2008年9月〜10月

10月31日(金)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、いや本当に冷え込んできたよ、とお届け中!>



もう本当にごたごた続きです、はい。

美姫 「回線トラブルにサーバートラブル」

もう何かうがーって感じだね。
どうにかこうにか、多分、もう大丈夫、大丈夫だと良いな、大丈夫だと思いたい。

美姫 「そんな希望たっぷり込めた状態で」

少し早いけれど……。

美姫 「CMで〜す♪」







「とりあえず、使い魔の振りをするというので妥協した訳だが、問題としてこれから俺は何をしれば良いのだ?」

あの騒動から場所をルイズの部屋へと移し、開口一番に恭也がそう尋ねる。

「本当なら使い魔の契約をすれば主人の目や耳となって、
 使い魔の見聞きしたものを私も知ることができるんだけれど」

「実際に使い魔としての契約をしていない以上は無理と。他には?」

「魔法薬の材料となる薬草などを探したりだけれど、これも異世界から来たという事を考えれば……」

「無理だな。流石にこの世界にどんな薬草があるのかは分からない」

「だとすれば、後は主の身を守るかしら」

「ふむ、それぐらいなら何とかなるか」

「そうね、アンタの話が本当ならね。
 とりあえず、今日はもう疲れたから休む事にするわ」

言って服を脱ぎだすルイズ。
慌てて後ろを向く恭也と、何をするのかと慌てだすリリィたち。
対するルイズはきょとんとした顔で着替えるんだと告げる。
更には洗濯するように恭也に言いつけるのだが、これもまたリリィたちが反発する。

「そもそも他の使い魔は洗濯したりするの?」

リリィの言葉にルイズは言葉を詰まらせながらも何とか反論を試みる。

「そ、それはしないと思うけれど。でも、人間なんだからそれぐらい……」

「だとしても、恭也さんは使い魔にはなっていませんよね。
 あくまでも、ルイズさんの進級の為に好意で協力しようとしているだけで」

「そうでござるよ。なのに、ルイズ殿の振る舞いは主様の好意を利用するかのようでござるよ」

「全く、どういう性格をしているんだか。
 別に男の前で脱ぐのは好きにすれば良いが、恭也の前ではやめろ。
 それとも誘惑でもしているのか? そんな身体で」

「っ、だ、誰がよ! 第一、平民に見られて何が恥ずかしい――」

「うーん、その辺りの感覚が多分私たちとは違うんでしょうね。
 だから、今回の件はまあ良いとしましょうよ。それよりも、性格云々でロベリアがね〜」

「どういう意味だ、ルビナス?」

「別に深い意味はないわよ」

ルイズとロベリアの間で火花が散るかと思われたが、それはすぐにルビナスとの間に取って代わる。
逆に怒りをすかされる形となったルイズは口をパクパクさせる。

「主従の関係……これは参考になるかも。
 マスターと私も言わば主と使い魔の関係とも言えますし。
 つまり、使い魔が主と同じ寝床で寝ても不思議はないと」

「リコさん、聞こえているんだけれど。流石にそれはどうかと思うよ。
 ね、美由希ちゃんもそう思うよね」

「うん、未亜ちゃんの言うとおりだよ。それは違うんじゃないかな」

「ですが、今のルイズさんの発言から察するに……」

「それを言うのならば、拙者も主様の僕みたいなもの。
 つまり拙者にも主様と床を共にする権利が」

「アンタたち、好き勝手なことばっかり言ってるんじゃないわよ」

「もしかして、リリィも一緒に寝たいとか?
 因みにアタシは一緒が良いけれどね」

「だ、誰がこんな奴と! って、あなたべりオじゃないわね!」

「さあね? でも、こんな奴か。つまり、リリィは戦線離脱と。
 恭也と共にとなると、その席は左右の二つだからな。参加者が少ない方が良い」

「だ、誰もそんな事は言ってないでしょう!
 どんな戦いであれ、戦わずに逃げたとあっては救世主リリィ・シアフィールドの名前が廃るわ!
 い、いいい、言っておくけれど別にアンタと一緒に寝たいとかじゃないんだからね、恭也!」

顔を赤くして恭也に指を突きつけて宣言しているリリィをよそに、
ベリオ、もといパピヨンの言葉に間違いなく見えない火花が美由希たちの間で散る。
互いが互いを牽制するように見つめ合う中、それまで黙っていたクレアが恭也の腕を取る。

「恭也、話し合いは暫く掛かりそうじゃから、私たちは暫し散歩にでも行かぬか」

「そうだな」

クレアの言葉にこれ幸いと従い部屋を出ようとする恭也であったが、その前に素早く美由希たちが立ち塞がる。

「クレア様、流石にそれはずるいんじゃないですか?」

「リリィ殿の言うとおりでどざるよ。一人だけ抜け駆けとは卑怯でござる」

「別にそのようなつもりはなかったんじゃがな。
 とは言え、いつまでもこのような事で揉めているものでもないしの」

恭也を中心に置き、美由希たちは無言で互いを牽制するように見つめ合う中、
完全に置いていかれた形となったルイズは何とも言えない顔でこのやり取りを眺め、
何事もなかったかのようにベッドに潜り込む。
そんな中、このやり取りに唯一参加していなかったイムニティが呆れたような声で口を挟む。

「とりあえず、このままだとどうせ決着はつかないだから、今までどおりに恭也は一人で寝るで良いでしょう。
 そもそも問題が変わっている事に気付きなさいよね。で、そこで無関係を決め込んでいる女。
 元々は貴女の言動が原因だと分かっているのかしら?」

「女って、私にはちゃんとルイズ――」

「あー、はいはい。最初に名乗った長ったらしい名前ならちゃんと覚えているわよ。
 とりあえず、これからの事を簡単に決めましょう。恭也の使い魔としての役割は危険から貴女を守る。
 で、他の事、今みたいな着替えや洗濯などは今まで通りにしときなさい。
 じゃないと、この部屋所か学園全体が更地になるぐらいの戦いに発展しかねないわよ」

「わ、分かっているわよ。とりあえずは、それで良いわ。
 これで良いでしょう。そんな訳で私はもう寝るから!」

言って再びベッドに戻ろうとするルイズに、イムニティは呆れたように話は終わっていないと話しかける。

「私たちはどこで寝れば良いのかしら?」

「えっと……そこ?」

恭也が絡んだ所ばかりしか見ていないため、この中ではイムニティが一番まともに感じられたルイズは、
イムニティと話を進めていく。そして、遠慮がちに指差した寝床は床に藁を敷いただけのものであった。

「……中々面白い冗談だわ。
 冗談じゃないとしたら、一度きっちりと上下関係を思い知らせないといけないわね。
 恭也や他の頑丈な奴らならともかく、私のマスターにこのような所で寝ろと?
 冗談よね、ルイズ」

冷笑を浮かべて詰め寄るイムニティにルイズは知らず後退る。
イムニティの後ろではリリィたちがイムニティを睨んでおり、それらは自分に向けられている訳ではないのだが、
それらもまるで自分を責めているように感じられ、ルイズは混乱したように口をパクパクさせる。
そんな中、リコは一人イムニティを睨まず、それまでずっと立ち尽くしていた恭也の腕を引き、
寝床と言われた藁に座らせる。

「マスター、今日は色々とあって疲れました。
 考えるのは明日にして今日はもう休みましょう。
 このような所が寝床では身体を休める事は出来ないかもしれませんが、私は毛布代わりに」

