は、その意味する所を正確に理解しつつも、申し訳なさそうに告げる。

「えっと、今日はたこ焼きが食べたい気分なんです…」

「そうか」

「ああ! でも、カレーとチーズもありですよ、師匠!」

「ああ、分かっている。別に強制するつもりなどないから」

今のところ、唯一の仲間である晶の頭を軽くぽんぽんと撫でる。
思わず嬉しそうな笑みを見せる晶と、恨めしそうな視線を飛ばす美由希たちだった。
と、不意に先を歩く恭也の足が止まる。
恭也の視線の先、道路を挟んだ向こう側には、一人の少女の姿があった。
恭也は何故かその少女の姿が気になり、思わず見詰める。
向こうも恭也に気付いたのか、いや、初めから恭也をじっと見詰めており、
その口がゆっくりと開く。

「や        たんだね」

向こうの声が聞こえるはずないのだが、恭也のには微かにだが、その少女の声が聞こえた気がした。
思わず聞き返そうと一歩踏み出した瞬間、二人の間をバスが通る。
バスが通り過ぎた後、恭也は少女の姿を探すが、少女は何処にもいなかった。
そんな恭也の行動に気が付いたのか、美由希が恭也へと声を掛ける。

「恭ちゃん、どうかしたの?」

「いや、今、そこにいた女の子が…」

「女の子!? 何処に居る子!?」

美由希の横から忍が詰め寄るようにして恭也の視線を追う。
しかし、そこには誰も居らず、忍は恭也へと視線を戻す。

「で、その子がどうしたの?」

何故か、刺のあるような言い方に、恭也は思わず後退りそうになりながらも無難な答えを返す。

「いや、昔の知り合いに似ていたんでな。まあ、それだけだ。
 それよりも、早く行くぞ」

少しの間、疑わしそうに見ていた美由希たちだったが、
結局はその言葉を信じて、再び歩きだすのだった。



屋台で各々に買ったものを口にしながら談笑を交わしていると、不意に晶とレンの怒鳴り声が響く。
またいつもの事と、全員が放っておく事にする。
沈んでいく夕日を眺めつつ、恭也は最後の一口を放り込むと、手すりに手を置く。

「恭也、何か見える?」

「いや、別に何というものでもないがな。ただ、ぼんやりと見ていただけだ」

「ふーん。まあ、ここの風景は綺麗だからね」

忍の言葉に無言で頷きながら前方を眺める恭也へと、レンに吹き飛ばされた晶が向かって来る。
恭也は咄嗟に振り返って晶を受け止めるが、態勢が悪かったのか、足を滑らせて後ろへと大きく傾く。
そのまま手すりを乗り越え、恭也の身体は海へと向かって落ちて行く。
美由希たちが慌てて手を伸ばし、恭也も手を伸ばすが届かず、そのまま海へと落ちて行く。
海へと落ちる瞬間、恭也は何故か眩しい光が目に入り、思わず目を閉じた。



「ぷはぁっ」

恭也はすぐさま海面から顔を出すが、少しおかしいことに気が付く。
まず、水が温かいのだ。いや、熱いと言っても良いだろう。
幾ら、夏の海とはいえ、これは異常である。
次に、浅い。
恭也は尻餅を着いたような形で上半身だけが起きているのだが、
手が地に触れているにの関わらず、上半身が海面から上に出ているのである。
そして、周りの霧。
周り薄っすらと漂う白い靄のような霧。
いや、霧ではなく、湯気のようである。
それらを頭の中で整理した結果、恭也は一つの結論に達する。
つまり、ここは風呂場であろうと。
と、冷静に現状を分析している恭也の耳に綺麗な声が届く。

「だ、誰?」

その声に振り払われるかのように、湯気が引いていき、恭也の目の前に一糸纏わぬ少女が姿を見せる。

「す、すまん」

咄嗟に後ろを向く恭也だったが、少女の顔に何処か見覚えがあったような気がして、
その顔を思い出そうとする。
が、恭也が考えを纏めるのを相手が待ってくる事はなく、少女は低い声を出す。

「私を義経と知っての狼藉か! 平家の者か!? それとも、単に雇われただけか!?
 どちらにせよ、知られたからには生かしておけないわ! 覚悟!!」

言って少女は風呂の中にまで持ってきていたのか、一本の刀をその手に握り、恭也へと襲い掛かる。
恭也はそれを咄嗟に躱すと、湯船の外へと出る。

「誤解だ。別に俺は覗くつもりなんて…」

「うるさい!」

少女の裸を見ないように視線を逸らす恭也へ、少女の一撃が襲い掛かる。
それをもう一度躱すと、恭也は説得を諦めたのか、風呂場から逃げ出す。
流石に裸では後を追って来る事も出来ず、恭也はあっさりと外へと逃げ出す事が出来た。
外へと出た恭也は、思わず周りを見渡す。

「何だ、ここは? まるで、昔の世界みたいだ」

恭也は周りに建つ建物を見て、そう零す。
確かに、恭也の言葉通り、周りにビルなどの高い建物は見当たらず、それどころか、
見渡す限りでは鉄筋造りの建物や、コンクリートといったものが見当たらない。
踏みしめている大地も剥き出しで、アスファルトなどはない。
呆然となる恭也に、不意に男のものと思われる声が掛けられたのはその時だった。

「その奇抜な格好…。間違いないようですね。
 あなたが未来人ですね」

「? 何の事だ? それよりも、ここは」

「そうですね、詳しい事は後でゆっくりと説明させて頂きます。
 とりあえずは、我々と共に来てもらえますか?」

丁寧な物腰で話し掛けてくる男の横に立っていた男が、不意に恭也の背後を見る。
つられるようにして恭也が振り返ってみると、そこには先程の少女がこちらへと向かって来ていた。

「廉也、どうやら源氏の者みたいだぞ」

「そのようですね。どうしましょうか」

「あっちは俺が引き受けよう」

「では、お願いしますよ。さて、未来人のお方、我々は行きましょう」

「いや、まだ俺は行くとも何とも言ってないが…」

勝手に進んで行く話に恭也が思わずそう洩らすが、それに誰も触れず、
新たにこの場に来た少女に二人の男は警戒の色を見せる。
少女はこの場に着くなり、男を睨み付ける。

「まさか、平教経か!?」

「ほう。俺を知っているか、女」

男は嬉しそうな目を見せると、身長よりも大きな棒を少女目掛けて振り下ろす。
それを少女は軽い身のこなしで躱し、手にした刀で斬りかかる。
いきなり始まった、本物の戦いに恭也は困惑を隠せないでいた。



気が付けば見知らぬ場所に居た恭也。
そこで出会った少女に追いかけられ、次に出会った男たちは恭也を無視して話を進め。
かと思えば、いきなり少女と男が斬り合いを始める始末。
果たして、ここは何処? 一体全体、何がどうなっているのか?
恭也の運命や如何に!?

少女源平合伝 〜知られざる歴史〜
第一話 「ようこそ、平安へ」

「はぁっ!? 俺が弁慶に!?」







美姫 「それそれそれ〜♪」

いたっ、いた、いたたたた。

美姫 「あははは〜。浩は外、外〜」

や、やめっ……って、美姫、CM終わってるぞ!

美姫 「そんな嘘に騙されないわよ! どうせ吐くんなら、もっとましな嘘にしなさいよね」

いてててて!
って、これ、意外と痛いぞ!

美姫 「クスクス。……って、本当にCM終わってるじゃない!」

だから言っただろう。

美姫 「うぅぅ、酷いのよ、皆〜。浩が私に豆をぶつけるの〜」

って、待てぃ!

美姫 「ぐすん、ぐすん」

お、お前というやつは…。

美姫 「うるうる、うるる〜」

大人しい今の内に、と言いたい所だが、そうした時の事は簡単に想像が出来る。
ここは、我慢だ俺。決して、美姫が怖いんじゃないぞ、俺。

美姫 「あ、もう時間だ」

って、おい!
さっきまでのしおらしさは!?

美姫 「あら、私はいつだってしおらしいじゃない」

いっぺん、辞書を引け、辞書を。

美姫 「浩、口は災いの元っってのを調べた方が良いわよ〜」

はぅっ!
み、美姫はいつもしおらしいな〜。

美姫 「そう、ありがとう。でもね、一度口から出した言葉は、もう戻らないのよ」

う、うぅぅぅ。不条理だ。あまりにも不条理だ。

美姫 「それが世の中ってものよ」

…納得。……できるかっ!

美姫 「もう、うるさいわね。ともあれ、時間だし」

う、うぅぅ。それは、つまり、俺へのお仕置きタイムが秒読みって事で……。
って、自分でお仕置きって言ってるし!?
何も悪い事してないのに!

美姫 「うふふ。これも私の調教……もとい、躾のおかけね」

俺って、俺って…………。

美姫 「さて、約一名ほど茫然自失状態となっているけれど、そんなのは無視して…」

あ、あはははは〜。
妖精さんは何処から来たの?

