2007年11月〜12月

12月28日(金)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、良いお年を、とお届け中!>



とうとう、今年最後の雑記だな。

美姫 「本当に今年も色々あったわね」

叩かれて、殴られて……。

美姫 「叩いて、殴って、蹴っ飛ばして……」

刺されて、突かれて……。

美姫 「刺して、突いて、切り刻んで……」

吹き飛ばされて、燃やされて……。

美姫 「吹き飛ばして、燃やして、凍らせて……」

血反吐に塗れ、虐げられた一年だった。

美姫 「散々可愛がって、愛を注いだ一年だったわ」

……いやいやいや、最後可笑しいだろう!

美姫 「え、嘘!?」

いや、本気で驚くなよ!

美姫 「そう言えば、記念すべき100回放送を祝ったのは今年の初めだったわね」

そう言えば、そうだったな。
いやー、あれから約一年か〜。突っ走ったな。

美姫 「全然よ! 遅すぎるわ! 来年はもっと、もっとがむしゃらに走って!」

うー、あー、頑張る。しかし、今年は本当に色々あったな。
お陰様で、リレー掲示板が盛況になったり。

美姫 「新しく投稿してくれる方々が増えたりね」

だな。改めて、この場で皆さんにお礼を。

美姫 「どうもありがとうございます」

そして、来年もよろしくお願いします。

美姫 「まだまだ突っ走るわよ! もとい、走らせるわよ! 馬車馬のごとく!」

ヒヒーン! 行くぜ、目指すぜ!
って、扱い酷いよ!

美姫 「さて、とりあえずはお休みのご報告ね」

だな。とりあえず、明日は多分更新する……かも。
30日から6日ぐらいは更新が止まると思います。

美姫 「4日は更新しなさいよ」

いやいや、休ませろよ。

美姫 「却下♪」

そんな良い笑顔で言われても……って、金曜日だからか!

美姫 「正解〜♪」

あー、どうなるか分からん。

美姫 「ぶ〜、ぶ〜」

と、とりあえず、本格的な始動は7日の予定ですので。

美姫 「ひっどーい、私を無視するんだ」

あ、いや、そんなつもりはないよ。

美姫 「折角、今年最後だから殴らないでいてあげようと思ったのに」

あはははは。本当はそれが普通だと思うな〜。

美姫 「はいはい。アンタの意見はいつだって自動的に却下なのよ」

オウ! 最後の最後まで容赦ないですね。

美姫 「とりあえず、今年最後のCMよー!」

って、今度は俺が無視されるのかよ!







春には綺麗な花を咲かせて、そこを通るものを楽しませた桜並木も、冬の今とあっては葉すら付いていない。
そんな桜並木の真ん中で、一人の少女がこれから通うことになる学院へと想いを馳せる。
これからどんな出会いが待っているんだろう。仲の良い友達が出来るかな。
そんな期待を胸に秘め、少女は見上げていた枝から目を離し――、
とそんな綺麗な想いとは遠く、その瞳は疲れを滲ませ、顔は正にげんなりといった様である。

「はぁぁ、何で俺が……」

「修史さん、口調、口調」

「あ、すみません、不破さん」

「いえ。あー、その制服、似合ってますよ」

修史と呼ばれた少女へと、恭也は気を使うようにそう口にするが、それを聞いた修史はがっくりと肩を落とす。

「男なのに、そんな事を言われても嬉しくないです……。
 どうして、恭也さんは男のままなのに、俺だけ女装なんだぁぁ!」

思わず叫ぶ修史であったが、それも無理はないだろうなと恭也は数日前のやり取りを思い返す。



新しい任務が課長から修史へと告げられる。
場所は護り屋としての裏の顔を持つアイギス、その特殊要人護衛課での事であった。
任務の言葉に思わず身構えそうになったのは、前回の件があるからか。
ともあれ、修史は改めてその任務を聞く事にする。
しかし、課長はその出鼻を挫くように、まずは紹介したい人物がいると言って一人の青年を招きいれたのだ。
その青年こそが、今回一緒の任務に付く事になった、個人で護衛の仕事をしているという恭也であった。
不破恭也と名乗った青年に挨拶をしつつ、修史は課長に視線だけでどういう事かを尋ねる。

「彼はその筋ではかなり有名な凄腕のボディガードだよ。
 実際、我が社が何度もスカウトしようと声を掛け続けているぐらいのね」

「それで、その恭也さんと一緒に護衛という事ですか」

「そうだ。今回はかなり複雑な事情になっているんだ」

部外者が居るからか、いつになく真面目な表情と口調で課長は一枚の書類を修史へと差し出す。
受け取りそれに目を走らせる。
まずは護衛対象の写真を見る。
シックな黒い制服に身を包んだ綺麗な女性。
思わず修史が見惚れてしまうのも無理はないだろう。
だが、詠み進めていくうちにその顔に驚愕の表情が見え始める。

「本名、鏑木……って、あの鏑木ですか。って、嫡男って事は男!?
 え、でも、通っているのは……、え、課長、またからかっているんですか!
 しかも、今度は部外者の人まで巻き込んで」

「え〜、その言い草は酷いんじゃない? 至って真面目なのに」

疑わしげに見てくる修史に、課長は肩を竦めると恭也に説明をしてくれるように頼む。

「護衛対象は鏑木瑞穂。あの鏑木財閥の嫡男で間違いない。
 ただし、彼は祖父の残した遺言によって、三年生としての一年間を女装して、
 聖應女学院へと通わなければならなくなったんだ。学院での名は宮小路瑞穂だ。
 詳しくは下の方に書いてあると思うが、先日聖應の敷地内で誘拐未遂が起こった。
 その時に狙われたのは厳島グループの一人娘だったが、それを瑞穂が助けている」

「つまり、また次があると?」

「可能性はある。どうもそれなりに大きな組織がバックにいるようでな。
 邪魔をした瑞穂と、前回失敗した厳島のお嬢さんを再び狙おうとしているらしい」

「逆恨みも甚だしいですね」

「全くだ。だが、だからこそ、俺たちのような者が居る。
 理不尽な力を振りかざし、闇から表へと出てくる奴らを、再び闇へと戻すためにな」

決して強い口調ではなく、当たり前のように口にした言葉。
しかし、その言葉に何かを感じたのか、修史は強く頷いて恭也を見る。
ほんの僅かだが、恭也という人物の片鱗に触れたような気がし、負けないように自分を奮い立たせる。
そんな修史に恭也は、修史が持っているのはと違う書類を渡す。

「こっちが厳島貴子さんに関する書類だ」

受け取ると、こちらにも写真と簡単なプロフィールが乗っており、それに目を通す。

「今回の任務で気を付けなければならないのは、勿論護衛の事を気付かれない事もそうだが、
 何よりも瑞穂が男だとばれない事だ。
 故に始めは俺の方に依頼が来たんだが、流石に男の俺が女子校に潜入もできないだろう。
 そこでアイギスにも依頼する事にしたらしい」

「それもそうですね。っ!
 ちょ、ちょっと……ま、まさか課長?」

恐る恐る課長へと顔を上げる修史の身体が後ろから不意に掴まれる。

「は、激しくデジャブを感じる状況ですが……」

「ふふふ、ISCO再びだよ」

「い、いやだーーー!」

叫ぶも虚しく、修史は再び山田妙子へとその姿を変えられるのであった。



そんな回想をしていると、ようやく修史――妙子も落ち着いたのか深呼吸を一つして恭也へと振り返る。

「それじゃあ、学園長に挨拶に行きましょう」

「そうだな」

二人は並んで学園へと続く道を歩きながら、小声で会話を続ける。

「そう言えば、恭也さんは瑞穂さんと知り合いなんですよね」

「ああ。まだ瑞穂が小さい頃から何度か会っている。
 故に楓さん、瑞穂の母親代わりみたいな人だが、その人から連絡が来たんだ。
 だが、女子校では入り込むのに教師や用務員、教育実習生しか方法がなくてな。
 つまり、妙子さんには主に寮や学園の外での護衛をお願いしたい」

「それは構いませんけれど、そう言えば恭也さんはどういう立場で?」

「とりあえずは校医の手伝いという形だ。その方がある程度は自由に動けるからな」

「了解。それじゃあ、私は出来る限り瑞穂さんの傍に居るように心がけます」

「ああ、頼む」

そこで会話を終わらせ、二人は重厚な扉、学園長室と書かれたその扉をノックするのであった。



こうして、新たな護衛へと付く恭也と修史。
恭也は懐かしい再会を、修史は新たな出会いを経験する事になる。

お姉さまに恋する乙女と守護の剣楯 プロローグ 「山田妙子、再び」







それにしても、何度も言うように一年は早いな。

美姫 「本当よね」

まあ、今更だが年末なんだよな。

美姫 「本当に今更よ。最初にも散々触れてるじゃない」

まあな。しかし、やっぱりしみじみと何度も思うもんだよ。

美姫 「確かに、あと一週間もないのよね」

早いもんだ。はぁぁ。
と、しみじみはこの辺にして、来年の抱負は……まあ、それは来年語ろう。

美姫 「そうね。じゃあ、後は今年にやり残した事ね」

……うおー、いっぱいあるぞ!

美姫 「奇遇ね、私もよ」

ああー、もっと時間が欲しい。

美姫 「ああー、もっと浩に書かせるんだった!」

……まだ甚振りますか。

美姫 「甚振るって……。アンタがさっさと書けば何も問題ないでしょうに」

んっ、んん? そうなのか?

美姫 「とりあえず、明日に十本ぐらい書いちゃいなさいよ」

いや、無理だろう、絶対に。

美姫 「やる前から諦めるなんて!」

いやいやいや。って、最後の最後までこんな感じなのか。

美姫 「人間、そう簡単に変われないわ」

だよな。という訳で、のんびりと更新……ぶべらっ!

美姫 「人間、成せばなるのよ!」

さ、さっきと違いまんがな……。

美姫 「ちっ。来年はもっとビシバシやってやるわ!」

ひぃぃぃっ! 既に恐怖の未来しか見えないんですが!?

美姫 「ともあれ、今週はこの辺にしておきましょう」

だな。今週というか、今年かな。
それでは、今年はこの辺で。一年間、ありがとうございました。

美姫 「また来年に会いましょう」

それでは皆さん……。

美姫 「良いお年を!」

ではでは。


12月21日(金)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、一足先にメリークリスマス、とお送り中!>



サンタさん、サンタさん、今年のクリスマスは平穏な日々をください。

美姫 「良い子じゃないから無理〜。と言うか、どういう意味かしら?」

あ、あは、あはははは。じょ、冗談ですよ。イツモミキトイッショデウレシイナー。

美姫 「凄い片言に聞こえるんだけれど?」

そんな事ない、ない。

美姫 「はぁ、突っ込むのも疲れるわ」

にしても、何とか約束通りに終えたな。

美姫 「そうよね。鞭打ち、引っ叩き、殴り、蹴り、時に投げ、切り刻み、燃やし尽くした甲斐があるわ」

……何気に酷い扱いだったよね。

美姫 「全ては作品のため」

いやいやいや。

美姫 「こうして無事に終わってよかったわね」

スルーしないでくれます?

美姫 「さーて、次はどの長編に掛かるのかしら」

とりあえず、満遍なく更新したい所だな。
色々と止まってしまっているからな。

美姫 「本当に、アンタの遅筆のせいでね」

ぐっ、それを言われると痛い。

美姫 「一層の事、分裂しないかしら。八つぐらいに」

いやいや、そこまで行くともう人じゃないだろう。

美姫 「人のつもりだったの!?」

そこに驚くのかよ!
と、冗談はさておき、今年も後少しだな。

美姫 「残った時間でどれぐらい更新してくれるのか楽しみね」

……二本位かな。

美姫 「少ない! 少なすぎるわ! せめて10は」

おい! 一日一本の計算じゃないか!
無理に決まってるだろう。

美姫 「ケチ〜」

いやいや、そういう問題じゃないだろう。
はぁー、何かどっと疲れた。

美姫 「なら、一休みする意味合いも込めて、CMに行ってみよう♪」







「世界の全てをその手に出来ると言われたら、君ならどうする?」

何の脈絡もなく突然そう切り出したのは、プラチナブロンドを肩口で切りそろえた一人の男性。
身に纏うのは闇と同化しているのかと見間違えるぐらいに黒一色の装い。
白い肌が殊更強調されるも、暗い部屋の中ではそれすらも闇へと消えそうである。
調度品の殆ど見当たらない部屋に立ち、男性は先ほど投げ掛けた問いに関する答えを静かに待つ。
対峙するのは一人の少女。
彼女は訝しげに男を見詰めるも、男はそれ以上は何も語らず、ただじっと少女を見詰める。
少女の答えを待っているのは明らかで、少女は先ほどの質問をもう一度思い返し、
ゆっくりとその問い掛けに関する答えを口にする――

「私は、――――」

少女の小さな音量で語られた答えに男性は小さく笑みを張り付かせると、確認するように静かに口を開く。

「それが君の答えなんだね。なら、始めようか、─―」

男性が少女の名を呼ぶと、少女は一つ頷き返して男性へと近付く。
それを腰を降り、恭しく頭を垂れて迎え入れる男性。
二言三言のやり取りを交わし、部屋は再び静寂と暗闇に包まれる。



「あ、恭ちゃん、あれ何かな、あれ。ああ、あっちのあれも」

それなりに人の流れのある街灯で妙にはしゃいだ声が上がる。
その声に呼ばれた恭也は、多少呆れつつも自分を呼んだ少女、美由希の隣に立ち並び、彼女の指す先を見遣る。

「ふぅ、落ち着け美由希。あれは日本でも売っている普通のホットドッグだろう。
 全く、観光しに来たんじゃないんだぞ」

「そんな事言ったって。
 ずっと剣を握るって訳じゃないんだし、こうして空いた時間に観光するぐらい良いじゃない。
 折角、海外にまで来たのに」

嬉しそうにはしゃぐ美由希へと再び呆れたような視線を投げつつ、口調もやはり投げやりに、

「行く前は散々、受験生の夏を修行で奪うなんて鬼だ、悪魔だと言ってたくせに」

「うっ、だってあれは……。
 それに結局はこうして連れて来られているんだから、少しぐらい楽しんだって良いじゃない」

「ああ、分かった、分かった。とりあえず、俺から離れるなよ」

「そんなに心配しなくても……」

「迷子になること三回。怪しい物を買わされそうになること二回。
 キョロキョロと余所見をして人にぶつかる事……」

「わぁー、わー。も、もう済んだ事じゃない」

行き成り曝露する恭也の口を塞ぐも、日本語であったために周囲には理解できる通行人はいないようである。
その事に胸を撫で下ろしつつ、自分の行動の方こそが衆目を集めていると気付いて赤くなる。
そんな美由希に呆れた顔を見せつつ、恭也は浮かれる美由希に釘を刺すように言う。

「分かっていると思うけれど、別にヨーロッパくんだりまで観光しに来たんじゃないんだぞ」

「分かってるよ。昔の父さんの知り合いの人たちとの手合わせでしょう」

「そうだ。ちゃんと分かっているのなら良い」

「あ、でも、皆の分のお土産はちゃんと買っていかないとね」

「そうだな。そう言えば、忍の奴は確かドイツに行くとか言ってたからな。
 ドイツ以外の土産の方が良いだろうな。と言うか、最終日に買え、最終日に」

「だって、ヨーロッパ中を訪れるんでしょう。
 だったら、それぞれの国でお土産を買いたいじゃない」

「で、それを持ったまま移動するのか?」

「送ればよいじゃない」

あっさりと言う美由希に、何度目かになる呆れの混じった吐息を零す。

「小遣いが持てば良いがな」

「はうっ」

胸を押さえて痛がる振りをして見せる美由希に、恭也は軽く小突くと促して歩き出す。

「馬鹿なことをやってないで、さっさと昼食を取るぞ」

「はーい」

途中で立ち止まって待ってくれている恭也の隣に並び、その手を取る。

「恭ちゃん、あそこにしよう、あそこに」

「分かったから、そんなに慌てるな」

一つの店に引っ張っていく美由希に苦笑を漏らしながら、恭也は引っ張られるままに付いて行くのだった。



「一体何を考えている!?」

「別に何も。そう、全ては流れのままに」

廃墟となった遺跡で恭也と男は対峙する。
恭也の感情を受け流し、男は飄々とした様子でただ両腕を広げる。

「私はただ与える者。それ以上でも、それ以下でもありません」

「与えるだと……。なら、今起きている現象は彼女が望んだと言うのか」

「そうですよ。私はただの傍観者。どのような事態になろうとも、決して舞台に上がる事のない観客です。
 演じるのはあなた方です。さあ、様々な事を知ったあなたは、これからどう演じてくれるのでしょう。
 非常に楽しみですね。それでは、私はこれにて失礼をば」

手を胸の前で折り曲げ、恭しく頭を下げる男の背中に着ているものと同じく黒い翼が姿を見せる。

「HGSか?」

「いいえ、違いますよ。おっと、これ以上の質問に答えるつもりはありません。
 知りたければ、ご自身の力で辿り着いてください。それでは、さようならです。
 此度の演目、如何なる終幕を迎えるのか、じっくりと眺めさせてもらいますよ」

夜空に飛び立ちながら、男はそう高らかに言い残して消えていく。
相手が飛んでは恭也も追いかけて行く事もできず、ただその姿が消えていくのを見詰めるしかなかった。


とらいあんぐるハート年始スペシャル 遠き地よりきたる願い星 20008年スタート







さて、一休みした所で。

美姫 「早速、何か書いてもらおうかしら」

って、いきなりかよ!

美姫 「ようやく完結させたんだから、さっさと他のに取り掛かってもらわないと」

お、鬼……ぶべらっ! ……わ、分かってたよ、こうなる事は。
でも、でもね、やっぱりちゃんと口にしないと思いは伝わらないんだ……ぶべらっ!

美姫 「はいはい、御託はいらないの」

今のは酷すぎません?

美姫 「既に平然としている時点で、酷くも何ともないと思うけれど?」

いやいや、その理屈は可笑しいだろう。

美姫 「はいはい。時間は有限。有意義に使ってよ」

うぅぅぅ。頑張ります……。

美姫 「うんうん、いい返事だわ。これも私の調教……もとい、教育の賜物ね」

今、何気に恐ろしい事を言わなかったか。

美姫 「気にしない、気にしない」

気のせい、じゃなくて気にしないなのかよ!
って、気にするわっ!

美姫 「はいはい」

いや、幾ら何でも強引に流しすぎだぞ!

美姫 「あ、もうこんな時間」

それじゃあ、今週はこの辺で……って、なに反射的に口にしてる俺!?

美姫 「それじゃあ、また来週〜」

って、本当に終わってるし!


12月14日(金)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、もう幾つ寝ると寝正月〜、とお届け中!>



いや、何だかんだでもう12月も半ば。
本当に早いな。

美姫 「本当よね〜。思えば、今年も色々と……って、回想はもう少し後に取っておきましょう」

だな。SSの方も、目処がついて何とか完結できそうだ。

美姫 「出来なかったときは、アンタの頭と身体がさよならするだけよ」

さらりと恐ろしい事を……。

ブリジット「あ、あの〜、そろそろ良いです?」

おおう、そうそう、ゲストが来てたんだった。

ブリジット「忘れていたですかっ!?」

美姫 「本当にどうしようもない奴ね」

いや、冗談だよ、冗談。

ブリジット「その頬に流れる汗は何です?」

あ、厚いからかな〜。

美姫 「まあ、浩を突っつくのは後にして……」

後でやるのかよ!

ブリジット「分かったです」

そこで了承しないの!
まったく、もう。

美姫 「今回に関しては、自業自得だと思うけれど?」

ひ、否定できないな。ま、まあ良いじゃないか。

美姫 「ブリジット本人が言うのなら兎も角、アンタが言う台詞ではないわね」

今年もあと僅かだと言うのに、全く容赦がないですね……。

美姫 「当たり前よ」

ブリジット「それでこそ、美姫さんです」

それ、褒めるとこ?

ブリジット「そうですよ」

……俺の感覚が可笑しいのか!?

美姫 「騒がないで、うるさいわよ」

ブリジット「全くです」

おおう! 二人掛り!?

ブリジット「っとと。忘れる所でした。これ、お土産です」

わ〜い。アインさん、ありがとうございます。

ブリジット「頑張って書かせたです」

……今、不穏な言葉を聞いた気がするんだが。

美姫 「偉いわね、ブリジット」

ブリジット えへへ〜です」

いやいや、そこ褒める所違うから!

美姫 「さ〜て、早速だけれどお土産を公開しちゃいましょう」

ブリジット「はいです」

都合の悪い所は聞こえない振りですかっ!?

