2008年7月〜8月

8月29日(金)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、只今ドタバタしてます、とお届け中!>



祝、美姫ちゃんのハートフルデイズアニメ化!
ってな感じでとりあえず、最近よく目にするフレーズに乗っかってみたけれどどうだろう。

美姫 「既に名言でも何でなくて、ただの妄想と化してるわよ」

だよな。いや、自分で言ってても違和感バリバリだった。
そもそも、もし本当に自作でも良いからアニメ化したとして、全く場面転換のないアニメになるな。

美姫 「毎回、絵は使い回しが出来るわね」

だよな。

美姫 「二人で対面に座っている絵と、浩が殴られるシーン、斬られるシーンに吹き飛ぶシーン。
    放送できないようなモザイクの掛かった状態のシーンに、血反吐を吐くシーン。
    思ったよりも絵がいるわね」

いやいやいやいや。どれも嫌過ぎるから!
と言うか、全て俺絡みかよ! しかも、全部やられてるし。

美姫 「いや、あんたが勝つシーンなんて作っても使わないんだから無駄でしょう」

それもそうだな。って、そうじゃなくて!

美姫 「どうせ実現不可能な夢、もとい妄想なんだから軽く流しなさい」

うぅぅ、だとしても不条理さを感じるんだが……。

美姫 「気のせい、気のせい」

酷いよ、美姫ちゃん。

美姫 「さて、それはそれとして、今週は殆ど更新してないわね」

あはははは〜。もう笑って誤魔化せ!

美姫 「誤魔化されないわよ! と言うか、口に出てるっての!」

ぶべらっ!

美姫 「まったくもう。とりあえずは、CMにいってみよ〜」







気が付けば、目の前に知らない男が三人。
周囲を見渡せば、さっきまで居た場所とは違う場所。
そもそも、一度も来たことがないと断言できるぐらいに見慣れない風景が広がっている。
困惑する頭を余所に、自分たちが無視されたとでも思ったのか、目の前に立つ男たちが怒り出す。
理不尽だなと感じながらも、美由希は男たちの卑下た視線に思わず身体を隠すように両手で抱く。

「あの、ここは何処でしょうか?」

身体を男たちの目から隠すようにしながらも、疑問をぶつけてみる。
対する反応はやはりふざけるなといったもので、身包み全部置いて行けとまで言い放つ始末。
いや、これは最初から言っていたかと首を振り、時代錯誤も甚だしい連中に嘆息する。
完全に舐められていると感じた男たちが揃って大きな剣を抜き放つに至り、
美由希はああここは日本じゃないかもと、知られたら更に怒らせるような事を考える。
それでも、散々に鍛錬を繰り返してきた身体は自然と腰を落とし、
視線は男たちの動きを逃さないと捉えては離れない。
目の前の三人が相手なら、遅れを取る事もないだろうと、油断や慢心ではなくしっかりと己と相手の力量を計る。
その上で事の起こりは何だったのだろかと、思考だけは少し脇へと逸れて行く。
事の起こりははっきりと思い出せる、毎年恒例の春の山篭り修行に出掛けた際の出来事だ。
既に予定の半分を山で過ごし、今日も今日とて朝の鍛錬を終えた頃。
ただ、毎年と違うのは……。

「あ、お帰りなさい、師匠、美由希ちゃん。
 ご飯はもうすぐ出来るので、少し待ってください」

「お師匠、美由希ちゃん、洗濯物があったらそっちの籠に入れといてください」

拠点としている場所に戻ってくると、いつもなら一つしかないテントが三つ。
そればかりか、いつもなら疲れた身体を動かして取り掛かるはずの朝食が既に準備されている。
言うまでもなく、先程声を掛けてきた晶とレンの二人である。
それだけではない。テントの中にはまだ眠っているなのはに忍、那美に久遠まで居る。
早い話、二人の山篭りに無理を言って付いてきた者たちである。
当初は渋った恭也であったが、御神の事を知っているのと、修行の邪魔はしないし、
それ以外の食事などの世話をすると言う申し出に加え、昨年、入学式にあわや間に合わないかもという失態を犯し、
それを懸念した桃子の後押しもあり、今までにない賑やかなものとなったのである。
恭也の方も修行が始まれば、寧ろ食事などを作る時間が省けると少し喜んでいたぐらいだ。
そんな訳で、今日もいつものように全員が起き出して朝食を食べ、少し休憩をしていざ修業再開といった所で、

「あれ? そこで何かあったはずなんだけれど……。
 えっと……、そうそう修行の途中で見つけた古鏡がポケットから落ちて、急に光ったんだ。
 …………あれ、もしかしてあれが原因だったり?
 あ、あははは、だとすれば間違いなく私の所為になるよね。
 う、うぅぅ、どうかなのはは巻き込まれていませんように」

勿論、こんな変な事態になのはを巻き込みたくないという気持ちもある。
だが、それ以外にもなのはに何かあったとしたら、どんなお仕置きが待っているか分からないという気持ちもある。
だからこそ、美由希は地面に膝を付いて祈るように両手を胸の前で組む。
だが、今の状況を忘れているのだろか。
さっきまで隙のない態度であったのに、急に地面に座り込んで祈り始めた美由希。
それを見た男たちは命乞いかと気を良くし、大人しくしてれば命は助けてやるといやらしい笑みで近づく。
が、とうの美由希はそんな言葉に応える余裕もなく、ただただなのはの無事を祈るだけである。
男の手が美由希に触れようとした瞬間、美由希が後ろに跳び退り、そこへ一人の女性が割って入ってくる。
突如現れた女性は美由希の行動に少し驚きつつ、美由希を庇うように男たちと対峙する。
これが、高町美由希と後に彼女の腹心となる関羽――愛紗との異世界における最初の遭遇であった。



「さて、ここはどこだろうか」

恭也は自分の周囲をぐるりと見渡し、背の高い壁に囲まれた庭園らしき場所で現れたあぐらを組んでいる。
ふと記憶を探れば、美由希のポケットから落ちた何かが光を放った所までは鮮明に覚えている。

「あいつか……」

また何を拾ったのか、何を仕出かしたのか。
とりあえず頭を押さえ、そこで自分が巻き込まれたという事は、
あの場に居た者たちも巻き込まれたのかもしれないという可能性に気付く。
晶やレンに関しては、多少の心配はあるが余程の事がなければ上手くするだろう。
忍に関してもこれは同じで、そういった意味では信頼できる。
那美に関しては少し悩む所だが、危険さえなければこういった異常事態は何せ、
それこそ巣窟とも言える寮に住んでいるのだ、それこそ自分たちよりも耐性はあるだろう。
そして、美由希に関してはもう完全に自業自得どころか、俺たちを巻き込むなと散々罵る事にする。
一番心配なのは、なのはである。
もうなのはに関しては祈るしかなく、せめて久遠が一緒に居る事を願うばかりである。
一人、そのように考えをまとめていた恭也であったが、ふと気配を感じて顔を上げれば、
ぞろぞろと出て来るわ、出て来るわ。それぞれ手に槍や巨大な剣を持った甲冑に身を包んだ、
いかにも兵士と言った雰囲気の男たちが、恭也から見て前方の建物からぞろぞろと出てくる。
何事かと見詰める先で、どうやら目的は恭也だったらしく、あっと今に周囲を包囲されてしまう。

「貴様、一体何処から入ってきた!
 ここを曹操様の城と知っての狼藉か!」

気になる単語を耳にし、それに問い質すよりも先に輪の向こうから一人の少女の声が届く。

「待ちなさい」

その声の主が誰なのかこの場の誰もが分かっているのか、恭也を警戒しながらもその声の主に頭を垂れる。
少女が歩くに合わせ、人垣が割れて行き、そこから一人の少女が恭也の前に姿を見せる。
兵士たちが止めようとするのも構わず、恭也の目の前にやって来た少女は興味深そうにじろじろと不躾な視線を投げる。

「流石に初対面でそれは失礼ではないですか」

憮然と返した恭也の言葉に兵士たちがざわめくが、少女が軽く手を上げるだけでそれは収まる。
つまりは、彼女こそが彼らの頂点に立つ者で、その統率力においても申し分ないものを持っているという事である。
そこまでを瞬時に考えた時、恭也の右腕が素早く背中に隠していた小太刀を抜き放つ。
いつの間にか繰り出された少女の身体には似つかわしくない長大な鎌を受け止め、恭也は睨みつける。

「どういうつもりですか」

「へぇ、不意を付いたつもりだったけれど。益々、面白いわね。
 さて、少し話をしましょうか。そう警戒しなくても、今の所はどうこうしようとは思ってないわよ」

「つまり、それはこれから次第ですか」

「馬鹿という訳でもないみたいね。で、その質問に関する答えだけれど、その通りよ。
 そもそも、警戒するのはあなたではなくて私の方なのよ。ここは私の城。
 あなたはそこに現れた不審者。自分の立場が分かった?」

少女に説明され、恭也は小太刀を仕舞う。
確かにそれだけを聞けば、間違いなく恭也の方が怪しいだろう。
だからこそ、恭也は謝罪を口にし、その上で事情を説明しようとする。
だが、それを手を上げて制すると、

「私は曹操。話は中でしましょう。
 勿論、それなりに警戒はさせてもらうけれどね。誰か、春蘭と秋蘭を呼んできてちょうだい。
 さて、良ければ名前を聞かせてもらえるかしら」

「高町恭也です。ですが、本当に良いのですか。
 自分で言うのもあれですが、不審な人物を中に入れるなんて」

「問題ないわ。その為に春蘭と秋蘭を呼んだんだもの。
 それに、あなたは私に害なす気はないでしょう。あなたが現れる瞬間を偶々見ていたのよ。
 それで興味を抱いた。それに、あなたの方も聞きたい事があるみたいだしね。
 なら、すぐにどうこうされる事もないでしょう。それともう一つ。
 私は自分の勘や人を見る目に絶対の自信を持っている。これらがあなたを招き入れる根拠よ」

そう自信満々に言い放つ少女――曹操に恭也は感心したような吐息を零すのだった。
この後、曹操――華琳の傍に新たな将軍が立つ事となる。
誰もが知らない、本当は常に気を張って重圧と戦っている少女の本当の素顔を知る事となる一人の将軍が。



「あー、まあ私自身もちょっと変わっているのは事実だけれど、流石にこんな事態には慣れてないわ〜。
 いや、本当に恭也の傍に居ると色々起こるわよね」

と独り言を呟くと、忍はどっこいしょと腰を上げる。
周囲は見渡す限り平原で遠くに山が見えるだけ。
とは言え、それがさっきまで居た山でない事は間違いないだろう。
その上でここは何処だろうと考えるも、何も手掛かりのない状態ではそれこそ考えるだけ無駄である。
そう考えを打ち切ると、とりあえず適当に歩き始める。

「まあ、その内恭也たちが探しに来てくれるでしょう」

楽観的に物事を捉え、悲観しないように忍は足を進める。
木々の生い茂る林の中に踏み入り、それでも暫く歩いて行くと、水音が聞こえてくる。
それに混じり、幾つかの声も忍の耳に届く。

「私の運もまだまだ捨てたものじゃないって事か」

そう呟き声のする方へと進めば、そこには水浴びをする二人の、
恐らくは姉妹であろう似通った顔立ちの少女が二人いた。

「あははは、それ、お姉ちゃん!」

「こら、もう止めなさい、小蓮!」

水を掛けてくる妹を嗜める声も、どこか楽しげである。
邪魔しては悪いかなと思いつつ、忍は二人の下へと足を踏み出し、瞬間背後から恐ろしく低い声を聞く羽目になる。
首元に突きつけられた小さな凶器と共に。

「動くな。動けば殺す。貴様、何が目的だ」

忍を咎める声に気付いたのか、姉の方が何事かと振り向く。

「えっと、怪しいものじゃないんですけれどね。
 ちょっと道を尋ねたいというか、色々と聞きたい事がありまして……」

言葉を濁す忍に背後に立つ者は目を細め、忍を掴む手に力を込める。
思わず痛いと呟いた声が届いたのか、少女の姉――蓮華が忍を放すように命じる。
渋った様子を見せつつも、主の命令ならばとようやく忍を解放すると、これまた少女は蓮華の隣に立つ。
こうして、希代のトラブルメーカーにして天才発明家月村忍と、蓮華、孫権との運命が交わるのだった。



「ふぇぇぇ、こ、ここは何処なんですか。
 そ、そして、どうして私は追われているんですか〜」

切迫した声を出しながら、那美はひたすら自分を追いかけてくる、見た目からして山賊といった連中から逃げる。
だが、元々姉に比べても体力にそんなに自信のない那美はすぐに息切れを起こし、その速度も落ちていく。
それを見て向こうは更に声を上げて那美へと近づいてくる。
流石にもう駄目かと思いつつも、懸命に走る那美を神はまだ見捨てなかった。
那美のすぐ後ろまで迫っていた山賊の一人が突然倒れる。

「走って!」

呆然とそれを見ていた那美の耳に、一人の女性の声が響く。
見れば前方の茂みから女性が姿を見せ、その手に弓を構えていた。
女性の声に那美は疲れた身体に鞭打ち、必死にその女性の下へと走り出す。
後から追ってきているはずの山賊は、しかし次々に女性の射る矢に射抜かれて倒れていく。
彼女だけでなく、恐らくは彼女の部下と思われる者たちも揃って矢を掛け、山賊たちと交戦する。
こうして、那美は危うい所を一人の女性に助けられるのであった。