美姫 「何か危ないものまで見始めてるし、今回はこの辺で〜」

そうかそうか。
そうだよね〜。妖精なんだから、妖精界からに決まってるよね〜。

美姫 「それじゃあ、また来週ね〜」



うふふふ。あははははは。

美姫 「ほら、浩〜。そんな危ないものが見え始めた人の真似なんて私には通じないわよ〜」

ちぃぃっ! ばれて〜ら〜。
という訳で、ダッ……がっ。
く、首輪!? いつの間に!?

美姫 「ふふふ、まだまだ甘いわね、浩。
    それじゃあ、今から楽しい、楽しい一時が待ってるわよ〜」

い、いやじゃ〜〜〜。

美姫 「だ〜い丈夫だって。地獄を見せてあげるから」

せ、せめて、そこは嘘でも天国って言えよ〜(涙)

美姫 「くすくす」

だ、誰か、た、たす……『バタン(扉の閉まる音)』

シ〜〜ン



<この番組は、PAINWESTの提供でお送りしました>


1月27日(金)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜。

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナよりお送りしています>



ふぅ〜。

美姫 「いきなりね」

まあまあ。ようやく、マリとら2ndも無事に終わったしな。

美姫 「約一ヶ月程の遅れよね」

まさに、PCが壊れていた期間と同じ。
つまり、あれさえ無ければ!

美姫 「単に、アンタがもっと頑張れば良かったのよ」

ぐっ。

美姫 「それよりも、新作よ、新作! どうなっているの」

ぼちぼち…。

美姫 「さっさと仕上げなさい!」

んな無茶な。

美姫 「とりあえず、リリカルか極上かどっちでも良いから」

いやいや、その前にタイトルがまだ未定なんだよ〜。

美姫 「え、あのままでいかないの」

あのままでいくか…。

美姫 「って、そんなにあっさりと」

分かり易くていいしな。うんうん、そうしよう。

美姫 「えっと、もう少し捻るとか」

あははは〜、馬鹿だな〜。
俺にそんな事ができるとでも?

美姫 「出来ないわね」

あっさりと肯定されると、それはそれで傷付くな。

美姫 「何よ、自分で言っておいて。って、誰が馬鹿よ、誰が!」

って、今になって怒るなよ!

美姫 「良いから、さっさと書きなさい!」

は、はいぃぃ。

美姫 「その間にCMよ〜」







超巨大校、天地学園。
この学園には、剣技特待生、俗に『剣待生』と呼ばれる生徒たちが存在し、
『刃友(しんゆう)』と呼ばれるパートーナーと二人組で戦う『星獲り』と呼ばれるシステムが存在する。
星獲りは、勝ちつづけることでランキングが上がり、報奨金が出るなど富と栄誉が得られるものである。



「遅刻する〜、じゃなくて、既に遅刻〜」

そんな巨大な学園を駆ける一人の少女がいた。
少女はよっぽど急いでいるのか前から来た少年とぶつかってしまう。

「うわっ。ご、ごめんなさい、急いでいたので」

「いや、こちらこそ。怪我は?」

「いえ、大丈夫です。それじゃあ」

言って駆け出そうとした少女だったが、振り返って少年を見る。

「私は黒鉄はやてです!」

「どうもご丁寧に。自分は高町恭也です」

「恭也、学園長室ってどこ?」

「…場所も知らずに急いでいたのか」

「あははは〜。今日、転入初日だから、来るように言われてたんだけど、場所が分からなくて」

恭也は呆れたように溜め息を吐くと、学園長室の場所を教える。

「ありがとう!」

言って走り去っていくはやての背中を見詰めつつ、今日転入してくるのは黒鉄ナギという少女だと、
学園長にして生徒会長であるひつぎより聞いていた恭也は首を傾げるが、
すぐにどうでも良いとばかりに歩きだすのだった。

後に、学園に波乱を起こす事となる二人の出会いは、騒々しくも静かに終わりを告げる。
この出会いが切っ掛けで、まさか再び星獲りに参戦する事になるなど、この時の恭也は思いもしなかった…。



HAYATE CROSS HEARTBLADE
はやて X ハートブレード  第一話 「その名ははやて」



学園長であるひつぎの前でも、自身の名を正直に名乗ってしまったはやてだったが、
ひつぎの計らいにより、在学を認められることとなった。
そして、はやては今、刃友を探すために学園内を歩き回っていた。
しかし、途中からの転入という事もあり、殆どの者が誰かとパートーナーを組んでおり、
はやての刃友となってくれそうな人物は中々見付からなかった。

「うぅ〜。勝ってたんぽぽ園を救わないといけないから、強い人と組みたいのに〜」

「仕方ないわよ。そんなに強い人なら、もう既に誰かと組んでるって」

カフェテラスのテーブルに突っ伏すはやてへと話し掛けたのは、はやてのルームメイト、吉備桃香だった。

「本当に誰もいないの〜?」

「ええ」

はやては顎をテーブルに着きながら、まだ刃友を持っていない人物のリストを眺めていた。
と、その視線が一箇所で止まる。

「あー、この人!」

「誰か知っている人でも居たの?」

「うん。多分、この人は強いよ。ぶつかった時に分かった」

「……だれだれ? って、高町先輩!?」

「もかちゃん知ってるの?」

「知ってるも何も…。あー、高町先輩は止めておいた方が良いと思うけれど。
 多分、なってくれないから」

「何で? そんなの頼んでみないと分からないじゃない」

「分かるんだって。今まで、何人もの人が頼んでいるんだけれど、皆、断られてるし」

「じゃあ、ずっと一人で?」

「そうよ。さっきも言ったけれど、一人の場合はポイントは貰えないの。
 だけど、星は取られる。つまり、一人だと格好の対象なのよ。なのに、今までずっと星を保持している。
 だから、実力は確かなのよ。それで、皆、組みたがるんだけれどね」

「じゃあ、何で剣徒生なんてしてるんだろう」

「別に最初から一人だった訳じゃないみたいよ。
 詳しくは知らないけれど、入学当初は誰かと組んでたみたい」

「じゃあ、恭也の刃友はどうしてるの?」

「さあ? 誰が高町先輩の刃友だったのか、知っている人は少ないんじゃないかな?
 私も知らないし…」

「うーん。兎に角、今は一人なんだよね。だったら、頼んでみる!」

言って走り出すはやてに止めようと声を掛けるが、すでにはやては遠くにおり、
桃香は肩を竦めると飲みかけのコーヒーにそっと口を付けるのだった。



校舎内を駆け回り、三階の廊下で恭也の姿を見つけたはやてはその背中へと声を掛ける。

「恭也!」

「ん? 君は確か、はやてだったか?」

「そうです!」

「で、俺に何か用か?」

「うん。私の刃友になってください!」

「断る。それじゃあな」

言ってスタスタと歩き出す恭也の足に、はやては両腕でしがみ付く。

「おい、何を」

「お願い、なってなってなって〜!」

「良いから、放してくれ」

「じゃあ、なってくれる」

「断る」

「お願い〜」

「くっ」

徐々に人が集まるのを感じながら、恭也ははやてを引き離そうとする。
はやてもはやてで引き離されまいと腕により一層の力を込めて、またしてもお願いする。

「刃友になってとは言わないから。
 その代わり、番戒(つがい)とかゆーの恭也の穴に通させてよ!」

「それは、刃友になる儀式だろうが」

番戒と呼ばれるものを、刀に開けられた穴に通すことで、ここでは刃友となる。
刃友になれとは確かに言ってはいないが、それをしろと言っている時点で同じ事であった。
しかし、そんな事を気にすることもなく、気にするような人物なら、
一般生徒もいるこんな廊下で、こんな事をする訳もないだろうが、はやては大声を上げる。

「お願いだから、あたしの穴も恭也のでつらぬいてよ!」

「紛らわしい言い方をするな! しかも、そんな大声で!」

はやての口を塞いで黙らせると、次いではやての右手首を掴む。
同時にしがみ付かれている足を振り上げ、はやてごと持ち上げると、手首を掴んだ手を外側へと捻る。
その際、持ち上げた足を横へと振る。
投げ飛ばされるような形で恭也の足から引き離されたはやては、痛みに顔を顰めることなく、
今の一連の動作に感動さえしていた。

「凄いよ! やっぱり、刃友になって! ……って、あれ? 恭也〜?」

勢い込んで起き上がったものの、そこには既に恭也の姿はなく、
はやては口元に手を当てて大声で恭也の名前を連呼する。
それを物陰から聞いていた恭也は顔を押さえつつ、面倒なのに目を付けられたと胸中でぼやく。
だが、これだけ素っ気無くしていれば、そのうち諦めるだろうとも考えていた。
それが間違いだと気付くのに、そう時間は掛からなかったのだが……。



あれ以来はやては、

「刃友になってよ」

「ここは男子トイレだぞ」

時間が空く度に、

「刃友になってよ〜」

「…授業中なんだが」

恭也の姿を探し、

「ねえねえ、刃友になってよ」

「人のおかずを取るな」

時間や場所などお構いなく、執拗に同じ事を繰り返す。

「お願いだから〜」

「お前、何処まで来る気だ! ここは、俺の部屋だぞ!」

執拗に同じ事を繰り返す。

「ねえねえってば〜」

「人の布団にもぐりこむな!」

果たして、はやては恭也を刃友とする事ができるのだろうか…。







美姫 「ブービー賞〜」

……いや、もう何も言うまい。
って言うか、殆ど一話だけとはいえ、書かしてるんじゃねえ!