美姫 「それじゃあ……」

美姫&ブリジット「CMで〜す」







それはいつもの忍のおかしな実験のはずだった。
危険は伴うが、命の危険まではない、おかしな道具の実験。
いつもどおり、爆発した実験をからかい半分にこき下ろして被った精神的苦痛の代償にする。
そんな騒がしい、しかしいつもどおりの一日になるはずだったのだが……

「きょ、恭也ぁぁぁぁぁぁ!」
「うっ! ぐぅぅぅぅぅぅぅぁああああああっ!」

今日に限ってはそれがいつもどおりではなかった。
忍が調べていたのは中国製と思われる古い銅鏡。
夜の一族としての妙な感が働いたらしく、なにがあってもいいように恭也も立ち会わせたのだが、
さすがに電気を通したとたんに割れ始めるとは思わなかった。
そしてその割れ始めた鏡が光を発し、恭也達を取り込もうとするなど、なお予想だにしていなかったのだ。

「し、忍! くっ!……ノエル! 受け取れ!」
「恭也?……って待って! 何する気!?」
「黙って、ろぉぉぉっ!」

何故か薄れ始めた意識を必死に保つ恭也は、何とか忍の手を掴み、
引き寄せるとそのままノエルのほうへと投げ飛ばした。
たいして重くもない忍は鏡の引力に逆らって光の圏外から手を伸ばそうとしていたノエルへとそのまま飛んでいき、

「恭也ぁぁぁぁぁぁ!!!!」

何とかノエルの腕に収まった時、そこに恭也はいなかった。
しっかりと忍を抱え込んだノエルと、その腕の中の忍が眼にしたのは、砕け散った銅鏡のみだった。

「……そ、そんな……」

自分が妙なものを調べていたばっかりに恭也が光の中に消えてしまった。
そんな眼前の事実を認めたくないというように首を弱々しく振る忍。
しかし、

「お嬢様、お気を確かに」

そんな忍の頬を張り、乾いた音を響かせるもう一人の当事者。
それは彼女と主従関係以上のもので結ばれたメイド、ノエルだった。

「恭也様はなんとしてもお嬢様を助けようとなさいました。
 ならお嬢様も、もてるすべてを使って恭也様の行方を捜す事を第一に考えてください。
 それは……お嬢様にしかできない事です」

恭也の考えがどうであれ、結果としては最悪の中の最良だった。
どんな環境の変化であれ、人の生活できる環境であれば対応できる恭也が光に飲まれ、
そして人知を超えた技術に通じている忍は残った。
これが逆ならどうしようもなかっただろうが、この形ならば対応のしようはある。
忍は瞳に浮かんだ涙を服の袖でぐいっと拭う。そして、

「ノエル! 急いでその銅鏡の破片を集めて! 私は同じものとか同じ時代のものが他にないか探す!」
「……はい。了解しました」

立ち直った忍はノエルにその場を任せ、地下へと走っていった。



「……ちっ! 一足遅かったか……」

そんな月村家を覗き込む人影はそう言って舌打ちを繰り返す。

「くそっ! ……まぁいい。それにしてもあの男もついていないな。
 電圧などを干渉させるから……恐らく予定通りの場所にはいまい。
 まぁ、精々運命に翻弄されてもらおうじゃないか」

そう呟いた白い髪に白いマントで身を覆った少年は、次の瞬間もう闇夜に溶けるようにして姿を消していた。



恋姫†無双 降臨し不破の刃



「……ここは……何処だ?」

たしか俺は忍が調べていた銅鏡の光に飲み込まれて……! そうだ! 忍!
自分の周りを見回してみるが、そこは見渡す限りの砂漠。
いや、向こうに緑の山が見えているが……
近くにいないという事は、忍は無事という事だろうか?

「とりあえず、ここは忍の実験室ではないな」

それだけは確実らしい。
空間を広げたり、ここまで現実感のある映像を映し出したりという技術は、いくら忍でもないだろう
………………たぶん。
とりあえず現状の確認を、と思い立ち上がって服についた砂を払おうとしたその時。

「?……今のは…………」

俺の耳に飛び込んできたのは叫び声。
しかもかなりの大人数のものである。
そんなに遠くはない…………行ってみるか。
正直、今の声は十人、二十人の声ではない。数千、いや数万という人間が一斉にあげた声だろう。
それなりに距離が離れているのに、フィアッセ達のコンサートの時に客席で聞いた喚声よりもかなり大きく聴こえた。
小さな丘を越えると、眼前に広がったのは……

「……なんだ…………これは……」

見渡す限り人の山。
その人の山が二組に別れ、どう見ても本物としか思えない武器を使って戦っている。つまりこれは……

「……戦争、か……」

それが何かの撮影や、最悪演習でもない事は漂ってくる血の匂いで分かる。
二組を見ると、一組は兵達がみんなそれなりの鎧を身に着けているが数は少なめ。
対してもう一組は、それぞれ武器も装備も貧相だが数は相手の倍近い。山賊や盗賊などといった印象を受ける。
鎧を着たほうはどうやら分断されてしまっているらしく、
城のようなものの前で奮戦する組に合流しようとしているらしいもう一組が
賊のような奴らによって足止めをくっている。

「蓮華様ぁ!」
「お姉ちゃん!」

近づいた俺の耳にいきなり飛び込んできたのは、そんな悲痛な叫び声だった。
慌ててそちらを向くと、髪をおかっぱっぽく切り揃えた目付きの鋭そうな少女と、
虎に乗った桃色の髪の小さな少女が絶望でもみたような表情である一点を見ていた。
その視線に追いついた時、俺は自分の体の中の血が一気に頭まで上り、そして急速に降りていくのを感じた。
そこにいたのは一人の少女。
虎の上の少女と少し似た雰囲気の、しかし何処か落ち着いた風格を感じる少女だった。
しかしその少女は、

「――くっ! 何であんな所に!」

賊の真っ只中で落馬し、取り囲まれながら一人必死に迫り来る賊と戦っていた。
先ほどの二人の少女達が救援に向かおうとしているのだろうが、厳重に足止めをされているらしくまったく進めない。
状況を素早く整理する。
現在地、不明。ただし戦場である事はたしか。
現状。賊と見える勢力が攻撃中。
二人の少女達の言動から察するに、一人賊に囲まれた少女は小さいほうの少女の姉であり、
もう一人が“様”をつける程に敬われている。
俺の装備、万全。忍の実験中だった事が幸いしたな。
とれる行動は三つ。
一つ。賊に加勢して略奪。これは即却下。
二つ。見てみぬ振り。賢い選択なのだろうが、俺には出来そうもない。
となれば、

「こっちだ! 下衆共っ!」

三つ目。俺は彼女を助けるという選択肢を選ぶ。
八景と無名の二刀の小太刀を抜き放ち、一直線に少女に向かって走る。
邪魔するものは……容赦なく斬り捨てて。

「ねぇ、思春? なんかあそこで敵が慌ててるよ?」
「はい! どうやら蓮華様に誰か向かっていっているようですが………………誰だ?」
「なんか真っ黒い男の人だよ?……! ねぇ!? あの人に頼んでみようっ!」
「……し、しかし……得体の知れない男に蓮華様を……」
「早くしないとその蓮華様がやられちゃうの! シャオ達がここから行こうとしても無理だよ!
 敵の主力は皆こっちに来てるんだから!」

耳にそんな会話が飛び込んでくる。丁度近くを通過しているからか、二人の姿もはっきりと視認できた。

「ねぇ! おにーさん! お姉ちゃんを助けてっ!」

と思ったら相談はすんだのか、小さい少女が俺に向かって必死に叫ぶ。
気丈に振舞っているようだが、内心姉が心配で仕方がないのだろう。

「もとよりそのつもりだっ! 事情は後で詳しく話すが、とりあえずは手を貸す!」
「ま、まて! お前は……」
「事情は後で話すといったはずだ! 彼女を見殺しにしたいのかっ!?」

どうやらもう一人の少女は、只者でない雰囲気はあるが頭の固い人物らしい。
とはいえ、もう話している余裕はあまりない。

「俺も聞きたい事がある! それに対する返答が代金代わりだと思っておいてくれ!」

俺はそういい捨てて走り出す。
どうやら今の二人が敵にとって重要人物、もしくは要注意人物らしく、
戦力のかなりの部分があの子のいうとおり二人に集まっていた。
対して俺は、鎧も着ないで敵陣の中を一人走る得体の知れない男。
撃破ではなく彼女の元へと到着を第一に考えて奔っている為敵に被害も少なく、
そのおかげで俺はいつでもやれる功を焦った一般兵といった位置付けなのだろう。
さして警戒は、まだされていない。
とはいえ、

「邪魔を、するなっ!」

さすがにここまで一直線で走ったとなれば、敵とていつまでものんびりかまえていてはくれない。
もう彼女と眼と鼻の先と言ってもいい距離まで近づいたその時、

「!?」

彼女と、一瞬だけ眼があった。
しかしその一瞬は彼女にとって致命的なもの。
背後から賊が三人、一斉に大斧を振り上げる。

「!? しまっ……」

彼女からそんな焦りが聞こえ、思わず眼を閉じてしまったのを見て、俺は迷わず最後の手段を行使した。

−奥義之歩法『神速』−

モノクロな視界の中、ゼリーを掻き分けるように進む、が。
間に合わないっ!? ならばっ!
神速の二段掛け。
悲鳴のような軋む音が膝から聴こえる錯覚を無視して彼女の元についた俺は、

「ふっ!」

斧を振り上げた三人の腕を一度で切り飛ばして神速を抜け出した。
そして確かに感じる膝の痛みを無視しつつ、
腕が消えてなくなっている事でパニックを起こしている三人の鳩尾に蹴りを叩き込んで昏倒させた。

「くっ……大丈夫ですか?」



「くっ……大丈夫ですか?」

眼を開けた時、一瞬だけ眼が合った彼がいつの間にか私のとなりにいた。
何処か痛むのか一瞬顔を顰めていたような気がしたが、次の瞬間もう彼は私に優しく微笑みかけていた。
…………綺麗…………はっ!?

「あ、そ、その……感謝する」

慌てて慣れない王の仮面を貼り付けた私に、彼は苦笑を零したように見えた。

「あそこに貴方の妹さんがいます。助けに来てくれようとしてますので、もう暫く辛抱してください」

彼にそう言われて辺りを見回すと、賊共は先ほどよりも少し距離を空けてはいるが、
相変わらず辺りを囲んでいた。たしかにこれでは援軍もそう簡単には来られないだろう。

「安心してください」

彼が隣で私に微笑みかける。不器用だが、綺麗な笑みだった。

「妹さんに頼まれました。貴方を助けて欲しい、と。引き受けた以上は……」
「このやろぉぉぐうぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

いつの間にか背後に迫っていた賊の一人を、彼は見向きもせずに斬って捨てた。

「俺の刀は貴方を護る為のものですから」

…………なんだろう。
彼のその言葉を聞いた瞬間、私は体の力が一気に抜けていくのを感じた。
そして気がつく。剣を持っていた手が汗に塗れていた事に。
そう。私は不安だったのだ。
敵陣の中で味方を分断され、思春もシャオも傍にいない状況で見渡す限り敵のさっきまでの状況に。

「……え?」

気がつくと、涙が流れていた。
それを指で拭って、雫を見て、ようやく分かった。
私は……彼の言葉に安堵しているのだと。
見ず知らずの彼が見せてくれる黒く、広い背中が堪らなく頼もしいと感じているのだと。
女としての私が、止まらない。
今、彼の胸に飛び込んで泣けたらどんなに心地よいだろうと、そう思ってしまう。
……でも……

「私も、戦う」

今は、それは許されない。
彼の足手纏いには、なれない。
手の汗を服に擦りつけ、涙を拭い剣を握りなおして立ち上がった私に、彼はまた優しく微笑んでくれた。

「もう少し、頑張ってください。最後まで諦めずに。貴方は……」

そして彼の顔は、戦士のそれになった。
私が今まで見てきた誰よりも強い意志をその眼に宿して。

「死なせない。俺のこの刀に誓って」



その姿は、鬼神そのものだった。
突然手を貸すといって蓮華様が囲まれてしまっている賊の山に飛び込んでいった男の姿が、
やっとはっきり視認できる距離まできた。
早く助けないとと焦る私の目に飛び込んできたその光景。
男は蓮華様に近づこうとする賊を容赦なく斬り捨て、突き刺し、蹴り飛ばす。
懐から細く、銀色に光る糸の様なものを取り出したかと思うと、敵の首に括りつけて摩擦で首を斬る。
短刀を取り出しては投げ、それは相手の眉間に刺さる。
彼が動いた後に残るは亡骸の山。

「……守護神……」

思わず口をついて出た言葉だったが、鬼神よりは近いものがある。
そう。今まさにあの男は、蓮華様の守護神と化していた。

「まぁ……賊共にとっては死神だが、な」

それに聞いてみたい事があった。
蓮華様が後ろから三人の男に襲いかかられた時、あの男はたしかに離れた場所にいた。
にも関わらず、次の瞬間には蓮華様のとなりに現れたのだ。三人の腕を斬り飛ばして。

「一体……何者なんだ、あの男は……」



「すっごぉ〜い!」

早くお姉ちゃんを助けないとと思って虎さんに頑張って貰ったんだけど、
そんな私の目に映ったのはお姉ちゃんの前に立ちふさがってお姉ちゃんに向かってくる敵を皆斬り捨てる勇者様。
真っ黒い格好したおにーさんは、もの凄い速さで近づく敵をやっつけてる。
これでお姉ちゃんは大丈夫。そう思った時、私の目の前の敵が弓を引いてるのに気がついた。
駄目っ! 間に合わないっ!

「駄目ぇぇぇぇ!!!!」

私の前で、矢はソイツの手を離れて一直線にお姉ちゃんに飛んでいく。
お姉ちゃんっ!
でも……当たると思ったその矢は……

「くっ!」

おにーさんがとっさにお姉ちゃんを庇って前に立って、そのお兄さんの肩に突き刺さった。
お姉ちゃんの顔が真っ青になる。
でもおにーさんは、

「殺らせんと……言ったはずだっ!」

刺さった矢をそのまま引き抜いて投げ捨てて、小さい剣みたいなのを矢を撃ったヤツに向かって投げつけた。

「ぐあっ!」

胸のところに突き刺さったソレ。でも倒せてない。

「このぉ!」

でも私も、お姉ちゃんをやられそうになって黙ってなんかいられない。
虎さんに体当たりをしてもらって、頭を踏み潰した。
また、お姉ちゃん達のほうをみると……おにーさんが小さく笑いかけてくれた。

「あ……」

たぶん、おにーさんには聴こえてたんだ。私がさっき叫んだの。
嬉しくなって笑い返す。
おにーさんはちょっとだけ苦笑いしたみたいに笑って、またお姉ちゃんを護って戦う。

「……決めた! あのおにーさん、シャオのお婿さんになってもらお〜っと!」

カッコいいし、強いし、優しそう。最高だよね!
こうなるとちょっとお姉ちゃん、羨ましいなぁ……
私も護ってもらいたい……あ!
……私、見ちゃった。
今お姉ちゃん……女の子の顔でおにーさん見てた。

「で、でも……負けないもん!」



「……ふぅ……なんとか、終ったか」

正直、きついな。
とっさに庇った時の矢傷以外にも結構やられた。
最初に神速の二段掛けした所為か。膝の痛みが普通の神速の時の比じゃないし、
その後の動きがここまで鈍ってしまうとは……これからは控えんといかんな。

「大丈夫、か?」
「あ、はい。そちらは…「ちょ、ちょっと!?」…は?」

なんだ? いきなり慌て始めたが。

「そういえば矢傷は!? それにこっちも!あぁそこも! かなり深手じゃないそれっ!?」

と思ったらオロオロと慌てだした。
……始めてみた時のあの風格は何処にいった?

「とりあえず酒と、包帯のようなものはありますか? 消毒と止血はしておきたいので」
「わ、わかったわ。お酒と包帯ね? す、すぐに…「おにーさんっ!」…しゃ、小蓮!?」

……今度はこの子か。というかいきなり飛びつかないで欲しいのだが。

「おにーさん! お姉ちゃんを助けてくれてありがとう! すりすりすり〜♪」

……なのはに声が似ているが……ここまで活発ではないな。じゃなくて、

「お礼はいいから。俺が放っておけなくて手をだしたんだから。
 それよりも…「貴様っ! 小蓮様から離れろっ!」…とりあえず離れてくれ。正直傷に響く」
「き、ず?……ってああっ! おにーさん怪我してるっ!」
「そ、そうよっ! だから小蓮! はやく離れなさいっ! 思春は早くお酒と包帯を! 後医者の手配!」
「!? は、はっ!」

どうやら彼女が一番上の人間らしい。
彼女の一喝で小さい子は俺からしぶしぶではあったが離れ、もう一人の難そうな少女は一目散に走り去った。
そしてすぐに酒と包帯をもって走ってくる。

「お待たせしました!」
「よし。……これで、いい?」

何をそんなに急いでいたのだろう?
まぁ何であれ、これで応急処理が出来る。

「すみませんが、暫くこちらを向かないでいただけますか?」
「……え?」
「なんで?」
「上着を脱ぎますので。見苦しいでしょうから」

傷だらけの体なんて、いくら戦場で戦っているとはいえ女の子に見せるのは躊躇われるしな。
さて、後は三人が後ろを……

「私は気にしない。むしろ私を庇った事で出来た傷なら、私が手当をするのが筋でしょう?」
「シャオだって! シャオが頼んだから怪我しちゃったんだから手当てするもんっ!」
「なっ?! お二人とも一体何をっ!? くっ! ええい仕方ないっ! 包帯と酒を貸せっ! 私がやるっ!」
「あー! 思春ってば抜け駆けしようとしてるっ! 思春は関係ないんだから引っ込んでてっ!」
「そうよ思春っ! 私の恩人を手当てをするんだから、仕方ないなんて言う人にはやらせられないわっ!」
「そうだよっ! シャオがやるから二人は黙っててっ!」
「貴方も関係ないでしょう、小蓮! 助けてもらったのは私!」
「頼んだのはシャオだよっ!」

向いてくれるどころか積極的に俺の手当てをしてくれようとしていた。
いや、それは素直に嬉しいのだが……

「私に手当てさせて?」
「シャオがしてあげるよ♪」

……駄目だ。
この二人は俺の言う事なんか聞かない。

「……では……お二人とも少し手伝ってください。後、見苦しかったら止めていただいてかまいませんから」

俺はそうことわると、手早く穴だらけになったシャツを脱いだ。

「「「……!」」」

……やはり、見て楽しいものではないでしょう?
声に出さずにそういった意味を籠めて、俺は彼女等に小さく笑いかけた。
なるべくこれ以上不快感を与えないように。
そして俺が置いてあった酒の瓶に手をかけた時、

「……貸して」

風格漂っていた彼女がそう言って俺の手から酒を取り上げた。

「すまない。あまり見せたいものではなかったのでしょう?」

そう言ってすまなそうに俺を見る彼女の眼には、うっすらと涙が浮かんでいた。

「いえ。見苦しいでしょう? こんな傷だらけの体……」
「そんな事、ない。それは全部、貴方の戦いの証なのでしょう?」
「……ええ。大切な家族や友人達を護る為、そしてその力を得る為に負った傷です」
「……そんな、大切な体で私を護ってくれて……ありがとう」

そう言って微笑んだ彼女は、とても魅力的に映った。

「……じとぉ〜……」

しかしそれも束の間。すぐに彼女の妹が横でむくれているのに気付く。
手に包帯を持ったままのところを見ると、どうやらお姉さんが俺に消毒の酒をかけるのを待っていたらしい。

「す、すまない」

恥ずかしそうに謝罪して、お姉さんのほうは酒をゆっくりと傷に流す。
飲料用だが、無いよりは遥かにましだ。

「……蓮華様、これで流れ落ちる酒を」
「あ、有難う」

おかっぱの、彼女達の従者のような少女に手渡された布で服につく前に酒は拭われ、
そして妹のほうがたたんだ布を傷口にあてがって包帯を巻いてくれる。
俺が全部一人でやるつもりが、殆ど全部彼女達にやってもらってしまっている。
機敏に動いてくれたおかげですぐに応急処置も終わり、
シャツを包帯の上から着なおした俺はそこで初めてある重要な事実に気がついた。

「そういえば……名乗っていませんでした。俺はたか…いや、不破恭也といいます」

仕事、それも荒事が関わる時はなるべく“不破”を名乗るようにしている。
家族に累が及ばない為もあるが、なにより“高町”という名を汚さない為。
護る為とはいえ、場合によっては人を殺し、人から恨みを買うこの刀を振るうのに
かあさんやなのはの“高町”はふさわしくない。

「フワキョウヤ? 姓と名は何処でくぎるの? 字は?」
「姓が不破で、名が恭也です。呼びにくければ恭也と呼んで……ん?」

今この子、妙な事言ってたな? 字、って……たしか……

「ちなみにシャオは姓は孫、名は尚香、字はないよ。後、恭也には特別に真名も教えてあげる♪」
「しゃ、小蓮様!? 初対面の、しかも得体の知れない男などに何をっ!」
「もうっ! うるさいなぁ思春は。 大体今自分で私の真名教えたじゃん? って訳で私の真名は小蓮。
 シャオって呼んで♪」
「わ、私は……姓は孫、名は権。字は仲謀だ。それと…………真名は、蓮華だ。
 恭也には真名で呼んで…「ちょ、ちょっと待ってくれ!」…なんだ?」

なんかもの凄く聞き覚えのある名前を二つ同時に聞いてしまった。
孫尚香に、孫権って……たしか忍の部屋にあった本の…………! 三国志か!?
ということは……

「すみません。不躾で申し訳ありませんがお名前をお伺いしてもよろしいですか?」

最後の一人は……

「……むぅ……姓は甘、名は寧。字は興覇だ。
 真名は……主人を助けてもらったとはいえ初対面の男には…「思春だよっ♪」…しゃ、小蓮様……」

……やっぱり、そうか……
これで疑いようがなくなってしまった。
俺は……

「人物がすべて女性になってしまった三国志の時代に……跳ばされた、か」
「三国志?」
「跳ばされたって、何?」
「お、おい! 私はお前に真名を許したわけではっ――!」
「……ん? あ、ああ、甘寧さん。その真名というのは?」
「真に信頼に値すると認めた者だけに明かす名の事だ!」
「それならば……いきなり戦場に飛び込んで、
 結果論とはいえ恩を売るような真似をしてしまった俺に呼ぶことを許せるものではないでしょう。
 というか、お二人が簡単に明かしてしまった方が問題なのでは?」

俺がその事に疑問を感じると、甘寧さんの視線から先ほどまでの鋭さが抜けた。
心なしか……そう。
俺が忍達にからかわれるのを見ている時の耕介さんからの視線のような……何処となく仲間意識を感じさせる視線だ。
…………なるほど。甘寧さんも苦労させられているらしい。

「いいのよ思春。私は恭也に命を救われたのだから」
「シャオだって! 恭也にお姉ちゃん助けてってお願い聞いてもらったんだもんっ!」

……何故そこで対抗するんだ?
それよりも、

「本当に、よろしいんですか?
 俺は孫権さん…「蓮華よ」…と孫尚香さん…「シャオだってばっ!」…………
 と、とにかく、そんなに簡単に明かしていいものではないのでしょう?」

大体孫権といえば確か呉の王。孫尚香はその妹だ。そんな簡単な身分でもあるまいに。

「私は、恭也に命を救われたわ。
 部下でもない貴方に体を張って助けてもらった礼は、それに値するもので返すだけよ。
 命と同等のものなんて、私には真名を明かすという信頼の証しか持ち合わせていないわ」
「シャオも! お姉ちゃん助けてもらったんだもん。真名以上に大切なものなんてないもん。あ……」

なんだ? なんでしな垂れかかる?