「くーちゃん、どこ〜」

気が付けば久遠と二人、林のような場所にいた。
先程まで居た山とは似ているようでどこかが違うと感じていたが、不意に久遠が唸るような声を上げて、
なのはを置いて走り出したのだ。
恐らくは害なす何かを感じ取り、なのはを守るためだろう。
その事を分かっていても、やはり一人残される不安から久遠を追ってきたのだが、こうして迷っているのである。
一方の久遠はというと、殺気や闘気といったものを感じ取り、なのはを守らなければとその先に向かった。
だが、そこに居たのは一人の少女で、自分の身長よりも長く重そうな獲物を振り回していた。
恐らくは何かの鍛錬なのだろうと久遠は自分の勘違いに気付き、残してきたなのはの元へと帰ろうと踵を返した。
そこまでは良かったのだが、踵を返した際に尻尾が茂みに触れたのか音を立てる。
僅かな音ではあったが、少女は獲物を振るう手を止めて久遠の隠れている場所を睨みつける。

「誰?」

短く掛けられた問い掛けの言葉。
特に感情は見受けられず、本当にただ問い掛けただけといった感じの声に、
久遠は隠れたままで攻撃されては堪らないと茂みから顔を出し、出来るだけ警戒させないように声を上げる。

「くぅ〜ん」

鳴きながら顔を出した久遠を、少女は不思議そうにじっと見詰めて不意に手を伸ばすと抱き上げる。
慌てて逃げようとするも遅く、少女の手の中でジタバタと暴れる出す久遠を少女は優しく撫でる。

「大丈夫、怖がらないで。……迷子?」

思ったよりも優しい眼差しで見詰めてくる少女の言葉に、思わず肯定するような声を上げる。
それを理解した訳ではないだろうが、少女は小さく頷くと地面に久遠を下ろす。

「だったら、うちに来れば良い」

そう言ってしゃがみ込むと久遠の頭を撫でる。
思った以上に優しい少女に久遠は気持ち良さげな声を上げ、それが聞こえたのか茂みからなのはが出てくる。

「くーちゃん!」

やっと見つけた友達の姿に安堵の顔を見せるも、すぐ傍に武器を持った少女を見てその足が止まる。
少女の方もまた突然現れたなのはを見遣り、次いで久遠を見る。

「この子はあなたのお友達?」

「え、あ、はい、そうです。くーちゃんはわたしのお友達です」

掛けられた声になのははそう返し、目の前の少女が優しい眼差しをしている事に気付く。
それからゆっくりと久遠の元に近づけば、少女は久遠を抱き上げてなのはに渡してくれる。

「あ、ありがとうございます」

「ん。これで、くーちゃんも大丈夫。もう迷子は駄目」

「あ、ありがとうございます。でも、迷子といえばわたしも迷子なんですよね」

久遠を受け取りなのはは少女の言葉から自分たちの今の状況をそう口にする。
それを聞いた少女は少し考えた後、

「だったら、うちに来る?」

「え、でも……」

遠慮するなのはに対し、少女は何も言わずにじっと見詰めるだけである。
別段、急かすでもなくただ返事を待っている。
なのはは少し考えてから、こくりと頷く。

「えっと、宜しくお願いします。あ、わたしは高町なのはって言います。
 この子は久遠」

「くーちゃんじゃないの?」

「えっと、それは愛称というか」

「くーちゃんで良い?」

「あ、はい、別に構いませんよ。ね、くーちゃん」

「くぅー」

「そう。あなたも今日から友達。皆に紹介する」

言ってなのはと久遠の頭を撫でると背中を向けて歩き出す。
その向かう先から、大勢の犬や猫、鳥が少女の元へと近づいて来る。
それを眺めながら、なのはと久遠はやはり少女が優しい人だと感じるのだった。



こうして、世界を越えて迷子になった一行の不可思議な生活が幕を開ける。
果たして、恭也たちは再び無事に再会できるのであろうか。

真・恋姫ハート







という訳で、今回は真・恋姫無双とクロスさせたんだが。

美姫 「新キャラが出ていない以上、分からないわね」

あははは。まあ、恋姫でもよしとしよう。
とりあえず、那美となのはが何処に辿り着いたのかは分からないという事で。

美姫 「いやいや、すぐに分かると思うわよ」

まあな。全く分からないんじゃ、あれだしな。
さて、そんなこんなで今週は時間がないからもうそろそろお仕舞いだな。

美姫 「全く本当に困るわよね」

はいはい、怒らない、怒らない。
という訳で、ちょっと所かかなり早いですが、今週はこの辺で。

美姫 「また来週〜」


8月22日(金)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、暑さも少し和らいだかな、とお送り中!>



過去を振り返るだけじゃ駄目なんだ! そう、未来を見据えて歩くんだ!

美姫 「また初っ端から変な電波を受信して……」

いや、その哀れみの目はやめて!

美姫 「はいはい、お先真っ暗な未来が待っているアンタは何がしたいのかな?」

って、確定!?
いやいや、少しぐらいの光明があっても良いんじゃないかと……。
って、そうじゃなくてだな。
まあ、まだはっきりと数えた訳じゃないんだが、
この調子なら今年中には、このハートフルデイズの放送も200回を迎える事が出来そうだなと。

美姫 「あら、もうそんなになるの?」

みたいだぞ。
思えば、記念すべき100回は……去年の一月か。
あれから約二年……も経ってないな。あり?

美姫 「まさか、数え間違いじゃないわよね」

いやいや、待て待て。おう、合ってるぞ。
多分、今年の12月には200回だ!

美姫 「まあ、休みとかがなければだけれどね」

その時は来年に持ち越しだな。
しかし、そう考えるとよくネタを考えたな、俺!
昔は一回の放送で二回、三回とCMした事もあるし。
うん、頑張った俺!
クロスした作品数はざっと150以上。よくやったぞ俺!

美姫 「はいはい、自画自賛してるんじゃないわよ、恥ずかしい」

いや、どうせお前にけちょんけちょんにけなされるだろうから、今の内に自分で自分を褒めようと……。

美姫 「で、褒めてどうだった?」

うぅぅ、凄く虚しいです。
とは言え、やはり200と言えば感慨深いものなんですよ。
思わずテンションが上がるぐらいに。

美姫 「いやいや、まだいってないのに今からそんな事でどうするのよ」

……言われてみればそうだよな。
まだ半年とは言わないでも、それぐらいあるもんな。

美姫 「って、だからって急に鬱になるな、うっとうしい!」

ぶべらっ!

美姫 「ったく、もう。とりあえず、ようやく見えてきた200回目指して頑張るわよ!」

お〜! 今日を含めて後15回放送頑張るぞー!

美姫 「といった所で、CMよ〜」







風芽丘学園生徒会室。それは一握りの選ばれた者たちだけが入ることが出来る聖域。
そして、数十年前に一つの伝説を築き上げた場所。
今、ここに一人の女子生徒がその扉を開ける。
かつて、生徒会副会長として活動し、夢破れた祖父の意志を引き継ぎ、その夢を果たすために。

「一年C組、杉崎扉(どあ)、生徒会書記として祖父の夢を叶えるべく今、偉大なる一歩を踏み出します!」

叫びつつ生徒会室に飛び込んできた少女を、既に中にいた役員たちが何事かと見遣る。

「あーっと、確か書記の杉崎さんだったな」

「はい、その通りです」

さっきの言動をなかったものとして処理すると、副会長である恭也はそう声を掛ける。
元気良く返事を返して空いている席に座ると、その場の者を見渡す。

「ああ、これが祖父がよく話してくれた生徒会ハーレムのメンバーなのね。
 今、ここに居る者たちを第一期として、私が卒業までに三期ハーレムが完成するのよ。
 一人男性が居るけれど、高町先輩なら別に良いか。
 ちょっとお爺さんっぽい趣味や雰囲気でも、見た目は合格だし。
 という訳で、ここに私の生徒会ハーレム設立を宣言します!」

完全においていかれる形となった恭也たちは、ただぽかんと目の前の扉を見る。
だが、それに構わず扉は一人話を続けていく。

「そんな訳で、まずは私のハーレムに入る人をチェックしないとね。
 確か、三年生で会長の桜野くりむ。うん、妹キャラね」

「って、私の方が年上なのに!? 恭ちゃん、何とか言ってよ!」

「…………すまん、それに関しては俺からは何も言えない」

くりむの言葉に、しかし恭也は小さく頭を振って無力だと言わんばかりに肩を落とす。
そんな恭也の肩をポカポカと叩くくりむはしかし、反論できない感じに背が低く、
まあ、色々な所がお子様であるのだから、一概に恭也を責めれない。
まだ何やら軽く揉めている二人を放置し、扉は残る二人を見詰めると、

「それでこっちが二年で副会長の椎名深夏と、その妹の一年会計真冬ね。
 事前に調べた所によると、運動熱血バカにゲームにBLにを主食とする自称ひ弱女子高生ね」

「熱血は兎も角、バカは取り消せ!」

「自称って何なんですか!? 真冬は本当に身体が弱いんです! こほこほ、あ、叫んだから咳が」

「いや、その咳は思いっきりわざとらしいんだけれど。
 まあ、何はともあれ姉妹百合カップルという稀少な属性もこれでカバーと。
 後はお姉さま系のキャラが欲しいところね。何処かの部室に付属品として落ちてないかしら。
 寧ろ、生徒会室に付属として付いてしかるべきだと思うんだけれど」

「勝手な属性を付けるなよな!」

「そうです! ボーイズラブは好きですけれど、真冬は自分が対象になるのはごめんです」

抗議の声を上げる姉妹に対し、やはり扉はそれを聞き流すと一人席に着く。
姉妹にくりむまでも加わり、三人が抗議の声を上げる中、扉は拳を強く握り締め、決意も新たに声を上げる。

「必ず生徒会ハーレムを、ううん、全校ハーレムを作ってみせるからね、お爺ちゃん。
 そう、じっちゃんの名に掛けて!」

「って、お爺さんの名にとんでもない事を掛けないでよ!
 って、恭ちゃんも黙ってないで何とか言ってよ!」



「……といった感じの未来はどうかしら」

そう話を締め括ると紅葉知弦(あかばちづる)は頬杖を付いて生徒会室に居る面々を見渡す。

「いや、どうかなって言われても……」

困惑気味にそう返した恭也の正面で、杉崎鍵(すぎさきけん)が勢い良く立ち上がる。

「意義あり! 今の知弦さんの話だと俺の孫のハーレムというよりも、恭也さんのハーレムになってる!
 断固として抗議するぞ!
 ましてや、例え爺さんになったとしても教師になって顧問としてハーレムを手に入れてみせる!」

「そんな不順な動機で教師を目指すなんて駄目に決まっているでしょう!
 と言うか、ちーちゃんそもそもの設定が可笑しいよ!
 将来の話をしてて、孫が出てくるぐらい先の未来の話になったのはまあ良いとして」

「そこは良いの!?」

くりむの言葉に鍵が反応するが、くりむは構わず続ける。

「どうして私たちだけそのまま高校生として出てるのよ!
 そのくせ、ちゃっかりと自分は出てないし」

「だってきーくんのハーレムに興味ないし」

「うわっ! あっさりと衝撃の真実が!
 と言うか、それは聞きたくなかったというより、うん照れ隠しというやつだな」

「ううん、心の底から思っている事よ」

三人で騒いでいるのを横目に、残された三人は顔を見合わせて溜め息を吐く。

「紅葉の妄想の入った未来の話は兎も角、俺としてはお爺ちゃんみたいな趣味と言われたのが気になるんだが」

「だよな。あれって言い換えれば、普段から思っている事とも取れるよな。
 つまり、運動バカだと思われていると……」

「お、おお落ち着いてお姉ちゃん。で、でもそれを言われると、真冬のイメージって……」

知らず落ち込む三人を横目に眺め、知弦は一人楽しげに悦の入った笑みを零すのだった。



これは、そんな騒がしくも楽しい生徒会室での日々を綴った物語。

風芽丘学園生徒会議事録 生徒会の一義







うーん、疲れた〜。

美姫 「唐突ね」

あははは、いやまあな。
と、そう言えば結構重大なお知らせがあったんだった。

美姫 「そう言えばそうだったわね」

ああ。これから少し更新が遅くなるかもしれません。

美姫 「大きくは二つの理由ね」

おう! 一つは、今月末に改装するらしくてちょっとしたお引越しが……。
二つ目は私用です。

美姫 「という訳で、二つ目の理由は却下ね」

いやいやいや。
ともあれ、そんな訳ですのでご了承ください。

美姫 「うーん、一層のこと、どこかに監禁するのも手かもね」

わーい、そんな無茶苦茶な。

美姫 「本気で考えようかしら」

って、考えるなよ!
と、お知らせはこのぐらいにして。
最近はというか、昨日ぐらいからちょっと暑さも弱まってきたかなと感じているんだが。

美姫 「確かにそんな感じよね」

だよな! いやー、これは嬉しい事だよ。

美姫 「アンタにとってはね。暑いのが好きな人だっているだろうし、その人にとっては嬉しくないわよね」

まあ、それはそうだろうけれど。
いや、別に暑さが弱まったのは俺の所為じゃないだろう。
なのに、何で俺の所為、みたいな目で見るんだよ。

美姫 「そんな目で見てないわよ」

怪しすぎるんですが?