美姫 「文句があるっての?」

いえ、滅相もありませんです、はい。

美姫 「ったく、これだから馬鹿は……」

う、うぅぅぅ。
何故だろう、目からしょっぱい液体が…。

美姫 「さて、それじゃあ、そろそろ時間もいい事だし…」

グスグス。気持ちを切り替えねば。
よし、行くぞ!

美姫 「行くよりも、書け!」

ぐえっ!

美姫 「それじゃあ、また来週〜」

ひ、ひどいよ、美姫ちゃん……。


1月20日(金)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜。

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナを乗っ取りお送りしています>



何だかんだでもう年が明けて一月が経とうとしている。

美姫 「時の流って早いわね」

しみじみ。

美姫 「って、しみじみしてる場合じゃないでしょうが!」

まあ、そうなんだがな。

美姫 「そろそろ、ピッチを上げてほしいわね〜。いつまでも、正月気分じゃ困るわよ」

って、いつ、正月気分なんか味わってたよ(涙)

美姫 「いつって、私の晴れ着姿見たじゃない」

その後、お年玉をねだられたけれどな…。

美姫 「御節にお雑煮〜♪」

餅が喉に詰まるとどうなるのか、とか訳の分からん理由で餅を口一杯に放り込まれたけどな。

美姫 「初詣〜」

屋台で色々と買わされたよな。

美姫 「もう、何よさっきから」

さっきからじゃねえよ〜。言ってて涙が…うぅぅ。

美姫 「はいはい。良い子、良い子〜」

うぅぅ、美姫は優しいな〜。

美姫 「当たり前でしょう」

……って、お前の所為で泣いてるんじゃっ!

美姫 「うんうん、分かる、分かる」

って、適当な相槌を…。

美姫 「それじゃあ、CMね♪」

って、相槌どころか、聞いてなかったのかよ!







「かーさん、ちょっと話があるんだけれど…」

そう言って真剣な顔で切り出した息子の様子に、食後のお茶を楽しんでいた桃子も知らず背筋を伸ばす。
たまたま近くに居た美由希たちも、何故か畏まったように居住まいを正す。
それに構う事無く、恭也は自分の席に座ると湯のみにお茶を注いで、ゆっくりと啜る。

「ふー、上手いな」

そう零す恭也に、桃子はやや引き攣った笑みを浮かべる。

「で、恭也。改まって何かしら?」

「ああ、その事なんだが…。
 実は、近々転校しようと思ってな」

「ふーん、そうなんだ。良いんじゃない」

真剣な表情で口を開いた割に、お茶を飲む恭也に少し腹を立てたのか、
深く考えずにそう軽く返答してから、その内容を思い出して桃子は慌てたような声を上げる。

「ちょっ、どういうことなのよ、恭也」

「うん? 良いんじゃないのか?」

「じゃなくて、理由よ、理由!」

「師匠、もしかして、さっき掛かってきた電話と何か関係が?」

呆然としている美由希の横から、皆よりも若干早く我に返った晶の言葉に恭也は一つ頷く。
恭也をじっと見詰めてくる複数の視線に軽く首を竦めて見せると、恭也は事情の説明を始める。

「今から十年ほど前の事だ。とある街に一組の親子がいてな。
 その親子は全国を旅して歩いていたんだが、その路銀が遂に底を着いてしまった」

「それって、士郎父さんと恭ちゃんの事?」

すぐにその人物に思い当たった美由希の言葉に恭也は頷いて応えると、そのまま続ける。

「いつもなら、その辺で野宿する所なんだが、そこは温泉街でな。
 野宿するような場所がなかったんだ。ただ唯一、向こうに山があってな。
 その山で野宿する事にした俺と父さんは、その山へと向かったんだ」

「それと転校と何の関係が…」

「良いから黙って最後まで聞け、美由希」

途中で口を挟む妹を黙らせると、隣で顔も知らない父親の話を多少の寂しさの混じっているものの、
嬉しそうに期待するように待つもう一人の妹の頭をそっと撫でると、恭也はもう一度話を再開させる。
その扱いの違いに口を尖らせつつも、美由希も静かに恭也の言葉に耳を傾ける。

「所が、着いてみたらそこは私有地だったんだ。
 途方に暮れていた俺たちに声を掛けてきてくれたのが、その山の持ち主でもあり、
 その傍に立つ旅館のオーナーでもあったひなたお婆さんだった。
 ひなたお婆さんは、俺たちの事情を聞くと自分の旅館に泊まると良いと言って泊めてくれただけでなく、
 そこで住み込みでバイトもさせてもらったんだ。言わば、ひなたお婆さんには恩がある」

「もしかして、さっきの電話はその人からだったの恭也?」

そこまで聞いて、桃子がそう尋ねると恭也は頷く。
だからと言って、何で転校という言葉が出てくるのか尋ねようとする桃子を制し、恭也は続ける。

「そのひなた旅館の裏山には、山頂へと続く道があるんだが、
 その途中で一見すると見つけ難い形で横道が存在しているんだ。
 それを知るのは、極一部の者だけだがな。
 兎も角、その道を登っていくと開けた場所に出る。
 そこには一つの洞窟と祭壇があって、一匹の鬼を祭っているんだ」

一旦、言葉を区切ると、その話の続きを待つように全員が無言で恭也を促す。
それに苦笑を洩らすと、恭也は焦らす事無く続ける。

「その鬼は変わり者らしく、別に人を襲うわけでも悪さをする訳でもないらしい。
 伝承によると、時には人に力を貸したりもしていたそうだがな。
 でだ、その鬼は勝負が好きでな。
 まあ、試合うのが好きって事なんだが、人と勝負をするようになったらしい。
 尤も、そう簡単に鬼に勝てる者もいなかったんだが、それでも満足だったらしい。
 ただ、徐々にそういったものが信じられなくなったり、鬼と言うだけで退治されそうになったりした為、
 今の場所で眠ることにしたらしい。その間も、偶に起きては勝負をしていたみたいだな。
 で、その勝負を取り仕切っていたのが、そのひなたお婆さんの家系と言う訳だ。
 とは言え、昔ほど武術が普及しなくなり、徐々にその鬼と拮抗する程の者は現れなくなって、
 鬼も眠る期間が増えていった。
 まあ、少し前まではひなたお婆さんの旦那さんや知人が相手をしていたみたいだがな。
 所が、ある日、その鬼と勝負をした一人の剣士が居たんだ。
 それだけなら良かったんだろうが、事もあろうにその剣士は鬼と引き分けた。
 今まで、勝ち続けていた鬼に、引き分けとは言え勝ちを譲らなかったんだ。
 その事に鬼は大層喜んで、次の勝負の約束をした。
 剣士も鬼と約束を交わし、自分の名前と流派を教えた。
 こうして二人は次の再会と勝負を約束して別れたんだ」

そこまで話すと恭也はすっかり冷めてしまったお茶で、乾いた喉を潤す。
黙って話を聞いていた者たちは、その剣士が誰か分かり、恭也を見る。
やがて、美由希が静かに口を開く。

「その剣士っていうのが、士郎父さん」

「ああ。それで、その鬼が目覚めるのが、ここ一年から一年半の間。
 だが、父さんはもう居ないからな。なら、父さんの弟子である俺が相手をするべきだろう。
 何処までやれるかは分からんが、御神の剣士として、御神の名の元で交わした約束だからな。
 父さんの代わりに、その約束を果たしたい」

「なるほどね」

恭也の言葉に桃子は静かに目を閉じる。

「さっきの電話はひなたお婆さんからで、父さんが亡くなったのもご存知で、
 その上でその件をどうするかといったものだったんだ」

桃子をじっと見詰めながら静かに語る恭也の言葉を聞き、桃子はゆっくりと目を開ける。

「さっきの電話がそういった件のものだったんなら、もう返事はしたんでしょう」

「…ああ、した」

「じゃあ、今更反対なんて出来ないわよ。しても無駄だろうし。
 それに、士郎さんが交わした約束なら、それを果たしてあげたいものね。
 良いわ、恭也。あなたの好きなようにしなさい」