言って恭也の胸に飛び込むように抱き付こうとして、

「リコ、中々抜け駆けが上手くなったわね」

寸前の所でルビナスに襟首を掴まれて後ろに引かれる。
小さな舌打ちを一つ鳴らし、リコが振り返ればイムニティを睨んでいたはずの面々が今度はリコを睨んでいた。

『リコ?』

全員が笑みを浮かべつつ実際に心の底からは笑っていないという態度でリコの名を呼ぶ後ろでは、
変わらずイムニティがルイズへと冷笑を向けている。
収束を見せるのかどうかさえ怪しい状況の中、
恭也は今日何度目になるのか分からない溜め息をそっと吐き出すのだった。

ゼロの神殺しと救世主







にしても、本当に冷え込んできたな。

美姫 「本当よね。でも、アンタは嬉しいんじゃないの?」

まあな。やっぱり冬は良いよね〜。
これでコタツがあれば更に最高だよ。

美姫 「結局は怠けるのね」

いやいや、コタツ=怠けるは心外だな〜。
これでも一所懸命だね、まあ、何だ、うん書いているよ。

美姫 「思いっきり目をそらしながら言うな!」

ぶべらっ!
う、うぅぅ、手痛い洗礼だよ。でも、負けない!

美姫 「この場合、その発言の意味するところは書かないと解釈できるんですけれど?」

いやいやいや、それは違う! いや、本当に違うって!
ぶべらっ! な、何故。

美姫 「誤解されるような事を言ったということで」

い、言っただけでこれですか……。

美姫 「ほら、バカばっかりしてないで」

いやいや、全然してませんからね!

美姫 「ともあれ、今週は時間がいつもよりも少ないんだからてきぱきいくわよ!」

へいへい。

美姫 「で、どんな感じなのよ」

とりあえず、極上が9割できているよ。
と言うか、もう書き終わる。

美姫 「なら、それは今日中にアップね」

え、えっと〜。

美姫 「アップね(にっこり)」

は、はい。

美姫 「それ以外は?」

あー、疲れたな〜。

美姫 「ねぇ?」

えっと、ああ、冷え込んできたね。
寒くないですか?

美姫 「つまり……」

あ、あはははは〜。ぶべらぼげぇっ!

美姫 「はぁ、本当にバカだわ」

す、すみません〜。

美姫 「と、そろそろ時間ね」

だな。
しかし、本当に冷え込んできたな。体調には気をつけないと。

美姫 「そうね。本当に冷え込んできましたので、皆さんも体調には気をつけてくださいね」

それじゃあ、今週はこの辺で。

美姫 「また来週〜」


10月23日(木)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、いつもより一日早く、お送り中!>



本来なら明日のはずだけれど。

美姫 「明日は無理という事で、急遽今日に更新よ」

いやいやいや、お休みっていったはずだよな!
なのに、どうして、ホワイ、なぜ?

美姫 「私がやると決めたから」

滅茶苦茶、個人的な理由だ!?

美姫 「アンタは私の為に働くって名言があるでしょう」

ないよ! 聞いたこともない!

美姫 「つべこべ言わずに進行しなさい。もう始まっているんだから。
    それにほら、人間諦めが大事よ」

激しく違う、それは違うぞ。
とは言え、ここで抵抗しても単に生傷が増えるだけ……。
こうなりゃ、やけだ。やりますとも、やらないでか!

美姫 「そうそう、その意気よ。さて、早速だけれど……」

うむ。お便りのコーナ〜。
ペンネームは、『隣りで抜き身の刀をちらつかせる、自称これはただの突込みよ、な女剣士に日々、
いや、毎秒ごとに脅えているそれがし』さんからのお便りです。
助けてください! いや、もう本当に。
何故、予定日と違う日に放送させられているのでしょう。
どうして、目が覚めたら目の前で刀を構えられているのでしょう。
あまつさえ、日々、空を飛ぶ日々。こんな生活――ぶべらっ!

美姫 「はいはい、一人芝居は余所でやってね。とは言え、ちゃんと解決策を与えてあげないとね。
    ずばり、解決策はその美少女剣士の言う事を大人しく聞くこと。以上!
    では、続いてのお便りは、『書きもせずに文句ばかり伸べるゴミが鬱陶しいと顔を顰める美少女』さんから。
    ちょっとコミュニケーションで軽く撫でただけですぐに吹っ飛ぶバカが、中々更新してくれません。
    それはとっても切実な悩みね。もう一層の事、指の一、二本ぐらいいっておく? あ、勿論、足の指ね」

あ、あわわわ。お、おーい。
って、突っ込みたいのに怖くてできない。そんな俺を許して!

美姫 「あ、まだまだあるわね。どれも似たような内容だけれどね。えっと次は……」

も、もうやめて!
俺の体力はとっくに0だよ!

美姫 「0なら倒れてろ♪」

ぐげろっ!
お、おまっ、それは酷くないか?
って、ぐげっ! の、のどが…………。

美姫 「にゃははは〜、潰れちゃえ!」

いやいや、楽しそうに言う事じゃないから。
と言うか、ちょっとキャラが変わってるぞ。

美姫 「とと、冗談はさておいて……」

思いっきり踏まれたんですが?

美姫 「なに、冗談じゃない方が良かったの?」

是非とも冗談にしてください!
って、俺が頭下げるのって可笑しくない?

美姫 「さあ、そんなの知らないわよ。勝手にアンタが下げたんでしょう」

うぅぅ、言葉の槍が突き刺さる。

美姫 「そのまま、貫かれれば良いのに」

もっと優しい言葉を……。

美姫 「ないわね」

きっぱり、あっさり、すっきりと仰いますね!

美姫 「ああ、バカの相手で疲れたわ。しかも、無駄に時間を使ったし。そろそろCMにいかないと」

あ、あんまりにも、あんまりにもなお言葉。
酷い、酷すぎる!

美姫 「それじゃあ、CMいってみよ〜♪」

って、これまた見事なスルーですね!







僅かな頭痛に顔を顰め、恭也はぼんやりとした意識をゆっくりと浮上させる。
目を開けてまず目に入ったのは天井の模様。
だが、よく知る自分の部屋のものとは少し違っており、まだぼんやりとする頭で何があったのかを考える。
しかし、記憶に思いだせるのはいつものように眠ったという事だけ。
いつもと変わった事といえば、今日から夏休みだという事だろうが、それはこの際関係ないだろう。
と、そこまで考え、自分が寝ているのがベッドの上だと気付き、ようやく周囲を見渡す。
天井の模様が少し違う理由もすぐに納得がいくというものだ。
何せ、恭也が眠っていた場所は恭也の部屋ですらなかったのだから。
そうなると、ようやく引いた頭痛も誰かに殴られたものかと疑いたくなる。
だが、それを否定するかのように頭痛の方は既に収まりつつある。
事態が全く飲み込めないでいるものの、恭也は部屋の外に誰かが立つ気配を感じ取る。
恭也が何をするでもなく、扉が開けられてメイド服に身を包んだ女性が入室してくる。
起きている恭也に気付き、小さく頭を下げてくるのに同じく頭を下げて返せば、