「恭也が欲しいっていうなら、シャオの体でも、い・い・よ♪」
「「なっ?! シャオ(小蓮様)!!!!」」

か、体って……なのはより少し上くらいだろ、この子。レンと同じくらいと見るのが精一杯だぞ?
ませているというかなんというか……

「後その喋り方! そんなに畏まってたら友達になれないよ?
 それに、恭也はシャオの旦那様になるんだから、自分の妻にそんな話し方しちゃだめ〜」
「だ、旦那様っ!? ……し、しかし……口調に関してはシャオの言うとおりよ。
 私は王という立場だけど……恭也とは対等でありたい」
「お、お二人とも……ええいっ! 不破恭也! わ、私の事も思春と呼べっ!
 でなければお二人が信頼しているお前を私は信頼していないように見えてしまう!」

……女三人寄ればなんとやら、とは三国志の時代からあるらしいな。
まぁ、ここで拒み続けるのもかえって礼を失するか。

「言葉遣い、かなり乱雑になるがいいか? 蓮華、シャオ、思春」

とりあえず確認の為に呼んでみると……

「…………はぁぁぁ…………」
「…………かっこいい…………」
「…………はっ!? わ、私は何を!?…………」

……何故呆ける? というかカッコいいって、何が?
……それよりも……なんだか……

「え? ちょ、ちょっと恭也?」
「ふ、フラフラしてるよ?」
「不破恭也……気にはなっていたのだが……その着物、所々赤黒く固まってないか?」

ん?……ああ、そうか……

「血を……流しすぎた、か……」

正直に言えば、膝ももう限界だ。
朦朧とする意識にしがみつけずに落ちていった俺の耳に、姉妹の慌てた声が響く。
じじょ…うは……もうす……しあとに、なり……そ……だ……



恭也が飛ばされたのは劉備、ではなくイレギュラーな要素の影響で呉の武将。
その身を盾にして孫権を生涯護り抜いた、
孫権にもっとも愛されたその武将の位置に入り込んでしまった恭也の運命やいかに!
ってな感じで『恋姫†無双 降臨し不破の刃』、たぶん浩師匠が次に連載してくれるんじゃないかなぁw







戦場で芽生えたロマンス!
しかし、異常な状況下で結ばれた者同士は〜、とかいう云々かんぬんを語る以前に、
ちょっ、アインさん、何なんですか、この最後の締め括り方!?

美姫 「なるほど、続きは浩で」

そんな今風のよくあるCMみたいな言い方するな!

ブリジット「それじゃあ、お願いです」

いやいや、そんな普通にお願いされてもね。

美姫 「じゃあ、どうしろって言うのよ」

いや、俺が書く事を前提にするのを止めて。

美姫 「気にしない、気にしない」

気にするっての!

ブリジット「ぶ〜、ケチです」

いやいや、それは何か違うから。

美姫 「あ、来年からいつもCMとしてやっているネタをこれにすれば良いのよ」

ブリジット「それは良い考えです。そうすれば、一週間に一度更新できます」

美姫 「うん、良い考えだわ。

ブリジット「それじゃあ、早速CMで〜す」







行き成り倒れた恭也を正面にいた孫権――蓮華が抱きとめる。
その事に頬を膨らませて抗議の声をあげる孫尚香――小蓮であったが、恭也の身を第一に考えてすぐに口を噤む。

「もしかして、見えない所に怪我でもしているのかも。もしくは、毒!?
 思春!」

主の声に答え、甘寧――思春は恭也の様子を診る。
特に毒による影響は見受けられず、また呼吸も普通に行われている。
それらを確認すると、

「単なる疲労かと思われます。このまま放っておけば、いずれ目を覚ますでしょう」

思春の言葉に姉妹揃って安堵の吐息を零し、寝息を立てる恭也を見下ろす。
先ほど戦場で見せた戦士としての顔でもなく、安心されるために微笑みかけてきた顔とも違う、
本当に無防備な顔をただじっと見詰める。
言葉もなく、ただ静けさが支配する空間へと不意の進入者が現れる。

「孫権さま!」

味方の兵士の一人が、伝令として無事であった孫権の元へと駆けつけてくる。
その声に三人が三人とも弾かれたように顔を上げ、知らず火照った顔を冷ます為に上を向いたり、
誤魔化すように咳払いをする。そんな中、小蓮だけはもう一度恭也の寝顔を見詰め、頬を緩める。
それを横目に見遣りつつ、伝令へと振り返った蓮華は、
先ほどとは打って変わって王としての顔と雰囲気を身に纏い、伝令にこれからの事を矢継ぎ早に指示をするのだった。



動き始めた軍を見渡しながら、蓮華は持って来させた馬に恭也の身体を乗せ、その後ろに自らが乗る。
当然のように小蓮が文句を言ってくるが、

「助けられたのだから、私が手綱を握るのは当然でしょう。
 受けた恩を返さないのは、人として問題があるし、私は呉の王でもあるの。
 王がそのような不義を働けば、引いては国全体がそうであると見られるかもしれないわ。
 だから、ここは私が運ぶのが妥当でしょう」

「ぶー、そんなはずないじゃない! そもそも、王様が自らそんな事をする事の方が可笑しいよ!
 だから、ここはその王様の妹である私が運ぶ方が良いに決まってるもん!」

そんな姉妹のやり取りを少し離れて聞きながら、思春は改めて恭也を眺め、

(恨むぞ、不破恭也。お前が原因で私の苦労が増えた気がするぞ……)

そう、胸中でそっと漏らすのだった。



城へと戻った蓮華を待っていたのは、先代の王の頃より仕える軍師、周喩であった。
周喩は戻ってきた蓮華に何かを進言しようとして、その馬上に乗る恭也に目を止める。

「……蓮華さま、その男は? まさかとは思いますが、小姓などと仰らないですよね」

「口を慎め冥琳。彼は私の命の恩人だ。
 詳しい事は省くが、その事で意識を失ってしまったのでこうして連れて帰って来た。
 何か問題があるか?」

「いえ、呉の王を助けたのなら、それに見合う謝礼は確かに必要でしょう。
 そのまま捨て置いては、あらぬ噂を吹聴されるやもしれませんし。
 ただ、王自らが運ばずとも良かったのではとは思いますが……」

「とりあえず、この者を休ませる。
 思春、手伝って」

馬を下りて思春に声を掛けると、蓮華は思春と二人で恭也を担ぐ。
その前に未だに立ちつづける冥琳を正面から見返し、

「まだ何か?」

「いえ。その者を休ませましたら、今回のご報告を聞きたく思います。
 後ほど、謁見の間までお越しを」

そう言って慇懃に頭を下げると、冥琳は踵を返して城の中へと入っていく。
それを見送り、蓮華は恭也を部屋へと運ぶのだった。



「……ん、んんっ」

恭也が部屋に寝かされて半日以上、既に日も変わり太陽も中天近くに差し掛かろうという時、
小さな呻き声をあげ、その目がゆっくりと開かれる。
簡素なベッドから身を起こし、恭也は周囲を見る。

「……目が覚めたら忍の家で、全ては夢だった……なんて事はないか。
 やはり、アレは現実だったか」

ベッドから降り、恭也は窓を開くと外の景色を眺める。
多くの木々が視界いっぱいに飛び込んでき、時折、鳥の鳴き声なども聞こえてくる。
少しだけ顔を出して左右を見てみれば、ずらりと続く壁と、合間、合間にここと同じ造りに窓が見える。
大きな屋敷、いや、蓮華が王だと言う事を考えれば、ここは城の一室なのだろうと恭也は考え、
不意に部屋の外の気配に気付いてベッドに戻る。
ベッドに腰掛けるとほぼ同時にノックの音が響き、恭也が返事をする前に扉が開かれる。

「おにーさん、そろそろ目覚めてる?」

「小蓮! 返事もないのに勝手に入るんじゃありません」

「まだ寝てたら返事なんてできないじゃない」

「それでも、少し待つのが当然でしょう。……あっ。
 お、起きてたのね。具合はどう? 思春によれば、単なる疲労という事だったから、寝かせておいたのだけれど。
 一応、医者に傷の手当てもしてもらったけれど、何処か痛い所とかはない?」

小蓮に小言を言いつつ、起きていた恭也と目が合うと恥ずかしそうに顔を伏せる。
伏せるも、すぐに状況を説明し、その上で具合を尋ねる。

「いや、特に問題はないな。ここまで運んでくれたのか。
 ありがとう、蓮華」

「と、当然のことをしただけよ。それ以前に、私は恭也に命を救われたのだし」

穏やかな表情で会話をする二人の間に、むすっとした顔で小蓮が割って入ってくる。

「シャオも心配したのに!」

「ああ、シャオもありがとうな」

言ってなのはにするように頭を撫でてやれば、不機嫌だった顔がすぐに笑顔へと変わる。

「えへへ〜、妻として旦那さまの身体を気にするのは当然だよ」

「旦那さま? 妻?」

「うん、おにーちゃんは小蓮の……」

「小蓮、少し黙ってて頂戴。恭也に聞きたいことが……」

首を傾げる恭也に嬉しそうに説明しようとする小蓮を遮り、蓮華が口を挟む。
だが、小蓮は不機嫌そうに頬を膨らませると黙るどころか、

「何で邪魔をするかな、お姉ちゃんは」

「良いから。話が進まなくなるでしょう」

「ぶー、そんな事言って本当は自分がおにーちゃんと……」

「そ、そんなんじゃ……ない……わよ」

「思いっきり動揺しているし、どもってる! あやし〜。
 あ〜やし〜〜んだ、怪しいんだ〜」

「もう、本当に話が進まないでしょう」

目の前で繰り広げられる姉妹喧嘩を静かに見守りながら、恭也は蓮華の応援をしていた。
何故なら、少しでも早く現状を知りたいというのは恭也もまた同じであるからである。
ようやく納まった姉妹喧嘩に胸を撫で下ろし、恭也は蓮華から語られる内容をまずは聞く。

「それで聞きたいのは……」

「おにーちゃんは誰か好きな人が居たりする?」

「小蓮!」

本題に入るのには、後どれぐらいの時間が必要とされるのか。
恭也は一人溜め息を吐きながら、肩を落とす。
今度は先ほどよりも早く話を再開できるようで、剥れた小蓮に苦笑しつつ、改めて蓮華へと向き合う。

「恭也、あなたの服装に関してなんだけれど……」

こうして、恭也はようやく自身の状況を詳しく知る機会を得るのであった。



『恋姫†無双 降臨し不破の刃』 毎週金曜日更新!







って、何でやねん!

美姫 「何だかんだと言いつつ、ちゃんとCMしたじゃない」

いや、もう習慣と言うか、お前の声に勝手に反応したと言うか。

ブリジット「つまり、浩さんの身体は持ち主よりも美姫さんを優先すると」

……何でじゃ! って、強く否定できないよ。
恐怖というものが刻み込まれているんだな、うん。

美姫 「それにしても、来年からの更新が楽しみね」

いやいや、ないないない!

ブリジット「え〜、です」

そんなに不満がられても。
……ん? 曹操の元に行くパターンも面白そうだな。
いやいや、一層の事根本から歴史を変えるぐらいの出来事として、菫卓の所に出現ってのも面白いかも。
王に菫卓、軍師に賈駆、将軍に呂布に張遼、華雄、恭也。
おおう、これは凄いな。で、敵の狙いが恭也である以上、白装束たちは偽の情報を流して連合軍を結成させる。
……って、勝てる見こみがかなり低いパターンだな。いやいや、こんな状況でこそ軍師の力が試されるのですよ。

美姫 「おーい、いい加減に帰ってきなさ〜い」

ブリジット「トリップしちゃったです」

美姫 「うーん、妄想スイッチが入っちゃったわね」

ブリジット「傍から聞くと、ちょっと危ない感じのする名前ですね」

美姫 「まあね。と、それはそうと、この当たりを大体四十度ぐらいの角度で、こう!」

ぶべらっ!
な、何だ、何が!? って、この慣れた痛みは、またお前か美姫。

ブリジット「凄いです! 殴られた感触で美姫さんだと当てるなんて」

美姫 「まあ、これも日々の鍛錬のお陰よね」

どんな鍛錬だよ……。

ブリジット「それだけ、殴られているという事ですね」

そうだよ! そういう事だよ!
ブリジット、良いことを言う!
こいつが、どれだけ俺を殴ってきたのか……。

ブリジット「つまり、それだけ浩さんが悪い事をしたと」

へっ!?

美姫 「くすくす。本当にブリジットは良い事を言うわね」

あれ、あれれ?
そういう結論になるの?

ブリジット「なるです。何か間違ってたですか?」

間違って、

美姫 「ないわよ」

俺の言葉を遮るなよ!
って言うか、タイミングよく繋げるな!

ブリジット「やっぱり、浩さんが悪いんですね」

美姫 「そういう事よ♪」

う、うわぁ〜ん。また俺が悪者だよ!

ブリジット「はいはい、泣かないです」

あ、ありがとう、ぐすぐす。って、違う!
だぁー! 思わず叫んでしまったぞ。

美姫 「はいはい、滾る情熱は全部SSに込めてね」

ったく、分かったよ。
さて、それじゃあ今週はこの辺にしておくか。

美姫 「そうね」

ブリジット「それじゃあ……」

美姫&ブリジット「また来週〜」


12月7日(金)

夕凪 「雑記ジャーーーーーック!
    はい、美姫さんの苦労をたまに請け負ってもいいかな〜?
    と思って無理やり電波ジャックしちゃいました、夜上璃斗さんのトコのキャラクター相楽夕凪です。
    これからビシバシと、
    締め切り破りの投稿SS作家さんのところに電話をかけて催促しちゃうのでお楽しみに〜」

フゴーフゴー!

夕凪「さて、最初は言わずもがな美姫さんのとこの浩さんです。
   もしも〜し? あ、美姫さんですか? お久しぶりです。
   いえいえ、こっちはリアル忙しいとか言って、
   全くSS書かない馬鹿をどうにかこうにか追い立てている次第で……。
   そちらはどうですか? あ、全然ですか? キリ番も特に無いから手を抜いて手を抜いて?
   あ〜、大変そうですね。ええ。消し炭にしてしまえばいいですよ。あっはっはっは!
   私は砕くしかできませんから。はい。はい。それじゃ早く書くようにお願いしますね〜。
   ではでは〜(ガチャ)
   それじゃ次の人は……安藤さんかな?」

フゴフゴゴ! フゴー!

夕凪「あ〜、璃斗さん煩いですよ?」

……プハ! 煩い! 予告送る程度ならいざ知らず、雑記ジャックってなんじゃい!

夕凪「え〜っと、美姫さんにたまには休みをあげたいという妹心?」

最後が疑問系ですか!
と、いうか、何でそれに簀巻きにされて猿轡かまされ挙句にアイマスクされて連衡されなくちゃならんのよ!

夕凪「え? お土産」

何の!?

夕凪「ほら、二年位前に、美姫さんが空輸された璃斗さんボックスでマジックしたじゃない。
   またあんな感じでストレス解消できればなと」

殺す気かい!

夕凪「そんな訳無いじゃない。……と、璃斗さんに構っている時間は無かった。
   え〜っと……CM行ってる間に電話しとかないと。あ、蓉子さん? 夕凪です。実は……」

……これ、いいのか? とりあえずCM。







「ねぇ、昔みたいに、みんなで何かしない?」

 そう切り出したのは理樹だった。
 いつも俺達の影で穏やかに笑っていた彼からの提案に、全員が少し虚を突かれたように目を瞬いた。

「なんだよ、唐突に」

「何かって?」

 真人も謙吾も少し戸惑いを隠せないまま、疑問を口にする。

「ほら、小学生の時。何かを悪に仕立て上げては近所をかっぽしてたでしょ、みんなで」

 そう言えば、そんな事をして歩いたなと、俺は心の中で呟く。

「おまえらと一緒にするな」

 すぐさま鈴が真に遺憾だと言わんばかりに柳眉を吊り上げて否定するが、理樹は気にとめない。
 ただ、その表情に浮かんでいる感情は、何というのだろうか。
 望郷?
 哀愁?
 どちらにしても、寂しさを含んでいて、それでいて渇望していた。
 真人と謙吾と鈴は、何を言い出したのだろうと疑問ばかりを向けている。
 俺はどうなのだろうか。
 美由希やなのは達と物心ついた時には離れていて、一人母方の親戚がいるこの町に住んでいた。
 父さんが死んだ後、膝を壊した俺の事を考えての事なのは想像するより簡単だ。
 自暴自棄になり、自分の人生などすでに朽ちたも同然と、
 日々を抜け殻として生きていた俺に、手を差し伸べてくれたのは、俺達のリーダーである恭介だった。

『なあ、暇だったら俺達と遊ばないか?』
『なあ、何もやってないなら一緒に悪者退治だ』
『なあ……』

 いつの間にか俺は彼等の仲間に入っていて、一緒になって町中を駆け巡っていた。
 ああ、そうだ。
 確かのあの過ぎ去った日々が懐かしい。
 それぞれ心の中にある傷をお互いに舐め合うのではなく、
 ただ側にいて自分自身の力で立ち上がるのを見守っていた日々が……。

「いいな。俺も何かやるのは賛成だ」

 だからだろうか。
 気付いた時には俺もそう口にしていた。
 途端に万の味方を得たとばかりに理樹は満面の笑みを浮べた。

「そうだよね! 恭也もそう思うよね!」

 もちろん、他の三人は俺まで何を考えているんだ? と訝しげだ。

「ああ、俺はすでに進路が決まっているからな」

「あ〜、なるほどな」

「確かに、恭也は恭介と違い、すでに進路が決定していたな」

「うん。馬鹿兄貴より偉い」

 同じ恭の字の癖にな。と理樹も含めて四人が笑う。
 かく言う俺も苦笑気味だ。
 だけど、恭介は違った。
 いつもであれば全員に理由にすらならない反論をして、鈴あたりにトドメを指されるのだが、
 ふと視線を向けると恭介は屈んでいた。
 その手が何かを拾い上げる。
 恭介は何かを二度ほど投げ上げてから、指の上でスピンをかけて回した。

「……野球をしよう」

 何かは、茶色くくすんだ野球ボールだった。
 ボールはまるで生き物のようにぽんぽんと掌を転がっている。
 その様子を視線で追いかけていると、真人が間の抜けた声を溢した。
 続けて謙吾もだ。
 俺と理樹以外は、その言葉が理解できなかったようだった。

「野球だよ」

 皆に振り返り、再度そう告げた。

「野球チームを作る。チーム名は……リトルバスターズだ」

 ――それが、始まりであり、終わりだった。
   俺達六人の小さな小さな思いと奇跡の物語の――。


リトルバスターズ! 〜小さな小さな思い出〜







「もしもし? ああ、祥子か。久しぶりだな」

 とある昼下がり。
 高町家の自宅で電話が鳴った。
 ちょうど大学も無く居間で美由希と悠花と三人で緩やかに流れる午後の一時を邪魔してしまった電話音に反応して、
 一番近くにいた恭也が電話に出たところ、相手は思いの他懐かしい声であった。