「…助かる」

「でも、その一年から一年半の間に、いつ目覚めるか分からないんでしょう?
 住む所とかはどうするの?」

桃子の疑問に恭也はすぐに返事を返す。

「それなら問題ない。ひなたお婆さんの所に世話になる。
 さっき、ひなたお婆さんがそう言ってくれてな」

「そう。じゃあ、しっかりやりなさい」

そう言って優しく微笑む桃子に、恭也は頷いて応えるのだった。



翌日、昼食を終えた恭也は知人を校舎の屋上へと呼び出して、昨夜美由希たちに話した事を伝える。

「という訳で、今週中に転校する事になった」

「そんな〜」

忍は真っ先に不満を口にするが、言うだけ無駄だと分かっているのか、すぐに納得する。

「折角、仲良くなれたのに」

「大丈夫だ。鬼との勝負が済めば、すぐに戻ってくるから」

「分かった。その代わり、偶にで良いから、私にも連絡頂戴よ」

「ああ」

そう言った恭也の首に、赤星の腕が絡みつく。

「約束だ何だと言っているが、それだけじゃないんだろう」

「分かるか」

「当たり前だ。士郎さんと引き分けたという鬼。
 お前自身、その鬼とやってみたいんだろう」

「ああ。勝てるかどうかは分からないが、父さんと引き分けたぐらいだからな。
 良い経験になると思う。向こうも、更に強くなっているだろうからな」

「寝ているのにか?」

「寝るのは半分ぐらいの時間だ。寝るまでに何年か起きていて、修行を積んでいるって話だ。
 まあ、誰も見た者は居ないから、真実は分からんがな。
 だが、油断出来るような相手じゃないからな」

「そうか。まあ、頑張ってくれ。熊殺しならぬ、鬼殺しとなったお前に会えるのが楽しみだよ」

「別に殺し合いじゃないぞ。単なる手合わせだ。
 それに、勝てるかどうかも分からん」

「やる前からそんなんでどうする」

「ふっ。お前らしいな」

「そうか。まあ、気を付けて行って来い」

言って恭也に笑みを見せると、赤星は腕を離す。
そんな二人のやり取りを見守っていた面々だったが、いつの間にか話は送別会の話になっていた。
そこでチャイムが鳴り、屋上を後にする面々。
未だに送別会の事で何やら話している面々の後ろに少し遅れて付いて行きながら、恭也は空を見上げる。
雲一つなく晴れ上がった青空を見詰め、恭也はそっと拳を握り締める。
その瞳は楽しそうな色を含み、ただただ静かに空の青を映し出していた。

ラブとら プロローグ 「昔日の約束」 完







という訳で、先週に続き、今回はラブとらをお送りしました。

美姫 「抽選から漏れた上位2位のプロローグ企画、これにて終了〜」

はぁ〜、疲れた。
っていうか、前々から言ってるが、ここまで書くとSS一本書けるよな?

美姫 「知らない〜♪」

くっ。都合のいい事を。

美姫 「さて、それじゃあ、また来週〜」

ではでは。




1月13日(金)

昔より、決して歴史の表舞台へと出てこなかったモノがあった。
それは、決して使い勝手が良いといったモノではなく、
また、秘匿される傾向が大きかったからでもあった。
そして、科学の発達により、ソレの領域が徐々に減っていった事もあったのだろう。
けれど、昔からソレが伝えられているのも事実で、決して消え去ったわけではなかった。
歴史の裏で、一般の人には気付かれないように脈々と受け継がれ、語られ、そして今なおも存在する。
そう、決して夢物語などではなく、はっきりと存在しているのである。
ただ、それが世間一般の目に触れることが、いや、認識される事がないというだけで……。



その名を『魔法』と言い、使い手は世界でも五人しか存在しないとされる神秘の御技。
そして、そこへと辿り着こうと、人為的に神秘や奇跡を再現する行為、『魔術』というものが生まれる。
いや、その時代で実現不可能な出来事を『魔法』と言うのなら、
遥か昔は『魔術』を扱う『魔術師』は殆どが『魔法使い』だったと言えるだろう。
『魔術』があって『魔法』へと辿り着くのではなく、『魔法』が失われて『魔術』が生まれ、
そして再び、『魔法』へと辿り着く為の行為として研究されたのが『魔術』と言うべきなのか。
ともあれ、『魔術』は日々の営みでは目に触れる事無く現在も伝えられているのである。







美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜。

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナを乗っ取ってお送りしています>



って、しょっぱなのあれは何じゃ〜!

美姫 「あら、見覚えない?」

いや、あるけれどさ…。
何で出だしにあんなのが?

美姫 「偶には違う始まり方も面白くていいじゃない」

たったそれだけの理由か!?

美姫 「そうよ」

ぐっ。笑顔であっさりと言いながら、無言のプレッシャーですか。

美姫 「くすくす。って、それよりもSSの方はどうなっているの?」

今、マリとら2nd執筆中!
少し、更新が遅くなるかもしれないが。

美姫 「ちゃんと今月中に終わるんでしょうね」

その辺りは大丈夫! ……だと思う。

美姫 「今、ぼそりと何か言わなかった?」

ブンブンブン。とんでもございませんよ。

美姫 「まあ、良いけれどね。って、マリとら2ndばっかりに構ってないで、他にも色々とあるでしょうが」

ちぃぃっ。気付いたか。

美姫 「って、気付くって普通」

あ、あはは〜。そ、その辺も多分…。

美姫 「いまいち信用できないのよね〜」

耳に痛いお言葉で。

美姫 「こうなったら、新年一発目のお仕置き24時間耐久でもやろうかしら」

それはご勘弁を!

美姫 「だったら…」

が、頑張りますです、はい!

美姫 「ったく。とりあえず、CMよ〜」







歴史の裏で語り継がれていく魔術。
その中でも奇跡の体現とまで言われるような一つの儀式があった、
それは、手にした者の願いを叶えると言われる聖杯を巡る儀式。
それは、七人の魔術師が『マスター』となり、七騎の『サーヴァント』と呼ばれる使い魔を使役して、
己が力を示さなければならない。
聖杯を手に出来るのは一人のマスターのみ。
つまり、この儀式は七人のマスターによる、七騎のサーヴァントを用いた殺し合いなのである。



Triangle Fate stay/hearts 第一話「全ての始まり」



海と山に囲まれたここ海鳴市。
7月に入り、梅雨も明けた頃、表面上は平穏に見える日常に、
ゆっくりと、だが確実に、闇が忍び寄っていた。
その事に普通の人々が気付く事もなく…。



夕方になり、まだ日が出ているが昼よりは少しましといった暑さの中、高町恭也は一人ランニングをしていた。
夏というのに腕の出ない長袖のトレーニングウェアを着て、その額に汗を流しながらも黙々と走り続ける。
八束神社へと続く階段を上って行きながら、今日はそこの巫女をしている那美が、
自分の妹である美由希と一緒に出掛けていて居ないんだったなと思いを巡らす。
恭也と美由希がやっている、古より今に伝わる人を殺すための剣術、御神流。
それをやっている事と、過去の出来事によって友達を作らなくなった美由希に出来た、
親友とも呼べるほどの友人の出現。その事に恭也は知らず微かだが口元を緩める。
そして、自分にも出来た赤星以外の親友、いや、悪友と言った方が良いかもしれないが、
その人物、月村忍を思い出し、恭也は新学年になってからの数ヶ月で起こった様々な出来事を思い返す。

「……よく生きてたな、俺」

何を思い出したのか、恭也は少し遠い目になって空を見上げると、
すぐに頭を振って再び鍛錬の一環であるランニングへと戻るのだった。



それは薄暗い部屋の中。
日の光さえもが入ってくるのを嫌うように、窓という窓全てにカーテンをしてある。
その部屋の中を照らすのは、四方の壁に備え付けられてるランプ。
まるで、一昔前のような雰囲気すら漂わせるその空間には、しかしながらそれを感じるためのものがなく、
またそれを壊すかのようなものがある。
前者は、そのランプに似つかわしいような家具などの装飾品がまったくない事。
いや、部屋にはそのランプ以外何もないと言った方が良いだろう。
そして後者は、部屋の床に描かれている記号めいた言葉の羅列。
何が掛かれているのかは分からないが、それが大きな円の周囲に沿うように書かれており、
またその記号を囲むように、中央の円よりも大きな円が一つ。
その大きな円にもまた、記号の羅列が並べられており、二つの円の中心には、
三角形が二つずらされて描かれている。
俗に言う六芒星である。
この外側の円の外には、一人の人物が立っていた。
黒いローブを頭から被り、背中はかなり猫背気味に曲がり、その手には一冊の本を手にしている。
ランプの炎の揺らめきが、ローブから僅かに覗く横顔を照らし出し、かろうじて男だと分かる。
男は自分の足元に描いた魔法陣を満足そうに見遣ると、懐から古びた懐中時計を取り出して時間を確認する。