「もう目が覚められたのですね。お嬢様がお待ちになっておりますので、こちらへ」

恭也の返答を聞くでもなく、メイドは再び部屋を出て行く。
流石に訳が分からないという顔を見せる恭也を一顧だにせず、メイドは廊下で扉を開けたまま立ち尽くす。
つまりは黙って付いて来いという事なのだろうと理解し、恭也は大人しく従う事にする。
どうやら武装の方は全て取り上げられているらしく、完全な丸腰となっている事に気付く。
誘拐でもされたのかと思うが、それにしては武器は取られはしたものの手足は自由で、
前を歩くメイドも特に恭也の方を注意している様子もない。
とは言え、それはそう見えるだけで、事実、すぐにでも逃げ出そうとすればそれを察するだろう事は、
後ろを付いて行きながらも理解した。状況が分からない以上、大人しくしている方が良いかと判断し、
改めて恭也は周囲へと視線を向ける。
一言で言うのなら豪邸と称して良いだろう。
長い廊下には時折、高価そうな壷や置物が見られる。
だが、決して調和を崩す事無く自然と配置されたそれらから、この屋敷を管理する者が成金趣味ではないと思わせる。
そんな事を考えている間に目的の場所へと到着したのか、メイドは足を止めると部屋の中へと声を掛ける。
入室の許可を得て、メイドは部屋の主に再度断りの言葉を告げるとゆっくりと扉を開け、恭也に入室を促す。
促されるままに部屋へと入り、これまた豪邸に相応しい広い部屋に驚く。
が、それよりももっと驚いたのは、その部屋の主である。
学園でも有名なお嬢様にして、風紀委員長。
恭也をもってしても超が付くほどの堅物と言わしめる人物、龍凰院麟音(りゅうおういんりんね)の姿があった。

「やっと目を覚ましたか、高町恭也」

「ええ。それで、どうして龍凰院さんがここに? いえ、ここが龍凰院さんの家だというのは分かっていますが……」

「色々と聞きたいことがあるのは分かっている。
 けれど、その前にこちらの質問に答えてくれ」

言って麟音が尋ねてきた言葉に、恭也は思わず尋ね返してしまう。

「どういう事ですか」

「だから、今日は何日か分かるかと聞いているんだ」

「分かるも何も、昨日が終業式でしたから……」

「やはり、高町恭也の記憶でもそうなのか」

最後まで聞くまでもなく、恭也の言葉に麟音は少しだけ残念そうな顔を見せるも、
すぐに凛とした表情で恭也の前に新聞を差し出す。
それを受け取り、何となしに記事へと目を落とす恭也へ、重々しい雰囲気で語り掛ける。

「記事はあとにして、とりあえず日付を見てくれ」

言われて日付の欄へと目を移せば、そこには八という文字が飛び込んでくる。

「……えっと、確か夏休みは今日からだったと記憶しているんですが。
 何故、あと一週間しかないんでしょう」

何かの冗談ですかと新聞を返しつつ言う恭也に、麟音はその方が良かったと呟き、重々しい表情で口を開く。

「どうやら私と高町恭也、いや、それだけじゃなくあの日、
 あの別荘にいた者全員がこの夏の記憶を失っているらしい」

「……はい?」

よく分からなかったのか、信じられないのか、恭也は麟音が語った集団記憶喪失という言葉に思わず変な声を上げる。
だが、それが事実だと言わんばかりにそれまで黙って控えていたメイドが医師の診断書を見せてくる。
はっきり言って、そんな物を見せられたところでよく分からないのい変わりはないのだが、
続いて見せられた別荘跡の光景には言葉を無くす。
まさに跡と呼ぶに相応しい、瓦礫の山。個人所有の島とあって、周辺への被害がないのが幸いか。
ともかく、そこに建っていたはずの広大な屋敷は跡形もなくなっていた。

「ちょっと待ってください。記憶をなくした者がその別荘にいた者だとして、どうして俺まで」

「……それなんだが」

恭也の言葉に麟音は顔を赤くして、少し言い辛そうに何度か口を開き、閉じすると、ようやく話し出す。

「どうやら、高町恭也もあの別荘に居たらしい。
 と言うよりも、私が調べさせた所、どうやら泊まっていたらしい」

「泊ま……いや、しかし何故」

もしかして、修行にでも出て、と考えたが目の前にいる人物は超堅物。
しかも、学園内でのカップル交際さえ認めないという程の人物なのだ。
幾ら何でも自分を泊めるとは思えない。故に当然のように浮かんだ疑問であったのだが、
それを尋ねられた麟音は先程よりも更に顔を真っ赤に染め上げ、金魚のように口をパクパクと開閉させる。
まるで酸素を求めて喘ぐように、中々言葉が出てこないが、やっと叫ぶように理由を口にする。

「わ、私たちはこの夏休みの間に出会って、互いに恋に落ちたらしい!」

「…………はぁっ!?」

思わず、本当に思わず恭也の口から変な声が飛び出るのだが、それも仕方ないかもしれない。
何せ、目の前の人物は……。加えて自分と付き合うなどという物好きがいるなどと。
恭也の素っ頓狂な声を聞き、麟音は違う事を思ったのか、

「わ、私だって嫌に決まっているだろう! なのに、自分だけみたいな声を上げるな」

「いえ、そうじゃないですよ。寧ろ、龍凰院さんのような素敵な人が何故、俺なんかと思って……」

「す、素敵!?」

恭也の言葉に更に顔を朱に染め上げる麟音と、当然だとばかりに頷くメイド。
その二人の反応に構わず、先程告げられた事柄が事実かどうか尋ねれば、

「間違いない。これも調べさせたからな。それに何より……」

言って透明な、それこそ警察などが証拠品を入れるような袋を目の前に出される。

「これは?」

「本当は見せたくはないのだが、事態が事態だからな。決して他人に言うなよ!」

そう怒鳴りながら、麟音は恭也へとそれを手渡す。
受け取った恭也が困惑していると、そこへメイドが口を挟む。

「それはお嬢様が書かれていた日記を復元したものです。
 現場から何とかサルベージし、判読できるまで復元しました。
 他のページも現在、全力を挙げて復元している所です」

「そういう事だ。そして、その日記には確かに私と高町恭也が、そ、そのこ、こここここ、恋人だって……」

言っててまた顔を赤くしてそれ以上の言葉を飲み込む。
悪いと思いつつ、見るように渡されたそれを見れば、綺麗な文字で確かにその事が書かれている。
あまりにも女の子らしい文章に思わず赤面するも、自分以上に麟音の方が恥ずかしいだろうと、
顔には出さないように努力する。