美姫 「いや〜ね〜、疑り深くなっちゃって。本当にそんな目はしてないわよ。
    単にアンタを殴る口実を探しているだけだから」

なんだ、本当に違ったのか〜。
って、全然安心できないよ! 何だよ、殴る口実って。
と言うか、はっきりと口実って公言している時点で可笑しいよな、な!

美姫 「ああ、もうごちゃごちゃ煩いわね! アンタの言う通りね」

およ、珍しく聞き訳が良いな。

美姫 「アンタを殴るのに理由も理屈も、ましてや口実もいらなかったわ。目から鱗が落ちた気分よ」

落ちるな! そこ、落とす所違うから!
しかも、なに良い事言ったって顔になってるんだよ!
って、や、やめ……ぶぎょろびょぇぇぇぇっ!

美姫 「ふ〜、すっきりとした所で、そろそろ時間ね」

う、うぅぅ。ひ、酷い……。

美姫 「ほらほら、早く締めの言葉を言ってよ。つんつん」

ぐぼらっ! お、お前、ぜ、全然つんつんって感じじゃないぞ、それ。
寧ろ、ドコバキグシャだろう!

美姫 「良いから、ほら早く」

うぅぅ、これ以上逆らっても無意味だと理解している自分が悲しいよ。

美姫 「今更の実感ね」

…………ぐしゅぐしゅ。ええい、嫌な事はとりあえず忘れよう、うん、そうしよう!
という訳で、今週はこの辺で。

美姫 「それじゃあ、また来週会えれば、来週にね〜」


8月8日(金)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、オリンピック開幕、とお届け中!>



参加する事に意義があるんだ!

美姫 「あぁ、そう言えばオリンピック開幕ね」

いや、確かにそうなんだけれど、俺が言いたいのはオリンピックの話とは違うから。

美姫 「じゃあ、何よ」

参加することに意義があるので、もう参加した!
故に、また来週……ぶべらっ!

美姫 「さて、バカの戯言は例によって例の如く流して」

う、うぅぅ。あまりにも酷い仕打ちだと思いませんか、皆さん。

美姫 「十人中十人が自業自得と言うわね」

一人も味方なし!?

美姫 「寧ろ、あんたは敵としか認識されないわ」

世界中の敵って、俺は魔王かよ!

美姫 「そんな立派なもんだと思ってるの?」

思ってませんよ! というか、そう言われると思ったよ!
どうせ、俺なんてスライムとかがお似合いなんだ。
最初の内はそこそこ良い勝負をしたり、数が多いと善戦できるけれど、すぐに雑魚となり、
仕舞いには敵とすら認識されず、レベルが上がった冒険者からはエンカウントするだけ邪魔だと言われる存在。

美姫 「いや、そうじゃないわよ」

え、本当に!?
じゃあ、何なんだ? スライムよりも良い扱いがあるのか!
ワクワク。

美姫 「スライムの世話をする雑用」

おおう! 既にエンカウントするモンスターですらないのかよ!
しかも、世話って何だよ、世話って!
スライムに世話がいるのか!
あれか、スライムさま、勇者の奴が始めての冒険に出たようですぜ。
おっと、そっちから行ってはいけませんよ。やはりここはこの裏道を利用して背後に回りこんで奇襲ですよ。
大丈夫です、他のスライムさまにも連絡して数を集めていますから。
まだレベル1の勇者なら、スライムさまのお力を持ってすれば、充分に勝てますよ。
てな感じで手引きするのかよ! って、地味な上にそれで勝っても俺の手柄はないよな、これ!

美姫 「普通にスライムと会話するアンタって、とか、他にも連絡とか何よ、とか、
    そこまで手引きできるぐらいの下調べって普段から何やってるのよ、とか、
    他にも色々と突っ込みたい所があるんだけれど、面倒だからスルーするわ」

って、これだけ長々と喋ったのに!?
と言うか、既に幾つか突っ込んでるじゃないか!

美姫 「煩いわね。餌にされなかっただけでも感謝しなさいよね」

つまり、その可能性もあったって事ですか……。
軽く凹みますね。

美姫 「はいはい、一人暗く落ち込んでなさい」

うぅぅ。どうせ、どうせ〜。

美姫 「さて、その間にいつものようにCMいってみよ〜」







それは校舎を揺るがすほどの地震から始まった。
いや、正確には地震などではなく、何かが校庭で爆発したその反動で。
その爆発を初めとして、学園の敷地内に姿を見せたのは様々な形状の、けれども共通して武器を持った者たち。
逃げ惑う生徒たちの中、それに対峙する者もいた。
正義感の強い生徒会長もその中の一人であり、そして……。

「はぁぁっ!」

持っていた小刀で攻撃を流してやり過ごすも、それだけで既に使い物にならないぐらいにぼろぼろになった小刀。
それでもそれ以外に武器はなく、恭也はそれを手に持ち背後を庇うように目の前に立つ者を睨みつける。
話しかけても返ってくる答えはなく、恭也も既に目的を聞きだすのを諦めている。
恭也の背後には同じく突如現れた敵に向かっていて肩を切られた赤星と、彼を手当てしている忍の姿があった。

「くっ、流石に武器なしでは分が悪すぎる」

目の前の敵の身のこなしを見た恭也としては、武器があっても誰かを守りながらでは難しいと理解していた。
それでも退く事はない。何かを守る。それが恭也の修める御神流の根底になるものだから。
同時に恭也は妹であり弟子の美由希のことも気にする。
向こうも武器がないのは同じ。それでも逃げるだけなら何とかなるだろう。
だが、美由希の事だから那美の所へと行っているだろうと簡単に想像が付く。
そして、気になるのは二人の妹分、晶とレンの事である。
この二人も自分だけが逃げるだけなら何とかなりそうだが、そんな考えなど持っているかどうか。
故に目の前の敵をどうにかして、すぐにでも駆けつけたいのだが、逸る気持ちを落ち着かせ、
恭也は横薙ぎの一撃を屈んでやり過ごし、同時に足を払う。
だが、相手もそれに気付いて後ろへと飛びずさっており、不発に終わる。

「忍、赤星の様子はどうだ」

「うん、思ったよりも傷自体は浅いから大丈夫だよ。
 でも、目の前のその人を何とかしないと……」

忍の言葉にひとまず安心するも、その通りである。
改めて武器があればと強く思う恭也の耳に、いや、脳裏にその声が届く。

『武器ならあります』

凄く控えめで、この場には似つかわしくない可愛らしく幼い声。
脳裏に響くと言う不可思議な現象を取りあえず脇に置き、恭也はその声に応えるように首を巡らせる。
だが、目に見える範囲に人は愚か、気配さえもない。
幻聴かと思うが、それを否定する声がすぐに返ってくる。
リスティのようなHGS能力者の可能性を思いつき、恭也はそれならと武器を求める。
その声に謎の声は恭也へと言い放つ。

『強く思い描いてください。あなたの手には既にそれがあるのだから。
 後はその形を強くイメージするだけ』

少女の言葉を疑う事無く、自分の手に収まる武器のイメージを浮かべる。
小さな頃より慣れ親しんだ刀よりも短い二振りの小太刀を。
だが、相手の方はそれを待ってくれるつもりはないのか、恭也へと攻撃を仕掛けてくる。
後ろから忍や赤星の声が聞こえるが、それがどこか遠くからの声のように響く中、
恭也の脳裏には今、はっきりとそのイメージが浮かび上がる。
その瞬間、恭也の両手から光が溢れ出し、それは刹那の内に恭也がイメージした小太刀の形となる。
小太刀を手にした瞬間、恭也は自身の異変に気付く。
先程までは早いと思っていた敵の攻撃がそうでもなく見える。
身体も思ったよりも早く、軽く、足の指先一本、一本に至るまで精密に制御できる。
だが、疑問を抱くよりも先に恭也は眼前に迫っていた刃を左の小太刀で弾き、空いた胴へと右の小太刀を走らせる。
これで動きも止まるかと思ったが、それ以上に恭也は目の前の光景に言葉を無くす。
間違いなく胴を斬った。その証拠に相手も胴を押さえている。
だが、そこからは血など流れておらず、金色の光の粒子が零れ落ちては消えていく。

『目の前のそれは人ではありません。
 考えるのは後にして、今は倒すことだけを!』

再び聞こえた少女の言葉に、恭也は片膝を付いている敵に刃を振り下ろす。
すると、目の前の敵は初めから存在したなかったというようにその手にした武器もろとも消えてしまった。

「……恭也、何が起こったの」

目の前の出来事を見ていた忍が呆然と呟くも、恭也自身もそれに対する答えを持っていなかった。
そんな恭也の目の前に、宙に浮いた小さな女の子が姿を見せる。
二十センチ足らずといったその少女は、恭也に自分の姿を見えていると分かると嬉しそうにはにかんでみせる。

「ようやく見えるようになったんですね」

「えっと、その声はさっきの……」

「はい。永遠神剣第五位『黒影』の守護神獣です」

状況が飲み込めない恭也の前に、息を切らせながら美由希と那美がやって来る。

「恭ちゃん! 良かった無事だったんだ。
 あ、恭ちゃんも神剣持ってるんだ」

「神剣?」

美由希の言葉に自分の手にある小太刀を見詰めた後、美由希の手を見ればそこにも似たような小太刀が二つ。
恭也が刀身から柄まで黒なのに対し、美由希の小太刀は白という違いはあれど、その形はよく似ている。

「私もまだ詳しい説明はされていないんだけれど、第五位『白光』って言うんだって」

確認するように美由希が視線を向けた先には、これまた恭也の目の前に浮かんだ少女と似たような少女が。
恭也の方が黒い衣装に身を包んでいるのに対し、あちらは白とこれまた逆だが。
いまいち状況が分からない忍たちであったが、それよりも晶やレンの身も心配である。
そういう事で、説明は後回しとして海中の校舎へと向かう。
が、その前に一人の女性が姿を見せる。

「大丈夫、望くん! ……って、あれ?
 神剣の波動を追ってきたのに望くんじゃないの!?
 高町くん!? え、何で、それって神剣!? 嘘、どうして……」

「生徒会長、よく事情は分かっていないんですが、とりあえず俺たちは行かないといけない所があって……」

「あ、うん。って、そうじゃなくて!
 どうして高町くんとその妹さんが神剣を持っているの」

思わず頷いた生徒会長――斑鳩沙月であったが、恭也たちはそれに応える時間さえも惜しい。

「事情は後で、と言っても俺にもよく分かってませんが。
 とりあえず、急いでいるので後にしてください」

「分かったわ。私も望くんを探している途中だしね。
 一緒に行きましょう」

沙月の言葉に頷くと、恭也たちは校舎を走り出すのだった。



「ちょっ、どうなってるのよ!
 望くんや希美ちゃんは兎も角、高町くんにその妹、おまけに月村さんや神咲さん、
 赤星くんまで神剣持ちなの!? ちょっと聞いてないわよ、サレス!」

次々と目覚めていく神剣の担い手。
果たして、神剣は彼らをどこへと導こうというのか……。



とらいあんぐるハート X 聖なるかな 近日…………?







さてさて、後半に入って突然だけれどお知らせです。

美姫 「何と私たちの活躍が遂にCDドラマ化! 凄い時代になったもんだわ」

いやいや、ないない。ないから、そんなこと!
って、変な茶々を入れない。

美姫 「はいはい。それじゃあ、ふざけてないで真面目に報告しなさいよ」

はい、すみません。って、可笑しいだろう!
俺、真面目にやってたよね!

美姫 「さて、騒いでいるバカは放っておいて、来週のお話になります」

えぇっ! 俺が悪者!?

美姫 「来週のお盆の時期は更新できません」

期間としては、13日〜17日です。
という訳で、来週はハートフルデイズもお休みに。

美姫 「えぇ! 聞いてないわよ! そんな事をしたら、ご先祖様からばちを当てられるわよ!」

逆だろう、普通は!

美姫 「む〜。まあ、仕方ないか」

そうそう。そんな訳ですので、ご了承ください。
あ、投稿に関しては送って頂いても問題ないので。

美姫 「そんな訳で、ちょっとしたご報告でした〜」

と、そんな訳で時間も良い感じだな。

美姫 「えぇ〜。来週の分もやろうよ〜」

いやいや、時間だからね。

美姫 「ちぇっ、ケチ〜」

ケチとかじゃないから! ったくもう。
さて、それじゃあ、今週はこの辺で。

美姫 「また来週〜」


8月1日(金)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、いよいよ八月に突入、とお送り中!>



心頭滅却すれば火もまたすず……んな訳あるか!

美姫 「初っ端から暑いのに叫んでるわね」

はぁー、はぁー。もう駄目だ。美姫、後は任せたよ。
俺はもう今日の分の体力を使い果たしたから。

美姫 「いやいや、どれだけ体力のないのよアンタ」

ほら、俺はお前と違って頭脳担当だから……ぶべらっ!