『お久しぶりです。今、お時間はよろしいですか?』

「ああ、構わないどうしたんだ?」

『実は……再三で申し訳無いのですけど、お仕事の件でお願いしたい事がありまして』

 その言葉に、ソファに座っている二人をちらりと見た。
 二人は祥子の名前に山百合会のメンバーを思い出して話題にしていた。

「どうした?」

 だからなるべく空気を壊さぬように、普段通り何か用事でもあると思わせる優しい声色で、
 電話の主――小笠原祥子に問いかけた。

『ええ。正直、恭也さんしか思いつかなかったので、申し訳ないと思ったのですけれど』

「そんなのはどうでもいいさ。こちらも相変わらずだからな」

『ありがとう。実は――』

 恭也の心遣いに感謝しつつ、祥子はそう話を切り出した。

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「何て言うんだろ? リリアン女学院を見た時も大きいなぁって驚いたけれど」

「ふぇぇ。こっちも大きいです」

 今美由希と悠花の前にそびえる大きな門。
 そして門を始点として左右に広がる広大な敷地を守る壁に、二人は同時に感嘆を漏らした。
 だが、それは彼女達に限った事ではなく、一緒に訪れた山百合会のメンバー福沢祐美や島津由乃、
 二条乃梨子もぽかんと普段では見られない表情で見上げていた。
 ただ他のメンバーは訪れた事があるのか、平然としている。

「私、リリアンより大きい学校って初めて」

「私だってそうよ。ここまで大きいとは思わなかった」

 それもその筈である。
 半島一つ丸々学園の敷地などという規模は、日本国内探しても見当たらない。
 物珍しさに思わず見回してしまう五人を他所に、
 三薔薇である小笠原祥子、支倉令、藤堂志摩子の三人は迎えに来ている筈の人物を待っていた。
 その時、普段は来客があろうとも開かない門が開いた。
 
「ようこそ。我が凰華女学院分校へ。リリアン女学院視察団の皆様」

 そこには、緑色を基調としたメイド服を着たロシア人の少女と、
 背の低い学院の本校制服を着た少女が笑顔で美由希達を迎え入れた。

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「……テロだって?」

『ええ。私の友人で凰華女学院分校の理事長代理をしている方がいらっしゃるのだけれど、
 その方の下にテロのために誘拐を企んでいる者がいると密告があったらしいの」

 凰華女学院とは小笠原財閥と同等もしくは匹敵する巨大グループ風祭家が運営している女学院である。
 そこに入学する生徒は全てが資産家の息女であり、一人が誘拐などされるだけで、
 国が傾く事態発展する可能性もある程だ。

『それで過去二回の誘拐騒動でも無事だった私の話を聞いたらしくて、恭也さんを紹介して欲しいと言われたの』

「なるほど。だが困ったな……。
 こちらも明日からしばらくリスティさんについて海外に出かける予定があるのだが……」

『そうですか。命は誰分け隔てなく平等。知り合いだからとこちらを優先してもらう訳には……』

「いや、そっちは俺一人の予定だから、代わりに二人なら派遣できる」

 そう付け加えると、電話向こうで祥子が一度息を飲んだのが聞こえた。そして小さく溜息をつき――。

『もう。ちょっと美由希さんのいつも言っている平然と嘘をつくというものが実感できました』

「はは。悪いな。それで、二人でいいか?」

『ええ。申し分ありません。ではこれから先方と打ち合わせます。決定しましたらまたご連絡します』

「ああ、よろしく頼む」

 テロ。
 かつて父親を死に追いやった憎むべき負の行動。
 自分が参加できないのが悔しくて、思わず冗談を口にしてしまったが、
 それでも無意識に握り締めた拳は血の気が引いて白くなるほどに力が込められていた。
 その手をゆっくりと解きほぐし、一度息をついてから振り返った。
 そして剣士の表情を見せた二人の少女に向かって、こう切り出した。

「親友からの仕事の依頼だ」

 海鳴より遠く離れた凰華女学院分校。
 そこへ視察団として入った美由希と悠花を待ち受けるものは?


マリアさまはとらいあんぐる 3rd







夕凪「さて、催促電話終了。ふい〜。CMも終わったし、これでOKかな。で、上のマリとら3rdって何?」

ん? 遥かに仰ぎ、麗しのってゲームを今年になってやったんだけどね。
その完成度の高さに感銘を受けて、リリアンメンバーが出演して、外伝的になって、
且つこんなんなら面白いな〜と思って予告にしてみた。

夕凪「ふ〜ん。これも浩さんに?」

書いてくれたら嬉しいけどね。ま、無理なら許可が下りればボク書くとか?

夕凪「それは無謀」

だよねぇ……。

夕凪「とりあえず、催促は後璃斗さんだけなんだけど、今の進行状況は?」

そんなん待ってる人いないでしょ……。

夕凪「いいから」

ん〜っと、とら剣8割、Fate7割、なのは5割かな。

夕凪「んじゃさっさと書く」

へ〜い。

夕凪「以上、雑記ジャック! でした〜。
   あ、璃斗さんは美姫さんのストレス解消用に置いて行きますんで、お好きなように」

あ、ちょ、まっ……!

――夕凪に綺麗に梱包され、置いていかれる。そのまま夕凪はフェードアウト。







美姫 「本家本元、美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、今日は休むかどうか悩んだけれど、とお送り中!>



いやいや、折角ジャックしてくれたのに、何で!?

美姫 「当然でしょう、つんつん」

何をしてるんだ?

美姫 「浩が喚けば私が突っつく♪ つんつん」

何を言ってるんだ?

美姫 「もう一つ、つんつん♪」

いや、明らかにざくざくという音なんですが?
と言うか、何を刺してますか!

美姫 「え? だってここに置いてあったから」

いやいやいや、その理屈は可笑しい!
と言うか、前のやり取りからして何か分かってるよね!

美姫 「当たり前じゃない。分からないで刺したりしないわよ」

って、分かってて刺したのかよ!
あ、あぁぁー。何て事をするかなー。って、反応ないよ!
い、急いで休憩室へ!

美姫 「ぶ〜、まだやり足りないのに」

やらなくて良いの!
……さて、無事に夜上さんも助けたし。

美姫 「助けたの、あれで?」

加害者がいう言葉じゃないよね!

美姫 「それはそうと、何か要望があるみたいだけど、どうするの?」

無視かよ! と、それはさておき、『遥かに仰ぎ、麗しの』ってやってないんだよな。
なので、書けません!

美姫 「威張るな!」

ぶべらっ!

美姫 「あ、やっぱりアンタをやるのが一番しっくりくるし、馴染むわ」

全然嬉しくないっ!

美姫 「はいはい」

って、軽く流された!?

美姫 「さて、夕凪ちゃんも催促しってたし、私の方も状況を聞こうかしら」

あ、あはははは……。

美姫 「でも、その前にCMよ〜」







夏休みに入り、七月も終わろうかというその日。
ふと真夜中に目が覚めたなのはは、何となしに窓へと目を向ける。
窓の外には一匹の黒猫が、目を覚ましたなのはを見て小さな鳴き声を上げる。
何かに誘われるかのように、なのはは窓に手をかけ、そっと押し開く。
これが後の人生を大きく変えることになろうとは、神ならざるなのはに知るよしもなく。



鍛錬後のシャワーを終え、恭也はコーヒーを片手に新聞を広げる。
いつものように一面記事に目を通し、

「ぶっ!」

その内容に思わず口に含んでいたコーヒーを隣の美由希へと噴き出す。

「ちょっ! 恭ちゃん、何でわざわざ横を向くのよ!」

布巾で顔を拭きつつ文句を言う美由希であったが、肝心の恭也はその言葉を聞いていないのか、
焦ったように口を開く。

「……テ、テレ」

そんな珍しい恭也に桃子たちも何があったのかと驚きつつ、恭也の言いたい事を察して確認する。

「テレビをつければ良いの?」

頷く恭也の言葉にレンがテレビを付け、美由希は可笑しくなったであろう原因と思われる新聞を手にする。
美由希が見れば、そこには大きな文字が一面を飾っている。
同じく、テレビをつけてそちらを見ていたレンたちも、臨時ニュースとして飛び込んできた同じ内容を目にする。

『今日、史上最年少の総理が誕生しました。第九十八代内閣総理大臣、高町なのは』

「えぇぇーー!!」

朝から高町家の住人による驚きの大合唱がリビングに響いた瞬間である。



驚きつつもテレビを注目する高町家の面々。
そこにはなのはの姿はない。先ほど晶が確認しに行ってみると、部屋にもなのはの姿はなかった。
何処に居るのかは程なくして分かる。
皆が見詰めるテレビ中、よく見慣れたツインテールの少女が記者たちの前に姿を現したのだ。
やや緊張気味の表情ながらも、しっかりとした足取りで記者たちの前に立つ。
炊かれるフラッシュの嵐の中、記者の一人がなのはへと政策について尋ねる。
見た目、いや、実際に小学生であるなのはに難しい事を尋ねる記者。
周りからは僅かながらも同情の目が向けられるも、ある意味仕方ないと誰も庇うものはいない。
相手が何歳であれ、総理となった以上ははっきりとしなければいけない事である。
記者たちが沈黙してなのはの言葉を待つ。
やがて、ゆっくりとなのはは口を開き、

「まずは少子化対策をしたいと思います」

「したいと仰いますが、具体的にどのように?」

またしても飛ぶ質問になのはは慌てる事なく、むしろよく聞いてくれたとばかりの笑顔ではっきりと告げる。

「今まで結婚出来ないとされていた血縁の等親を変更します。
 異母、または異父兄弟間での結婚の許可です」

そうはっきりと口にする。それを聞いた瞬間、再び高町家で大合唱が起こるのだった。



「お兄ちゃん♪ 総理になったから誰かに狙われるかもしれないの。
 だから、なのは専用の護衛になって」

帰ってきて早々にそう言って甘えてくるなのは。
それに対し、恭也はなのはの言い分も尤もだと頷く。
年齢などから考えても、力尽くでと考える輩が居ても可笑しくはない。
大事な妹を守るのは当然と、恭也はすぐさまそのお願いを引き受ける。
恭也に見えないように、なのはが僅かに微笑んだ事を見た者は誰もいなかった。



「しかし、何で急に総理大臣に」

「それはね……」

言ってなのはが背負っていたリュックの口を明けると、一匹の黒猫が飛び出して来る。
ネコは華麗に着地を決めると、頭を垂れて流暢な日本語を操り出す。

「メフィストと呼んでくれて構わない」

「……高町恭也です」

突然喋り出した猫に僅かに驚くも、すぐに名乗り返して頭を下げる恭也。
それを興味深げに見遣り、ひげをピクピクと動かすメフィスト。

「ふむ、なのはと良い、恭也と良い、猫が喋ってもそんなに大騒ぎしないとは。
 流石はなのはの兄、いや、この場合は恭也の妹というべきなのかな」

変化する狐を知っている二人にとって、この程度はまだそんなに大騒ぎする程ではないのかもしれない。
だが、明らかに世間の常識と照らし合わせると珍しい反応ではある。
暫し思案していたメフィストであったが、すぐに気を取り直したように口を開き、改めて自身の紹介をする。

「簡単に言えば、悪魔だな」

「……悪魔ですか」

「うん。魂と引き換えに何でも願いを叶えてくれるって」

「まさか、なのは」

今朝のニュースとその話の内容を聞き、恭也はなのはを見る。
心配そうな顔をする恭也とは対照的に、なのはは落ち着いた笑みを見せ、

「信用できないから力を見せてって言ったの。
 そしたら、夏休みの間だけという期間限定で何か叶えてみせるって。
 言うなら、お試し期間かな。だから、この契約には魂の取引はないの」

ちゃっかりしていると言うか、悪魔相手に交渉する妹に両親の血を垣間見た瞬間である。
だが、ようやく恭也はなのはが総理になるなどという無茶が叶った理由が分かり納得する。
逆にメフィストは、自分から言い出しておいてなんだけれどと、少し呆れたような口調で続ける。

「悪魔だ何だって、そう簡単に信じるんだ……」

「幽霊がいるのなら、悪魔が居ても可笑しくはないんじゃないのか?
 それに、現になのはは総理になっているみたいだしな」

言って持ってきていた新聞の記事に再び目を落とす。
その新聞は、悪戯かと疑った恭也が駅前まで行ってわざわざ売店で購入してきたものである。
新聞にテレビも朝からその事で持ちきりで、最早疑う余地などありもしなかった。

「まあ、夏休みの間だけみたいだしな。それぐらいなら、俺も付き合おう」

「ありがとう、お兄ちゃん♪」

笑顔で抱き付くなのはの頭を撫でる恭也には見えないよう、なのはは小さく舌を出す。

(夏休みの間に既成事実さえ作っちゃえば、こっちのものだもんね♪
 でも、無理矢理じゃなくてちゃんと好きになってもらえるように頑張らないと。
 その為にも、なのはの傍に出来るだけ居てもらわないといけないし、護衛というのは良い口実だよね♪)

そんな黒い考えと決意を秘めているなど、恭也には全く分かるはずもなかった。
だが、一瞬だけ恭也は背筋に悪寒を感じ、これからの夏休みの日々が、
平穏と言う言葉からはかけ離れて行くんだろうな、と何とはなしに感じ取っていた。



総理大臣なのは プロローグ 「史上最年少総理誕生!」







前にもノエルでやったかもしれんが、今回はなのはで。

美姫 「はいはい、説明はそのぐらいにして進み具合を聞こうかしら」

とりあえず、リリ恭なのが4割、以上!

美姫 「まあ、それをメインにすると言っているから分からなくもないけれど……」

不満そうだな。

美姫 「それはね。早く書いてよね〜。他にも色々と溜まっているでしょう」

分かってるよ〜。一生懸命に頑張ってるよ〜。(俺主観で)

美姫 「不埒な気配を感じたんだけれど?」

す、鋭いな(そんな事ないよ!)

美姫 「頭の中と口に出す言葉が逆よ」

し、しまった!
そ、そんな事ないよ!(鋭いな〜)

美姫 「もう遅いって分かってるわよね」

……はい。

美姫 「大人しくお星さまになれ〜」

ぶべらぼげぇびょ〜〜。今年も残り一ヶ月を切りましたが、皆さんどうお過ごしですかぁぁぁぁぁっ!

美姫 「ビクトリー! そんなこんなで今週はこの辺でね。
    思い切り吹き飛ばして、私はすっきり♪」

のぉぉぉぉぉっ! ぐげらぎょみょっ!
……着地に失敗した。

美姫 「それで平然と喋るアンタは何だって問題なんだけれど、それは今更か」

失敬な。ちゃんと痛みを感じてるっての。

美姫 「何か違う気がするけれど、まあ良いわ。ほら、もう終わるわよ」

へいへい。それじゃあ、今週はこの辺で。

美姫 「あ、それはもう私が言った」

……えっと、じゃあ何を言えと?

美姫 「仕方ないわね。もう一度言う事を許可してあげる。感謝しなさいよ」

へへ〜、ありがとうございます、お嬢様〜。

美姫 「ふふ、よく分かってるじゃない。それじゃあ、早く締めなさい」

はい。それでは、今週はこの辺で。

美姫 「それじゃあ、また来週〜」

ではでは。……って、何か可笑しくないか?

美姫 「気のせいよ、気のせいよ♪」


11月30日(金)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、後一ヶ月かよっ、とお届け中!>



何気に月日とは早いものだなと実感する今日この頃。

美姫 「本当よね。今日で十一月もお終いなのよ」

驚きだな。

美姫 「本当、早いわね」

こうして過去を振り返ってみると……。
…………ま、まあ、過去ばかり見ていても仕方ないな。
今年も後一月、全力で頑張ろう、うん。

美姫 「一体、何を回想したのやら」

それは、内緒です。

美姫 「はいはい。それじゃあ、早速だけれど」

おお、いつにも増して早いですな。

美姫 「まあね。今回はまたしてもプレゼントが送られて来たからね」

久しぶりに雑記へと投稿、アハトさん。

美姫 「そういう事。という訳で、レッツCM〜」







髪がたなびく。
彼女の茶色の髪を、風は優しく、撫でるように、靡かせていく。
でも、彼女の纏う空気は、まるで正反対。
厳しく、切り裂くように、周囲に吹き付ける。


「マイロード、そろそろお時間ですが」

そんな彼女の後ろで、膝をつき頭を垂れながら、黒いフードで顔を隠した男が進言する。

「うん、判ってるよ」

後ろを振り向かずに、彼女は答える。
その手の中にあるのは小さな黒い宝玉。
その宝玉を自分の顔の前まで持ち上げて、軽く口付けを落とす。
すると、その黒き宝玉は黒き光を放ち、その光は彼女の身を包み込んでいく。
数瞬の後、その光は弾けとび…彼女が姿を現す。
黒で統一された服に、所々にはいる、鮮血の朱いライン。
露出した手足に刻まれた、幾何学模様の文字。
そして、手に握られた…黒い宝珠を輝かせる銀色の杖。

「ねぇ、――――君」
「なんでしょうか、マイロード?」

声を掛けられ、男は返事を返す。

「きっと判ってくれるよね」

誰が、とは言わない。

「はい、必ずマイロードの想いを判ってくださるはずです」

男も、誰に、とは聞かずに答える。
聞かなくても判るし、聞いた所で彼女はきっと答えない。
だけど、その時の光景が容易に理解できるからこそ、男は頷く。

「でも、――――君には、辛い役目を任せちゃうね」

少し困った顔をして、彼女は男に向かって話す。

「マイロード、私はそのような事は気にしません。 全ては、マイロードの思うが侭に、行動してください。
その結果、私がどうなろうとも、私はあなたを恨むような事はいたしません」

そんな彼女に、男は誇らしげに答える。
自分は、あなたの為ならばどのような事でも引き受ける。
男の眼が、そう雄弁していた。
その眼を見て、彼女は小さく笑った。

「じゃ、いこっか」
「仰せのままに」

彼女の言葉に男は頷き、数瞬の間を空け……二人は空高くへ舞い上がった。



「お前が、お前がなのはさんをっ!!!」

あらん限りの怒りを込めて、片腕にナックルを装着した青髪の少女が男に向かって叫ぶ。
その後ろには2丁の銃を構えた茶色の髪の少女。
雷を纏った槍を構える赤髪の少年。
そしてグローブを握り締め、巨大な飛竜を従える、ピンクの髪の少女。
四人の少年少女が、男に怒りを向けていた。
この四人は嘗て男がマイロードと呼ぶ女性、高町 なのはによって鍛え上げられた…
困難な状況を打破し、どんな厳しい状況ですら突破する者と呼ばれる、ストライカーの呼び名を持つ魔導師達。


特別救助隊に所属し、フォワードトップとしてその名を轟かせる蒼き疾風 スバル・ナカジマ

執務官として、様々な事件を解決してきた信念の銃使い ティアナ・ランスター

辺境自然保護隊に所属する、雷を操る若き竜騎士 エリオ・モンディアル

同じく辺境自然保護隊に所属する、数多の竜を召喚する竜の巫女 キャロ・ル・ルシエ


管理局員ならば誰もが知っているであろう若きストライカー達が、男と対峙する。

「私は、マイロードに真実をお伝えしただけ……全ては、マイロードのご意志のままに」

対する男は、恭しく頭を下げながら、言い返す。

「キミ達がマイロードの教え子だったと言う話はマイロードよりお聞きしています。
故に、此処は手を引いてもらえませんか?
私としましても、アナタ方を一人で相手するには無理がありそうなので」
「冗談! 何としてもあんたを捕まえて、なのはさんを元に戻してもらうわっ!!」

男の言葉に、茶色の髪の少女は叫び返す。
その言葉を聞いて、男は4人を見る。
誰一人として、引き下がるつもりがない。
そういわんばかりの瞳で、男を睨んでいる。

「では、僭越ながらお相手しましょう…」

そこまで言って、男は自分の全身を覆っていたローブを投げ捨てる。
ローブの下に隠された素顔が、今4人の前に晒される。
黒い、首より少し下まで伸ばされ、一つに纏められた髪。
両の頬に、顎から伸びるように刻まれた、二つの傷痕。
肩までの黒い服、そして素肌に見える、幾何学模様の文字。

「稀代の妖術師(グローリア)と謳われた私…シコード・フォルツァンドが」

名乗りと共に、男の周りを炎が包み込んでいった。



妖術師とは…
ミッドチルダ式の中にあって、更に希少的な分類を受ける魔術系統のことである。
時空管理局がとある管理世界を管轄に収めた結果、新たに発見されたものなのだ。
精霊魔法と言う独自の魔術系統を用い、世界を構成する精霊の力を行使する者。
それがシコードのような妖術師(グローリア)である。
しかし、年々担い手の減少や精霊の枯渇化、そこに追い討ちをかけるかのような、近代ベルカ式の確立。
様々な要因が絡み合い、今管理局が認知する妖術師ですら、片腕で数えられるほどに減ってしまった。



「ふふふ、シコード君もついに戦う気になったんだ」

小さく笑いながら、なのはは遠くで戦っているだろう自分の従者を思う。
かなりの距離が離れていると言うのに、まるで直ぐ傍にいるかの様に錯覚してしまいそうな、熱き炎の流動。
そして、なのはの体中に刻まれた幾何学模様の文字が、わずかながらの光を放つ。

「なのは……」

そんななのはと対峙する、金髪の髪の女性。

「なのは…いったいどうしたの!!?」

金髪の女性は、たまらずに叫ぶ。

「私は、何も変わってないよ、フェイトちゃん。 ただ、気付いただけ」

そんな叫びに、なのはは小さく笑いながら答える。

「本当に、誰が悪くて、誰が被害者なのか」

そう言って笑うなのはの表情は、狂者の笑みだった。

「ねぇフェイトちゃん、何で世界を管理しなければいけないの?
何で一つの想いを押し付けようとするの? 何でいまだに新しい世界を探そうとするの?」

いくつもいくつも、なのはは疑問をフェイトに投げ掛ける。

「なんで、フェイトちゃんは……私の想いに気付いてくれないの?」

そこまで言って、なのはは無表情になる。

「私は、こんなにもフェイトちゃんがダイスキなのに、こんなにもフェイトちゃんを想ってるのに。
今も、フェイトちゃんの事を考えると胸が苦しいよ、フェイトちゃんといると、楽しいよ」

後から後から、あふれ出ていくなのはの言葉。

「なのに…なんで、フェイトちゃんは私の想いに答えてくれないのっ!!!?」

叫びと共に、なのははフェイトに魔法を放つ。

「世界が私の邪魔をする! いろんな人が、私の想いを穢そうとする!! だったら!!!」

叫びと共に、なのはのもつデバイスにカートリッジがリロードされていく。

「こんな世界、いらないっ!!!!!!」

涙を流しながら、それでもなお笑いながら、なのはは魔法を放った。



きっと、世界は優しくない。

「私の意志はマイロードの意志と同じ。故に、私はマイロードがその意志を貫き通すその時まで、御側に仕え続ける」

きっと、世界は正しくなんかない。

「マイロードが死ねと仰るのなら、私は歓んでこの命を差し出すでしょう。 それが、私の世界での心理だからです」

でも、理屈で抑えきれる想いではないから……

「シコード君は、私の従者…私の想いの為に動いて、私の想いの為だったら……いつでも死んでくれる」

彼女は、世界に反逆するのだ。


「それが間違いだと決め付けるのはあなたの勝手ですが、それを他人に押し付けるのは感心しませんよ」

「私は私の想いの為に生きる…それが、他人から見れば馬鹿な生き方だっていわれても」



タイトル未定



「きっといつか、想いは届く」







アハトさん、ありがとうございます。

美姫 「ありがと〜」

うんうん、とても面白そうだな。
こういうなのはもありかも。そんな訳で、今週は……ぶべらっ!