「確かにそうみたいですね。ですが、俺を含め、龍凰院さんも覚えていないんですよね」

「ああ。だから、あと一週間以内に記憶を取り戻せ。
 そして、恋なんてしてなかったと証明しろ。さもなくば死刑にする!」

「…………なんでそうなるんだ?」

当然とばかりに告げられた言葉に頷きそうになるも、慌ててその内容に不満を口にする。
だが、麟音は駄々を捏ねる子供のように両手を振り回し、

「うるさい、うるさい、うるさい! この私がやれと言っているんだから、やれ!」

「そんな滅茶苦茶な……」

恭也は本気で女難の相が出ていないかと思いながら、呆れたように肩を竦めるのだった。



こうして、夏休みの記憶を取り戻すべく、二人の努力が始まる。

「とりあえず、復元できた日記に書かれていた事を再現すれば記憶が戻るのではないかと思うんだけれど」

「他に手はないですし、まずはそうしましょか。それで、まず最初は何をすれば?」

「うむ。ど、どうやらこの日、私たちはお互いに名前で呼び合うようになったみたいだな。
 あと、お前のその敬語も止めさせたとなっている。という訳で――」

「名前、ですね。いや、名前で呼べば良いんだな」

「ああ。…………きょ、きょきょきょ、お、お前から言え」

「ああ、分かった。麟……龍凰院麟音さん」

「何故、フルネームで呼ぶんだ! 名前だけだ」

「あ、ああ。…………麟音……さん」

「さ、さんを付けるな」

「くっ、お、思ったよりも難しいな」

「そうかもしれん。だが、記憶のためだ、頑張れ。お前の次は私の番なんだからな」

「ああ。ふぅぅ、よし、いくぞ!
 麟音……」

「〜〜っ!」

こんな感じで恭也と麟音の記憶を取り戻す一週間が始まる。
果たして、記憶は無事に戻るのか。そして、二人の関係は。

朴念仁・高町恭也と女帝・龍凰院麟音の恋








ふぅ〜、それにしても本当に一年は早いな。

美姫 「これまた気の早い台詞ね」

まあな。どうせ、あと一ヶ月もすれば度々口にするだろうがな。

美姫 「するでしょうね〜」

さて、しんみりしている場合じゃないぞ。

美姫 「残り二ヶ月でラストスパートね」

特に今年中に終わらせようと思っているものはもうないけれどな。
いい加減、執筆速度を上げたいよ。

美姫 「まあ、無理でしょうけれどね」

はっはっは〜。いや、本当に難しい世の中だよ。

美姫 「それは何か違うと思うわ」

かな。しかし、一日早くお届けした訳だけれど……。

美姫 「いつもと変わらないわね」

まあな。逆に変わる方が可笑しいとも言えるが。

美姫 「一層の事、いつもより拡大してお送りするってのはどう?」

いやいや、そんな体力はないですよ〜。

美姫 「なんて言いつつ、CMでーす」

って、嘘はよくないから!

美姫 「なによ〜、アンタが頑張れば良いだけでしょう」

いや、その通りなんですけれどね。
コホン。あー、そろそろ時間だね〜」

美姫 「延長に突入!」

ないよ!

美姫 「ロスタイム」

だから、ないっての!

美姫 「はぁ、文句が多いわね」

いやいや。

美姫 「仕方ないわね。なら、恒例の文句を言っても良いわよ」

はっ! 感謝します! って、何で感謝しないといけないんだよ!

美姫 「ほら、早く言いなさいよね」

はいはい。
それじゃあ、今週はこの辺で。

美姫 「また来週〜」


   <クロス元:女帝・龍凰院麟音の初恋 (一迅社文庫 か 2-1)


10月17日(金)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、よく考えれば今年もあと三ヶ月、とお届け中!>



一週間というのは、かくも早きものなのか。

美姫 「ほうほう。で?」

いや、特に意味はないというか、単に感じたまま言っただけです、はい。
はぁぁ、それにしても気分が滅入るよ。

美姫 「辛気臭いわね」

そうはいうけれどよ〜。

美姫 「もっと気分だけでも明るくしないさよね」

ほ〜、これを聞いてもそう言えるかな?

美姫 「何よ」

うむ、実は来週もまた更新できないかもしれないという……ぶべらっ!

美姫 「最後まで言わせないわよ!」

いや、ちょっとは話を聞こうよ。
ネットが繋がらない以上、無理でしょう!

美姫 「そこは根性で」

無理だから!

美姫 「ほら、いつも怪しげな電波を受信しているんだから、逆に送信して」

俺は何者ですか!?
ったく、ちょっとは手加減してくれよ。

美姫 「あ、それは無理」

って、即答!?
いやいや、お互いに落ち着こうじゃないか。

美姫 「私は既に落ち着いているけれどね」

そうですね。
さて、これ以上落ち込んでも、愚図ってもいられないから今日も頑張っていってみよう!

美姫 「そうそう、その調子よ。といった所で、今週もまたCM〜]







呆れるほど広大な土地。
そこに建つのは、これまたその土地に見舞うだけの大きな屋敷に綺麗に手入れされた庭。
屋敷へと通じる庭園を執事の格好をした壮年の男性に先導され、恭也は改めて周囲に視線を向ける。
あまりの広さに手入れするのも一苦労だろうな、と人事ながら思いつつ、
案内された屋敷の扉もまた普通のそれよりも大きく、それをくぐって屋敷の中へと踏み入る。
目に付くのは足元に引かれた赤い絨毯に、さりげなく飾られている壷や絵画。
それらが決して主張する事なく、内装に調和されるように綺麗に収められている。
それ一つでも決して安くはないだろうと思わせるそれらを軽く見渡し、やはり黙したまま先導する執事の後に続く。
やがて一つの扉の前までやって来ると執事は足を止め、恭也に少し待つようにお願いすると扉をノックする。
中から短く一つ返事が返り、執事は重々しく扉を開けるとまずは中に向かって頭を下げ、
続けて恭也へと入室をお願いする。
部屋に入り、後ろで扉が閉まる音を聞きながら恭也は部屋の中央へと歩を進める。

「よく来たな。まあ、座るが良い」

実際の年齢よりも覇気のある、命令する事になれた声で恭也に席を勧める。
その身体から溢れ出る雰囲気に呑まれる事なく、恭也は軽く頭を下げると席に着く。
それと同時に部屋にノックの音が響き、メイド服を着た女性が盆を手に入室してくる。
恭也と目の前の男の前にそれぞれカップを置き、お辞儀をすると静かに部屋を出て行く。
数秒の沈黙が降りた後、徐に男が口を開く。

「実はお主に仕事を依頼したい」

「それは構いませんが、既に護衛の方はいらっしゃるようですが?」

隣りの部屋へと続く扉と、今しがた入ってきた扉の両方へと軽く視線を向けてそう言うと、
男は少しだけ感心したような声を漏らしてから話を続ける。

「儂の護衛ではない。息子の護衛じゃ」

「それこそ、俺じゃなくても良いのでは?」

「お主が一番都合が良い理由がちゃんとある」

そう言うと男は一枚の写真を恭也の前に滑らせる。
そこに映っていたのは、息子というよりも孫といった方が納得できるぐらい目の前の男とは年の離れた少年の姿が。

「有馬哲平、実の孫じゃが先日息子として迎え入れた。何も四六時中護衛しろなどとは言わん。
 ただ、これから通うことになる学園内で、万が一に備えて影から守ってくれれば良い。
 期間も精々、三ヶ月ほどで構わん。その間にあれにもある程度の教育をするでな」

「日本経済界の雄、有馬グループの総帥も孫には少し甘いみたいですね」

「……それで、受けるのか受けないのか?」

恭也の言葉に応えず、男――有馬一心は返答を急かす。
それに対して恭也は少しだけ考えた後、その仕事を引き受ける事にしたのだった。



依頼を引き受けた翌日、恭也の姿は数日後に哲平が転入してくる事となる私立秀峰学園にあった。

「本当に日本か、ここは……」

重厚な作りの教室は時代を感じさせ、施設も充実している。
それに加え、通う者は誰もが有数の子女。
正直、恭也は周りと話をするだけでも疲れるという感想を初日にして抱いてしまう。
身近に一人、お嬢様が居るには居るのだが、彼女はとても付き合いやすかったとしみじみと思う。
だが、そんな気持ちをひとまず脇に置き、恭也は事前に貰った学園の見取り図を頭に思い出し、
実際に歩いて周る事にする。

「あら、もしかして噂になっている転入生の方かしら?」

不意に掛けられた声に振り向けば、そこには同姓でさえ目を惹かんばかりの美貌を持つ女子生徒が居た。
事前に一心より聞いていた人物とすぐに一致し、目の前の人物がシャルロット=ヘイゼルリンクであると判断する。
だが、表情は変えずに軽く頭を下げる。