美姫 「何、その言い方? まるで私が体力担当の脳まで筋肉だとでも言いたいのかしら?」

い、いや、そこまで言いませんが。

美姫 「私バカだから、日本語わからな〜い」

いやいや、思いっきり日本語だからそれ!
って、ぶべらぼげぇびょぎょぉぉっ!

美姫 「か弱い乙女のハートはもうアンタの容赦ない言葉にボロボロだわ」

よ、容赦ないのはお前の攻撃だし、ボロボロなのは……お、俺だよね。ガク。

美姫 「またそうやって私の所為にするのね! いつだってそうだわ!」

いやいや、言葉だけ聞いていると俺が極悪人みたいなんですけれど。
と言うか、いつだっても何も、常に俺が被害者……ぶべらっ!
って、今回は初っ端から吹っ飛ばされすぎですよね、俺!?

美姫 「いや、つい」

ついで殴るのか!

美姫 「うん♪」

……………………って、呆けてしまうところだった。
いや、それはそれでこのまま来週と言うのも斬新かもしれんな。

美姫 「はぁ、バカな事ばっかり言ってないの」

へいへい。どうせ俺が悪いですよ。

美姫 「分かってるじゃない」

て、フォローも何もなく肯定だけ!?

美姫 「だって事実だもの」

ひ、酷い。もうこんな仕打ち耐えれないわ!

美姫 「今夜は久しぶりにメイド服でも着ようかしら?」

という訳で、今週も元気にはりきっていってみよー!

美姫 「本当に扱いやすいわ」

はははは、何とでも言え。さあ、それじゃあ今週も……。

美姫 「CMいってみよ〜」







美由希が皆伝を終え、今後は一人で進んで行くであろう事に不満はない。
ようやくかという達成感さえ感じることが出来るし、当然それを喜ぶ気持ちもある。
だが、それらと同時に恭也の中には言い知れぬ喪失感があるのも確かなのである。
早い話が何をすれば良いのか分からないといったところか。
これまで、美由希を育てるために使っていた時間を自分の鍛錬に使う事もできず、
かと言って他に趣味らしきものを持たないため、少しだけ時間を持て余している。
それが今の高町恭也を現すのにふさわしい言葉である。
そう一週間ほど前なら苦笑を浮かべながら自己分析して聞かせた所であろう。
だが、現状はそんな暢気な事を言っていられるような状況でもなく。

「くっ、今度の奴は本当にしつこいな」

思わず漏らした独り言。しかし、それに答える声がある。

「本当に蛇みたいな奴だな」

若い女の声ではあるが、その姿は見えない。
だが、恭也はそれを気にする事無く、その声に対して普通に返す。

「元々はお前が原因だろうが」

「今更それを言うてもせん無き事よ。
 それよりも、さっさと逃げんか」

「ったく、簡単に言ってくれる」

女の声はどうやら恭也自身の口からするようで、それを不思議に思う者はこの路地裏には誰もいない。
だからか、恭也はいつになく悪態を続ける。

「勝手に人と融合した挙句、何故、言われなき事で追われる身となったんだか」

「それこそ今更よ。お主が我の復活する地に立つから悪いのじゃ。
 寧ろ、折角自由になれると思うた矢先、またしても、しかも今度は人の身に封じられると言う屈辱。
 我の方こそ文句を言いたいわ」

「それは悪かったな。だが、追われる理由はお前だからな、ざから」

恭也は女の名前を口にし、背後の気配を探る。
恭也と融合しているというのは嘘ではないのか、そんな恭也の感覚を感じ取ってその能力を強化してやる。
今まで以上の広範囲に、それも精密な気配を感じ取る感覚にも大分慣れたもので、
恭也は自分を追ってくる者との距離を考え、角を曲がる。

「追われる理由は我と言っても、昔の話だというに。ほんに、人間共も執念深い。
 しかし、そう一方的に責めるな恭也よ。
 流石に少しは悪いと思うたからこそ、こうしてお主の力になってやっているだろう」

「いや、だからそもそものお前が俺の中にいなければ……いや、よそう。
 これ以上は平行線だ」

「だのう」

「と言うよりも、いつもみたいに頭の中に話しかけてくれ。
 その方がこっちも疲れずに済む」

「良いではないか。お主の身体は最早半妖じゃ。ましてや、我が力を供給して強化してやっているのじゃ。
 これぐらいでは疲れまい。我とて久しぶりに肉感を味わいたいのじゃ」

「はぁぁ。これももう何度も言い合った事だしもう良い。
 だが、何度も言うが……」

「分かっておる。人がある所では喋りはせんよ。
 ……ふむ、ようやく追っ手も諦めたか。しかし、本当にしつこいのぉ。
 長い年月ですっかり退魔士も減ったと思ったのに、中々どうして」

ざからの言葉に返す事なく、恭也は那美に改めて感謝する。
那美や薫、耕介の口添えがなければ、追っ手に神咲の者たちも加わったかもしれないのだ。
それを考えるだけでも恐ろしい。

「雪さんだったか」

「おお、雪がどうかしたのか」

「いや、彼女は狙われないので良かったなと」

「それはそうじゃろう。あ奴は封印の要で、我を封じていた言わば善となるからの。
 しかし、お主は雪のような娘が好みか。じゃが、残念じゃな。あ奴には既に思う者がおるぞ」

「別にそんなんじゃない。まあ、大体の話は耕介さんから聞いたから知っているが。
 今頃は相川さんと会っているかな」

「どうじゃろうな。まあ、あそこに住まう者たちはお人よしそうであったし、
 雪自身が何もせずとも勝手に会わせるのではないか」

ざからの言葉に頷く恭也に、お主もお人よしよのと笑う。
それに反論しようとするも、二人は同時に口を噤む。

「ふむ、すっかり諦めたものとばかり思うておったが……」

「どうやら、近くに仲間でもいたみたいだな」

「面倒じゃな。一層のこと倒してしまうのも手だぞ」

「まだ力が上手く使えないからな。怪我だけなら兎も角、流石に殺してしまうのはまずい」

ざからの言葉に返しつつも、恭也は足を止めて周囲を見渡す。
感じられる気配は五つ。それらは恭也を囲むように潜んでおり、徐々にその輪を縮めてきている。
現状を打破する為に視線を上空へと向け、それを見つける。
感覚を共有しているだけあり、ざからもすぐに恭也の考えに思い至ると何も言わずに必要な力を供給する。
思い切り地面を蹴り、頭上高く跳躍すると先程目に付いたビルの壁から伸びたポールを掴む。
腕の力だけで身体を引き上げ、更にポールを蹴ってビルの屋上へと降り立つ。

「さて、気付かれる前にさっさと逃げるぞ」

「はぁ、かつては大妖として恐れられた我が逃げの一手ばかりとはな」

「文句なら自分自身に言え」

「そこは力を上手く扱えぬうつけ者に言うべきではないか?」

ざからの切り返しに何も答えず、恭也は屋上は端から身を躍らせ、隣のビルへと飛び移る。
着地と同時に軽く膝を曲げ、すぐさま走り出す。
端まで走るとまた跳躍。

「いやはや、強大な力が逃げるためだけに使われるとはな。
 我に身体を操らせれば、もっと簡単じゃぞ?」

「お前はお前で加減をしなさそうなんでな」

「全く文句の多い奴じゃの」

互いに文句を言いつつも、ビルからビルへと飛び移り追っ手を撒くのだった。



とらいあんぐるハ〜ト3 外伝 恭也とざからの逃亡劇







うーん、夏だね〜。

美姫 「また唐突ね」

いや、朝早くから近所の小学生の声が聞こえてきてな。
しみじみと思ったんだよ、

美姫 「夏と言うよりも夏休みよね」

だな。

美姫 「まあ、夏だろうが冬だろうが、私は更新さえしてくれれば良いんだけれどね」

へいへい。最近は更新してますよ。

美姫 「うーん、まだまだ頑張って欲しいな〜」

いやいや、何処まで頑張らせる気ですか。

美姫 「努力あるのみよ!」

いや、聞けよ!

美姫 「あ、もう時間だわ」

って、普段はこんなに早く終わろうとしないくせに!

美姫 「ほら、早く言いなさいよね」

たく……。俺は努力してる……ぶべらっ!

美姫 「くだらない事は言わなくても良いのよ♪」

ふぁ、ふぁ〜い。
それじゃあ、今週はこの辺で。

美姫 「また来週ね〜」



ふっふっふ。メイド、メイド〜♪

美姫 「あ、そう言えば、メイド服クリーニングしたままだったわ」

なっ!

美姫 「あ、石になった。まあ、静かだから良いか」


7月25日(金)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、高く飛びながら、お届け中!>



時には寛容な心を持って許すことも大事なんだ!
だって、人は罪を犯してしまう弱い生き物だから。

美姫 「今週、殆どアップされていない言い訳はそれでお仕舞いかしら?」

……えへ。

美姫 「可愛くないから却下。寧ろ、お仕置き二倍ね」

のぉぉ。俺とした事が何て初歩的なミスを!

美姫 「いや、とってもアンタらしいわよ♪」

なんでそんなに嬉しそうなんだよ!

美姫 「はいはい。無駄口叩いている暇があったら、さっさと更新しましょうね」

うぅぅ。
話は変わるけれど、それにしても、あ……。

美姫 「暑さネタは前から言っているように禁止よ」

あ、あ、あー、赤巻紙黄巻きまみ青巻きまき!

美姫 「いやいや、全然言えてない上に誤魔化し方がおかしすぎるから」

うがぁー! 溶けるんだよ! だらけそうになるんだよ! 体力がどんどん減っていくんだよ!

美姫 「夏だものね〜」

あっさりとそれだけ!? もう少しいたわってくれよ〜。

美姫 「無理! という訳で、キリキリと働け〜」

そうだっと思ったよ!

美姫 「さ〜て、その間にCMいってみよ〜」







夢を見る。
全てが崩れ落ち、今までそこにあって当然だったはずの幸せが一瞬にして消え去ってしまう夢。
夢を見る。
腕の中で動かず、温もりを失っていく女の子の夢。
夢を見る。
何も出来ず、ただ己の無力を見せ付けられる夢。
夢を見る。
瞳に映る光景が何処か遠くに、まるでガラス越しのように感じられ、身体を虚無感が包み込む夢。
夢を見る。
少ない希望を見出し、無残にも、まるで嘲笑うかのごとく全てを奪われる夢。
夢を見る。
何も考えず、何も感じず、ただ胸の内を焦がす黒い感情に従い二つの凶器を振い続ける夢。
夢を見る。
全てを成し遂げ、生きる気力さえも失い、何も考えずに朽ち果てようとする夢。
夢を見る。
お前の見る地獄はまだこんなものでは終わらないとばかりに、突如起こった不可思議な出来事に巻き込まれる夢。
そこでようやく目が覚める。
朝だというのにやけに身体は冷え切っており、全身に寝巻きが張り付いている。
どうやら冷や汗を大量に掻いているらしく、下着までが張り付くように気持ち悪い。
まだ日も昇っていないのか、薄暗い室内にやけに煩い声が聞こえる。
いや、そうじゃない。
それは話し声などではなく、ただ自分の口から零れる息。
いつの間にか荒く呼吸を繰り返している自らの口を何故か両手で押さえ、記憶を探るように、
今見たはずの夢を思い出すように目を閉じる。
だが、そうそう夢の内容など覚えているはずもなく、嫌な夢であったとしか分からない。
知らず強く口を押さえていた手を離し、大きく息を吐く。
吐いてすぐさま吸う。額に掛かる髪も汗で張り付き、不快感を覚えるがそれを指先で乱暴に払い退け、
少女はベッドから起き上がる。
部屋の隅で眠る己の使い魔、正確にはその候補である青年、恭也にそっと近づく。
よく思い出せないのだが、夢で見たあの光景と青年の視点が妙に合ったような気がするのだ。
詳しくは覚えていないが、本当に悪夢であった。

「妹の形見」

昨日、ギーシュと決闘をする前に思わず漏らした青年、恭也の言葉を思い出す。
同時に腕の中に抱く冷たい骸の感触も思い返し、ルイズは顔を顰める。
もしかすると、あの夢は恭也の記憶なのかもしれない。
何故、そんな事が起こるのかは分からないが、何となくそう感じてしまうルイズであった。
知らずいつの間にか零れそうになっていた雫を誤魔化すように乱暴な手付きで拭い、
いつものように勝気な目をして目の前で眠る恭也を睨むように見下ろす。
こうして見ていても無愛想というか、起きている時と殆ど変わらない表情。
普通、眠っているのならもう少し和らいだ顔になっても良いだろうにと、
自らの使い魔となる恭也の顔に小さく嘆息を漏らす。だが、逆に言えば寝ていても安心できないとも言える訳で。
何故、そんな考えが浮かんだのかは分からないが、ルイズはふとそんな事を考えていた。
これもやはり夢の所為なのかもしれないと小さく頭を振り、悪夢を忘れようと昨日の事を思い返す。
決闘と言うよりも、最早一方的な展開となった昨日の事件を。



darkness servant 第四話



ギーシュが気を失い倒れても、恭也は躊躇する事無く小太刀を立て、その喉元へと一息に振り下ろす。
その腕をルイズが必死になって抱き付いて止める。
本来ならその程度で止まるはずはないのだが、恭也は攻撃を止めてルイズをじっと見詰める。
下手をすれば人を殺す事にもなりかねない攻撃をしようとしているというのに、
恭也の瞳には何の感情も浮かんでいない。
その事に一瞬、身体を恐怖が走り抜けるが、ルイズはそれを堪え、恭也のその目を見詰め返す。