「もうすぐ、丑三つ時。全てはここから始まる…。
 そう、ここからな」

緊張からか、カラカラに乾いた喉で搾り出すようにそう声を出す間も、
男の目は床に描かれた魔法陣をずっと見ており、その顔には狂気にさえ似た歓喜を浮かべていた。
やがて、男が待ち望んだ時間が訪れ、男はゆっくりと本を開くと片手に持ち、空いた手を魔法陣へと翳す。
そして、その口から不思議な言葉が溢れ出る。
すると、男の言葉に触発されたかのように、魔法陣が淡い光を帯び出す。
それに気を良くしつつも気を抜かず、一層鋭くなった眼差しを魔法陣に向けつつ、男は更なる言葉を紡ぐ。
徐々に大きくなっていく男の声に呼応するかのように、魔法陣もその光を強めていく。
男の詠唱が佳境に差し掛かる頃には、光が部屋一杯へと広がり、何が起こっているのか分からなくなる。
やがて、男が一際大きく何かを呟くと共に、何かが収束するような音が部屋に響く。
それが収まる頃には、男の詠唱も終わりを告げ、光もまた徐々にその勢力を弱める。
やがて、完全に部屋が元の静けさを取り戻すと、さっきまでの光景が嘘だったかのように、
まるで何もなかったような状態の部屋が現れる。
いや、一つだけ違っていた。
男一人しか居なかった部屋の中には、一体いつの間に入ってきたのか、一つの影があった。
男と対峙するように立つその人物は、男と同じようなローブを頭から被ってその顔を隠してはいたが、
そこから流れるように出ている髪は美しく、炎の明かりを照り返す。
僅かに覗く顔立は、恐らくは女性、それもかなり美人の類に入るであろう事を思わせる。
突然、現れたその女性に対し、男は驚いた様子も見せず、一つ笑みを見せると静かに問い掛ける。

「お主は?」

男の言葉に答えようと、女が静かに言葉を発する。

「私はキャスター。私を呼び出したのは、貴方ね」

冷たい感じがするのに、思わず引き込まれそうになる声に、しかし男は小さく舌打ちをする。

「キャスターじゃと。それでは、この戦争に勝てんではないか!
 何故だ! あれほど入念に準備をしたというのに、最弱のサーヴァントなんか!」

「マスター、お言葉ですが確かに肉弾戦では最弱かもしれませんが、作戦次第では…」

「ええい、うるさい! 儂はまだお主と契約なんぞしとらん。
 だから、マスターでも何でもないわ!」

言いながらも男にも分かっているのだろう、
目の前のキャスターと名乗る女性と自分との間に魔術的な繋がりが出来ている事を。
だからこそ、男は忌々しそうにキャスターを見る。

「くっ。終わりじゃ。全てが水の泡じゃ。
 まったく、何故キャスターなんぞ。まして、このような小娘が英霊だとでも言うのかっ!
 だとすれば、英霊というのも、大したものではないの」

完全に侮蔑する男の言葉に、キャスターは顔を俯かせてただ肩を振るわせる。
そんなキャスターの様子など気にも止めず、男はフードを頭から外し、キャスターのそれも同様に外す。
途端、男の顔に喜色が浮かぶ。

「ほうほう」

無遠慮に足の爪先から頭のてっぺんまでじっくりと視線を飛ばす男に、キャスターは僅かに後ろ退る。
そんなキャスターを逃がすまいとばかりに、その肩に手を置くとそのまま床へと押し倒す。

「な、何を…」

驚くキャスターの目に飛び込んで来たのは、自身のマスターとなったはずの好色に満ちた顔だった。
それを見て必死に暴れるキャスターだったが、男はそれを両腕で押さえ込む。

「力は最弱のキャスターでも、長いこと押さえつけるのは疲れるな。
 他のサーヴァントでは押さえつけることもできんかったかもな。
 忌々しいことじゃが、今は逆に感謝せねばな。ほれ、あまり暴れるなよ。
 何、大人しくしていれば、痛くはせん。もし、あまり逆らうようなら…」

そう言って男は掌をキャスターへと見せる。
そこには、おかしな紋様のようなものが浮かびあがっていた。
それを見せられ、急に大人しくなったキャスターにいやらしい笑みを貼り付けたまま、
男はその手をキャスターの胸元へと伸ばしていく。
それを虚ろな目で見るともなしに眺めつつ、キャスターは視線を天井へと移す。
それから、そっと手を男の背を回す。
男はそれに機嫌を良くしたのか、顔を首筋へと埋めようとして、その顔が驚愕に変わる。
見れば、男の背中へと回されたキャスターの手には、
まるで稲妻を象ったような変わった形をしたナイフが握られており、その刃先が男の背中に刺さっていたからだ。

「き、貴様……」

呻くと男は突き飛ばすようにしてキャスターから離れる。

「こうなれば、この令呪で……、なっ!」

切り札らしい掌の紋様を向けるが、すぐに驚きの言葉が口から飛び出す。
男は見間違いかとばかりに何度も掌を見るが、そこにはさっきまであったはずの紋様が消えていた。
驚きで見開いた目をキャスターへと向ければ、そこには冷ややかな視線で男を見下だし、
嘲笑を浮かべているキャスターの姿があった。

「不思議に思わなかったのかしら? ナイフで刺されたのに血が出ていないことに。
 まあ、良いわ。詳しい説明は無意味だもの。とりあえず、一つだけ教えてあげる。
 貴方はもう、私のマスターではないという事よ」

「馬鹿な! マスターなしでお前が現世に留まれるのは、せいぜいが一日だぞ。
 それでも良いのかっ!」

「構わないわ。別に、特に叶えたい願いも……、ないもの」

何か思い出し掛けたのだが、それを首を振って追い払うとキャスターはそう言い放つ。
それから冷たい瞳を再び男へと向けると、静かに手を上げる。

「貴方みたいなのと組んでいたら。勝てるものも勝てなくなるわ。
 それじゃあ、さようなら」

「ま、まっ……」

男が制止の言葉を口にするよりも早く、キャスターの魔術が放たれる。
壁に激突して倒れた男は苦悶の顔を浮かべ、そのまま倒れる。
キャスターはそれを何の感情も篭もらない瞳で見下ろすと、静かに手を翳す。
途端、男の口からは悲鳴にも似た声が、身体には無数の切り傷が生まれて血の花を咲かせる。
それを避けるでもなく返り血が付くのも構わず、キャスターはただ静かにその場で男を見下ろす。
やがて、男が事切れたのを見届けると、静かに部屋を後にする。
キャスターが扉を閉めると、さっきの魔術の衝撃の所為か、緩んでいたランプが床へと落ち、
静かに男の衣服を、身体を焼いていく。
外へと出たキャスターは、先ほどの魔術の行使で使った魔力の所為か、息も荒くふらつく足で夜の町を歩く。
願いなどないのだから、このまま消え去っても構わないと思う反面、何処かで消えることに恐怖を感じ、
足があてもないのに勝手に動き回る。
しかし、徐々に足も腕も身体さえもが重くなっていき、
とうとう人気のない山のような場所で、キャスターはその身を横たえる。
このまま消えても構わない、何もないのだからと思っていたくせに、いざ消えるとなると恐怖を感じる。
そんな自分に嘲笑しつつ、キャスターは静かに目を閉じるのだった。







ふわぁぁ〜、暇なような忙しいような……。

美姫 「それってどっちなのよ」

どっちなんだろうな〜。

美姫 「って、単にだらけているだけじゃない!」

そうともいう〜。

美姫 「っ! そんな時はこれよ!」

お、おお! これは。

美姫 「そうPAINWESTというサイトよ。色んなSSが読めるわよ」

おおう! 投稿作家さんも一杯で面白いな〜。

美姫 「まあ、欠点はここの管理人の一人であり、SSを書いている氷瀬って奴の作品よね〜」

何でだろう。関係ない人のはずなのに、涙が……。

美姫 「それ以外は、とても面白いわよ」

本当だ。これなら、暇しなくて良いね。

美姫 「PAINWESTは、勝手気ままに気の向くままに更新中!」

油断していると、いつの間にか更新しているかも?