「はい、そうです。ちょっと学園内を見て周ってまして」

「そうなの。だったら、誰かに案内してもらえば良いのに」

「いえ、もう終わって帰ろうかと思っていた所だったんです」

当たり障りのないように会話をし、恭也はシャルロットと分かれる。
彼女の他にももう一人、予め確認しておきたい人物がおり、その彼女を見に行く。
フェンシング部へと顔を出し、目当ての人物を探す。
が、特に苦労する事無くその自分はすぐに見つかる。
一人、男子に混じって練習をしている金髪の女性。
他の物よりも技量的にも上であるらしく、恭也もその剣捌きに思わず感嘆の息も漏らしつつ、
彼女の情報を思い出す。シルヴィア=ファン・ホッセン。
一心からは余力があれば、彼女にも注意をするように頼まれている人物である。
目的の人物を確認すると、恭也は邪魔にならないようにフェンシング部を後にする。
去って行く恭也の背中をシルヴィアが一瞥していたのだが、既に背中を向けていた為に恭也は気付かなかった。
その後、一通り学園内を見て周り、ようやく帰宅の路につく。
学園で出会った二人の女性を今一度思い浮かべて確認し、そこにもう一人、クラスメイトの姿を加える。
哲平付きのメイドとなる藤倉優の姿を。
恐らくは哲平と最も親しくなるであろう、三人を記憶に刻み恭也の転入初日は終わるのだった。

この数日後、有馬グループの後継者にして、恭也の護衛対象である有馬哲平が転入してくる。
彼による行動が恭也にどんな影響を与える事になるのか。
それはまだ、誰にも分からない。

プリンセスハート!







はぁ、気分を入れ替えたとは言え、やはり身体がだるいままだな。

美姫 「最近、急に寒くなったからね」

だな。体調には気を付けねば。
皆さんも気をつけてくださいね。

美姫 「そうよ、病は気からとも言うし、まずは気合よ!」

はぁぁ、どんな理論……ぶべらっ!

美姫 「気合が足りないから吹っ飛ぶのよ」

いやいや、吹っ飛ばした本人が言う台詞じゃないよね!

美姫 「あ、時間だわ。全く、今回もまた時間が少ないなんてね」

うわーい、またこのパターンですか。

美姫 「ほら、そんな事より――」

はいはい、締めの言葉ですよね!
分かってますよ。それじゃあ……ぶべらっ!

美姫 「人の台詞を遮るな!」

ひ、酷い……。

美姫 「で、さっさと締めろ!」

ほ、本当に酷いし……。
と、ともあれ、今週はこの辺で。

美姫 「それじゃあ、また次回〜」


10月10日(金)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、よく考えれば今年もあと三ヶ月、とお送り中!>



いや、今回は完全に不可抗力だよ!

美姫 「出だしから言い訳ありがとうね」

いやいや、だってネットに繋がらなくなったんだから仕方ないだろう。

美姫 「じと〜」

うぅぅ、そんな目で見ないで〜。

美姫 「さて、アンタをいびるのもこれぐらいにして」

うぅぅ、酷いよ。俺の所為じゃないのに。

美姫 「はいはい、さっさと立ち直れ! 今日はいつもよりも時間がないんだからね」

自分で苛めといて、そりゃないよ。

美姫 「ええい、グダグダとうるさいわね!」

ぶべらっ! 結局、こうなるのかよ!

美姫 「そんなこんなでちょっと強引だけれど、CMで〜す」







私、高町ヴィヴィオ。ザンクト・ヒルデ魔法学院に通うごく普通の10歳の女の子です。
少し変わっている事と言えば、ママが二人居る事かな。
でも、どっちのママも優しくて大好きです。

「いってきまーす」

「いってらっしゃい、ヴィヴィオ」

「いってらっしゃい。気をつけてね」

なのはママとフェイトママに見送られ、いつものように学院へと向かいます。
ここまではいつもと変わらない朝でした。でも、まさかあんな事が起こるなんて。
それは公園を歩いていた時の事でした。
誰かに呼ばれたような気がして。

「ねぇ、今何か聞こえなかった?」

胸からぶら下がったペンダント型のデバイス、ウィルハートに尋ねたけれど、返ってきたのは否定の声。
おかしいな〜、気のせいだったのかな。
そう思ったけれど、また声が聞こえた。
私は少し道を外れ、公園の木々が生い茂る中へと歩いて行く。
ウィルハートが学校と注意してくるけれど、どうしても気になるんだもの。
そうして歩いた先、そこで私は一匹の傷付いた猫さんと出会いました。
猫さんに駆け寄り抱き上げると、薄っすらと目を開けて、

「おねがい……力を……」

そう言ってまた目を閉じてしまいました。
慌てて猫さんの様子を確認すると、ちゃんと息はしているみたいで一安心です。
これが私と不思議な猫さん、サラちゃんとの出会い。
そして、私が実戦で魔法を使う事になる、サラちゃんの探し物を手伝う事となった始まりのお話。



その夜、事情を説明して手伝ってくれるようにサラちゃんに頼まれました。
昔、ママも似たような形で魔法と出会ったというのを聞いた事があったし、
困った人を見たら出来る範囲で助けてあげなさいと言われていたから、
困っているサラちゃんを助けてあげようと思い、すぐに協力する事を約束しました。
でも、ただ無くした物を探すだけのはずが、まさかあんなに危険だったなんて。

「う〜、見よう見真似、ディバインバスター!」

「嘘!? 砲撃魔法!?」

血は繋がらなくとも蛙の子は蛙、な展開あり。

「それは私が集める」

「ま、待って、それは元々サラちゃんの物……」

ライバルと思しき少女の存在あり。

「所でリイン、うちらの出番あるんかな?」

「何を言っているですか、はやて?」

可笑しな電波を受信したり。

「なのは……」

「ちょっ、フェイトちゃん、こんな所で……」

何やら怪しげな展開もあったり。

私の知らない所でも色々起こっているみたいですが、兎に角、精一杯頑張ろうと思います。

魔法少女リリカルヴィヴィオ テイクオフです!







あ〜、首の筋が……。

美姫 「そんなもの、こうすれば」

ぐげっ! い、今、へ、変な音がしたぞ、おい!

美姫 「でも、治ったでしょう」

いやいや、一瞬だがとても痛かったぞ。

美姫 「つべこべ言わないの。で、結局、SSの方はどうなのよ」

うーん、多分、次は極上がアップするかな。
このままなら。

美姫 「って、その極上でさえまだ三割しか出来てないじゃない」

いやー、不思議。

美姫 「不思議じゃないわよ、このバカ!」

ぶべらっ! う、うぅぅ、だって、だって……。

美姫 「言い訳無用! さっさと書け!」

ぶべらっ! れ、連続は止めて!
もう俺の体力は限界よ!

美姫 「もとから低いでしょうが」

ぶべらっ! よ、容赦ないですね……。

美姫 「て、時間がないって言ったのに無駄な事に使ってしまったじゃないの!」

ぶべらっ! そ、それって俺だけの所為じゃない、よね……。

美姫 「はぁ、仕方ないわね。変な所だけれど、今日はここまでね」

う、うぅぅ。か、身体が……。

美姫 「さっさと締めなさいよ」

ぶべらっ! …………あれ? 今のは別に殴られなくても良くない?
ってか、お前、何度も何度も殴るなよ!