美姫 「似たような事を二週続けてやらない」

ふぁ、ふぁ〜い。

美姫 「さあ、あなたもネタを出すのよ!」

……う、うーん。

美姫 「どうしたのよ」

いや、これってひょっとしてダークかなと。

美姫 「……またとんでもない設定を」

あ、あはははは。

美姫 「今回のCMは、気を付けて下さい」

ダークは嫌だよ、という方のためにスキップボタンを用意。
さあ、これで安心だ。

美姫 「書かなければ一番良いんじゃ」

グサッグサグサ。

美姫 「とりあえずは、CMで〜す」

 ≫スキップする







香港警防隊で休暇をもらった恭也と美沙斗。
しかし、恭也はまだ仕事が残っており、休暇は明日からなので一足先に美沙斗だけが海鳴へ戻るのだった。
これが後の命運を分ける事になるなど、この時には知るよしもなく。

翌日、帰国した恭也であったが、自宅へと向かう道すがら周囲の様子に異変を感じる。
気のせいかと思いつつ帰宅した恭也を待っていたのは、立ち入り禁止のテープが張られた高町家。
いや、そこに家と呼べるものはなく、ただ残骸と成り果てた黒い何かしかなかった。
頭の中が真っ白になり、呆然とする恭也の耳に警察官らの話し声が自然と入ってくる。
いや、正確には立ち入り禁止とされた向こう側にいる警察官の声が聞こえる訳ではなく、
恭也の目が自然とその口の動きを読んでいた。

「ガス爆発らしいが……」

「それにしても、ここまで吹き飛ぶものなのか。
 しかも、周りには殆ど被害も出ていないし」

「上からの通達ではそうらしいがな。まあ、俺らは現場で出来る事をするしかないだろう」

「そうだな。しかし、同じ街でこう何件も同じ事件が同じ日に発生するなんてな。
 ガス管が老朽しているんじゃないのか」

「それも含めて調べるんだよ」

その言葉を読み取った瞬間、恭也は特に考えることもなく走り出していた。
商店街の中を走り、その途中で翠屋の周囲も高町家と同じように立ち入り禁止のテープと警察官の姿を目にし、
それでも足を止めずに桜台の長い坂を上りきる。
そこから少し走り、普段ならこれぐらい大した距離でもないのにやけに煩い鼓動を耳の奥に聞きながら、
恭也は嫌な予感が外れてくれと祈るように顔を上げ、再び絶望を抱く。
かつて、さざなみ寮と呼ばれる騒がしくも楽しい女子寮があった場所は、
やはり高町家や翠屋と同じようになっていた。
足元から力が抜け、思わず地面に膝を着く恭也。だが、それでも立ち上がり、恭也は神社へと向かう。
そこに行けば、少しドジだけれども優しい巫女が笑顔で出迎えてくれるかもしれないという儚い希望を抱き。
だが、現実に待っていたのは、そこでもまた紺色の制服を着て何やら作業をしている警察官の姿であった。
正月には大勢の人で賑わっていた境内は見るも無残な姿を晒していた。
警察官に気づかれないよう、力ない足取りでその場を立ち去る恭也の感覚に、懐かしい気配が感じられる。
こんな状況でありながら、いや、むしろこの様な状況だからこそか、
無意識にいつも以上に周囲を警戒していたらしい、その更なる実戦で鍛えられた感覚が掴んだ気配。
そこに一縷の希望を見出し、恭也は生い茂る木々を掻き分けて奥に踏み入る。
気が焦り、先に先にと進むうちに何処かで引っ掛けたのか、幾つかの小さな傷も出来ていたが、
そんなものを気にも留めず進む。ようやく、恭也は木々に囲まれた中、小さく開けた場所へと辿り着く。
本当に小さな場所で、人一人分ほどのスペースしか開けてはいない。
だが、そこに居た人物を見て恭也は神に感謝したい気持ちにもなる。
僅かに頬を緩めつつ、恭也はその人物へと近づく。

「なのは、久遠、無事だったのか。一体、何が起こったんだ?
 他の皆はどこに逃げたんだ?」

恭也が近づいても、二人は何も言わない。
なのはは目を閉じたまま、子供姿の久遠は怯えたように身体を震わせ、なのはを抱き締める手に力を入れる。

「もしかして、なのはは寝ているのか?
 こんな状況でも寝ていられるなんて、ある意味大したものだな。
 久遠、そんなに怯えないでくれ。俺だよ、恭也だ」

なのはの顔に血の気がない事を見ながらも、恭也はその最悪の事態を認めたくはないとばかりに二人に近づく。
だが、その足取りはやけにゆっくりしたもので、ほんの数歩分の距離がなかなか縮まらない。
そんな中、ゆくりと涙に濡れた頬を拭いもせず、久遠が振り返り、
目の前に居るのが本当に恭也だと知ると力が抜けたように倒れ込む。
今までゆっくりと近づいていた恭也であったが、それを見て急ぎ駆けつけて背中から抱きとめる。
抱き起こした久遠の身体は、黒く炭化しており、流れたであろう血液でさえも凝固している。
だが、その上から新しい血が流れ、黒い身体を紅く染める。
その久遠の肩越しに見えたなのはの身体は、もっと悲惨で下半身は見当たらず、顔以外は完全に炭化していた。
恭也はそれを見て狂いそうになるも、腕の中にいる久遠が苦しげな声で、
それでも必死に謝る言葉を聞いて気を取り直す。

「なのは、まもれなかった」

泣きはらした目は腫れ上がり真っ赤に充血している。それでも、尽きる事なく流れる涙が頬を伝う。
それでも、久遠は何かを伝えようと苦しげに言葉を途切れ途切れながらも伝える。
昨日の夜、なのはの所に泊まっていた久遠は嫌な予感がして飛び起きたらしい。
直後聞こえた爆発音に、久遠は大人へと変化してなのはに覆い被さった。
そこで記憶が途切れ、次に気づいたときは体中の痛みと腕の中に庇ったなのはの顔だけが目に映る。
重いものに圧迫されていると気づき、久遠はなのはを抱いたまま上だと思う方へと力を振り絞って抜け出し、
そこで惨状を目の当たりにした。つまり、高町家がなくなっており、誰の気配も感じられないという惨状を。
怖くなった久遠だが、腕の中にいるなのはの事を思い出し、そちらに目を落とし、

「……なのは? ねぇ、なのはおきて」

もうなのはが起きる事はないと理解していながら、それでも久遠はなのはに呼びかける。
が、それも長くは続かなかった。
遠くから人の気配とサイレンの音が聞こえ、久遠は自身も致命傷と言えるほど傷付いた体で、
なのはの身体を抱き上げ、この場所まで逃げてきたのだ。
そこまで語ると、久遠は疲れたように目を細める。

「くおんも。すこしねむる」

「待て、まだもう少し起きてるんだ久遠」

誰の目にも助からないと分かる久遠の身体を前にしても、恭也は助けようとする。
だが、そんな恭也の左手を弱々しく握り、久遠は小さく笑う。

「恭也が無事でよかった」

そう言って何の屈託もない笑顔を残すと、久遠は静かに目を閉じる。
そして、その目が再び開かれる事はなかった。
どのぐらいそうしていたのか、恭也は屈んでいた足が痺れ、
腰が痛みを訴えても久遠の身体となのはの身体を抱き締めていた。
ポツリポツリと振り出した雨に、ようやく恭也は次なる動きを見せる。
頭上を覆う程に生い茂る木々のお蔭で、殆ど雨が落ちてこない茂みの中、
恭也は一本の大きな木の根元に二人を横たわらせる。
その木の根元に手を着けると、穴を掘り出す。
硬い地面の感触に怯むことなく、爪を立てて掘って行く。
血が滲もうが、爪が剥がれようが黙々と。だが、手ではやはり限度があり、ようやく恭也はそれに気づく。

「待っていろ」

恭也はそう言うと二人をその場に残して立ち去る。
次に恭也が戻ってきた時には、その手にはスコップが握られており、それで再び穴掘りを再開する。

「本当ならちゃんとした墓を、父さんと同じ所に入れてやりたいんだが、暫くはここで我慢してくれ」

警察に知らせるという考えは恭也にはなかった。
久遠は特に死亡解剖にまわされると色々と問題もあるだろうし、
そもそもなのはの身体をこれ以上傷つけられるのが嫌だったから。
既に原因は判明している。あの惨状に、狙われた場所。つまりは、自分たち御神の生き残りを狙った爆弾テロ。
ならば、警察に頼ったところで既に何の情報も得られないだろう。
それは十数年前の御神宗家の結婚式の事件で分かっている。
もしかすると、警察の上層部にさえ相手の手が伸びている可能性もある。
だとすれば、ここからは自分がすべき事だと。
復讐に走った、あの時の美沙斗の気持ちが皮肉なことによく分かってしまった恭也は自嘲めいた笑みを見せる。
美沙斗のように復讐に走り、無関係な人を殺すわけにはいかない。そんな事は誰も望まないと分かっているから。
だから、自分は今居る香港警防隊の力で復讐を誓う。
復讐自体、誰も望まないかもしれないと分かっていながら。

「……いつか必ず戻ってきて、ちゃんとしてやるからな」

かなり深い子供二人が入れるほどの穴を掘り終え、恭也は久遠を、次いでなのはを埋める。
その際、炭化したなのはの腕が何かを守るように胸の前で組まれているのに気づき、慎重に腕を広げる。
中から出てきたのは、身体全体で庇ったから、あの爆発の中にあったのにも関わらず、
全くの無傷で残っていた一振りの小太刀。いや、小太刀サイズの練習刀であった。
香港警防隊に入る事を決めた恭也に、なのはが珍しくねだってきたものであった。
当初は渋った恭也であったが、絶対に振らないことを条件にあげたものであった。
恭也が小さい頃から使ってきた練習刀は、刃こそないものの玩具と言うには危なすぎるものである。
何故、こんなものを欲しがるのが不思議がる恭也に、なのはは照れながら、

「お兄ちゃんがずっと小さい頃からやってきたものでしょう。
 だからこれだと、すぐにお兄ちゃんを思い出せるし、傍に居て守ってくれるような気がするの」

そう言ってはにかむなのはの頭を照れ隠しに乱暴に撫でた懐かしい思い出を思い返しながら、恭也は小さく呟く。

「……結局、俺はお前を守ってやれなかった」

悔恨の念を多分に含みつつ、恭也はその練習刀をなのはの腕に再び握らせ一緒に埋める事にする。
最後に久遠となのはの頭を撫で、なのはのリボンを一本だけ外してポケットに仕舞うと、二人に土を被せて行く。
二人を完全に埋葬すると、恭也は現状を把握すべく再び街へと繰り出し、新聞を何部か買う。
公園の雨宿りが出来るベンチでそれらを広げ、恭也は目を見開く。
他にも郊外の屋敷、海鳴病院などでも同様の爆発があったと書かれた記事を穴が開くほど見つめ、
恭也は震える指で知り合いに高校時代からの悪友へと電話を掛ける。
だが、電話は一向に繋がらず、ありきたりなアナウンスを流すだけの電話を切る。

「俺に関わった全てを壊すつもりかっ!」

腹立ち紛れに新聞を力任せに近くのゴミ箱に放り投げ、けれども頭の中では冷静にどう動くかを弾き出す。
まずは郵送で送った自分の武器を取り戻さなければならない。
時計で時間を確認し、そろそろ届く時間帯だと知ると、
恭也は雨の中、傘もささずに高町家のあった場所へと向かう。
今、警察官にその荷物を見られるのも困る。ちゃんと手続きをしたものだが、現状が現状だ。
万が一という事も考えなければならない。
中には知っている人も居るかもしれないが、今、押収される訳にはいかない。
再び高町家へと戻ってきた恭也は、こちらに気づいた警察官が声を掛けるよりも早く、配達車を見つける。
近辺が封鎖されて困った顔を見せる運転手に近づき、

「高町恭也ですが、俺宛ての荷物ですよね」

恭也の言葉に運転手は助かったとばかりに車を降り、恭也宛ての荷物を手渡す。
伝票にサインをもらって去っていく車を見送る恭也に、近くに居た警察官が声を掛ける。
先ほどの会話から、恭也があの家の住人だと知り、生き残った者から証言を取ろうとする。
だが、そんな警察官の質問を制するように、恭也は淡々と静かな口調で告げる。

「残念ですが、俺は何も知りません。今日、帰ってきたばかりなんです」

その静かな口調に薄ら寒いものを感じつつも、帰宅していきなりこの惨状では仕方ないかと判断し、
とりあえずは恭也に一緒に来てくれるように頼む。
だが、恭也はその警察官に背中を向けると、

「すみませんが、そんな時間はないんです」

その冷たい眼差しに気圧され、警察官が呆然と立ち尽くす間に恭也はそのまま雨の中へと消えていった。



数日後、恭也が警防隊に戻ってみると、そこも海鳴と同じような惨状になっていた。
ここだけではない、他にも街頭のテレビから流れるニュースでは、
イギリスの大通りで政治家を狙ったものやCSSまでもが爆発した事が報じられていた。
組織としての力も仲間も失った恭也は、それでも諦めることなく一人で動き始める。
その心には既に何の感情もなく、ただ目的を達成する強固な意志のみを宿して。



それから数年後、龍に関わる者は大小を問わずに狩られ始める。
黒一色に身を包み、ただ左腕のみ白いリボンを巻いた剣士が恐れられるようになる。
更に二十数年ほどの歳月が流れ、龍はその存在を地上から完全に無くす。それに関わる者全て残らず。
こうして、全てをやり終えた恭也は、再び海鳴のなのはと久遠が眠る場所へと戻ってきていた。
その姿は昔と全く代わらず、ただその瞳は何も移していないかのように虚ろなままに。
二人の前に立ち、恭也は左腕の袖を捲る。
そこにはまるで闇が染み出してきたかのような真っ黒な色で、
左腕全体に纏わり着くように不思議な文様が描かれていた。

「久遠、お前のお蔭で俺は年を取る事もなく、剣士として衰退せずに目的を達成できた」

数年間一人で戦い続けてきた恭也は、ふと自分が年を取っていないのではと感じたのだ。
年齢からくる衰退が起こらないばかりか、昔よりも遥かに頑丈になった身体、傷の治る速さ。
どれも左腕の紋様が出来てから、つまりはあの海鳴を襲った事件以降からであった。
だからこそ、恭也は神咲家へと秘密裏に接触し、己の左腕を見せたのだ。
結果、恭也の左腕には久遠の祟りが憑り付いていた。
祓おうと申し出た退魔士の言葉を断り、恭也は今でもこうして祟りを身に宿している。
これは別に恭也に害を成すものではないと分かっていたが、
何人もの退魔士に妖魔と間違われそうになった事もあった。
それでも、こうして何とか生き延びて遂に目的を達成できた。
だが、全てを終えて残ったのは何もなく、ただ虚しい気持ちが、いや、それさえも恭也の中には湧かない。
昔以上に感情の出なくなった顔に、感情そのものを殆ど感じる事無く平坦と化した心。
そして、ただ血に染まりつづけたその両手のみが残っただけ。
それでも悔いはなく、恭也は一人静かになのはと久遠に手を合わせる。
この先、自分に寿命があるのかどうかも怪しいが、
とりあえずは、なのはと久遠を士郎と一緒の場所へと移す事に決め、二人を埋めた土を掘り返す。
既に骨と化し、その骨さえも殆どが分解されているが、それでも周辺の土と一緒に持ってきた壺へと移し終える。
後に残されたのは、鞘に収まった練習刀一本。
これも一緒に埋めるかと手に取り、恭也は小さな違和感を覚える。
それが何なのか分からないままに鞘から引き抜き、

「全く錆びていない?」

土の中に数十年に渡り埋まっていたにしては、やけに綺麗な状態だと気付く。
まるで新品のように汚れ一つ見せない練習刀の刀身を見詰め、そこになのはの気配を感じる。
気でも狂ったかと思ったが、霊刀という例もあると呼びかける。
だが、答えは返ってこない。僅かに覗いた希望を再び絶望で閉ざし、恭也はその練習刀を腰に吊るす。
やはり、僅かだが感じられるのはなのはの気配。
祟りに憑かれた所為でか、多少の霊感を得た恭也はその練習刀からなのはの魂のようなものを感じる。
霊刀のようになのはの意志がある訳ではなく、ただそこに気配を感じる程度。
長い間大事にされた物に魂や精霊が宿って付喪神となるという話を思い出し、恭也はそう信じることにした。
真偽は分からないが、大事そうにその練習刀を撫でる。

「菜乃葉」

名もない練習刀にそう呼び掛けると、まるでそれに応えるように練習刀のなのはの気配が一瞬だけ強く感じられた。
気のせいかもしれないが、この時よりこの練習刀は菜乃葉と名付けられたのである。
その後、夜になるのを待って恭也は二人を入れた壺を士郎の眠る土地に埋める。
誰も訪れる者のなくなった墓はかなり汚れており、恭也はただ黙って綺麗にしていく。

「……俺だけが残ってしまった」

全てを終えて手を合わせるなり、恭也はポツリと漏らす。
その声を聞く者もなく、また答える者もない中、それっきり口を閉ざす。
じっと黙ったまま手を合わせていた恭也は、やがてゆっくりと立ち上がる。
最早、行く先もする事もない。どうするのかという考えさえも浮かばず、足の向くままに歩き出す。
そんな恭也の前に、一冊の本が。だが、特に興味を示すでもなく歩みを止めずに進む恭也。
その足が本を蹴った瞬間、恭也の目の前が白く弾ける。
龍の生き残りによる報復かとも思ったが、既に主犯や主だった者たちは始末したからと大人しく目を閉じる。
これで家族の元に行けるのならと思いつつ、同じ場所に行くには血で汚れすぎたかと自嘲を浮かべる。
こうして、恭也はその意識を手放した。



目が覚めた恭也はまだ自分が生きている事に我ながらしぶといなと呟き、その身を起こす。
だが、周囲の状況が意識を手放す前と違うと気付き、拉致されたのかと用心する。
自分の身体を確認し、何処も怪我をしてないこと、装備を一切奪われていない事に疑問を抱きながら、
近付いてくる気配に構える。恭也の前に現れたのは数人の女と一人の男。
恭也を前に訳の分からない事を喚いたかと思えば、女の一人が男と喧嘩を始める。
それをただ黙って見詰めていた恭也へと、この中で一番年上と見える女が話し掛けてくるのだった。



「アヴァター?」

学園長と名乗る女の前に連れてこられ、恭也は大よその事情を悟る。
世界の危機や、それを救う力が恭也にあるなど説明を受けるも、恭也は特に思う事もない。

「それで?」

まだ説明を続けようとする女――ミュリエルの言葉を遮り、恭也は短く問い掛ける。
何を問われたのか分からないといった様子のミュリエルに、恭也は言葉が足りなかったかと付け足す。

「それで、それがどうかしたのか」

「どうかって。ちゃんと私の話を聞いてましたか?」

「聞いてたな。世界が滅ぶというんだろう。それがどうした。
 俺以外にも世界を救うという大層な力を持った奴らが居るのだろう。だったら、そいつらが何とかすれば良い。
 俺には関係ない」