神社へと続く階段を駆け上っていた恭也は、不意に足を止めると階段脇の茂みへと足を踏み入れと、
そのまま奥へと入って行く。

(こっちの方から呻き声が聞こえたような…)

恭也は周囲を見渡しながら奥へと進んで行く。
既に階段が見えなくなるまで進んだ恭也は、気のせいかと感じて元来た道へと引き返そうとして、
またしても小さな声を聞く。
気のせいではないと感じた恭也は、声の聞こえた方へと向かう。
そして、そこに倒れている一人の女性を見つける。

「大丈夫ですか」

恭也は女性の元へと駆け寄ると、その身体に外傷がないかざっと見る。
身体からかなりの量の血が出ている事に気付き、急いで手当てしようとして伸ばした手を止め、
ようく女の身体を見る。
どうも、それらは傷付いて流れ出たものではなく、返り血のようであった。
恭也は一瞬何があったのかと周りを見渡すが、周囲にはこの女性以外の姿は見られない。
苦悶の表情を見せる女性の顔を見て、恭也はとりあえず病院へ連れて行こうと女性をそっと抱き上げる。
その衝動で目を覚ましたのか、女性が薄っすらと目を開ける。
目があった二人は思わず動きを止め、相手の瞳をただ見詰める。
まるで吸い込まれそうな錯覚を二人ともに覚え、慌てて目を離す。
さきに口を開いたのは恭也だった。

「すいません。近くの病院へと運びますので、少し我慢してください」

「…病院? いらないわ。別に病気という訳ではないから」

恭也の言葉に女性、キャスターはにべもなく告げる。
それでも食い下がろうとする恭也を真っ直ぐに見詰め、キャスターは静かなしかししっかりとした声で告げる。

「とりあえず、降ろしてもらえるかしら」

「…分かりました」

まだ納得した訳ではないが、恭也はキャスターを地面へと降ろす。
その時になって、キャスターは自分が返り血を浴びている事に気付く。

「返り血を浴びている私を見て、よく平然としてるわね」

「平然とはしてませんけれどね。
 ただ、それよりも貴女が弱っているみたいだったので、先にそっちを何とかしようかと」

「ふーん」

興味なさそうに呟くと、キャスターは空を見上げる。
徐々に現世に留まるのがきつくなっているのを感じて静かに目を閉じるが、
恭也の目にはそれが違う風に見え、思わず声を上げる。

「やはり病院に」

「本当に大丈夫よ。だって、私は人ではないから」

どんな反応を見せるかという興味も手伝い横目で様子を窺うが、大した反応もなく、
その場合は何処に行けば良いのかと考えていた。

「…神咲さんか、やはり」

ぶつぶつとぼやく声を聞きつつ、キャスターはいよいよ最後が近づいてきている事を感じる。
その横で、出会ったばかりだというのに、この青年は自分の事のようにキャスターを気にして声を掛けてくる。
ふと、そんな恭也の様子を眺めているうちに、キャスターの胸にちょっとした思いが出てくる。
普通なら、こんな考えなど浮かびもしなかったかもしれないであろう考えが。
そして、それをゆっくりと口にする。

「誰が診たって同じよ。原因は現世に留まるための魔力不足だもの。
 でも、一つだけ助かる方法があるわ」

か細い声から出た言葉に、恭也は耳を近づけてその方法を聞き逃すまいとする。
そんな恭也の耳元へと、キャスターはどこか楽しささえ含んだ声音でそっと囁く。

「貴方が私を抱けばね」

その言葉に恭也はからかわれていると思い黙り込むが、
目の前の本人は至って本気の様子で嘘を吐いているようには見えなかった。
それでも躊躇う恭也に、キャスターは言葉を続ける。

「ただし、私を抱くという事は契約を交わすという事。
 貴方が望む望まないに関わらず、貴方の知らない世界へと引き込まれる事になるわよ。
 だから、今あった事は忘れて、この場を立ち去っても構わないわよ」

そう言って汗が浮かぶ顔に僅かながらも笑みを浮かべてみせる。
その目はあくまでも、恭也がどう行動するかという点に興味がいっており、
例えこの場から立ち去ったとしても、それはそういう結末だったと納得するような穏やかなものだった。
かなりの逡巡の後、恭也は恐る恐るといった感じで口を開く。

「本当にそれしかないのか? それで貴方は良いんですか? 
 俺じゃなくて、近くに恋人とかが居るのなら、すぐに呼んできますけれど」

「…残念だけれど、そんな人はいないわ。私はいつだってずっと一人よ。
 ごめんなさい、もうそろそろ限界みたいなの」

言うキャスターの身体が微かに薄らぐ。
それを見て恭也は覚悟を決めたのか、ゆっくりと手を伸ばしてキャスターをそっと抱き上げるのだった。



つづく……?







って、なんじゃこりゃ〜!

美姫 「うんうん。テレビっぽい演出でしょう。途中でCMも挟んでたし」

いや、これ自体がCMじゃなかったのかよ。

美姫 「本当は、あそこでアイキャッチを入れたかったんだけれど、文章じゃ無理だしね〜」

おーい、聞いてますか〜?

美姫 「さて、第二話はどんなお話かしら?」

って、続くのかよ!
と言うか、これって絶対にSS1本分あるよな、な。

美姫 「さてさて、来週はどうなるのかな〜」

って、人の話を聞けー!
今回は4位だった奴の冒頭だけでもって事で、書いただけだぞ〜。

美姫 「分かってるわよ。冗談よ、冗談」

目がマジだったぞ。

美姫 「うふ♪」

笑って誤魔化すなー!

美姫 「まあまあ。冗談って言ってるでしょう」

はぁ〜。驚くぞ、普通は。

美姫 「まあ、気を取り直して…」

取り直したところで、時間だな。

美姫 「…仕方ないわね。それじゃあ、また来週ね〜」

ではでは。


1月6日(金)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜。

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナを一部乗っ取りお送りしています>



新年、あけましておめでとうございます。

美姫 「って、いつまで言ってるのよ!」

ぐげっ! ちょ、ちょっとした冗談じゃないか……。

美姫 「どこがよ! そのだらけ切った態度のどこが!」

だら〜。

美姫 「しゃきっとするのと、私にめった刺しにされるのと、どっちが良い」

起きましたです、マム!

美姫 「始めからそうしてなさいよね」

イエスマム!

美姫 「さて、それじゃあ、早速、今回は前回予告していた結果発表よ!」

総トータル500通以上の募集ありがとうございます。
集計は大変でしたが……。

美姫 「まあ、そこは地道にやって頂戴」

まあ、それは置いておいて、中々面白い結果が出てるぞ。

美姫 「そうなの?」

ああ。まず、第一候補の所だけを見てみると……。

美姫 「えっと、まずは8位から」

8位は、やはり元ネタが古いのかいまいち反応がなかったのか!?
『Heart's bell 〜緋昏し永遠の彼方〜』

美姫 「まあ、二桁にもいってなかったものね」

まあ、仕方がないな。
さて、次は7位の発表だ!

美姫 「7位は、やはり元ネタを知っている人が少なかったのか、『HAYATE CROSS HEARTBLADE』よ」

それでも、そこそこの人から投票があったけれどな。

美姫 「浩的にはちょっと驚きだったり?」

どうかな。個人的には書いてみたいんだが。

美姫 「さて、それじゃあ次は6位の発表よ」

6位は、『火魅子トライアングル』
意外にもここでこれが出てきたと言うべきか?

美姫 「それとも、予想通りかしら?」

さて、次は5位の発表。
何と、6位と倍とまではいかないものの、それに近い差を付けたぞ〜。

美姫 「5位は『海鳴のシャナ』〜」

さて、時間も少なくなってきたし、さっさと行くぞ〜。

美姫 「次は4位よ」

4位は『海鳴極上生徒会』だ〜。

美姫 「後半の伸びは一番だったわね」

ああ、確かに。さて、いよいよ次はベスト3の発表〜。

美姫 「2位と3位は僅か数票差!」

ここは一気に行くぞ〜。
3位…………『Fate/Triangle night』

美姫 「そして、2位は『ラブとら 〜ひなた荘の住人たち〜』よ」

いや、正直Fateがここまで来るとは思ってませんでした。

美姫 「何せ、この候補の中で唯一、何のストーリーもなかったものね」

うんうん。改めてFateの凄さを実感してしまった。

美姫 「2位も多かったわね。既に連載も終わって結構経つけれど」

ああ、確かに。
お寄せ頂いた意見の中に、とらハとのクロスは知らないので、と言うのが多かったのもこの作品。
いやー、ドタバタとした話になりそうだな。

美姫 「で、1位は言うまでもなく残ったあの作品…」

ずばり『魔法剣士リリカル恭也&なのは!?』
3桁を越える人からの投票が。

美姫 「やっぱり、テレビ版のリリカルで恭也が活躍しなかったっていうのが大きいのかしら?」

どうだろう?
と、まあ、第一候補だけを見れば、以上の結果ですが……。

美姫 「そう! ここで第二候補のポイントが加算されるのよね」

その通り! この第一候補の獲得総数は、一票6ポイントに変換されてポイントに。
そこに、第二候補のポイントが加わると……。

美姫 「これより、正真正銘ラストバトルの結果発表〜」

パフパフドンドンドン〜!

美姫 「泣いても笑ってもこれが最後の決定よ♪」

それじゃあ、発表〜。って、ええっ!