美姫 「はぁ、本当に無駄に元気ね。そんな事よりも時間よ」

そ、そんな事って。うぅぅ、って泣いている場合でもないか。
それじゃあ、今週はこの辺で。

美姫 「それじゃあ、また来週〜」


10月3日(金)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、すっかり冷え込み始めたね、とお届け中!>



やぁ、二週間ぶり!

美姫 「というか、もっと空いた気がするわね」

言われてみれば、そんな気がしないでもないかも。

美姫 「よく考えたら、アンタが何も書いていないからじゃない!」

いやいや、だから色々と忙しかったんだって!
ようやくネット環境も落ち着いた……と思う。

美姫 「疑問形なんだ」

あははは。
と、とりあえず来週から頑張るよ、うん。

美姫 「今から頑張りなさいよ!」

ぶべらっ!

美姫 「まったく、本当に」

うぅぅ、すみません〜。
でも、色々と書きたいとは思っているんだよ。
いや、本当だから剣は仕舞って下さい。

美姫 「だったら、早く書いて欲しいわよ」

いや、時間がね。

美姫 「磔の道具ってあったかしら」

おいおい……。
って、しかも見るからに拷問! って感じの道具がいっぱい出てきたけれど?

美姫 「とりあえずは、これから行きましょか」

行かねぇよ!

美姫 「大丈夫、大丈夫。ちょっと痛いぐらいだから」

いやいや、幾ら無知の俺でもそれは知っているぞ。
鉄の処女だろう!

美姫 「そうよ、アイアン・メイデン。空想上の拷問具じゃないかという説もあるわね」

一説によると自白を促すために見せるだけの脅迫道具と言う説もあるらしいけれどな。

美姫 「勿論、ここでは使うのよ♪」

いやいや、どうしてそんなに楽しそうなんですか!?
しかも、ちょっと痛いじゃすまないよね! 明らかに体中が穴だらけですよね!

美姫 「じゃあ、言い直すわ。とっても痛いわよ」

いやいや、痛いのは間違いじゃないけれど、これって普通にショック死か出血死ですから!

美姫 「またまた〜」

何、その反応!? まるで俺が可笑しいかのような!?

美姫 「ほらほら、さっさと入って」

嫌に決まっているだろうが!
断固拒否する!

美姫 「え〜」

いや、そんな不満そうな顔をされてもね。
俺が不満だっての!

美姫 「はぁ、とっても、とっても残念だわ」

本当に残念そうだな、おい!

美姫 「はぁぁ、ちょっと気分が乗らないから、とりあえずはCMへ〜」

って、テンション低っ! というか、俺の所為なのか!? そんなバカな!







朝、恭也は理由も聞かされる事無く学園長室までルイズに連れて来られていた。
大人しく付いてきたのは、単に反論するのが面倒だったからだが、
何処かルイズは機嫌良さそうに恭也の前を歩く。
かと思えば、思いつめたような顔をして、重々しい足取りに変わる。
そのまま学園長室へと入室すれば、学園の教師と思われるメイジたちと、
それらに向かい合う形で学園長たるオスマンが立っていた。
ルイズが入室したのを見て、オスマンは口を開く。
それを壁に凭れ掛かり、何となしに聞くと、早い話が盗賊が学園にあった破壊の杖と言う宝を奪ったという事であった。
特に興味のない恭也は目を閉じ、事の成り行きをただ静かに傍観する。
最近、巷を騒がしているフーケが犯人という所までは分かっているが、誰もその討伐に行こうとはしない。
互いの顔色を窺う教師たちの中にあって、ルイズが杖を持つ手を上げる。
それにつられる様にキュルケ、タバサと杖を上げていく。
生徒である事を理由に反対する教師も居たが、逆に学園長オスマンに、
ならお前が行くかと尋ねられて言葉を詰まらせる。
そんなくだらないやり取りを見るとはなしに見ていると、こちらを見ているルイズと視線が合う。

「何だ」

「何だ、じゃないわよ! 話を聞いていたの!?
 これからフーケを捕まえに行くから、アンタも付いて来るのよ!」

ルイズはそう一方的に言うも、恭也はくだらないとばかりに肩を竦めて見せる。

「何故、何の関係もない俺が行かなければならない。
 そもそも、フーケが宝物庫を壊したそうだが、切欠は……」

「わーわー! 黙りなさい、このバカ!」

何か言い掛けた恭也の口を塞ぎ、ルイズはじろりとねめつけるとその耳元に唇を寄せる。

「アンタ、昨日の見てたの」

「それだけでは何の事を指しているのかはそれだけでは分からないが、
 それが昨夜のキュルケとかいう女性との喧嘩の末、くだらない勝負をしていた事を指しているのならイエスだ」

「い、良い、その事は黙っていなさい!」

もう一度恭也を睨みつけ、恭也を解放すると用は済んだとばかりに戻ろうとする。
そのマントを掴み、強く引っ張ってルイズを呼び戻す。
が、少々強く引っ張り過ぎたのか、ルイズはそのまま仰向けに転んでしまう。
最初は何が起こったのか分からずにきょとんとした顔をしていたが、ようやく自分が転んだ、
正確には恭也に転ばされたと理解するなり顔を怒りで赤くし、怒鳴りつけるべく口を開こうとするも、
それよりも先に恭也の冷たい声が落ちてくる。

「勝手に話を終わらせるな。別に興味もなければ、学園長に貸しもないから黙っている事は吝かではない。
 だが、俺がお前たちに付いて行く理由はない。捕まえたいのなら、一人で勝手に行け」

「あ、アンタは私の使い魔――」

「何度も同じ事を言わせるな。違うと言っているだろう」

恭也の反論にルイズはそれ以上何も言えずに言葉に詰まる。
結局、出てきた言葉は負け惜しみとも取れるような言葉で、

「ふん、実は怖いだけなんでしょう。
 アンタみたいな臆病者なんて足手まといだからいらないわよ!」

「安い挑発だな。そんなものに乗る訳がないだろう。
 何度も言うが、行くなら勝手に行け」

ルイズの言葉に悔しがる事も怒る様子も見せずに、ただ淡々とそう口にする恭也に、
言ったルイズの方が悔しそうに唇を噛み締める。
それにも大した感慨を抱かず、恭也はただ冷静にルイズを見下ろす。
無言で睨み合う二人を取り持つように、フーケの足取りを調べていたロングビルが割って入ってくる。

「今はそのような事をしている場合ではないと思いますよ。
 確かに貴方はミス・ヴァリエールの使い魔ではないのでしょうが、仮契約という形を取っているのでしょう」

「ふー、何を言い出すかと思えば。
 文句があるのなら、いつでもそれを破棄しても構わないんだ。
 俺の方が頼んでそんな面倒な事になったのではないんだからな。
 寧ろ、自由になれる分、そっちの方が楽なのではと最近では思っているぐらいだ。
 何なら丁度良い機会だし、契約破棄するか?」

恭也の言い分に流石にロングビルもそれ以上は何も言えず引き下がり、
ルイズは起き上がるなり恭也へと文句を並べ立てる。
だが、当の恭也はそれらを聞き流しており、まともに取り合うつもりはないようである。
そんなルイズをからかうようにキュルケが平民にバカにされていると口にすれば、
それこそ火に油を注ぐ以上の効果があったらしく、更に顔を真っ赤にさせてキュルケではなく恭也に喰って掛かる。
いい加減うんざりしていた所へルイズは交換条件を出してくる。