「やめなさい。誰が見てもあなたの勝ちでしょう。勝負はもうついたわ」

「言ったはずだ。命のやり取りを申し込んだのはこいつだ。
 そして、まだ俺もこいつも生きている。邪魔をするな」

「だ、駄目よ! それ以上は私が許さない! どうしてもと言うのなら、私が代わりに――」

口にした途端、殺気がルイズへと向けられる。
それだけで続く言葉は出てこず、身体は小刻みに震える。
気が付けば恭也の腕もいつの間にか離していた。
恭也は静かに小太刀を持つ手を掲げ、それをギーシュに振り下ろそうとする。
その前に回り込み、足腰は立たないが座ったままで両手だけ広げて目を閉じる。
容赦のない恭也が主人でも何でもない自分が立ちはだかったからといって、
攻撃を止める事はないだろうと理解していた。だから、来るであろう衝撃を歯を噛み締め、目を閉じて待つ。
だが、意外にもその衝撃は襲っては来ず、
ルイズはもしかして自分を無視してギーシュを攻撃したのではと今更ながらに思い目を開ける。
迂闊だった。自分は動けないのだ。目の前で立ち塞がった所で、恭也はルイズを無視できるのだ。
目を開けたルイズは真っ先に後ろにいるギーシュへと振り返り、その胸が動いて呼吸している事に安堵の吐息を漏らす。
続けて恐る恐る見上げれば、恭也はいつもの無表情のままでルイズを見下ろしていた。
その手に握った小太刀はそのままに、腰の横に力なく置いている。

「お前には関係のない事だろう。何故、邪魔をする」

「か、関係なくはないわよ。使い魔のした事は主人の責任でもあるんだから。
 そ、そりゃあ、あんたはまだ私の使い魔じゃないけれど……。
 それでも、目の前で人を傷つけようとしていたら止めようとするでしょう」

「……そうか」

また馬鹿にされるかと思ったルイズであったが、恭也からはそんな言葉は出てこない。
それどころか小さく呟かれた声は今まで聞いた事もないような優しさを含んでいるようで、
またルイズを見る目が何処か遠く見ているようでもあった。
そんな恭也の様子に何も言えずにいるルイズの頭に恭也の手が伸びてきて、
思わず身を硬くするも特に危害を加えようとしているのではなく、ただ数回優しく撫でられる。
意味が分からずに思わず呆然と見上げたルイズの視線と恭也の視線がぶつかり、
恭也はようやく自分が何をしているのか分かったように素早く手を退けると、小さく謝罪を口にする。
初めてかもしれない謝罪の言葉にルイズが勝ち誇るような言葉を上げるかと思われたが、
当の本人は未だに呆然とした顔を向けている。
だが、恭也の方はもう既にいつものような無表情となると、ルイズやギーシュに背を向ける。

「今回はもう良い。その小僧はお前の好きにしろ」

そう告げると振り返ることもなくさっさとこの場から立ち去る。
その背中を見送るルイズの背後で、金髪の少女、モンモランシーがルイズに礼を言った後、
ギーシュの名を何度も呼んでいるようだが、そんな声さえもルイズの耳には届かなかった。
先程見せた恭也の何処か遠くを見る目。何故か寂しさや後悔といったものが見られたあの瞳。
それがどうしても気になってしかたなかったのである。



昨日の事を思い返し、忘れようとしていた悪夢の感覚をもう一度思い返す。
悪夢を忘れようと昨日の事を思い返していたのに、これでは本末転倒ではあるのだが、
恐らくはあの最後に見た恭也の姿とあの悪夢が繋がったような気がしたのだ。
だが、既に悪夢の残滓は遠く掴む事は出来ない。
ルイズは諦めたように溜め息を吐き、自分の使い魔となる男の顔をもう一度見下ろそうとして、

「……人の寝顔を眺めながら百面相か。変わった趣味だな」

「っ! だ、誰が趣味よ! あんた、いつから起きてたのよ!」

「お前が俺の傍に立った時だ。何かするつもりなのかと警戒していれば……」

あきれを多分に含んだ物言いにルイズは顔を真っ赤にして肩を震わせる。
それが怒り出す前兆だと分かっているが、恭也は特に気にした素振りも見せない。
だが、ルイズは気付いていないが、あの人と関わって来なかった恭也が冗談らしきものを口にしたのだ。
尤もそれが怒らせる原因なのだが。もう少しルイズは普段の恭也の言動を気にするべきなのかもしれない。







美姫 「って、何も出来てないじゃない」

いやいや、滅茶苦茶CM用のネタを頑張ってたよね。

美姫 「私はCMの間に更新しろって言ったのに」

んな無茶な。

美姫 「ひ、酷いわ!」

どっちがだよ!
と、まあ冗談はさておき……。

美姫 「勿論、私は本気だったけれどね」

はいはい。とりあえず、トップページにある広告バナーの事を。

美姫 「幾つか質問があったのよね」

おう。別に怪しいもんじゃないんで、気が向いたらクリックしてみてくださいって程度です。

美姫 「まあ、Kが貼ってくれって頼んできたんだけれどね」

ああ。そんな訳ですので、あまり気にしないでください。
さて、今週は確かにSSがアップされていない訳だが。

美姫 「だから、きりきりと書きなさいよね」

分かってますよ〜。何としてもとらみてを完結まで持っていきますよ〜。

美姫 「それじゃあ、この辺りかしら」

だな。それじゃあ、今週はこの辺で。

美姫 「また来週〜」


7月18日(金)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、梅雨も明けたぞ、とお送り中!>



ただの夏には興味ありません。
未来的、宇宙的、異世界的な夏があったら教えなさい!

美姫 「ある意味、温暖化が進んでいる今は未来的な夏とも言えるかもね」

色々と問題のありそうな返答をありがとう。
まあ、何はともあれ梅雨も明けたし本格的な夏ってことだ。

美姫 「海にスイカにカキ氷……」

クーラーに扇風機に風鈴に団扇。

美姫 「あー、いや別に良いんだけれどね」

やっぱり夏はこれらを完備して外に出ないのが一番だよ。

美姫 「引き篭もる気満々ね」

あっはっはっは。
暑さに弱い俺が外に出るとでも?

美姫 「威張るところじゃないから! 水着や浴衣といったものもあるでしょう」

ふむ。メイド型水着にメイド型浴衣というのはどうだろう。

美姫 「それ、一体どんなデザインなのよ」

そうだな。やはりホワイトブリムは基本だな。
水着ならカフスもありか。後はパレオがエプロンのようになっていてだな。
むむ。やはり露出部分が増えるから結構難しいな。まあ、色は黒か紺に白だな。
パーティドレスっぽく肩を露出させたロスチャイルドメイド服みたいなワンピース水着とかでどうだろう。
ビキニにするなら、確かオレンジメイド服というのがそれに近いはずだ。
で、浴衣の方はオーソドックスにクラシックタイプのメイド服にエプロン。
けれどもスカートではなく、そこが浴衣ってのでどうだろう。
いや、しかしバランスが悪いか。やはり上を浴衣タイプにして……いや、それだと。

美姫 「いや、私も振ってから失敗したとは思ったわよ。
    アンタににこの手の話を振ると勝手に喋り続けるものね。はぁぁ。
    とりあえず、バカが戻ってくるまでの間、CMをお楽しみください〜」







「我は死なん。死なんよ! いつか必ず蘇ってみせよう。
 その時まで、精々束の間の平和を楽しむが良い、人間共め!」

怨嗟の声を高らかに上げ、自身の血に塗れた女は哄笑を力尽きるまで上げ続ける。
やがて、その身体は力を失い倒れ伏し、光となって散っていた。
時に聖暦238年の事であった。この年、世界を震え上がらせていた魔王はその仲間も含めて倒されたのである。
これから世界はその傷跡から再建すべく、新たな時代を築いていく事となる。
だが、それは別のお話である。



早朝、いつもの時間よりも早く目を覚ました恭也は、自分が今しがた見ていた夢の残滓を振り払うように頭を軽く振る。
はっきりと覚えている訳ではないが、何やら不吉な夢を見たような気がする。
しかし、はっきりと意識が覚醒していくに従い、夢の記憶は薄れていく。
夢とは本来そういうものなのだが、それでも何とも言えない気分だけははっきりと胸の内に残る。
そんな気分を振り払うため、少し早いが恭也は起き上がると着替えをするのだった。

寝巻きから着替え終え、後はいつもの時間まで軽く身体でも動かそうかと考えた恭也の脳裏に突如異変が起こる。

≪ようやく復活できたか≫

頭の中に響いてきた声に、それでも思わず部屋の中を見渡して誰もいない事を確認する。
あまり考えたくはないが、やはり今さっきの声は頭に直接聞こえてきたのだろう。
様々な経験を得た今となっても、やはり驚かずにはいられない事態。
とりあえずは現状を把握するべく、声の主に話しかけようとして、どうすれば良いのか分からずに行き成り躓く。

≪さて、あれからどのぐらいの時が流れたのか。……む、何故、身体が動かないのだ。
 もしや、我の復活を事前に察し、既に拘束でもしたか! いや、待て落ち着け。
 だとしても、首はおろか指一本動かぬのは可笑しい≫

「……考えている所すまないのだが、あまり人の頭の中で騒がないでもらえないか」

話しかける手が思いつかず、とりあえずは普通に話し掛けてみる。
どうやらそれは間違いではなかったらしく、頭の中で驚いた声が上がる。
その声の大きさに顔を僅かに顰めつつ、恭也は事情の説明を求めようとして、

≪何者じゃ! 何処にいる! ええい、姿を見せい!≫

「それは俺の台詞だと思うんだが。とりあえず、人の頭の中に話しかけるのは止めてもらえないか」

≪なにを訳の分からないことを≫

それはこっちの台詞だと言いたいのを堪え、恭也は疲れたように目の辺りを揉む。
と、またしても驚いた声が頭の中に響く。

≪な、何じゃ。我の身体が勝手に動いた!? 貴様、何をした!≫

「……もしかしてとは思うが、俺の身体の中に居るとか言わないよな」

嫌な予感を多分に感じつつ、恭也はあり得ないだろうと鼻で笑うように尋ねる。
だが、返ってきた声は予想以上に剣呑なもので、

≪今、何と言った?≫

「俺の身体の中と言ったんだが」

≪ば、バカな、あり得ん。じゃが、現に我の思うようには動かん。
 ええい、貴様鏡じゃ、鏡を用意せい≫

偉そうな命令に肩を竦めつつ、恭也はとりあえずは洗面場へと向かう。

≪ぬぬ、やはり勝手に動きおる。念の為に聞いておくが、貴様が何かしている訳ではないのだな≫

「当たり前だ。俺は普通の人間だぞ。可笑しな術など使えるものか。
 そもそも、お前こそ誰なんだ」

≪ほう、この我を知らぬか。よほどの時が流れたと見える。
 しかし、この我を知らぬとはいえお前呼ばわりとは、くっくっく、どうやら死にたいらしいな≫

「くだらない事を言っていないで、ほら鏡だ」

≪……これが我なのか? ちょっと待て! 顔の造形はまあ、多少の我慢はしよう。
 我に比べれば醜悪だが、まだマシじゃな。強いて言えば、目付きが悪いが。
 しかし、何じゃこの胸は、腰は! それに足までこんなに太く。そもそも、何故我の姿ではないのだ!≫

「目付きが悪くて悪かったな。それよりも、そろそろ説明を求める」

≪……お、男になってしまったというのか。け、穢わらしい!≫

「本当に失礼な奴だ。いい加減に説明をしてもらえないか」

流石の恭也も好き放題に言われてやや憮然となる。
だが、頭の中に響く声はショックを受けたように無言のまま。
小さく溜め息を零し、仕方ないと部屋へと踵を返す。
その内、ようやく我に返ったのか、

≪まさか、あやつらが我を復活させぬ為に人間風情に我を封じたのか。
 くそっ、おい貴様! 今は何年で、ここはどの国だ!≫

「はぁ。こっちの質問は無視して自分の質問には答えろと?」

≪くっくっく。この我を前にして中々大した口を聞く奴じゃな。
 その豪胆ぶりは気に入った。じゃが、あまり過ぎると殺すぞ?≫

「まず根本的にどうやって? 次にお前を前にも何も、俺にはお前の姿は見えないぞ。
 豪胆も何も、人の頭に勝手にいつの間にか住み着いて命令ばかりするお前には敵わないさ」

≪くっくっく。そうか、そんなに早死にしたいか。ならば望み通りにしてやろう!≫

叫んだものの、身体の主導権は恭也にあるらしく、指一本動かない。

≪くっ、貴様!≫

「始めに言っておくが、俺は何もしていないからな。
 とりあえず、お前が誰なのかから説明してくれ。そうしたら、お前の質問にも答えよう。
 さし当たっては名前からか?」