美姫 「自分一人で驚いているんじゃないわよ!
    って、ああっ!」

とりあえず、結果発表だ!
まずは、第8位……。

美姫 「ドキドキ」

ずばり、第8位は、『Heart's bell 〜緋昏し永遠の彼方〜』

美姫 「やっぱり、最初の出遅れが効いたのか!?」

まあ、その後もちょくちょくと1ポイントとかを取っていたけれど、結局は届かずでした。

美姫 「まあ、仕方ないわね。敗者は去るのみ。さて、次よ!」

続きまして〜、第7位は……『HAYATE CROSS HEARTBLADE』

美姫 「こちらも変わらず」

でも、第二候補では怒涛の如くポイントを加算。
当初は8位とそんなに差がなかったのに、一時は6位にまでなったんだけれど。
後半で失墜。終わってみれば8位とは差を開けたものの、7位に。

美姫 「それじゃあ、気を取り直して、6位の発表…と、その前に」

はい、CMです!







小さい頃から剣の修行に明け暮れていた恭也くん。
そんな恭也くんは世間一般の常識には疎かったのです。
これは、そんな恭也くんが街へとやって来る所から始まる物語。



「さあ、着いたぞ恭也! ここが今日から俺たちの新しい家だ」

「家? 父さん、これを支えているロープは何処にあるの?
 それに、入り口らしいファスナーも見えないし…」

まだ小学生に上るかどうかといった年の男の子、恭也が自分の父を見上げながら首を傾げる。
士郎は溜め息を一つ吐くと恭也と目線を合わせるように屈みこみ、その肩にそっと手を置く。

「いいか、恭也。これが家と言うやつだ。
 お前が言っているのはテントと言って、家ではないんだよ」

「…うん、分かった。あれはテント。これが家」

「そうだ。さて、とりあえず、俺は荷物を運ぶから、お前はこの辺で遊んでろ。
 だけど、あまり遠くには行くなよ」

「うん、分かった。この周辺に怪しい人物が居ないか確認してくれば良いんだね。
 後は罠を仕掛けて」

言って歩き出そうとした恭也の腕を士郎は慌てて掴んで止めると、
先程と同じような態勢になり、言い聞かせるようにゆっくりと言う。

「良いか、恭也。ここではそんな事はしなくて良いんだ」

「でも、今遊んで来いって。
 それって、この辺にまたあの時みたいに怪しい人が居るからなんじゃ」

「あー、確かにあの時は遊んでやれと言ったが……。
 良いか、恭也。あれは決して遊びというんじゃないんだ」

「じゃあ、父さんは嘘を吐いたの」

「すまん。実はそうなる」

「もう、これだから大人は」

「…まあ、色々と言いたい事もあるが、何処でそんな言葉を」

「お婆ちゃんが前に言ってた」

「……そうか。と、とりあえず、普通にこの辺を散歩して来い」

「うん、分かった」

頷いて歩き始める恭也の背中を見詰め、士郎は不安に駆られて空を見上げる。

(あいつ、本当に普通の生活に慣れるのか…。
 いやいや、その為に修行の旅を中断して街に住む事にしたんだ。
 まだこれからだ。うん、うん)

再び顔を戻して何度も頷くと、士郎は詰まれた荷物を家へと運び入れる作業に戻るのだった。

こうして、恭也くんの街での生活が幕を開ける。

きょうやと! 第一話「きょうやとおひっこし!」 近日XX







第6位は『火魅子トライアングル』です!

美姫 「って、何をいきなり発表してるのよ!」

ぐげっ!

美姫 「CMあけてすぐに、それも何も間に置かずにいきなり発表するな!」

う、うぅぅ、すまん……。
でも、やっちまったもんは仕方ないだろう。

美姫 「開き直るな!」

ぐぅっ!

美姫 「ほら、次行くわよ、次!」

う、うぅぅ。

美姫 「第5位は…………」

何と、一気にここまで落ちるとは!?
一体、誰が予想した!
『ラブとら 〜ひなた荘の住人たち〜』が第5位だ!

美姫 「これには私も驚いたわ」

ああ。第二候補の伸びが思ったよりもなかった。
平均的に票は入っていたんだけれどな。

美姫 「それでも、6位との差は結構あるのよね」

ああ。と言うか、2位から5位って殆ど差がないんだよな。

美姫 「あ、本当ね」

だから、僅差で5位へと転落してしまったと言うわけさ。

美姫 「成るほどね〜」

さて、それじゃあ、第4位だ!

美姫 「ずばり、第4位は?」

これまた意外、『Fate/Triangle night』が第4位!

美姫 「これまた落ちたわね」

まあ、第一の方でも下との差が一桁だったからな。
第二でも異様な程票を取ったんだが、後半になると止まった。
後、前半で少なかったのが効いたかな。

美姫 「なるほどね〜。本当に勝負って最後まで分からないわね」

ああ、本当に。

美姫 「さて、それじゃあ、いよいよベスト3ね」

ああ、そうなるな。

美姫 「ここで呼ばれなかった作品二つが長編化」

のはずだったんだが……。

美姫 「何よ、今更一位のみ長編化とか言うんじゃないでしょうね」

ああ、出来ればそうしたいな〜。

美姫 「却下!」

はやっ!

美姫 「当たり前でしょう。最初から2位までって約束なんだから」

うぅぅ。だって、だって〜。

美姫 「ぐだぐだ言ってないで、さっさと発表しなさい。
    と言うより、私がやってあげるわよ!」

うわっ! と、取るなよ〜。

美姫 「第3位は……。って、何よこれ!」

だから言っただろう。

美姫 「言ったって、アンタ、何で3位がないのよ」

って、そこしか見てないのかよ!
よく見ろ! 2位が二つあるだろうが!

美姫 「あ、本当だ」

うぅぅ、何でこんな結果に……。

美姫 「とりあえず、発表するわよ」

ああ。

美姫 「第2位は、『海鳴のシャナ』と『海鳴極上生徒会』です」

どっちを書けば良いんだよ〜(泣)

美姫 「いや、どっちも2位なんだから、両方じゃないの?」

……無理じゃー!

美姫 「はいはい。それは後で言ってね。えーっと、ああ、第一では元々そんなに差はなかったのね」

おう。ただ、最初から最後まで安定したポイントが入ってきていた。
後、1ポイントとかだけれど、ついでみたいな感じで入っているポイントがこの二作品にはあって。

美姫 「それらが積もり積もったって訳ね」

ああ。第二ではシャナの方が少し多くて、第一と合計したら同ポイントになったという訳だ。

美姫 「あらら」

シクシク。本当に予想外の出来事だよ。
はっ! そうだ、作者権限で1ポイントだけ。

美姫 「却下!」

な、何でだよ〜。誰も5ポイントくれなんて言ってないだろう。
1ポイントで良いんだよ〜。

美姫 「まあ、そこまで言うなら上げても良いけれど、その場合って勿論、私にも貰えるのよね」

……シクシク。

美姫 「何よ、いきなり泣き出して」

だって、お前がポイント持ったら、俺が入れたのと逆のに入れるだろう。

美姫 「ううん、そんな事しないわよ」

本当か!?

美姫 「ええ。だって私のポイントは無限だもの。
    全部にいれて、同ポイント1位が8作品に…」

それこそ却下じゃっ!

美姫 「え〜」

え〜、じゃない! って、何でそんなに残念そうなんだよ!
本気でやろうとしたな!

美姫 「……そんな事ないわよ」

目を背けながら言われたら、信用できね〜。

美姫 「ほら、それよりも1位の発表しなさいよね」

もう別に良いような気もするが…。

美姫 「それは言ったら駄目よ」

コホン。それじゃあ、改めて栄えある第1位の発表です。
第1位は、CMの後で〜♪

美姫 「って、そんな所でひいても仕方ないでしょうが!」

がぁぁぁぁっ!

美姫 「ったく、もう一度CMを挟むのなら、3位発表の時にしなさいよね」

う……うぅぅ。

美姫 「さて、第1位は『魔法剣士リリカル恭也&なのは!?』です」

こ、これは、第一でも第二でも1位の座を譲らずでした。

美姫 「だから当然、総合でも1位になるわよね」

第一、第二とも最初から最後まで高いポイントを取り続けたのが勝利へと繋がったな。

美姫 「2位ともかなりの差をつけての1位」

やはり、強かったか。

美姫 「という事で、無事に長編化するSSも決まり…」

いや、だからね!
2位が二つあるでしょう!

美姫 「……頑張れ♪」

そんな笑顔で…。

美姫 「何とかなるわよ。……多分」

う、うぅぅぅ。

美姫 「とりあえず、マリとら2ndが終わるまでは書き始めないんだし」

そうなんだけれどよ〜。

美姫 「まあ、何とかなるわよ」

なるのか、本当に……(涙)

美姫 「なんなら、八つ全てを書いても良いのよ」

それじゃあ、苦労して集計した意味までなくなるじゃないか!(涙)

美姫 「あ、本当ね。うふふ♪」

お、鬼じゃ、本当の鬼がおりおる……。

美姫 「分かったわよ。それじゃあ、第2位だけもう一回決戦って事でどう?」

おお! それはありがたいですです。
でも、どうやって決めると?