「良いわ、だったらこうしましょう。フーケを捕まえたら何でも一つ言う事を聞いてあげるわ」

「ほう、本当に何でも良いんだな」

「うっ……い、良いわよ」

教師たちの居る前で使い魔候補も従える事が出来ないと思われるのが嫌で咄嗟に口にしたものの、
冷静に尋ね返されて思わず躊躇する。だが、そんな躊躇もすぐに飲み込み強く頷いてみせる。

「貴族に二言はないわ。何でも聞いてあげようじゃない」

「じゃあ、死ねと言えば死ぬんだな」

「ちょっ! な、何よそれは。アンタ、そんなに私が嫌いな訳!?
 まさか、ここまでバカにされるなんてね。良いじゃない、やって……むぐぐぐ、んーふーむー」

勢いで肯定するような言葉を言いそうだったルイズの口をキュルケが押さえて止める。
使い魔と主人の事だけに口を出さないで見ていた、ちょっと面白く見ていた部分もあるが、
流石にこればかりはまずいと思ったのだろう。
ルイズの口を押さえつつ、キュルケは非難じみた視線を恭也に向ける。
だが、当然の如く恭也がそれに堪えるような様子もないのだが。

「ふむ、良い友人を持ったな。命拾いをしたか。
 まあ、お前の命を貰った所で俺に益もないしな。
 だが、それ以外なら何でも良いんだな」

キュルケに止められて少しは落ち着いたのか、ルイズは何回も深呼吸を繰り返し、胸を張って宣言する。

「ええ、構わないわよ。ただし、フーケを捕まえたらだからね。
 もし捕まえれなかったら、あんたには私の使い魔になってもらうわよ」

「一方的に言い出しておいて、ちゃっかりと自分に都合の良い条件を追加したもんだな」

「な、何よ文句あるの」

「あ――」

「文句は言わせないわよ。アンタが捕まえれば、私は何でも言う事を聞くんだから、リスクは同じでしょう」

恭也に何か言わせる間も与えず、ルイズは一気に言い放つと顔を赤くする。

「わ、わわわ、私だってアンタみたいな変態に汚されるかもしれないんだから!」

「何故、俺の願いがそうなっているのか疑問を感じるところではあるが……。
 あまり興味ないな」

「あ、ああああ、アンタ今、何処を見て言ったのかしら?」

「別に何処も見ていなかったと思うが、まあ良い。その条件を飲んでやろう」

静かに怒り出すルイズを無視し、恭也はそう口にする。
あまりにもあっさりと告げられた所為か、ルイズは思わず言葉の意味が分からずに呆けるも、
すぐに勝ち誇るように胸を張る。

「ふん、良い度胸ね。ああ、楽しみだわ。使い魔となったら、今までの態度を悔い改めさせてあげるわ」

既に勝った気でいるルイズに呆れつつ、恭也は無言で肩を竦める。
対するルイズは楽しそうに口元を緩めつつ、道案内を買って出たロングビルへと出発を促す。
それに頷きロングビルが先導するように歩き出した瞬間、恭也は後ろからロングビルへと襲い掛かる。
突然の事に驚いた様子を見せたロングビルだったが、その反応は素早く咄嗟に杖を取り出すと構え、
同時に恭也との距離を開けるように床を蹴りながら呪文を唱える。
が、恭也の腕が振られると、そこから細い糸、鋼糸が放たれて杖を取り上げる。
誰もが動けずに居る中、ロングビルだけは逃げようと試みるのだが、恭也の方が圧倒的に早く、
その背中へと蹴りを放ち、前のめりに倒れたロングビルに覆い被さるようにして身体を固定する。
反撃するようにロングビルが腕を振り回すが、それを軽く受け止めると肩の関節を外す。
上がった悲鳴にようやくその場の者たちが正気に戻り、恭也を取り押さえようとするが、
恭也は抜き放った小太刀をロングビルの首元に突き付けて周りを見遣る。
人質を取られた形となり、誰もが動きを止める中、ルイズだけは怒鳴りだす。

「アンタ、何をやっているのよ!」

「何も見ての通りだ。お前との賭けは俺の勝ちだ」

「何、訳の分からない事を」

「だから、そのフーケとか言う盗賊を捕まえただろう」

「わ、私はフーケでは……」

「くだらない嘘も誤魔化しも聞く気はない。
 どうせ言っても分からないだろうが、俺は人の気配が読める。
 ある程度近くに居れば、気配でそれが誰かまでもな。
 お前は気付いていなかったかもしれないが、昨夜、宝物庫の近くには俺も居てな。
 で、その時に感じたフーケの気配とお前の気配が全く同じという訳だ。
 例えば、学園長は今、俺の右後ろからゆっくりと真後ろへと移動しようとしている。
 そして、確かコルベールだったか?
 その人は俺に気付かれないように左斜め後ろから攻撃しようと杖を構えているな」

振り返らずにそう宣言する恭也の言葉通り、オスマンとコルベールはこの状況を打開しようと動いていた。
だが、それも恭也の言葉に動きを止める。

「さて、正直に白状するか?」

「ふん、まさかそんな訳の分からない能力を持っているなんてね。
 気配を読むと言うのは私だって多少は出来るけれど、その違いなんて普通は分かるもんじゃない。
 ただの平民かと思って油断していたのが間違いだったみたいね。
 ああ、そうさ、アンタの言ったように私がフーケだよ」

諦めたのかロングビル、いやフーケはそう自白する。
その上で恭也を見上げ、どうするのかと尋ねる。

「さあな。お前の身柄や今後の扱いには興味ない。
 それはそこの偉い人たちが勝手に決めるだろう。俺はただお前を捕まえたと言う事実さえあれば良い。
 そうじゃないと、使い魔なんて訳の分からないものになってしまうんでな。
 まあ、それでも破壊の杖とやらの隠し場所は聞いておこうか。じゃないと、後から色々と煩そうだからな。
 全く面倒な事をせず、待っていてくれれば楽だったのに」

そう口にしながらも、恭也の口調は変わる事無く淡々としている。
面倒くさいとは思っていても、どうでも良いと思っているのがよく分かるぐらいに。
フーケは小さく笑うと、唇をにやりと形容するのが相応しい形に歪める。

「素直に言うと思う?」

「なら、吐かせるだけだ。手間が掛かるが、まあそれは仕方あるまい」

「ふん、暴力でも振るおうってのかい。
 だけど、拷問されても絶対に吐くものか」

「方法は幾らでもある。それと何か思い違いをしているみたいだが、何も痛みを与えるだけが拷問ではないぞ。
 精神的に責めたり、快楽による拷問といった手もある。
 何処まで耐えれるか試してみるか?
 死という言葉さえ生温く感じる中で、素直に吐かなかった事を後悔させてやろう。
 やり過ぎて殺してしまっても恨むなよ」

恭也の淡々とした物言いに薄ら寒いものを感じながらも、それを態度に出すような事はせず、
フーケは睨みつけ、あくまでも強気の振りをして言い放つ。

「殺してしまったら、破壊の杖の居場所は分からなく――」

「ああ、それがお前を強気にさせているのか。
 なら、教えてやろう。俺にとってはそんな物どうでも良いんだ。
 それに大体の場所は既に分かっている。他でもない、お前が最初に教えてくれたんだ。
 森の廃屋だったか? そこにあるんだろう」

僅かながらもフーケが反応したのを見逃さず、恭也はここでようやくオスマンへと振り返る。
どうやらオスマンもフーケの反応を見ていたらしく、教師たちに指示を出している。
オスマンの指示に従い、数人の教師が出て行くのを見送り、再びオスマンへと視線を戻す。