≪人間風情が我の名を知らぬと言うか。まあ、良い。そこまで言うのなら教えてやろう。
 我はレミア。魔王レミア様よ!≫

「そうか。俺は高町恭也だ」

≪待て待て。貴様、それだけか? 我の名前を聞いてそれだけしか反応せぬのか!?≫

「……どんな反応をしろと?」

≪本当に知らぬのか。一体、あれからどれぐらいの時が経ったのじゃ≫

戸惑ったような声を出すレミアへと恭也はあれというのが何時か尋ねる。

≪知らぬよ。人間共が勝手に決めた年号など、我には何の意味も持たぬ。
 じゃが、あれというのは我が、魔王が倒された日の事じゃ。
 我自身が言うのも何だが、これだけの大事ならば後世に伝えられておるじゃろう≫

「魔王?」

≪くっくっく、そうじゃ。ようやく、我の恐ろしさを知り言葉も出ぬか?≫

「……まさかとは思うが、今までのは全部俺の妄想とかではないだろうな。
 可笑しな事を色々と経験した所為で、すっかり普通に会話をしていたが。
 もしかして幻聴という可能性もあるし。だとすれば、この声は俺が作り出しているのか……」

どこかショックを受けた様子で呆然と呟く恭也の頭の中で、レミアの抗議の声が上がる。
互いに落ち着いているようで落ち着いていないのか、互いの話を聞く風もなく言いたいことだけを口にする。
時間にして五分ほどだろうか、ようやく恭也も落ち着きを取り戻し、無理矢理取り戻して再び話しかける。

「魔王というのは何だ?」

≪なに? 貴様、我を知らぬのか?≫

「だから、聞いているだろう」

≪あ、ありえん。名を呼ぶのすら恐怖し、ただ震えていただけの人間風情が我を知らぬだと?
 魔物の軍団を率いて、三日で国の一つを滅ぼした事もある我を本当に知らぬのか≫

「ああ、知らん」

かなりショックを受けている事を感じつつも、恭也は再度誰かと尋ねる。
対する答えは先程と同じ魔王という言葉である。

≪そもそも、この復活はどこか可笑しい。
 何故、我が人間風情の中に閉じ込められねばならぬ。しかも、全く身体を動かせぬではないか!≫

「勝手に操られても困るんだがな」

≪貴様の都合など知るか≫

随分と勝手なことを言う魔王に呆れながら、恭也は近づいてくる気配を捉える。
時計を見れば、既に鍛錬に行く時間を数分過ぎており、心配した美由希がやって来たのだろう。

「とりあえず、俺はする事があるからそれが終わるまでは黙っているように」

そう告げると恭也は鍛錬道具一式を手に立ち上がり、部屋の外へと出る。
丁度、ノックしようとしていた美由希が驚いた顔を見せる中、

「すまないな。少し遅くなった。ほら、呆けてないでさっさと行くぞ」

「あ、うん」

恭也の声に返事を返すと、美由希も後に付いてくる。
玄関へと向かう間も頭の中ではレミアが恭也に文句を並べてくるが、
それらを全て聞き流して神社までのランニングを始める。
が、流石に頭の中に直接響く声に顔を顰め、あまりの煩わしさに恭也はレミアを押し退けるようなイメージを浮かべる。
すると、頭に響いていた声がなくなり、全くなくなった訳ではないが殆ど意識しなければ聞こえない程に小さくなる。
やはり幻聴だったのかと思わず考えるも、耳を澄ませるようなイメージをすれば、小さく聞こえてくる声。
とりあえず考えるのは後にする事にして、恭也は鍛錬へと気持ちを切り替えるのだった。



「違う世界?」

≪ああ、恐らく、いや間違いなくそうじゃ。
 それならば、お前らが我を知らぬのも、月が三つではなく一つしかないのも納得じゃ。
 信じがたい事ではあるがな。よもや、御伽噺のような話が実際に我が身に起こるとはな≫

「そうか。元の世界が懐かしいか?」

≪そのような気持ちはない。我は魔王ぞ。ただ口惜しくはあるがな。
 折角、復活をしたというのに、人間共を恐怖に陥れる事ができぬのは。
 それに人間と融合するような形、それも主導権が貴様にあるという状態もな≫

「それは俺に言われてもな。所で、お前が俺の中に復活した事で俺に影響はないのか」

≪知らぬ、と言いたいところだが、貴様の身体は我の身体でもあるしな。
 どれ少し調べてやろう。ふむ、右膝が可笑しいがこれぐらいならすぐに直るな。
 他には、ほうほう。ん? くっくっくくくはぁぁぁっはっははは≫

「右膝に関する事で少し気になる発言もあったが、それよりも何が可笑しいんだ」

≪いや、なに大した事ではない。単に我が復活して貴様と融合した所為で、貴様は既に人ではなくなっておる。
 くっくく。これは嬉しい事じゃな。人間の身体は脆くていかんからな。
 しかし、そうなると主導権以外にも我の方にも何か影響があるのかもしれんな≫

「ちょっと待ってくれ。レミア自身の事は後にして、俺の身体が人ではないというのは?」

≪言葉通りだ。我と同等の身体に変じておる。老いる事なく死ににくく、頑丈で怪我などの治りも早い。
 言うならば、我が魔王として生存していた時と同等にな。
 付け加えて、魔力も昔通り、いや、昔よりも僅かばかりじゃが増えておるようだ。
 恐らくは貴様の分も加わったのだろう。くくく、これでまた世界を恐怖に落とす事が出来るではないか≫

ご満悦とばかりに哄笑を上げるレミアへと恭也が呆れたように言い放つ。

「そんな事をする訳ないだろう」

≪ぬ、何故だ!?≫

「当たり前だろう」

≪ぐぬぬ、ならば貴様には我の第一家来の称号をやろう。
 存分に我の力を振るえ! なに、使い方は実戦で追々我自らが教えてやろう。
 どうじゃ、貴様には過ぎた褒美であろう≫

「とりあえず、お前にはこの世界の常識を教えていこう」

≪ええい、人の話を聞かんか虫けら!≫

「お前こそ、俺の話を聞け!」

そんなこんなで恭也と魔王の可笑しな同居(?)生活が幕を開けることとなる。
果たして、恭也は魔王レミアの野望を止めることが出来るのか。
魔王レミアは恭也を言い包める事が出来るのか。
それは誰も知らない。

高町恭也の魔王物語







やはりメイド服である以上、ぶべらっ!

美姫 「いい加減に目を覚まそうね?」

ふぁ、ふぁい!

美姫 「ちゃんと返事しなさい!」

ひゃい! って、お前が行き成り殴るから舌を噛んだんだろが!
ったく、あー、いてぇ。

美姫 「自業自得よ。で、今回のCMは?」

オリジナル設定。最近、魔王の設定ってよく見ない?
で、とらハでもやってみようかなと。

美姫 「なるほどね」

そんなこんなでこの世界の常識を知らず、世界を恐怖に陥れようとする魔王レミア。
そして、そんなレミアを更生させようと頑張る恭也の話などを。

美姫 「さて、CM解説はこれぐらいにして」

うーん、他には何かあるかな?

美姫 「最近はSSもそれなりのペースだしね。私としてはもうちょっと増やして欲しいけれど」

あ、あははは。
まあ、今はとらみての完結目指しているからな。
自然と更新が早まっているな。まあ、このペースがいつまで続くか、だけれど。

美姫 「自分で言わなければ、今回はお仕置きもなかったでしょうに」

あ、あれ? もしかして、また失敗ですか?

美姫 「うん♪ という訳で、星になれ〜」

ぶべらっぼげぇっ!

美姫 「さてさて、それじゃあ、今週はこのぐらいにしておこうかしら」

あぁぁぁぁぁ、重力って偉大だね〜。
飛ばされても、この通り戻ってこれるぅぅぅぅって、誰か優しく受け止めてぇぇぇっ!

美姫 「お約束に地面に人型の穴を開けるなんて流石ね」

そんな事を褒められたくないよ!

美姫 「ほら、突っ込んでいる暇があったら」

ええい、ちっくしょう、分かってるよ!
それでは、今週はこの辺で。

美姫 「それじゃあ、また来週〜」


7月11日(金)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、夏到来、とお届け中!>



考えるんじゃない、感じるんだ!
それがきっと新しい何を生み出す力になる!

美姫 「はいはい、ネタ的な、とある生徒会みたいな出だしで」

真似してみました。
と、冗談はさておき……。

美姫 「もう暑いというネタはいい加減止めましょうね」

おおうっ! いやいや、これは最早夏の間の恒例じゃないですか。
九月も半ばぐらいまではやりますとも。

美姫 「やらなくて良いってば」

では、出だしをどうしろと!?

美姫 「今日みたいなパターンで何処まで続くのか見ものよね」

あー、多分、来週辺りで早々にネタ切れだろうな。

美姫 「早すぎるけれど、予想通りの回答ね」

エッヘン。

美姫 「褒めてないからね」

褒められてないから!
って、無視するなよ!

美姫 「それはさておき、……って先に言うな!」

ぶべらっ!
うおぉぉぉ、どちらにせよこうなる運命なのか……。

美姫 「まあお約束ってやつよね」

こ、こんなお約束はいらないやい。
と、そろそろ前半終了の時間か?

美姫 「そういう事。という訳で、今週も元気にCMいってみよ〜」







「ふぅ、こんなものか。なのは、貰ってきたぞ」

中庭で一仕事を終えた恭也は、家の中へとそう声を掛ける。
恭也の声にドタバタと走ってくる音が聞こえ、恭也が注意するよりも先に庭にある恭也の仕事結果を見て、
花も綻ぶとばかりの満面の笑みでお礼を言ってくる。
その笑顔に仕方がないなとばかりに肩を竦め、恭也は縁側に上がる。
それと入れ替わるようになのはが中庭へと降り立ち、その後ろに付いて来ていた少女が中庭を見て、

「笹、ですか?」

「ああ。今日は七夕だからな」

「七夕?」

「うん、七夕。今日七月七日は七夕と言ってね……」

疑問顔の少女――フェイトへとなのはは嬉々として七夕の説明を始める。
織姫と彦星の話を聞いては悲しそうな顔を見せたかと思えば、
笹に願い事を吊るすと聞いては何を願うかと頭を悩ませ、そこには年相応の女の子の姿があった。
それを微笑ましく見守りながら、恭也は二人が話している間に用意したお茶の入った湯飲みを傾ける。
その足元に丸まった子犬のアルフが欠伸を一つ漏らし、二人の邪魔にならないように配慮したのか、
念話で恭也へと話しかける。

≪それにしても、アンタはアンタで年不相応だね相変わらず≫

≪そういうアルフも相変わらず失礼だな。
 それが妹に頼まれて一仕事を終えたばかりの疲労した人間に言う言葉か≫

≪相変わらずなのはには甘いね。それに、あれぐらいならアンタにとっては大した労力でもないだろう≫

≪そんな訳あるか。あれだけの笹を商店街から一人で持って帰ってくるだけでも一苦労だったというのに。
 そんな事をいう奴には今日のおやつはなしだな≫

「なのは、フェイト、こっちに来ておやつでもどうだ。
 笹を貰ってくるついでではないが、かーさんからケーキの差し入れを貰ったんだ」

「やったー。フェイトちゃん、食べよう」

「あ、うん」

フェイトの手を引いてこちらへとやって来るなのはを見遣りつつ、恭也は立ち上がる。
その足元ではアルフが甘えた声を出して擦り寄っている。

≪恭也〜、あたしが悪かったよ≫

≪今更だ、と言いたいけれどアルフの分もちゃんとある。
 とりあえずは人の形態に戻って手を洗って来い≫

既になのはとフェイトは手を洗いに行っており、
恭也は三人分のケーキとジュースを準備するためにキッチンへと向かう。
その後を尻尾を振りながら追いかけつつ、アルフは犬型から人型へと姿を変えるのだった。




おやつを食べ終えた二人は、早速笹に飾る飾りを作り始める。
そこへ美由希たちも帰ってきて二人に加わり、先程よりも賑やかとなった光景をやはり一人お茶を啜って眺める恭也。

「ふぅ、平和だな」

しみじみと呟き再び湯飲みを傾けるも、既に中は空っぽだったらしく、恭也は湯飲みを置く。

「どれ、俺も何か作ってみるか」

言って近くにあった折り紙を手にし、お世辞にも細いとは言えない指で器用に紙を折り畳んでいく。

「ふむ、出来た」

自ら作り上げた飾りを前に誇らしげに胸を張る恭也に対し、フェイトやアルフをおおっ、と感嘆の声を漏らすも、
美由希たちはやや引き攣った笑みを浮かべていた。

「恭ちゃん、どうして兜なんて折ってるの?」

「どうしてと言われてもな。元々鎧兜には身を守って無事に成長するという願いが込められていて……」

「そうじゃなくて! それは端午の節句でしょう!
 今日は七夕なの、た・な・ば・た! それに、そっちのそれはなに!?」

「これか? これはな……」

突っ込みながら美由希が指したのは、折り紙で折られた兜の隣に置かれた十字に折られた折り紙であった。

「ふっ!」

十字の一端を手で掴み、それを美由希へと投げる。
投げられた十字型の折り紙――手裏剣は回転しがら美由希の額に当たり、

「いたっ! ちょ、これ折り紙のくせにとっても痛いんだけれど!」

「たかが紙と侮るからそういう目に合うんだ。
 それは先端部分に飛針が……」

「って、危ないじゃない! って、それで重いのこれ!?」

「まあ、流石にそれは冗談だが、先端部分には必要以上に紙を折り重ねたからな」

無意味に凝った手裏剣を作った恭也にフェイトやアルフなどは感心するが、
このままでは間違った七夕を覚えかねないと慌てたなのはが二人に必死にあれは違うと説明をする。
そんななのはの横で美由希は折り紙を数枚重ね、山折り谷折り、とパタンパタンと折っていく。
出来上がったものの端を手で持ち、即席のハリセンを作り上げるとそれを振り被り、