美姫 「簡単よ。Kに判断してもらう」

それはまた、しょぼい結末と言うか…。

美姫 「もしくは、アンタとKがじゃんけんして、アンタが勝てば何、Kが勝てば何って感じで」

あ、それは面白いかも。

美姫 「でしょう。残念なのは、実況中継が出来ないって事なのよね〜」

って、よく考えれば、その方法だとすぐに決まらないぞ?

美姫 「……確かに。えっと、それじゃあ、サイコロを転がして奇数か偶数かで決める」

それで行こう!
一発勝負、恨みっこなし!

美姫 「それじゃあ、奇数なら生徒会、偶数ならシャナね」

おうさ!
……って俺が振るんだよな。
さて、何が出るかな? 何が出るかな?
(本当に振ってます)

5! 奇数だから、生徒会だな!

美姫 「おめでと〜。これで、第2位は『海鳴極上生徒』、第3位は『海鳴のシャナ』ね」

うぅ、最後はこんな方法ですいませんです。

美姫 「無事、長編化が決まったのはリリカルと生徒会です」

さて、頑張るぞ!

美姫 「そして、中編になるのがシャナ」

……はい!?

美姫 「えっ!? 聞こえなかったの? だから…」

聞こえたわっ!
何だ中編って。結局、書くのかよ!

美姫 「誰も書かなくても良いなんて言ってないわよ」

いや、そうだけれどもよ。

美姫 「ってな訳で、頑張ってね♪」

うわぁぁ〜〜ん。
騙されたよ〜。

美姫 「それじゃあ、また来週〜♪」


1月4日(水)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜。

美姫 「新年特大号、はっじまるよ〜」

って、まてぇい!

<2006年も、PAINWESTの提供でお送りします>



新年、あけましておめでとうございます。

美姫 「おめでと〜」

こうして無事に新年を迎えることができて、良かった良かった。

美姫 「去年は色々と大変だったもんね」

うんうん。とりあえず、今年も宜しくお願いします。

美姫 「お願いします〜」

さて、本格的に新年の活動を開始する訳だが。

美姫 「とりあえずマリとら2ndの完結と新長編の開始ね」

だな。アンケートの結果は……。

美姫 「まだ、30、31日分の集計が出来ていないわね」

ああ。まあ、次回の放送までには結果も出るだろう。

美姫 「因みに、今の所どれが優勢なの」

それは秘密〜。
ただ、意外と言うか。
第一候補と違うのを第二候補で入れる人が多くて、第一候補ではそこそこだったのが、
第二候補のポイントではかなり取得していたり、と中々面白いぞ。

美姫 「う〜ん、一体、どんな結果が待っているのかしら」

それは次回でのお楽しみだな。

美姫 「それじゃあ、とりあえずはCMに行きましょうか」

おう!

美姫 「それじゃあ、今年一発目のCM〜」







それは一月一日元日の事だった。
ここ高町家で行われている新年会は、友人たちも集いそれなりの人数のもと進んでいた。

「さ〜て、そろそろ頃合も良いかしら」

突然、忍がそう声を上げると、なのはが何やらごそごそと準備を始める。
桃子はこれから何が始まるのかと楽しそうな笑みを浮かべて見守る。
ようやくなのはの準備が整った所で、忍が部屋の電気を消す。
いつの間にかノエルによってカーテンがされており、部屋が薄暗くなる。
そんな中、なのはが手元のスイッチを押すとどこからともなくスポットライトが忍へと降りる。
これまたいつの間にか存在した大きく真っ白なスクリーンの前に立ち、
マイクを手にした忍がライトを浴びて深くお辞儀をする。

「え〜、本日はお集まりいただきありがとうございます。
 早速ですが、たった今から上映会を行いたいと思います。
 これは桃子さんの為に、私となのはちゃんとで編集、監督をしました」

その言葉に桃子は楽しそうにじっと忍の言葉を聞き、恭也たちは嫌そうな顔を見せる。
それぞれに違う反応を見せる面々を見渡すと、忍は話を進める。

「出演は、ここに居るメンバーに加え、G組の面々、その他各クラブを恭也の写真で買収……。
 もとい、協力の元、こうして完成しました」

「ちょっと待て、忍! 今、すごく不穏な発言を聞いた気がするんだが…」

「あははは〜。気のせいよ、気のせい。
 えっと、とりあえず、そんな感じで出来上がった作品の上映会です。楽しんでくださいね、桃子さん。
 それじゃあ、なのはちゃん、スタート」

恭也に何か追求する隙を与えず、忍はさっさと話を纏めてなのはへと合図を送る。
それを受けて何やら手元の機械を操作するなのは。
程なくして、真っ白なスクリーンへと映像が流れ始めるのだった。



煙が幾つも立ち昇る真っ暗な空。
まるで何かに覆われているかのような空の下、駅と思しき場所に今しも列車が入ってくる。
人が一斉に駅より吐き出されると、それを待っていたのか手に籠を持った一人の少女がその群れへと近づく。

「お花はいりませんか? 綺麗ですよ」

少女が差し出す花を無視し、人々は足早に立ち去っていく。
やがて、そこには少女以外の姿がなくなり、少女はそっと溜め息を吐く。
が、よく見れば、いつの間に居たのか、もしくは最初から居たのか、
駅へと続く階段の途中に一人の男が倒れていた。
少女は男へと近づくと、そっと声を掛けた……。

そこで画面が二人から徐々に遠ざかって行き、街を見下ろすようにカメラアングルが変わる。
同時に、画面の下に次々と文字が現れては消えてゆく。

クラウ:高町 恭也
ティナ:月村 忍
エリス:神咲 那美
セフィロ:高町 美由希

白文字で流れるソレは出演者の名前なのだろうか、一通り流れると最後にタイトルが現れる。

Final HeartZ

そのタイトルロゴが数秒間画面に表示されると、徐々にブラックアウトしていき、再び物語が始まる。
それを静かに桃子は眺めるのだった。



「ああ〜、面白かったわ忍ちゃん」

上映が終わるなり、桃子は満足そうな顔で忍に話し掛ける。
その一方で、恭也は恥ずかしそうな表情を、那美や美由希は不機嫌そうな顔を見せていた。

「どうして、監督である忍さんまで出てるんですか。
 それもヒロイン役で〜。うぅぅ〜、最後のあの抱擁シーンだけは許せません」

「那美さんなんてまだ良いですよ〜。前半では恭ちゃんと良い絡みのシーンがあるじゃないですか。
 私なんて、最初から最後まで戦っているだけですよ……」

「まあまあ、二人とも落ち込まない、落ち込まない。
 それに、最後のシーンは本当はラブシーンにしたかったのに、皆が反対するからああなったんだし。
 ほら、私だって我慢してるでしょう」

「どこがですか!? だったら、私と変わってくれても良いじゃないですか」

「だって、それはね〜。あ、あははは。まあ、次回は考えておいてあげるわよ」

『次回!?』

忍の言葉に何ヶ所から声が上がり、忍は引き攣った笑みを浮かべて誤魔化す。
そんな忍へと恭也が恨めしそうな視線を飛ばす。

「断っておくが、俺はもう参加しないからな」

「そんな〜。折角だから、またしようよ〜」

「断る」

この押し問答を見ていた他の女性陣からも忍を援護する声が上がるのだった。
それに辟易しながら、恭也はそっと溜め息を漏らすと、胸中でそっと呟く。

(今年は静かに過ごせますように)

その真摯なまでの願いが叶うのかどうかは、まさに神のみぞ知るところである。







さて、今年はどんな年のなるのかな。

美姫 「とりあえず、今年は去年よりもいっぱい書いてもらわないとね」

が、頑張ります。

美姫 「にしても、着物って結構きついのよね」

そうなのか?
まあ、見る分にはしいだけなんだがな。

美姫 「はぁー、ちょっと暴れ難いと言うか」

暴れるの前提かよ!
まあまあ、折角綺麗におめかしをしてるんだから、今日ぐらいは大人しく…。

美姫 「まあ、そこまで言われたら、少しぐらいは大人しくしておいてあげるわ」

うんうん。せめて、今年一発目ぐらいは健やかに終わりたいしな。

美姫 「一言多いのよ、アンタは」

まあまあ。えっと、とりあえず、今年も頑張るぞ〜!

美姫 「私も頑張るわよ〜」

…えっと、その辺はお手柔らかにお願いします。
それはもう、切実なまでに。

美姫 「クスクス。それはアンタ次第よ♪」

うぅぅ。今年一年、無事に過ごせますように…。

美姫 「それじゃあ、また次回でね〜」

ではでは。










          



SSのトップへ