本当にどうでも良さそうに、
いや、今までの会話の間もずっと感情を出さずに淡々とした恭也の様子にミュリエルも言葉を無くす。
その言葉の真偽を確かめるように恭也の目を覗き込み、その何も写していないかのような、
全てを飲み込むかのような平坦な瞳に再び言葉を無くしてしまう。
この男は危険だと感じたミュリエルは、手元に置いて監視するためにも学園に留まらせようと言葉を投げる。

「本を見たかもしれないという事でしたが、何の説明も受けていないとの事ですね。
 だとすれば、貴方もイレギュラーだという可能性が大きいです。
 そうだとするならば、元の世界にすぐには戻れませんが」

「別にどうでも良い。帰った所で、誰かが待っている訳でもないしな」

「なら、この世界でどうやって生きていくつもりですか。
 先ほども言いましたが、破滅がもうすぐ来るんですよ。それがなくても、見知らぬ土地、いえ世界のはず」

「どうにでもなるだろう。もう良いか」

飽き飽きした感じでそう告げる恭也に、ミュリエルは尚も続ける。

「救世主になれば、何でも願いが叶いますがそれでも出て行きますか」

ある意味、とっておきの条件である。
ただし、救世主になれるかどうかは分からないという部分もあるが。
それにミュリエル自身は救世主を誕生させる気もない。
そこを隠してそう尋ねるミュリエルに、恭也は初めて反応を見せる。

「何でも?」

「ええ。富、名声、何でも貴方の望むものが」

物欲を見せた恭也に、さっきの瞳を覗いた雰囲気は気のせいだったかと思い直しつつ、ミュリエルはそう言い切る。

「魔法と言うのは何でも出来るのか。時を戻したり、大きな怪我や古傷を治したり」

だが、恭也から返ってきたのは質問であり、ミュリエルは急な事に戸惑いつつも答える。

「魔法とは言え、何でもかんでも出来る訳ではありません。
 時間を操るのは無理ですし、怪我は治せますが、古傷は難しいですね。
 勿論、死者を生き返らせたりも出来ません。万能ではないんです」

「そうか」

それきっり口を噤む恭也に、先ほどの答えをもう一度聞く。
返ってきた答えは、感情も何もなく。

「やはり興味ないな」

ただの短い言葉であった
何にも興味を示さない恭也に、ミュリエルも引き止める手立てを無くして押し黙るしかなかった。



闘技場での試験を終えたリリィは、負かした恭也に勝ち誇るような言葉を投げる。
実際には恭也は殆ど動かず、それがリリィを余計に苛立たせていたのだが、それこそ恭也には関係ない。
無理矢理この学園に入れられた恭也にとって、学園での生活ほど無意味なものはないのだから。
何を言っても無反応な恭也に更に腹を立てるリリィであったが、恭也のポケットから何か落ちたのに気付き、
それを恭也が拾い上げようとするよりも先に拾い上げる。

「なによ、これ。汚いリボンね。新しいのを買ったら?
 と言うより、何で男のアンタがリボンなんか持ってるのよ」

「リリィ!」

恭也が落としたボロボロになったリボンを拾ったまでは良かったが、
そのあまりの汚れ具合にリリィは馬鹿にしたような言葉を投げ、気持ち悪そうにリボンを恭也へと投げつける。
それは男の恭也がリボンを持っていたという事から出た行動だったのかもしれない。
リリィへとベリオが注意するような声を上げるが、既に遅く、それを見た瞬間に恭也が動く。
その場にいた他の救世主候補たちも恭也の動きに反応する事さえできず、ただリリィが吹き飛ばされるのを見る。
それは吹き飛ばされた当の本人でさえ同様で、何が起こったのか分からずに呆然と恭也を見上げる。
胸を押さえ、折れているかもしれない痛みに顔を顰める。
文句を言おうとしたリリィはしかし、目の前に立つ恭也を前にして言葉を発する事が出来なくなった。
身体が勝手に震え、恭也から離れようとする。
だが、恐怖に縛られた身体は動かず、ただ恐怖に身を縮めるしか出来ない。
恭也はそこから一歩も動いていないにも関わらず、その喉元に刃を突きつけられているような錯覚さえ覚え、
リリィは息苦しそうに喘ぐ。そんなリリィをまるで興味がないとばかりに一瞥すると、
リボンを拾い上げ、大事そうにポケットへと仕舞い込む。

「次はない」

淡々と何の感情もない声に恐怖を抱き、動けないリリィに背を向けて恭也は立ち去るのだった。



Dark Savior 近日……激しく後悔







う、うーん、ダークのまま終わるのはどうかと思って、無理からクロスしたが、余計に失敗?

美姫 「これって、白に付きそうよね」

いや、それはないな。世界を滅ぼす事にさえ興味ないから。
と言うか、何にも興味を持たないってのは、動かし難いな。

美姫 「ふーん。まあ、それはそうと今年中に大丈夫なのリリ恭なの」

それは勿論! ……だよな。

美姫 「今、何か言わなかった?」

いやいや、冗談だっての。後数話分の流れは出来てるし。
ラストも決まってるし。後は書くだけ。

美姫 「さっさと書き上げてよね」

わ、分かってるって。さあて、頑張って書くぞ〜。

美姫 「書け、書け〜」

そんなこんなで今週はこの辺で。

美姫 「また来週〜」


11月22日(木)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、一日早いけれど、とお送り中!>



こうして、再びおお天道さまを見れるなんて……。
って、何処に!?

美姫 「もう夜よ」

オウ、ジーザス。

美姫 「それはそうと、今日はいつもと違う曜日ね」

まあな。ほら、明日はお休みだから。

美姫 「休みで放送時間が変わるって」

気にするな! そんなこんなで明日は更新できませんので、お許しください。

美姫 「サボるな!」

ぶべらっ!
いやいや、色々とあるんだよ。

美姫 「ふ〜ん」

ああ、その冷たい眼差しが痛い、痛いよ。
と、おふざけはそのぐらいにして、なんと、なんとぉぉ!

美姫 「今回、CMをまた頂きました」

しかも、CMネタは初!

美姫 「T.Sさんから頂きましたよ〜」

ありがとうございます。という訳で、早速……。

美姫 「CMよ〜」







投げ込まれた爆弾。
それを抱え、神速を使用して恭也は室外へと駆け出る。
一歩、また一歩と地面を踏むたび右膝に鈍痛が走るが、気にしてなどいられない。
少しでも早く、少しでも遠く、それを遠ざけねばならないから・・・。

「「恭也(恭ちゃん)!!!」」

部屋を駆け出る寸前に二人の、美沙斗と美由希の声が聞こえた。
しかし、それに振り向くことも、足を止めることも、するわけにはいかない。
振り向けば、足を止めれば、爆弾の脅威に二人を晒してしまうことになるから。

「っ!!」

神速の領域が切れると共に、眩い閃光が自身の抱えている物から発せられる。
どれくらい走っただろうか、どれくらい離れただろうか。
よくは分からないが、少なくとも二人がこの脅威に晒されることはない。
そう考えると不謹慎ながらも笑みが浮かんでしまうことを、恭也は止められなかった。

(すまない・・・・・・皆)

家族や友人たちの顔が、まるで走馬灯のように頭の中を駆け巡る。
同時に自分の死で皆が悲しむ顔を思い浮かべ、心中で謝罪をする。
許してくれないだろうな・・・そう思いながらも、申し訳なさを込めて謝罪する。
そして、謝罪の言葉を心中に受かべると共に止まっていた時間は動き出し、爆弾が炸裂する。
そのとき、視界が光に包まれ自分の死を確信したそのとき、ほんの一瞬だけそれは見えた。



中心にある目玉をギョロリを動かす、異形の形をした何かが・・・・・・。



―新大陸エレンシア・メリル山道―



雲一つ見えないとても晴れた日。
山沿いに山道を歩く二人の少女の姿があった。
一人は薄い青色の短い髪をした、十歳前後程度の少女。
そしてもう一人は、その少女よりも幾分か下と見られる、肩より若干下まである緑の髪をした少女。
その二人の少女は買い物帰りなのか、何やらぎっしりと詰まった紙袋を持ちながら手を繋いで歩いていた。

「お姉ちゃん、今日のご飯は何にするの?」

「う〜ん・・・そうねぇ。食材も買ったわけだからいろいろできるけど・・・・・・フィーナは何がいい?」

「何でもいいよ!お姉ちゃんのご飯は何でも美味しいから!」

屈託のない笑顔で言う小さな少女―フィーナに、姉と呼ばれた少女は微笑を浮かべる。
意識してではないだろうが、フィーナに向けて浮かべたその大人びた笑みが、少女の年齢を若干上に見せる。
そんな微笑ましくも仲の良い姉妹は、繋いだ手を離すことなく山道を歩き続ける。
が、それからしばらく歩き続けた二人の足は、あるものを見つけたことによって止まることとなった。

「お姉ちゃん、誰か倒れてるよ?」

「そうね・・・・・・ん、フィーナ、ちょっとここで待ってて。お姉ちゃんがちょっと見てくるから」

「やっ!フィーナも一緒に行く!」

何度少女が言っても、フィーナは頑としてついていくと言い続ける。
そのため、少女は仕方ないと折れ、絶対に自分の後ろから離れないということを約束することで了承した。
それが決まると、二人はゆっくりゆっくりと地面に倒れている人物へと近づいていく。
そして、歩み続けてその人物の傍まで近づいたとき、少女は若干驚きの表情を浮かべてしゃがみ込む。

「酷い怪我・・・・・・少し、不味いかもしれないわね」

「お姉ちゃん・・・・・・この人、全然動かないよ」

倒れている人物の負っている怪我の酷さに少女は呟き、
フィーナはその人物がぴくりとも動かないことに少女の服をギュッと掴む。
少女は呟いた後、その人物を負担が掛からないようにゆっくりと仰向けからうつ伏せの状態に移し、
口に耳を近づける。すると、死んでもおかしくない怪我であるものの、
その人物は微かにではあるが小さくゆっくりと呼吸をしていた。
それを少女は聞き、生きていることを確認すると、どうするべきかと思案するような表情を浮かべる。

「お姉ちゃん・・・・・・」

「・・・・・・」

その人物を前に不安そうな顔で少女を呼ぶフィーナに、考えながら顔を向ける。
そしてそこから考えること僅か、見つけてしまった以上このままにしておくこともできないという結論に至る。
その結論に至ると少女は紙袋をフィーナに持つようお願いしてその人物を背中に背負い、
フィーナと共に再び歩き始めるのだった。



―新大陸エレンシア・少女&フィーナの家―



あれから数刻、二人の家のベッドでその人物は規則的な寝息を立てていた。
連れ帰ったすぐに呼びにいった医者が言うにはかなり危ない状態だったらしいが、どうにか一命は取り留めた。
そして現在、医者の帰りを見送り、二人は寝息を立てるその人物に静かに視線を向けていた。

「もう大丈夫なの、このお兄ちゃん?」

「危なかったみたいだけど、とりあえずは大丈夫みたい」

「よかったぁ・・・・・・」

人が目の前で死ぬ所など見たくなかったのか、フィーナはその言葉に安心を浮かべる。
そしてその人物の額に置かれるタオルに手を当て、温くなっているのを知ると少女はタオルを手に取る。

「ん・・・ん・・・・・・」

手に取ったタオルをベッドの横の棚に置かれている洗面器に浸け、声を漏らしつつ絞って再び額へと置く。
すると、額に置かれたタオルのひんやり感からか、その人物は小さく呻きを漏らし、
閉じていた瞳がゆっくりと開かれる。
開かれた瞳にフィーナは少し驚き、すぐに少女の駆け寄ると後ろへと隠れ、様子を窺うように顔を覗かせる。
フィーナが少女の後ろに隠れてから、その人物は開いた目の焦点が合うと共に身体を起こそうとする。
それを見た少女は若干慌てつつ駆け寄り、起きようとする動きを制して再びゆっくりと寝かせる。

「無理をしないでください。本来なら死んでもおかしくない大怪我なんですから」

「・・・・・・ここ、は?」

「ここは私たちの家です。
 あなたが山道の途中で倒れているのを私たちが見つけて、ここに運んで手当てをしたんですよ」

「そう、か・・・・・・ありがとう」

「お礼なんていいですよ。それよりも、今はゆっくりと身体を休めてください」

少女がそう言うと、その人物は僅かに頷いて開けた目を再び閉じる。
そしてほぼ間もなく、規則的な寝息を再度立て始めるのだった。



あれから更に時間が経ち、日付が変わった翌日の朝。
目を覚ましたその人物の額のタオルを変え、少女はフィーナと共にベッドの横に椅子を置いて腰掛けていた。
その人物は少女二人の目から見ても顔色が大分良くなっており、
用意した食事を僅かながらも口にしたことから食欲も少しは出たようだった。
そして、それから何度か額のタオルを濡らしては置き、
濡らしては置きを繰り返したとき、その人物は静かに口を開いた。

「そういえば、昨日は名乗っていなかったな。俺は恭也・・・高町恭也だ」

「タカマチキョウヤさん、ですか?変わった名前なんですね・・・・・・
 あ、私はリーンと言います。それで、この子が妹のフィーナです」

「初めまして・・・・・・お兄ちゃん、もうお身体は大丈夫なの?」

「ああ、おかげさまでな。にしても、変わった名前・・・・・・か」

少女―リーンの口にした言葉を反復して呟き、恭也はある考えを頭に浮かべる。
それは、今いるこの場所が自分の元いた場所とはまったく異なる場所なのではないかということ。
二人の少女の名前、意識が途絶える前とは違う場所・・・・・・情報は少ないが、そう思うほうが違和感は少ない。

「一つ、聞いてもいいかな・・・?」

「え?あ、はい、何ですか?」

「君たちの家が建っている、この土地について・・・・・・詳しく教えてくれないか?」

「この土地について、ですか?いいですけど・・・・・・
 えっと、私たちの住んでるこの家が建つのは、新大陸エレンシアにあるメリル山道外れの草原です。
 それで、この草原が出来た経緯は・・・」

「ああ、そこまではいい・・・・・・ところで、新大陸エレンシア、というのは何だ?」

「何って・・・・・・大陸の名前に決まってるじゃないですか」

当たり前のように返してくるリーンの表情に、恭也は冗談ではないと判断する。
そして、表面上は普通を装いつつも、内心ではかなりの動揺を浮かべることとなった。

(違う場所とは思っていたが・・・・・・まさか、世界すら違うとはな)

ある程度の地理は心得ているが、新大陸エレンシアなるものはまったく覚えがない。
未発見の大陸、という考えも浮かべたが、そっちのほうも常識外れな考えなので除外された。
しかし、だとすると世界すらも違うという考えしか浮かばず、恭也は疲れたような溜め息をつく。

「あの、タカマチキョウヤさん・・・・・・私からも、いいですか?」

「ああ、構わない。それと、俺のことは恭也でいいから」

「分かりました。じゃあ、キョウヤさん・・・・・・あなたは、なんであんな場所に倒れてたんですか?」

「それは・・・俺にもわからない。気づいたら、ここに寝かされていたからな」

「そうですか・・・・・・じゃあ、なんであんな大怪我を?
 この辺りの魔物は毒を持っていたりはしますが、あんな大怪我を負うほど獰猛な魔物はいないはずなんですけど」

リーンの口にした言葉で、恭也の考えは確定することとなった。
少なくとも恭也の住む世界、地球上では魔物と呼ばれるような生き物は存在しないのだ。
だが、それが確定されたからといって戸惑いが消えるわけではない。
それもそうだろう・・・・・・人間離れしてるとは言われてきたが、とうとう世界さえも越えてしまったのだから。

(ふむ・・・・・・どうするか)

聞いた質問に答えず黙っている恭也に、リーンは不思議そうな顔を浮かべる。
それを視界に捉えつつ、恭也は真実を話すべきかどうかを心中で思案する。
正直、信じ難い話だろう・・・・・・当事者である恭也ですら、確定されてもまだ俄には信じ切れていないのだ。
しかし、もし世界すらも違うのならば、恭也は身寄りがまるでないも同然。
ならば少しでも、真実を知っている者がいたほうがいい。
幸いにして、この二人の少女は恭也の目から見ても、それを言い触らしたりするような子ではないだろう。
故に、恭也は思案を始めて僅かの時間で決断し、二人に真実を話した。
すると話し終えた後、リーンは信じられないというような驚きの表情を浮かべ、
フィーナに至っては話を理解し切れていない様子だった。

「俄には、信じ難い話ですね・・・・・・」

「まあ・・・それが当然なんだろうな」

「ですけど、私の目から見ても語っていたキョウヤさんの目は嘘を言っているようには見えませんでした。
 ですから・・・・・・信じます」

「・・・・・・ありがとう」

「お礼を言われることじゃありませんよ・・・・・・
 それで、これからどうするんですか? 別の世界から来たのなら、身寄りも行く当てもないんですよね?」

「まあ、な。さて・・・どうしたものか」

本当に困ったように恭也は思案する中、今まで黙していたフィーナがリーンへと耳打ちする。
何を耳打ちされたのか、フィーナが話し終えるとリーンは若干驚きを顔に浮かべ、同時に何かを考え始める。
そして考え始めてほぼ間もなく、リーンは小さく頷くと共に今だ思案している恭也へと話しかけた。

「キョウヤさん・・・・・・提案なんですけど、身寄りも行く当てもないなら、この家に住みませんか?」

「え・・・・・・あ、いや、それはさすがに迷惑になるだろ?」

「いえ、提案した本人のフィーナはもちろんですけど、私もキョウヤさんが住むことに関しては全然構いません。
 さすがにただでとはいきませんので、家事とか買い物とかを手伝ってもらうという形になりますけど・・・・・・」

「ふむ、その程度でしばらく置いてくれるのなら願ったり叶ったりなんだが・・・・・・ほんとにいいのか?」

「はい」

確認をするように尋ねるとリーンは小さく頷き、フィーナはにこやかに笑みを浮かべる。
その後、結果としてその提案に乗るという形で恭也は二人の家に厄介になることになったのだった。



そして、恭也が厄介になったそのときから、およそ五年の時が流れる。

同時に、年月を重ねるごとに止まっていた歯車は音を立ててゆっくりと動き始める。

運命という歯車がゆっくり・・・・・・ゆっくりと。



GRANDIA〜DifferentWorld Guardians〜 公開予定日……未定







グランディアとのクロスかな?