「った!」

恭也のデコピンを喰らって額を押さえて蹲る。
そこへ追い討ちとばかりに落とした美由希作のハリセンで威力はないながらもペチリと頭を叩いて屈辱を与える。

「七夕、それは飽くことなき剣士たちの戦い……。
 かの松尾芭蕉も七夕の戦いで散った剣士や笹の葉を見て、かの有名な句、
 夏草やつわものどもが夢の跡を詠んだくらいだからな、うんうん」

「って、違うでしょうお兄ちゃん!
 またそうやって嘘を教えたら駄目です! フェイトちゃんが信じたらどうするんですか」

両腕を組んで胸を張り、プンプンと言った感じでお説教をするなのはの頭に手を置き、

「なに、ちゃんとなのはが本当の事を教えてくれるだろう。
 つまり、なのはを信じているからこそ、俺も冗談が言えるんだ」

「お兄ちゃん……って、そうじゃなくて!」

思わず恭也の言葉に感動して口元を緩めかけるも、すぐに初めから嘘を言わないとお説教モードへと逆戻りする。
そんななのはを見て、昔は純真だったとその純真を弄び疑うようになった現況はしみじみと思うのであった。
恭也となのはのやり取りを微笑ましく見守りながら、残るメンバーは手を動かす。

「なあ、フェイトちゃん。七夕ってのはな……」

「あ、さっきなのはから聞きましたから、恭也のあれが冗談だってのは分かります」

「そうか、それなら良いんだ。にしても、師匠もよくやるよな」

「そう言うな晶。お師匠もなのはちゃんもあれはあれで楽しんではるんやから」

「本当にここの家の子達は皆、仲が良いね」

「その中には勿論、アルフさんたちだって入ってますよ」

そんな感じで仲良く話をする四人の下へ、芋虫の如く身体を床に這わせて美由希が近づく。

「うぅぅ、どうしていつも私ばっかり……。
 それに晶たちまで私を放置するなんて……」

高町さん家の長女さんが恨めしげに妹分たちを見ていたり、いなかったり。
そんな感じでわいわいと時間は過ぎて行き、夕方には中庭の笹の飾り付けは無事に終わるのだった。

「ほう、中々様になっているじゃないか」

「そうだね。あ、お願い事を書いた短冊を吊るすの忘れてた」

恭也の言葉に同意し、美由希はすぐに短冊を取り出す。
既に願いは書いてあるらしく、それを上の空いている所に吊るす。

「ふむ……差し詰め、ドジが直りますようにか」

「違うよ」

「なに? じゃあ、他に何があるというんだ。
 あ、料理が上手くなりますようにか」

「違う」

「お師匠、美由希ちゃんのことやから、好きな本がたくさん読めますようにじゃないですか」

「いやいや、案外、打倒師匠とかいう必勝祈願じゃ」

好き勝手言ってくれる恭也たちに美由希は剥れながらも自身の短冊を指差し、

「そうじゃないよ。家族皆の健康祈願だよ」

「なあ、レン。こういう場合、普通過ぎてどう突っ込めば良いのか分からないのだが」

「いや、うちかてどうしようか悩んでるんですが」

「まあまあ。美由希ちゃんらしいと言えばらしいじゃないですか。とっても普通で」

「何!? 何なの、この空気!?
 まるで私が悪いみたいになってるんですけれど!?」

何故か避難されているような気分となり誰ともなく突っ込んでみる美由希。
散々からかって気が済んだのか、恭也は珍しく優しく美由希の肩に手を置く。

「冗談はさておき、お前らしくて良いんじゃないか」

「確かに優しい美由希ちゃんらしいって」

「まあ、俺たちも似たようなもんだし」

「だったら、初めから素直に言ってよ……」

やけに疲れた声を出す美由希を見て、晶たちは笑う。
と、恭也は必死に背を伸ばして短冊を吊るそうとしているフェイトを見つけ、

「付けてやろう」

そう言って近づく。
なのはやアルフがあっさりと渡して来た短冊を受け取り、それぞれ上の方に付けてやる。
その際、アルフの願い事が目に入り、

「いや、まあ良いんだがな。しかし、肉だけじゃ意味が分からなさすぎるぞ」

少々呆れた声を上げる恭也であった。
残るフェイトは自分で付けたいと恭也の申し出を断り、もう一度手を伸ばす。
それを見て、恭也はフェイトの背後に回るとそっと抱き上げる。

「これで届くだろう」

「あ、ありがとう」

小さく照れながらお礼を言うフェイトにどういたしましてと返し、

「ほら、早くつけたらどうだ」

「は、はい。あの、見ないでくださいね」

恥ずかしそうに短冊を胸に抱いて隠しつつ言ってくるフェイトに見ないと言ってやると、
ようやくフェイトは短冊を吊るす。
短冊を付け終えたフェイトを下ろしてやると、玄関から桃子の帰宅する声が聞こえ、なのはたちは家の中へと戻る。
その後に続こうとした恭也の目に、フェイトの短冊が目に入る。
見ようと思ったのではなく、本当に偶々目に入っただけなのだが、
その人よりも良い動体視力はその願い事をしっかりと読み取ってしまっていた。

『恭也さんとなのは、アルフとずっと一緒にいられますように フェイト』

その何とも可愛らしいお願い事に微笑を浮かべると、何もなかったかのように皆の後に続く。
玄関から縁側へとやって来た桃子が笹飾りを見て上手く飾れたわねと笑みを浮かべる中、
恭也は自然とフェイトとなのはの頭に手を置き、そっと撫で上げる。
突然の事に驚いて見上げる二人であったが、特に何も言わずにただ一人は嬉しそうに笑い、
一人は照れがちにはにかんでその掌を受け入れるのであった。







という事で、今回のCMはちゃっかりとリリ恭なので時事ネタ、というパターンです。

美姫 「という事は、また半年ぐらいしたらリリ恭なのの外伝に加わるのね」

多分な。

美姫 「外伝も終わりと宣言してから、これで二つ目ね」

あ、あははは。ついつい手がね、手が動いちゃうんだよ。

美姫 「まあ、書かないよりは良いんだけれどね」

だろう、だろう!

美姫 「言い訳にはならないわよ♪」

おう、目が笑ってません!
と言うか、お前はただ俺を殴りたいだけ……ぶべらっ!」

美姫 「ぴんぽ〜ん、正解〜♪ 正解者には、美姫ちゃんのお仕置きフルコースがプレゼント〜」

激しく全力で拒否します!

美姫 「拒否するのを拒否します」

拒否するのを拒否するのを拒否します!

美姫 「拒否……って、もう面倒ね!」

ぶべらっ!

美姫 「素直にうんって頷いていれば良いのよ!」

連続でぶべらっ! って、何でやねん!
お前、俺の扱いが本当に酷いぞ。

美姫 「そんな事ないわよ。今までと変わらないはずよ」

ああ、確かに今までもこんな感じで……って、それそれでどうなんだろうか。
まあ、これこそ今更って感じもしなくもないけれど。って、自分で言ってて悲しいよ。

美姫 「まあまあ。くよくよしても仕方ないわよ」

誰の所為かな、誰の?

美姫 「私悪くないもん」

……うわ〜い。最早、言葉も出んですよ。

美姫 「出てるじゃない」

そこに突っ込むのか。

美姫 「それよりも、SSはどんな感じなの?」

ああ。最近はとらみて中心で頑張ってます。
何とか終わりも見えてきたしな。

美姫 「それじゃあ、次の更新はとらみてかしら」

うーん、どうなるかな。
まあ、ペース的には週一ぐらいでとらみては更新したいと思っているけれど。

美姫 「いつまで続くかしらね」

あはははは。読まれてますよ。

美姫 「いや、読むも何もアンタだし」

いや、それで一人で納得しないでくれよ。

美姫 「まあ精々頑張りなさい」

いや、だからね。お願いだから話を聞いて。

美姫 「あ、そろそろ時間じゃないかしら」

へいへい。って、すんなり従うのが条件反射みたいになってる!

美姫 「いや、今更じゃない。ほら、早く」

うぅぅ、色々と引っ掛かるけれど、まあ良いか。
それじゃあ、今週はこの辺で。

美姫 「また来週〜」


7月4日(金)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、まだ七月も初めだと言うのに暑い、とお送り中!>



いや、もう本当に暑いな。
ただの暑さには興味がありません。この中に……。

美姫 「可哀相に。暑さで頭がとうとう」

酷いな、おい。
確かに暑いのは苦手だけれどさ。

美姫 「それにしても、今日はまた暑いわね」

だよな。これからどんどん暑くなっていくのかと思うと……。
はぁぁ。

美姫 「夏が近づく度に同じような事ばっかり言ってるわよね」

それだけ暑いのが苦手だという事だよ。
とは言え、暑いといっても涼しくならないのが現実だ。
気合を入れて……ふぅぅ。

美姫 「はやっ! 一秒も持たない気合って」

現実なんてそんなものだよ。

美姫 「いや、そんなものとか言われても」

ああー、何か涼しくならないかな〜。

美姫 「なら背筋も凍るような体験をさせてあげましょうか?」

え、遠慮しておきます。

美姫 「それじゃあ、例によって例のごとくいってみましょうか〜」

だな。それじゃあ、今週も……。

美姫 「CMいってみよ〜」







夏の暑さもようやく終わりを見せ始めた九月も半ばを過ぎた休日。
珍しく出掛けていた恭也はその帰り道に不可思議なものを目にする。
それは何と言えば良いのだろうか。宙に浮く水面といったところであろうか。
横幅は広い所で1メートル半、高さは2メートルを超えている。
そのくせ、厚みは殆どなくその表面は揺らぐことも光を反射する事もない。
それ自身が僅かに光を放つだけで、その場にただ静止する物体。
恭也だけでなく、共に出掛けていた者たちも揃って訝しげにそれを見遣り、やり過ごすのが無難だと結論を出す。
そう結論を出して踵を返してこれでお仕舞いとなるはずであった。
美由希がこんな時にドジなどしなければ。
転びそうになった美由希は何とか踏ん張って前のめりにこけるのを堪えるも、
今度はその勢いを殺せずに後ろへと倒れてしまった。
更に運悪くすぐ後ろには恭也が居て、結果として恭也は美由希に押されるような形で、
やり過ごすと決めた物体にぶつかってしまう事となる。
触れた瞬間、強い引力に引かれるように恭也の体は水面に消え、
恭也が完全に消えるとその物体も役目を終えたとばかりに消え去る。
後には呆然とそれを見ているしかない美由希たちが取り残されるのみであった。



地面に腰から落ちる感触を味わい、恭也は自分が地面に尻餅を着いていると悟る。
一瞬だったが可笑しな感覚を味わった気もしたのだが、実際にはそうでもなかったらしい。
美由希にぶつかられ、そのまま転んだのだろうと判断する。
だが、すぐにそれが間違いであると気付く。
何故なら、恭也自身の居る場所が既に先程とは全く違っているからだ。
よく見れば地面もアスファルトで舗装されている訳でもなく、
周囲にはマントを纏った可笑しな格好の者たちが。
目の前にもこれまた同じような格好をした少女が杖らしきものを手に肩を震わせて恭也を見下ろしている。
理由もどういった事になっているのかも分からないが、状況だけははっきりと理解できた恭也は、
少し疲れた表情を浮かべ、肩を竦めて嘆息する。
つくづく自分の人生が激しく激動の中にあるのだと思い知らされた、といった所だろうか。
遂には続く激動の最初の事件となった、高校三年時の月村忍との出会いにまで遡ってしまうほどに。
恭也が過去を追憶している間に、この場で唯一の大人である人物と目の前にいた少女の口論も終わったようである。
渋々といった様子で恭也の目の前で屈み、少女は恭也と目線を合わせる。

「感謝しなさいよ。平民が貴族にこんな事をしてもらえるなんて、一生に一度だって本当ならないんだからね」

言って、少女は自らの名前を名乗ると恭也が事情を尋ねるよりも先に恭也へと口付けるのだった。



「ちょっと美由希! アンタ何してるのよ!」

「え、えっと……。わ、わざとじゃないんだよ」

「当たり前だ! もしわざとだと言うのなら、私がこの場でお前の首を刎ねている」

「ほらほら、リリィちゃんもロベリアもそれぐらいにしておきなさい。
 そんな事よりも今は恭也くんの居場所を探すのが先でしょう。
 詳しくは調べていなかったから分からないけれど、恐らくは魔法ね。それも転移系」