美姫 「そうみたいね」

異世界へと飛ばされ、そこで暮らすこととなる恭也か。

美姫 「面白そうよね」

だな。さてさて、時間も良いようだし……。

美姫 「いやいや、何をさぼろうとしてるのかな?」

ほ、ほら、T.SさんがCMSSをくれた事だし、俺はちょっと一休みでも。

美姫 「許す訳ないじゃない♪」

……ですよね。

美姫 「そんな訳で、強制的にCMよ〜」

オウ、ジーザス……。







「恭也の旦那、こうなったら仮契約しかないっすよ!」

数多くの魔物に囲まれ、一時的にネギの魔法で作った竜巻の中で、オコジョのカモがいきなり口を開く。
その言葉を聞き流し、恭也は風の壁の向こうに居るであろう魔物たちの数を思い出す。

「刃が通じるだけましだが、流石にあの数は辛いな」

自分一人がただ逃げ延びるというのなら、方法もなくはない。
だが、自分たちは逃げるのではなく救出へと向かわなければならないのだ。
ましてや、恭也の傍に守るべき大事な家族がいるのである。
当然の事ながら、そんな案はない。
と、同じように考え込んでいたなのはが不意に顔を上げる。

「お兄ちゃん、私と仮契約しよう。
 そうすれば、力が手に入るんでしょう」

「その通りだぜ、お嬢ちゃん。ほらほら、恭也の旦那、お嬢ちゃんの許可は出ましたぜ」

「しかし……」

それでも躊躇う恭也。
そんな簡単に力が手に入るという事にも若干の抵抗はあるが、それよりも何より、
それを行う事によって、なのはまでもが裏の世界に足を踏み入れざるを得ない状況になるのではという懸念が強い。
恭也のそんな葛藤を読み取り、なのはは小さく笑う。

「お兄ちゃんが守ってくれるんだよね」

「それは当然だが……」

「大丈夫、私もエヴァさんに修行してもらっているし、自分の身ぐらいは。
 それに、今度は私がお兄ちゃんを助けてあげる事だって」

更に紡がれるなのはの言葉に、恭也は更に苦悩する。
が、時間が本当にないのは間違いなく、こうしている間にも風の防壁は弱まりを見せる。

「お兄ちゃん! 他に案があるんですか!?
 ないのなら、難しい事は後で考えよう。
 今は今出来る事をしないとね」

なのはに一喝され、恭也も覚悟を決める。
なのはの正面に立つ恭也。カモがすかさず仮契約の為の魔法を唱え、二人の足元に魔法陣が浮かび上がる。
恭也はなのはの肩に手を置き、そっと顔を近付け……。

「えへへ、私の初めてはお兄ちゃんだね」

何故か嬉しそうにそう呟くのを聞きながら、恭也はそっとなのはに口付ける。
瞬間、カモがパクティオーと唱え、恭也の身体が光る。

「……これが力か」

自身の身体に注がれるよく分からない力。
だが、間違いなく身体能力が何倍にも跳ね上がっているのを感じられる。
何度か拳を閉じたり開いたりしながら、その感触を確かめるように小太刀を手にする。

「おっと、恭也の旦那。こいつを忘れてますぜ」

言って恭也に一枚のカード――契約の証を差し出す。
自分の姿が描かれたカードを懐に仕舞い、恭也は弱まりつつある風の防壁を眺める。

「桜咲さん、神楽坂さん宜しいですか」

「はい、私の方がいつでも」

「任せてよ!」

恭也の言葉に頼もしい言葉を返す刹那と明日菜。
その声を聞き、今度はネギへと顔を向ける。

「なら、ネギ先生。ここは俺たちに任せて、近衛さんを」

「はい、お願いします!」

風の防壁が消えるなり、ネギは大きな魔法を一つ放ち、それに怯んだ隙に杖に跨りカモと一緒に夜空へと。
後に残されたのは、西洋魔術の情緒のなさを嘆く魔物たちと、それに臨もうとする恭也たち。
互いに暫し無言で対峙し、先に向こうからこちらへと攻めてくる。

「私と明日菜さんでこちらを片付けます。
 不破さんはなのはさんとそっちを」

刹那の言葉に頷き返し、恭也は刹那、明日菜とは逆側から向かってくる魔物を切り伏せる。
先程とは違い、たった一撃で軽く切り伏せれた事に驚きつつ、恭也はなのはに近付くモノたちから斬っていく。
その後ろで恭也に守られながら、なのはは呪文を唱える。
完全な魔法使いタイプのなのはは、砲台としての役割を。
そして、恭也はそんななのはを守る盾の役割を。
なのはに近付く事も出来ず、魔物は恭也に切り伏せられ、完成したなのはの魔法に纏めて吹き飛ばされる。
膨大な魔力をただ砲撃魔法として放つなのは。
何よりも守る事を得意とする恭也。魔法使いと従者として、二人の相性は相当良いのかもしれない。







またまた同じネタですみません。
どうしても戦闘シーンだけはやりたかった。

美姫 「短いけれどね」

あ、あははは。
ともあれ、明日はお休みなので今週はこの辺で。

美姫 「また来週ね〜」


11月16日(金)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、夜は寒い寒い寒い♪、とお届け中!>



あの恐るべきお仕置きから一週間。
こうして再び空を見ることが出来るとは……。

美姫 「失礼ね。何も知らない人が聞いたら、まるで私が極悪人みたいじゃない」

……空が青いな〜。

美姫 「もの凄くやるせなさを感じるんだけれど?」

そうか? 気のせいだろう。

美姫 「因みに、言うほど更新してないわよアンタ」

…………えっと。

美姫 「つまり、今のままだと来週早々にでもまた……」

い、いやじゃぁぁぁぁ! ゆ、許して。お願いだよ〜。
やめ、やめてぇぇ。

美姫 「浩がトラウマを掘り起こしている間に、CMで〜す」







恭也たちが辿り着いた先では、クラスメイトであるエヴァンジェリンが空を飛び、
ネギが彼女に向かって魔法を放っていた。
またその下、橋の上ではこれまたクラスメイトの神楽坂明日菜と絡繰茶々丸が肉弾戦を繰り広げていた。
事情が分からないながらも、エヴァンジェリンが吸血鬼でネギの血を狙っていると知る恭也。
だが、助太刀しようにも相手が空の上ではどうしようもない。
となれば、明日菜の方なら手助けできそうなのだが。

「ねぇ、お兄ちゃん。もしかして、忍さんと同じなのかな」

言われてみれば、血を吸う親友が居たと思い出す。
その傍にも確かに、茶々丸のような存在もいたと。

「つまり、夜の一族か。だとすれば、吸われても命に関わる事はないだろうな。
 とは言え、ああして戦っている以上は何か事情があるのだろう」

他人の事情にそう簡単に関わる訳にもいかず、恭也はよっぽどの危険がない限りは見守る事にする。
と、地上に降り立ったネギに向け、エヴァンジェリンが呪文を唱える。
対するネギの方も呪文を唱え、同時に二人の魔法がぶつかり合う。
どちらかでも危なくなれば止めに入るつもりであった恭也であったが、
目の前のものを見せられては止めようがないと悟る。

「これが魔法なのか……」

「本当にゲームや漫画みたいだね」

何処かずれた感想を告げるなのはに苦笑しつつも、恭也は事の成り行きを見守る。
その先で、ネギの魔法が急に強くなりエヴァンジェリンを吹き飛ばす。
同時、停電が終わったのか学園内で電気が灯り出す。
と、それまで空に浮いていたエヴァンジェリンが川に向かって落ちていく。

「お兄ちゃん!」

思わず叫んだなのはの声に応えるように、恭也は隠れていた陰から飛び出す。
なのはの声にネギたちは驚いた表情で恭也たちを見る。
ネギなどは、魔法を知られたことで顔を青くさせている。
それを申し訳ないと思いつつも、恭也は欄干に足を乗せてそのまま飛び降りる。
落ちていくエヴァンジェリンに追い付き、その身体を受け止めると鋼糸を上へと向かって投げようとする。
流石に肩を痛め、手に傷が出来るだろうが、それこそ今更である。
躊躇いなく鋼糸を投げようとして、こちらに向かって飛んでくるネギが目に入る。
近付くネギと落下する速度、その両方を考慮して恭也はネギに向かって手を伸ばす。
ネギが近付き、恭也はその杖を握り締める。

「助かりました、ネギ先生」

「いえ、生徒を助けるのは当然ですから」

「正確には、俺は生徒ではないですけれどね」

「そうでしたね。でも、エヴァンジェリンさんは僕の生徒ですから」

そんな事を話しながら橋の上へと戻った恭也たち。
恭也は何故か全裸になっているエヴァンジェリンを見ないようにしつつ、来ていた上着を掛けてやる。

「……ふん、一応礼を言っておいてやる。
 だが、貴様が覚えていればだがな」

「どういう事ですか?」

「なに、私は何もしないさ。だが……、さあ坊やどうする?
 このままだと魔法の事を知られたままだぞ」

くっくっくと楽しそうに笑いながら、泣き出しそうな顔で恭也を見ているネギを見詰める。
ばれれば本国に戻された上に、オコジョにされるという罰に青ざめるネギ。
杖を構え、記憶を消そうとするも明日菜に叩かれる。

「いい加減に学習しなさいよね、ネギ」

「で、でもアスナさん」

「だからって、簡単に人の記憶を操るなんて間違っているでしょう」

明日菜の台詞に自分たちの記憶を弄られるところだったのかと悟り、恭也は急いでネギに頭を下げる。

「ネギ先生、魔法の事は秘密にします。
 実はお願いがあってこの学園に来たんです」

突然、頭を下げてそんな事を言う恭也に、ネギだけでなくその場の誰もがぽかんとした顔になる。
そんな中、恭也は頭を上げて説明を始める。
その隣になのはを呼んで。

「……つまり、なのはさんは本当は小学生という事ですか」

「はい。それで、忍、俺の友達が魔法の事を知ってまして。
 伝説の魔法使いの子供なら治せるんじゃないかと」

「そうでしたか。でも、僕あまり呪いとかは詳しくなくて。
 あ、そうだ! エヴァンジェリンさんなら……」

「私が? 何故、そんな事をしてやらんといけないんだ。
 何の義理もないだろう。良いか、忘れるなよ坊や。私は悪の魔法使いなんだ。
 頼むにはそれなりの代価が必要……」

「「お願いします!」」

ネギの言葉に恭也となのはは揃って頭を下げる。

「だから、しないと……」

「「お願いします」」

顔を上げずに何度もお願いする恭也。
それを眺めていたエヴァンジェリンは、鬱陶しそうに声を荒げる。

「分かった、分かったからやめろ。
 ったく、しつこい奴だ。まあ、一応さっき助けてもらった上に上着も借りているからな。
 特別に見てやろう」

「ありがとうございます!」

エヴァンジェリンの言葉に嬉しそうに恭也は顔を上げ、なのはの後ろに立つ。
なのはの前に立ったエヴァンジェリンは、何かを呟き、

「私の目を見ろ、高町なのは」

そう告げる。エヴァンジェリンと目を合わせた瞬間、なのはの身体が硬直したように固まる。
慌てる恭也に茶々丸が落ち着いた口調で、

「大丈夫です。今、マスターがなのはさんの身体を調べています」

待つ事数分、エヴァンジェリンが恭也へと顔を向ける。

「結論から言おう。治すのは無理だ。
 そもそも私は治癒系の魔法は得意ではないしな。
 それと、成長したといったが違うな」

「違う?」

エヴァンジェリンの言葉に肩を落としつつも、その言葉にじっと見詰め返す。
反応した恭也にニヤリと笑いながら、

「さて、これ以上は別の代価を……」

「いい加減にしなさいよね!」

言葉の途中で明日菜のハリセンが唸り、エヴァンジェリンを吹き飛ばす。

「神楽坂明日菜! 貴様、またしても真祖の吸血鬼である私を」

「真祖かなんだか知らないけれど、こんなに必死に頼んでいるんだからちゃんと教えてあげなさいよね!」

「ちっ、本当にお節介な馬鹿だな貴様。
 まあ良い。不破恭也と言ったか。まあ、兄妹だというのなら、高町恭也なのかもしれんが、どうでも良い。
 特別に教えてやろう。その娘に掛けられた呪いは命を奪うようなものだ。
 だが、その娘の中には膨大な魔力が眠っていたらしく、それがその呪いを無効にしたんだ。
 しかし、完全には無効に出来なかったんだろうな。結果として術式が可笑しくなって、今の姿になったという訳だ」

「魔力? なのはに?」

呟いた恭也の言葉に、エヴァンジェリンは頷く。

「ああ、しかもその魔力量……、もしかしたらあのサウザンドマスターすら超えるかもな。
 尤も魔法を知らなければ、ただの持ち腐れだがな。
 どうしても戻りたければ、その小娘自らが魔法を覚える方が早いかもしれんぞ。
 これで良いだろう。茶々丸帰るぞ!」

そう言い捨てるとエヴァンジェリンは茶々丸を呼び、さっさとこの場を去っていく。
暫くその背中を見送っていた恭也であったが、ネギへと顔を向ける。

「ネギ先生でも無理ですか」

「すみません。僕には何も出来ません」

「あ、いえ、気にしないで下さい」

謝るネギに逆に恐縮してしまう。
戻る手掛かりがなくて落ち込んでいるであろうなのはの頭に手を置き、

「心配するな。絶対に元に戻してやるから」

「……うん!」

恭也の言葉に何とか笑顔を見せながら、なのははエヴァンジェリンの言葉を思い返していた。
魔法を覚えれば、という言葉を。
そんななのはに気付かず、ネギはいい事を思いついたと告げる。

「お父さんに会えれば、きっと何とかしてくれます」

「しかし、君のお父さんは……」

言い辛そうにする恭也であったが、ネギは小さく首を振って生きていると告げる。
十年前に会ったと。ただし、現在の居場所は分からないけれどと付け加えるが。

「そうか。だが、生きていると分かっただけでも収穫だ。
 忍に頼んで探してもらおう」

「それで、高町さんはこれからどうしますか?」

恭也ではなくなのはにそう尋ねる。
目的が元に戻る事なら、これ以上学園に居てもどうしようもないからだ。
しかし、同時に担任としては少し寂しくもあるが。

「……それなんですが、もう少しここに居ようと思います」

「そうなのか?」

「うん。忍さんに探しては貰うけれど、万が一に備えて自分でも魔法を覚えようと思って」

「そうですよ! それは良い考えです」

なのはの言葉にネギは嬉しそうにそう言うが、恭也は少し考える。

「魔法というものが秘匿されている以上、それを習う事が出来るのか?」

「そこはちゃんと考えてるよ、お兄ちゃん。ネギ先生に教えてもらおうと思うんだ」

「僕ですか!?」

「はい。駄目ですか?」

「いえ、構いませんよ。と言っても、僕も治癒系はあまり知らないんですけれど。
 とは言え、まずは基礎ですからね。それなら問題ないですよ」

「それじゃあ、お願いします!」

言って頭を下げるなのはに続き、恭也もまた頭を下げる。
慌てて顔を上げさせるネギを笑いながら見詰める明日菜。
そこへオコジョがいやらしい笑みを浮かべて近付く。

「手っ取り早く、兄貴と契約してしまえば潜在能力が目覚めるかもしれませんぜ」

「「契約?」」

オコジョが喋る程度では驚かない兄妹は、言われた言葉に揃って首を傾げる。
そんなオコジョのカモくんの首を明日菜が締める。

「またアンタはそんな事を……」

「く、苦しいぃぃ。あ、姐さん、洒落にならない……」

言葉を上手く発っせないカモに代わり、明日菜がその首を締めたまま契約について簡単に説明してやる。
聞いて顔を紅くするなのはと、カモに思わず殺気をぶつける恭也。
殺気を浴びたカモは、ここでようやく恭也が只者ではないと気付きその身を恐怖で震わせる。

「い、嫌ですぜ、恭也の旦那。冗談ですよ、冗談。
 あ、あはははははー。地道な努力が一番ですってば」

行き成り態度を変えたカモを不思議そうに見ながら、明日菜は首を傾げる。

「とりあえず、そういう事なので、なのはをお願います、ネギ先生」

「お願いします」

揃って再び頭を下げる兄妹に、ネギは力強く返事をするのだった。
こうして、なのはは図らずとも魔法の世界に関わる事になる。
それは同時に、恭也もまた関わるようになる事を意味していた。







安藤さんが気に入ってくれたみたいなので、三週連続で同じネタを。

美姫 「ありがとうございま〜す」

とは言え、流石にネタはここまでかな。

美姫 「修学旅行とかあるじゃない」

まあ、あるけどな。って、何を真剣に論じているかな。

美姫 「そうだったわ。今はネタよりもSSの方だわ」

し、しまった! 藪をつついて蛇を……ぶべらっ!

美姫 「誰が蛇よ!」

う、うぅぅ、痛い。

美姫 「痛がる前に書きなさいよ!」

もう滅茶苦茶だよ!

美姫 「なら、書け!」

そこはなくさないのかよ!

美姫 「当然でしょう。とは言え、実際に後数話なんでしょう」

まあな。という訳で、一気に書き上げたい所だよ。

美姫 「精々、苦悩し、あがくと良いわ」

いや、お前は俺に書かせたいのか、書かせたくないのか?

美姫 「勿論、書かせる方に決まってるでしょうが」

ですよね!

美姫 「そんなこんなで馬鹿を言っている内に……」

おう、もうそんな時間か。
それでは、今週はこの辺で。

美姫 「それじゃあ、また来週〜」


11月9日(金)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、日を追うごとに寒さが増している♪、とお送り中!>



ふー、空が青い。

美姫 「この馬鹿!」

ぶべらっ!

美姫 「まったく更新しないで、何を、何をしてたの!」

が、がばばばば……。

美姫 「はぁぁ」

おいおい、そんな大きな溜め息を吐いて。
溜め息は吐くたびに幸せが逃げる……ぶべらっ!

美姫 「アンタにだけは今、言われたくないわ」

う、うぅぅ。本当にごめんなさい。
とっても反省してます。と言うか、俺も書きたいです。

美姫 「なら、書け! さあ、書け! やれ、書け!」

ほ、ほら、今週は色々と忙しくって……。

美姫 「もう大丈夫でしょう。なら、書け!」

が、頑張るよ。

美姫 「もうその言葉は聞き飽きた〜。さあ、書け!」

う、うぅぅ、かなり怒ってますね。

美姫 「当たり前よ。という訳で、書け!」

さ、さっきからそればっかり……。

美姫 「それ以外にいう事はないわ。ほら、書け!」

うっ……、うぅぅ。
ごめんよ〜、許してくれ〜。

美姫 「はいはい。許してあげるわよ。だから、書け!」

……う、うわ〜〜んっ!

美姫 「はい、逃げないの! 書け!」

せ、精神的にくるっす。

美姫 「口よりも手を動かせ。さっさと書け!」

……はい。と、とりあえず、ほら、そろそろ……。

美姫 「そうね。とりあえず、CMで〜す。アンタは書け!」

シクシク。







恭也となのはが麻帆良へと転入して来たのが先週のこと。
未だにネギが魔法使いだと言う証拠は掴めていない二人。
休憩時間では流石に教師であるネギも職員室などに戻っており、場所が場所だけに恭也たちも潜り込めない。
まあ、潜り込めたとしても他に先生たちもいるので魔法を使う場面もないだろうが。
恭也はなのはの傍に立ち、すっかり溶け込んでクラスメイトと話しているなのはを見下ろす。

(まあ、焦っても仕方ないしな)

当の本人がまだ明るいのが救いであると恭也は考え、ふとクラスメイトたちの視線を感じる。

「どうかしましたか?」

「いや、なんつーかさ、執事を連れて学校に来る生徒なんて初めてだからさ。
 やっぱりまだ珍しくてね」

言ってカメラを構えるのは、なのはのクラスメイトの一人、朝倉和美である。

「このクラスは色々と変わった人が多いけれど、なのはちゃんも変わってるね。
 委員長でも執事は流石に始終、傍に居ないし。一体、どこのお嬢様なんだか」

「やっぱり変かな?」

「うーん、まあなのはちゃんはこれが普通の環境だったんだろうから、変とは思わないかもしれないけれどね。
 にしても、よくうちの学園が認めたよね。一応、女子部なんだけれどね。
 相当のお金持ちって事だよね。でも、高町なんて名前の財閥とかは知らないし……。
 やっぱり偽名?」

そう尋ねてくる和美に恭也は無言のままでなのはに対応を任せ、なのはの方はただにっこりと笑い、

「さあ、どうでしょう?」

肯定も否定もせずにただそう告げる。
これ以上の追求は無理と諦めた和美の耳は、隣で話をしているクラスメイトの話を耳聡く聞きつける。

「何々? 噂の吸血鬼の話? もしかして、目撃者が出たとか?」

「吸血鬼?」

その単語に思わず声を出してしまう恭也。

「はいです。あくまでも噂なんですけれど……」

呑んでいたパックジュースのストローから口を話し、そう言いおくと、その噂話を綾瀬夕映は話し出す。
おどろおどろしい雰囲気を全身から醸し出し、いかにもな口調で語る。
それを表情を変えずに恭也は聞き、なのはは少しだけ怖がりながらも興味深そうに聴き入るのだった。



それから数日後、学園中が停電になるとの話を聞き、恭也となのははそれに備えて買い出しに出ていた。

「しかし、常にネギ先生に張り付いている訳にはいかないとは言え……」

「ご、ごめんね、お兄ちゃん」

「気にするな。仕方ないだろう。本来ならなのはは小学生なんだから。
 中学の勉強が全然出来なくても気にするような事じゃない」

「でも、その所為で放課後に居残りさせられちゃって……」

なのはの言う通り、ここ数日は毎日放課後に居残り勉強をさせられていたなのは。
そもそも、小学校で習うべき基礎部分を履修していないのだから仕方ないのだが、
全く勉強についていけないなのははここ数日、居残りをさせられていた。
当然、執事として無理を通してこの学園に来ている恭也が傍を離れる訳にもいかず、
結果として、ネギに張り付くことも出来ずに日数だけが過ぎていったのである。
自分の所為だとしょんぼりと俯くなのはの頭に手を乗せ、恭也は優しく微笑む。

「気にしないでください、お嬢様」

「もう、誰もいないんだからそんな口調はしないでください」

怒ったように頬を膨らませるなのは。その頬を軽く手で押して遊びながら、恭也は真面目な顔で言う。

「ですけれど、いつ、何処で誰が見ているとも限りませんから」

我が兄がそう簡単に周囲に人が居るのに気付かないとは思わないが、確かに言う通りでもある。
だから、なのはも口調を改める。

「なら、命令します恭也。これからは、私と丁寧語で話すのは禁止です」

「それはそれで可笑しな事にならないか?」

「気を付ければ大丈夫だし、そんなに気にすることもないと思うけれど……」

「まあ、考えておこう」

言いながら再びなのはの頭に手を置き、軽く撫でる。
その仕種に頬を緩ませつつ、なのはは恭也の手を取ると帰路へと着くのだった。



その夜、予め言われていた時間に停電が起こり、恭也は用意しておいたランプに火を灯す。
柔らかな炎の光に照らされる部屋の中、なのはは珍しそうにそのランプの炎を見詰める。
流石に女子寮にまで例外は適用されず、恭也となのはは寮ではなく学園の広い敷地の中に、
一軒の小さな家を借りていた。
手配したのはこれも忍で、どういう経由かは分からないがありがたく使わせてもらっている。

「今、何か感じなかったお兄ちゃん?」

不意になのはがそんな事を呟き、特に何も感じなかった恭也であったが、その感覚を家の周辺に伸ばす。
だが、周囲には誰の気配も感じられない。そう伝えるも、なのはは難しい顔をする。

「うーん、何かこうざわざわとするような……」

「そんなに気になるのなら、少し見てみるか」

言って立ち上がった恭也に続き、なのはもまた立ち上がる。
ここに居るように言うも、

「だってお兄ちゃんは何も感じなかったんでしょう?
 だったら、私が一緒の方が良いじゃない」

「……分かった。けれど、危険だと判断したらすぐに家の中に戻るんだぞ」

「はーい」

お兄ちゃんの傍の方が安全だと思う言葉は飲み込み、なのはは素直に返事する。
その上で恭也の手を握り、停電で真っ暗になっている外へ。

「それで、どっちの方から感じたんだ?」

「あっち」

言って指差したのは寮のある方角で、恭也もなのはの指した方角を見る。
その時、何とはなしに空へと目が行き、そこに一つ、いや、二つの影を見つける。

「……人? あれはネギ先生と、確か同じクラスの……」

「お兄ちゃん、あれが見えるの!?
 わたしには何となく人の形にしか見えないんだけれど……」

「まあな。と、今はそれどころじゃない。
 何があったのかは知らないが、チャンスだぞなのは!」

「……あ、そうか! 空を飛んでいる所を目撃すれば」

「そういう事だ」

言って走り出そうとした恭也であるが、すぐになのはのことに気付いて、
しかし、何か言うよりも先になのはが口を開く。

「わたしも行くよ。そもそも、わたしの問題だし、実際のわたしが居た方が良いでしょう」

「……分かった。なら、急ぐから……」

言ってなのはを抱き上げると恭也はネギたちの消えた方へと走り出す。
俗に言うお姫様抱っこに頬を染めながらも、なのはは落ちないようにおずおずと恭也の首に腕を回す。

(もう少しこのままでも良かったかな)

治してもらえると言う余裕が出来たからか、なのはは思わずそんな事を思ってしまう。
そんななのはの胸中など露知らず、恭也はひたすら全速で駆けるのだった。







美姫 「さ〜て、CMも終わった事だし、書け」

やっぱりかよ!