揉めている三人を落ち着かせ、銀髪の女性ルビナスは先程の現象を思い出しながら推測を口にする。
確認するように、そちらの系統ならエキスパートである二人の少女に視線を向ける。

「間違いないと思います。この世界にマスターの存在は感じられませんから」

「だとすると、罠かもしれないわね」

双子と思うほど瓜二つの少女が口々に言うも、最後の言葉には他の者たちも驚きの顔を見せる。
それらを見渡しながら、少女の片割れ、イムニティは小さく肩を竦める。

「あくまでも予想だけれどね。他の世界の人間が何らかの現象で救世主の事を知ったとしたら?
 そしてその力を利用しようと考えた。そうなると、人質を取るのは賢いやり方だもの」

「で、でも主様が拙者たちの中で最も腕が立つでござるよ」

「相手がそれを知らないのなら意味はないわ。
 実際、アヴァターで救世主として名を馳せたのは、美由希マスターとクレアを除いたここに居る者たちだもの。
 まさか、相手も人質に取った者が神を殺したなんて思わないでしょう」

「だとしたら、急いで恭也くんを助けにいかないと」

イムニティの言葉に眼鏡を掛けた少女、ベリオが慌てたように言うのを受け、他の者たちも一斉に頷く。
だが、美由希がそれらを落ち着かせるように押し留める。

「ちょっと待って。今のはあくまでも予想の一つにしか過ぎないんだから。
 そもそもあの状況で、あれに触れるのが恭ちゃんかどうかも分からないでしょう。
 下手をしたら救世主であるリリィたちを召喚する事にもなるんだよ。現に私たちは無視しようとしたじゃない」

「誰かさんのせいで結局は恭也が触れてしまったけれどな」

ロベリアの視線から顔を背けつつ、美由希はリコへと尋ねる。

「リコさんなら恭ちゃんの居場所を掴めるんじゃないの」

「ええ、今探索しています。近い世界に居てくれれば良いんですけれど……」

目を閉じ、恭也との繋がりを探すように集中するリコを邪魔せぬよう、美由希たちも静かに待つ。
が、それほど待つこともなく、リコは急に目を開ける。

「駄目! マスター、拒絶してください!」

目を開けたかと思えば、行き成り大声を出すリコ。
その事にも驚いたが、発せられた言葉に他の者たちも色めきたつ。

「リコ、一体何があったのじゃ!」

クレアが待てないとばかりにリコに尋ねる。
他の者たちも同じ思いでリコを見詰めるが、リコは説明をするよりも先にイムニティの手を取り、

「イムニティ、力を貸して」

「ちょっ、一体何なのよいきなり」

「いいから、早く!」

珍しく慌て、その上大声を出すリコにイムニティは渋々とだがリコの手を繋ぎ返す。
その様子を見ていたクレアたちも説明を求めるのは後にするべく、再び口を閉ざし、
美由希と未亜はイムニティへとリコに協力するように頼む。
二人の頼みを受け、イムニティは渋々だった顔を一転させ、寧ろ自分から協力するようにリコに力を流す。
そのお蔭か、リコが何故慌てたのか理解する。

「そういう事ね。全くとんでもない事をしようとする馬鹿ね。
 恭也に服従の魔法を刻もうとするなんて」

リコとは違い、ただ力を渡すだけだからこそ少しは余裕があるのか、
イムニティはじれったそうに待っている者たちへと状況を伝えてやる。
実際にはマスターの為に取った行動ではあるが。

「イムちゃん、それってどういう事?」

「簡単に言えば恭也を使い魔にしようとしているみたいですね。
 主に対して好意を抱くように魔法による制約を」

その言葉に知らず全員が反応をするも、今は大人しくリコが何かをしているのを見守る。
恭也をマスターとするリコが恭也の不利になるような事はしないと分かっているし、
何よりも命を預けあった仲間だからこそ、信じて待つ。
程なくして、リコが目を再び開ける。

「もう大丈夫です。後、マスターの居る世界が分かりました。
 今ならすぐに飛べますがどうしますか」

聞かれ、その場に反対する者など居るはずもなく、リコとイムニティを中心として魔法陣が描かれる。

「それではマスターの元へと行きます!」

リコの確認の言葉に全員が頷き返したのを受け、リコは世界を渡る魔法を発動させるのだった。



ルイズと名乗った少女の口付けから解放され、暫く呆然となっていた恭也であったが、突如手の甲に痛みを覚える。
小さく呻き声を漏らしつつも見詰める先で、手の甲に変な文字が浮かび上がってくる。
徐々に痛みや熱が治まり始めたその瞬間、恭也の頭にリコの叫ぶ声が聞こえる。

『駄目! マスター、拒絶してください!』

切羽詰まった声に恭也は一片も疑う事なく体の中に馴染もうとしている力に抵抗する。

「くぅぅ」

遠くで誰かが何か言っているようだが、今の恭也にはそんなものは関係ない。
ただ全力で持って抗う。抗い続けていると、ふとその負担が軽くなっていく。
それがリコによるものだと理屈ではなく感じ取り、恭也は更に抵抗するべく内側へと力を向ける。

「っ! 来いルイン!」

恭也が抗うのに合わせ、力を増した内側に潜む力に対抗すべく、恭也は己の相棒を呼ぶ。
その声に応え、恭也の両手に二本の刀が出現する。
周囲で驚きの声が上がるのも構わず、ルインを手にしたことによって増した力を内側に向け、
可笑しな力を消し飛ばす。

「はあぁぁぁ。助かったルイン」

≪いえ、この身は主のためのものですから≫

ルインの声は恭也にしか聞こえないので、傍目には怪しく映るかもしれない光景である。
だが呆然とこちらを見ている者たちは、今のやり取りにさえ気付いていないらしく、
特に一番近くにいたルイズはただ恭也を指差して口をパクパクと開閉するのみである。
そんなルイズに恭也は鋭い眼差しとルインの切っ先を向ける。

「さて、一体俺に何をしようとした」

「あ、アンタこそ何をしたのよ!」

「何と言われても、俺の体に可笑しな力が注ぎ込まれたからそれを吹き飛ばしただけだ」

「そ、そんな……」

「こちらの質問にまだ答えてもらっていないが。
 それとも俺はお前たちを敵と判断しても良いのだな」

恭也の言葉にあちこちから平民のくせにという言葉が飛び交うが、恭也は全く意に返さずルイズを見詰める。
見下ろされ僅かに身を震わせるも、すぐに気丈に杖を構えなおし、

「貴族に向かって何をしているのよ! さっさとその剣を退けなさい」

「この状況でまだそんな事を言えるとは。大したものだな。
 だが、状況を分かっていないのか?」

冷ややかな視線で見つめ返すと、途端に口篭るルイズ。
けれどもその目だけは決して折れる事なく真っ直ぐに恭也を睨み付ける。
その事に少しだけ感心しつつ、自分の背後にこっそりと回っていた唯一の大人へと振り向きもせずに声を掛ける。

「何をするつもりかは分からないが、攻撃の意思ありと判断するが良いのだな?」

「こちらにそのつもりはなによ。けれど、君が剣を突きつけている子は私の生徒でね。
 彼女に危害を加えると言うのなら、攻撃する事もやぶさかではない」

「元を辿れば、こちらを無視してそちらが全て最初にした事だと思うが?」

恭也にそう言われて少しは納得したのか、男は杖を下ろす。

「確かにその通りである。改めて名乗ろう。私の名はジャン・コルベール。
 とりあえず、事情を説明させてもらえないだろうか」

コルベールの言葉に恭也が剣を下ろすと、ルイズは立ち上がり恭也へと文句をぶつけてくる。
それを無視してコルベールを見れば、更にルイズが激昂して怒鳴ってくる。
流石に話が出来ないと悟ったのか、コルベールが名前を呼べばようやく大人しくなる。
こうしてコルベールによる説明がなされ、結果として恭也はまたしても異世界に来たのだと理解する。

「そういう訳で契約をしてくれないだろうか」

「悪いがそれは出来ません。
 そちらに悪意がないのは分かりましたが、先程の契約の魔法、あれには何かあるみたいですから」

「だが、契約してくれないと彼女は留年という事になってしまうんだよ」

困ったように説明するコルベールと、無言ながらも何かに耐えるようにしているルイズ。
確かに可哀相だとは思うが、あのリコが大慌てで止めたのだ。
だとすれば恭也は首を縦に振るわけにはいかない。
代わりの使い魔を召喚する事も出来ないとあり、困っていると、

「マスター! 無事ですか!」

「恭也、大丈夫なんでしょうね!」

恭也の周囲に次々と少女たちが姿を見せる。
あまりの事態にコルベールたちが呆然となっている中、ルイズは仲良く話をする恭也に食って掛かる。

「ちょっと、何を暢気に話しなんかしているのよ!
 こっちの話がまだでしょう! というか、何よこいつらは! 何で平民がこんなにたくさん」

「誰が平民よ! 私はリリィ・シアフィールド、アヴァターの女王の娘よ。
 それに、こちらの方は前王女のクレア・バン――」

「落ち着かぬか、リリィ。それは昔の話じゃろう。
 それにその話を持ち出すのなら、お主たちこそ世界を救った救世主ではないか。
 確かルイズと申したか。すまなかったの。救世主の力を悪用しようとした者かと勘違いしてしもうた」

「あ、いえ、その……。こ、ここここここちらこそ申し訳ございません」

リリィやクレアの言葉を聞き、またクレアと実際に接してその雰囲気からルイズは膝を着いて謝罪を口にする。
同時にその顔色は怒りで紅潮していたのとは打って変わり、今は真っ青になっていた。
平民だと思っていたが、実は王族だったのだ。
国の名は聞いた事はなかったが、クレアの纏う気品や雰囲気から王女という言葉が嘘ではないと悟る。
それは同時に他の者たちが与えられているという救世主という称号も本当ということになる。
恐らくは騎士の称号みたいなものなのだろうが、問題はそこではない。
平民だと思って召喚した恭也がここに居る者たちと知り合いなのは間違いなく、
また対等に話をしているという事は同じ称号を得ているという事である。
そんな人物を使い魔にしようとしたのだ。
下手をすると国家間の問題にも広がりかねないのである。
ルイズは顔を上げる事もできず、ただただ頭を下げ続けるしか出来なかった。
それはコルベールも同様で、しかし彼はそれ以前に教師としてこれ以上事態が広がらないように、
こちらの話が聞こえておらず、行き成り膝を着いたルイズを不思議そうに見ている生徒たちに戻るように指示をする。
生徒たちを全て追い払うと、コルベールもまた膝を着く。
一方の恭也は困ったようにルイズを見詰め、肩を竦めると、

「とりあえず、俺は救世主じゃないから安心しろ」

そう口にする。これで少しはルイズの罪悪感が和らげばと思って。
だが、その言葉を耳にした途端にルイズは般若のような顔を向けてくる。

「アンタ、騙したの!」

「失礼な。さっきリリィが言った事は本当だ。
 ただ俺が救世主じゃないってだけでな」

同じことだと更に文句を言おうとするも、それでも王族の知り合いであると思いなおして口を噤む。
そんなルイズの事など初めから気にもしていなかったイムニティは、ただ自分の主である未亜が、
恭也の救世主という言葉に居心地を悪そうにしているのを見て、皮肉を込めて言い返す。

「だったら、あなたは神を殺した男じゃない。ねぇ、恭也」

これもまた普段なら身内での冗談――恭也や美由希が未亜たちを救世主としてからかった際に、
イムニティが勝手に言っていた事を仕返しにと誰かが口にしたのが始めではあったが――に、
ルイズはその言葉の真偽を問うように思わず全員を見渡し、嘘ではないと悟ると改めて恐怖に後退る。

「あー、とりあえず、状況の整理をした方が良くないか。
 こっちは大よその状況が分かっているが、恐らくそちらは分かっていないだろう。
 まず肝心な所なんだが、異世界という概念はあるか?」

そうやって話し出した恭也の言葉を半信半疑に聞きながら、携帯電話などを見せられ、
最終的には信じざるを得ない事となる。
それでも、やはり進級の掛かっているルイズにとっては一大事な事なのである。
改めてお願いをするのだが、契約方法を知ったリリィたちが激しく反対し始め、
妥協案として卒業するまで使い魔の振りをするという事で話が着く。
こうして、恭也たちの新たな世界での生活が幕を開ける事となるのだった。


DUEL TRIANGLE X ゼロの使い魔
ゼロの神殺しと救世主 プロローグ







にしても、本当に暑いな。

美姫 「またそれなのね」

まあな。という訳で、今日はいつもよりも早く終わるぞ〜。

美姫 「なに勝手に決めてるのよ!」

ぶべらっ!
行き成り殴るよりはましだと思うのですか。

美姫 「だまらっしゃい」

ぶべらっ! れ、連続ですか……。

美姫 「いい薬でしょう」

シクシク。って、泣き寝入りしてたまるか!
それでは、今週は……ぶべらっ!

美姫 「三連続♪」

う、うぅぅ、酷い。と言うか、本当に単に時間なだけなのに。

美姫 「うん、知ってた♪」

う、うわぁぁんっ!

美姫 「泣いている暇があったら、さっさと締めてよね」

わ、分かってるよ!
それじゃあ、今週はこの辺で。

美姫 「それじゃ〜ね〜」










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