美姫 「当たり前よ!」

言われなくても書くわい!

美姫 「なら、早く、さっさと、ぱぱっと」

虐めだ、言葉による虐めが。

美姫 「いじめはありません。だから、書け」

そんなどこぞの教師のような台詞まで!
書くもん、書くもん……。

美姫 「いじけている暇があれば、書け!」

うぅぅ。

美姫 「そんな訳で、今週は短いですけれどこの辺で」

書く、書くとき、書けば……。

美姫 「また来週〜」


11月2日(金)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、今年も後二ヶ月かよっ!、とお届け中!>



最近はすっかり空気も冷たくなってきたな。

美姫 「流石に日中でもそれなりに気温も低くなりつつあるわね」

うんうん、喜ばしい事だ。
だが、まだ昼間は暑い日があったりするけれどな。

美姫 「それもその内なくなっていくわよ」

ようやく冬到来、か。
ブルブル震えながら、本格的な冬を待て!

美姫 「はいはい。冬よりも先に、私はアンタの作品が完結するのを見たいわ」

……お、オチもついたようなので、今回はこの辺で……。

美姫 「だ〜れ〜が、逃がすと思う?」

あははは、思わないです。

美姫 「全く、これだから」

いやはや、面目次第もございません。

美姫 「まあ、アンタに呆れるのも、いつもの事で時間の無駄だし」

さり気に馬鹿にされてる?

美姫 「ないない。うん、ないよ〜」

既に言い方からして、馬鹿にされてるよね、ね?

美姫 「それじゃあ、少し早いけれどCMよ〜」

な、何で目をそらすの!?







夕暮れから夜へと変わるその寸前、黄昏刻とも呼ばれる紅に染まる街をなのは一人歩く。
さっきまで神社で久遠と遊んでいたのだが、そろそろ日も暮れだしたのと、
久遠の主である那美に急なお仕事が入った事もあり、早々に家路に着いたのである。
これ以上、遅くなると兄や姉が心配するというのもあるが。
紅い街並みを眺めながら歩いていたなのはは、ふと喪失感とも呼ぶべきものに襲われる。
特に何かがあったわけじゃなく、何となくそう感じただけなのだが。
周囲に人気がないことで、可笑しな事を思ったのかもしれない。
そう考えて頭を小さく振ると、少しだけ足を早めて家へと向かう。
大好きな家族の待つ家へと。
そのなのはの頭上に影が差したのは、それから暫くしての事である。
突然の事に頭上を見上げ、なのはは思わず訳の分からない驚き声を上げる。

「にゃ、にゃにゃー!」

その声につられるように、なのはの頭上に影を落としていた主、
屋根から下りてきたマントで頭から足先までをすっぽりと覆い隠した者は、なのはの存在に気付く。
このままではぶつかると思い、思わず目を閉じたなのは。
だが、襲ってくるであろう衝撃はいっこうにやってこず、恐る恐る目を開け、二度目の驚きの声を上げる。
その人物がなのはの頭上数センチで立っているのである。
HGSとも違い、その背中には特徴ある翼はない。
目を瞬かせるなのはに、マントの主はその覆い隠した奥で小さく笑ったような気がする。

「……見られてしまったか。仕方ないな」

くぐもった声からは、マントの主が男なのか女なのかは判別できなかったが、
その言葉から不穏な空気を感じ取ったなのはは、呪縛が解けたように背を向けてその場から逃げ出す。
その胸の内で、何度も何度も兄に助けを求めながら。
マントの主は無情にも、そんななのはの背中へと向けて掌を翳し……。



「なあ、美由希。なのはの奴、遅いんじゃないか?」

「恭ちゃん、その台詞もう三度目だよ」

「いや、しかし……」

言って恭也は窓の外、空を見上げる。
日が傾き、徐々に夜の色を見せ始めている。

「もう夏だし、外がこのぐらい暗くなるという事は……」

「夏って。まだ五月の半ばなんだけれど……」

呆れたように肩を竦めつつ、美由希も何度目かになる時間を確認する作業、時計へと視線を向ける。
瞬間、恭也がいきなり立ち上がり、家の中だと言うのに全力で走り出す。
その後を慌てたように美由希も追いかける。

「ちょっ、恭ちゃんどうしたの!?」

「今、なのはに呼ばれた気がした」

そんな馬鹿なと思いつつ、美由希も何故か急かされるように走っている事から、
強く否定の言葉を吐けないでいた。
嫌な胸騒ぎがするのだ。故に、兄妹はそろって家を飛び出す。
宛てがある訳ではなく、勘と嫌な予感、その二つに押されて街中を走り抜け、
二人は道路で倒れているなのはと、その近くに立つマントの主を見つける。
敵かどうかは分からないが、現状を見る限り怪しすぎる。
故に、誰何の声を上げようとするも、それよりも先にマントの主は地面を蹴ってその身を屋根へと。
そのまま姿を消す。恭也たちには気付いていなかったのか、全くこちらを見ることもなく。
だが、それよりも先にするべき事は、なのはの安全の確認である。
恭也と美由希は揃って倒れたなのはの元へと向かう。

「……きょ、恭ちゃん」

倒れたなのはを抱きかかえた美由希が、今にも泣き出しそうな震える声を上げる。
その理由はすぐに分かった。
美由希の腕の中に抱えられているなのはの胸が全く動いていないのだ。
顔をなのはの顔へと近づけて確認するも、やはり呼吸は止まっている。
だが、外傷は何処にもない。だが、そんな事を今は疑問に思っている場合ではないと、
続いて心音を確認すれば、こちらは微弱だが僅かに脈打っている。
そこに希望を見出し、恭也は美由希に急いで救急車を呼ばせ、自身はなのはを横たえて人工呼吸を始める。
恭也の指示に慌てながらも携帯電話を取り出し、119をプッシュする。
一刻を争う事態に、美由希は慌てないように言い聞かせながら、はっきりと受け答えをし、場所を告げる。

「恭ちゃん、すぐ来るって!」

電話を切った美由希は、祈るように恭也の救助作業を見詰める。
と、恭也や美由希の願いが届いたのか、なのはの体が僅かに反応する。
つかさず恭也は人工呼吸を繰り返し、ついにはなのはの呼吸が元に戻る。

「……よ、良かったぁぁ」

呼吸が戻った事で、美由希は少しだけ気が緩んだのか、その場に座り込んで涙を拭う。
同様に僅かに表情を緩め、恭也はゆっくりとなのはから離れる。

「……お兄ちゃん?」

「な、なのは!?」

呼吸を取り戻したと思った瞬間、意識を取り戻したなのはに驚く恭也。
なのははなのはで、目を覚ましたら恭也に唇を塞がれていて驚いている。

「にゃ、にゃぁぁぁ、な、なななな何をしているんですか」

慌てて身体を起こすなのはを、恭也と美由希がこちらもまた慌てて寝かせる。
その上で、さっきまでの状況を説明し、何があったのか尋ねる。

「えっと……。そうだ、変な人が空から降りてきて……」

なのははさっきまでの事を語るも、逃げた瞬間には意識を失ったので何をされたのかまでは分からない。
恭也たちの話を聞いて、今更ながらに怖くなったのか震えるなのはを恭也と美由希が抱き締めて落ち着かせる。
未だに身体は恐怖に強張るも、なのはは兄と姉に笑みを見せる。
見た目は問題ないように見えるが、念のために救急車も呼んだことだし病院へ行く事を決め、
救急車を待っていると、不意になのはが蹲る。
体が痛いと訴え始め、恭也と美由希はなのはの身体を調べる。
だが、やはり外傷もなければ骨に異常も見当たらない。
途方に暮れていると、不意に体の体が撥ねる。
慌てて恭也と美由希で押さえつけると、二人の腕の中で更に驚く事が起きる。
見る間になのはの身体が成長していくのだ。
驚きつつも痛がるなのはにただ声を掛けることしか出来ないもどかしさ、
無力感に恭也と美由希は揃って強く拳を握る。
やがて、なのはの急な成長は止まり、痛がっていたのが嘘のように痛みが引き、
なのは自身が不思議そうに自分の体を見る。
と、そこには当然、何も来ていない、正確には着ていたが破れてしまい、最早意味をなさない布と化した物体。
裸同然の姿に慌てふためくなのはに恭也が服を貸す。
見た目、晶や美由希と同じぐらいまで成長したなのはであったが、恭也の服はやはり大きすぎるようであった。

「下もないと落ち着かないんだけれど……」

「それはもう少し我慢してくれ」

遠くから聞こえてきたサイレンに、恭也はそう返すと裸足で歩かせる訳にも行かず、なのはを抱きかかえる。
恭也の行動に照れつつもなのはは嬉しそうに笑い、傍で見ていた美由希は、それがなのはだと分かっていても、
自分と同じ年ぐらいの少女がお姫様抱っこをされているという状況に、知らず頬を膨らませる。
やって来た救急隊員が襲われたようにも見えるなのはに、警察に連絡しようとするのを止め、
どうにかこうにか海鳴病院へと運んでもらう。
そこですぐさま空いていた個室を宛がってもらい、自分たちの主治医にして、
多少非常識な事態でも動じないであろう医者を、患者の方から診てくれと指名する。
傍から聞くだけだと、かなり無茶苦茶な話だが、指名された女医が嬉しそうに病室へと向かう姿が見られたので、
特に問題もないのかもしれない。
病室に着くなり、フィリスの笑顔が固まる。
見知らぬ少女が恭也に甘えている場面を見れば、少なからず恭也を思っている女性としては面白くもないだろう。
ましてや、美由希がそれを許容しているとあれば尚更である。
だが、実際はやはりまだあの時の恐怖から、恭也や美由希が離れるのが怖いらしく、二人に甘えており、
それが分かっているからこそ、また相手がなのはだからこそ、二人とも何も言わないのであった。
だが、目の前の少女がなのはだと知らないフェリスは笑顔を浮かべたまま、ややぎこちなく病室に入ってくる。

「それで、私はその子の何を診ればいいのかしら?」

笑顔の裏から感じる怒りの波動。
それをきっちりと理解した美由希とは違い、恭也はまずはなのはの身体に異常がないかと心配しており、
勿論、美由希とて心配しているのだが、それ以上に恭也は案じており、フィリスの怒りには気付かない。

「フェリス先生にしか頼めない事なんです」

恭也の真剣な顔と言葉に、フィリスは少し溜飲を下げつつ、そっと少女を見る。
長く綺麗な栗色の髪をツインテールにし、その顔立ちもとても整っている。
だが、冷たい印象はなく美人だがとても愛らしい。可愛いと言う言葉の似合う少女である。
と、その顔を見て、誰かに似ているなと思う。
そんな疑問に答えるように、恭也が口を開く。

「なのはなんです」

「はい?」

流石に名医と呼ばれるフィリスとは言え、恭也の言葉に対する第一声はそんなものであった。
思わず何を言ってるんですかという顔で見返したフィリスであったが、恭也と美由希、
そしてなのはの話を聞き、少し前から考え込んでいる。
どうやら、長考に入っているらしく、その視線は一点を見詰めるも、それを見てはいない。
やがて、ゆっくりと頭を振ると、

「すみません、やはり原因が分かりません。
 普通に考えると、そのマントの人が何をしたという事になるんでしょうけれど……」

「そうですか。いえ、気にしないで下さい。
 どちらかと言えば、状況が状況なので俺たちをよく知っている先生の方が良いかと思って、
 担当医として指名させてもらったんです。遅くなりましたが、引き受けてくださって助かりました」

「いえ、そんなに改めなくても。
 そうですね、そんなに感謝してくれるのなら、もっと定期的に膝の診察に来てくれると嬉しいんですが?」

「……善処します。
 それよりも、なのはの身体に異常がないのか検査してもらいましたが……」

誤魔化すように話を変えるが、さっきから聞きたかった事でもあるので恭也の中では問題ない。
逆に変えられたフィリスは少しだけ眉間に皺を寄せるも、すぐに元に戻して説明する。

「ええ、それは問題ありませんでしたよ。
 多分、15、6歳ぐらいだと思いますが、至って健康です」

「そうですか。それは良かった」

「一応、今日一日は様子見も兼ねて入院してください。
 検査の結果だけを見るなら問題ないですが、事例がないだけに何とも言えないので……」

フィリスの言葉に頷くと、恭也は桃子たちに結果を教えるために席を立つ。
なのはが検査している間に病院に居ると連絡を入れたままだったので、今ごろ落ち着かずに居るだろうから。
が、病室を出ようとした恭也の服をなのはが不安そうに掴む。
それを見て、美由希が代わりに立ち上がる。

「私が言ってくるよ」

「ああ、頼む。まあ、この状況は実際に見てもらった方が早いだろうから……」

「そうだね。とりあえずは、すこぶる健康だって伝えておくよ」

この後、フィリスの計らいと患者の精神的な問題という理由から、
恭也と美由希もなのはと同じ病室で一日を明かすのだった。



翌日、やはり驚く家族たちだったが、これまた適応力も早く、すぐに普通に接する。
恭也以外は仕事と学校へとそのまま向かい、恭也はそのまま残り退院の手続きをする。
こうして、昼過ぎには高町家へと戻ってきたなのはに、
その日の夕方、入院したと聞いた忍や那美たちが見舞いにやって来る。
当然のように驚く二人に対し、久遠はすぐになのはと分かったのか何でもないように近付く。

「なのは、おおきくなった? くおんといっしょ」

「あははは。大きくなっちゃったね。くーちゃんも大きくなれるもんね〜」

「うん」

そんな二人のやり取りを眺めながら、こちらもまたすぐに適応力を発揮してすぐに馴染む二人。
後ろに控えていたノエルもいつものように接する。
久遠と庭で遊ぶ二人を眺めながら、忍と那美は恭也から昨日の出来事を聞く。

「……だとすると、そのマントの奴は魔法使いかも」

ふと漏らした忍の言葉に、恭也が続きを促す。

「実は、魔法使いって居るのよね。実際に、色んな活動をしてるわ。
 表向きは国連のボランティア団体とかになっていたりもするけれどね。
 魔法ってのは知られてはいけない事となっているから、表には出てこないのよ」

「だとすれば、なのはちゃんをああしたのは魔法なんですか?」

「どうだろう。そんな魔法があるのかどうかは分からないし……。
 まあ、知り合いに一人詳しい人が居るけれど、今は連絡取れないし。
 那美は何か感じなかった? 魔法も霊力も似たようなものじゃないの?」

「特に何も感じませんでした。すみません、お役に立てなくて……」

謝る那美を慰めながら、恭也は幾分忍に詰め寄る。

「なら、魔法使いに見せれば元に戻れるのか」

「ごめん、そこまでは分からない。さっきも言ったけれど、私はそっち方面そんなに強くないのよ。
 それに幻覚なら兎も角、人を成長させるなんて魔法、恐らくは時間に関する魔法だと思うけれど、
 かなりの使い手だと思うわ。だとすれば、ちょっとやそっとの魔法使いじゃ解除できるか。
 伝説のサウザンド・マスターなら話は別かもしれないけれど」

「そのサウザンド・マスターという人に頼めば、いや、伝説となるぐらいだから大昔の人だな」

「ううん、サウザンド・マスターは最近の魔法使いよ。
 ……ただ、十年程前に亡くなったと言われてるけど。ごめん、期待持たせるような言い方だったわ」

「いや、気にするな」

忍の言葉に顔を上げた恭也であったが、続く言葉にまた俯かせる。
暫く無言が辺りを包むが、不意にノエルが言葉を挟む。

「忍お嬢様、確かサウザンド・マスターには息子さんがおられたかと思いますが」

「そう言えばいたような……。前にエリザが何かそんな事を言ってたような。
 確か、小さいのにかなり優秀で魔法学院を主席で卒業して、今は日本の何処かで修行しているんだったわね」

少し前、連絡が取れなくなる前にと月村邸にやって来たエリザに聞いた話を思い返す忍。
その言葉を聞き、恭也は忍に期待する目を向ける。
その期待に応えようと、忍は必死に記憶を掘り起こす。

「そうだわ! 麻帆良よ、麻帆良学園! そこで教師をしているんだったわ」

「なら、そこに言って頼めば」

「確実に治せるかどうかは分からないけれど、少なくとも原因とかは分かるかもね。
 でも、さっきも言ったけれど魔法使いは自分がそうだという事を隠すわ。
 世界にそんな力があると知られて、不必要に怖がらせないためにね。
 だから、それを破ったものには大きなペナルティが与えられるの」

「もし、正直に頼みに行っても知らないと言われるかもしれないんだな」

「ええ」

「……だが、それでもそれしか手掛かりがないのなら、俺は行こうと思う。
 一度で駄目なら何度でもお願いするさ」

「はぁ、本当になのはちゃんの事になると。
 仕方ないわね。だったら、人気のいない所で見張りなさい。
 人が居ない所では魔法を使うかもしれないでしょう。その現場を目撃してしまえば、言い逃れはできないわ。
 それに、ちょっとやり方は良くないけれど、黙っている代わりに診てもらえるかもよ」

「確かにあまり良いとは言えない方法だが、なのはのためだ。
 この際、その程度の事は気にしないさ。しかし、そうなると長期戦か」

「そうなるわね」

恭也と忍が頭をつき合わせて考えるその二人の合間に、なのはが顔を出す。
さっきまでの二人のやり取りを聞いており、

「だったら、私も行く! 元々は私の事だもん。
 お兄ちゃんだけに任せておくのは悪いし、一人よりも二人の方が良いでしょう」

「なのははそんな事気にせず、ここで待っていたら良いんだぞ。
 それに、いつになるか分からないんだから、学校はどうす……その姿では無理だったな」

「うん。だから、麻帆良学園に転校すれば良いんだよ」

「その手があったわね」

なのはの言葉に忍が指を鳴らす。

「教師として麻帆良学園に居るんだもの。
 そこに生徒として潜り込むのは良いアイデアだわ。
 序に、恭也も生徒として潜り込めば良いのよ」

「因みに、そのサウザンド・マスターの息子さんは何年を担当しているんだ?」

「中等部の三年だったわね」

「俺が生徒としては無理だろう」

「まあ、どっちにしろ学年は関係なく無理だけれどね。
 だって、女子部だし」

笑って言う忍の頭に、静かに恭也が拳を置く。

「さて、俺はこの手をこの後どうすれば良いと思う?」

「え、えっと……」

「……今回は勘弁しておく。色々と情報をくれたからな」

恭也の言葉に安堵の吐息を零しつつ、忍は良い事を思いついたと告げる。

「恭也となのはちゃんの二人を怪しまれないで麻帆良に転校させてあげるわ。
 恭也だって、なのはちゃん一人を放り出すのは心配でしょう」

「まあな。なのははまだ小学生だからな」

「でしょう。という訳で、後は私に任せなさい。
 ノエル、急いで帰るわよ。後、さくらにも連絡しないと。
 恭也、大船に乗ったつもりでいなさい」

そう口にすると、忍はさっさと帰り始める。
その背中を見送りながら、恭也は今はただ忍に任せるしかないと流れに身を任せることにした。



数日後、麻帆良学園3−Aへと一人の少女が転校してくる。
高町なのはと名乗る少女の隣には、彼女をお嬢様と呼び控える不破恭也を名乗る執事の姿があった……。

魔法少女なのはま! プロローグ 「いきなり育っちゃったんです」 完

 次回、第一話 「転入生はお嬢様!?」 2XXX年公開?







さて、CM明けですが、今週はこの辺で。

美姫 「いや、何でよ!」

たまには違うパターンをと。

美姫 「そんな変化はいらないわよ」

まあまあ。

美姫 「単に『リリ恭なの』の進み具合を聞かれたくないだけじゃ?」

あ、あはははは。ナ〜ニをイッテマスカ〜、美姫さん。

美姫 「思いっきりどもってるんだけれど?」

そ、そんな事はないぞ。ちゃんとプロットは出来ている。

美姫 「割には更新速度が……」

ええい、兎に角、終わりったら終わりなの!

美姫 「はいはい、分かったわよ」

よーし、それじゃあ今週はこの辺で。

美姫 「また来週〜」










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