「で、フーケはどうする」

「とりあえず、こちらで拘束しよう」

言って杖を振ると、それに応えてロープがフーケの手足を縛っていく。
既にフーケの待遇にも興味はなく、恭也は呆然と事態を見守っていたルイズの前に立つ。

「さて、何でも一つだったな。
 今は特に何も浮かばないが、決めたときは宜しく頼むぞ」

珍しく楽しみだと言わんばかりの口調でそう口にすると、ルイズの頭を一撫でして学園長室を出て行く。
後に残されたルイズは呆然としていたが、去り際の恭也の声や態度を思い出し癇癪を爆発させるのだった。

darkness servant 第五話







美姫 「久しぶりに書いたものがダークってどうなのかしら?」

うん、それは俺も思った。
けれど、ネタが浮かんで書き始めたら止まらなくなってな。

美姫 「まあ、それは良いとして本当に全然、書いてないわね」

いや、だからね今週はね。

美姫 「はいはい。じゃあ、来週を期待しないで待ってるわよ」

あ、あははは。ど、努力はしますよ。
結果は求めないでね。

美姫 「このバカ!」

ぶべらっ!

美姫 「いい加減、色々と書きなさいよね」

う、うぅぅ、分かってますよ〜。
ネタもあるんですよ〜。時間が、時間だけがないんです。

美姫 「それを何とかするのも執筆作業の内よ」

うぅぅ、痛い言葉。でも、頑張りますから。

美姫 「いまいち信用できないのがアンタらしいわね」

こんなに真剣なのに!?

美姫 「ああ、真剣だから余計に信用できないんだわ」

いやいや、お前の中では俺はどんな奴なんだよ!
とは言え、確かに最近書けてないしな。うぅぅ、書きたいよ〜。

美姫 「じゃあ、書け」

ぐぅぅ、じ、持病の癪が……。

美姫 「はいはい、大変ですね〜」

うわっ、物凄く軽いな。
と、冗談はさておき、極上や込めらしだけじゃなく、天星もそろそろ更新したいな。

美姫 「前々から言っているとらハ学園もね」

だな。だが、とらハ学園の方は先に整理したいよな。
ト書きパターンとそうじゃないパターンで書いているけれど、そうじゃないパターンが全話ないしな。

美姫 「その辺りも今年中にやっちゃいなよ、YOU」

ま、まあ、善処します。
とりあえず、新作を……ぶべらっ!

美姫 「増やすな!」

ふぁ、ふぁ〜い。

美姫 「全く本当に……」

いやいや、でも本気でリリ恭なのA'sは何とかしたいな。
既に大まかな流れも出来ているし。

美姫 「まあ、それなら新作という訳でも……いや、やっぱり新作に入るでしょうが!」

ぶべらっ!
う、うぅぅ、とりあえずは極上の夏合宿から終わらせます。

美姫 「もっともっと頑張りなさいよ」

はい!
といった所で今週も時間だな。

美姫 「久しぶりなんだから拡大ヴァージョンで行きましょう」

いやいや、急に、しかも勝手に決めないで!

美姫 「ちぇ〜」

はいはい、良い子だからね〜。

美姫 「子供扱いするな!」

ぶべらっ!

美姫 「ほら、さっさと締めなさいよね」

そ、そげな理不尽な……ぶべらっ!

美姫 「アンタの口は文句を言うためにあるの? 違うでしょう、締めの事を口にするためでしょう」

っていか、物凄く限定的な為にしかないのかよ!
ったく、もう。さて、そろそろ本当に時間かな。
それじゃあ、今週はこの辺で。

美姫 「また来週〜」


9月19日(金)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、今度は台風かよ、とお送り中!>



美姫 「これが壊すという事よ!」

ぶべらっ!
……い、いきなり、な、何を?

美姫 「いや、冒頭の一言に困っているみたいだったから代わりにやってあげたのよ」

いや、単に殴られただけのような気が……。
あ、あれれ? 足と手が変な方向に。

美姫 「気のせいよ。ほら、落ち着いて目を閉じて」

あ、ああ。

美姫 「で、深呼吸〜」

すー、はー、すー、はー。

美姫 「はい、ゆっくりと開けて。ほら、どう?」

おおう、どうやら見間違いだったみたいだな。
普段通りだし、ちゃんと動くや。

美姫 「ふぅ〜、アンタの回復力に珍しく感謝だわ」

何か言った?

美姫 「なんにも〜」

それにしても、台風が来ているとか言うけれど。

美姫 「今の所はまだ雨とかもそんなに激しくないわね」

だな。
とは言え、いつまでも穏やかという訳でもないだろうけれど。

美姫 「きっと風が強くなった瞬間に浩を外に放り出したら楽しいわよね♪」

いやいやいや、楽しいのはお前だけだから!
俺は全然楽しくないし!

美姫 「またまた〜」

いや、何がまたまたなんだよ。
そのもう本当は分かっているわよ、という温かい眼差しはなに!?

美姫 「うん、大丈夫大丈夫」

いやいや、意味分からないから!
いかにも分かっているから後は任せて安心してって顔されても、逆に不安だよ!

美姫 「冗談ばっかり」

いや、本気で嫌に決まってるじゃないか。

美姫 「えー! そんなバカな!」

何がだよ! 台風で喜んで風や雨の強い瞬間に外に出たがる奴がいるのか!?
まあ、絶対にいないとは言わないけれど。
って、そこで俺を見るな! 少なくとも俺は好きじゃないぞ!

美姫 「それじゃあ、私は何で暇を潰せば良いの?」

知るか! と言うか、今はっきりと暇潰しと言ったな!
つまり、俺はお前の暇潰しに台風の日に外に放り出されるのか!?

美姫 「うん♪」

って、何て爽やかな笑顔で。
嫌に決まっているだろうが!
そんなにやりたかったら、自分でやれ!

美姫 「良いの!」

この場合のやれっていうのは、俺を放り出せと言う意味じゃなく、お前が外に出ろって意味だからな。

美姫 「なんだ〜。そんなの嫌に決まっているじゃない。
    大体、台風の日に外に出たいって人の方が少ないと思わないの?」

いや、何、そのこのバカは何を言ってるのかしらって視線は!?
さっきのお前の発言はもう忘れちゃってる!?

美姫 「あ、そろそろCMに行こうか」

って、強引も強引な誤魔化し方だな、おい。

美姫 「なら、いつもの私らしい誤魔化し方にしようかしら?」

いつもの? って、まさか。

美姫 「という訳で、ぶっ飛んで来ーい!」

ぶべらぼげっ!
く、口は災いのもとーーーー!!







何故、こんな事になっているのだろうか。
高町恭也の脳裏に浮かんだのは、まずそんな事であった。
次いで脳裏に浮かぶのは、柔らかい桃、じゃなくて般若心経。
こちらは浮かぶと言うよりも、無理矢理浮かばせたという表現の方が正しいだろう。
視線を天井へと向け、心の内でひたすらに唱え続ける。
目を閉じないのは、そうする事で何かが起こると困るからである。
故に視界の下の方でもぞもぞと動く金糸も自然と目に入ってくる。
ゆっくりと近づいてくるソレに対し、恭也は後退りするもすぐにベッドの端に辿り着いてしまい、
これ以上の逃げ場を見出せない。
それでも決して天井から視線を逸らさない恭也に対し、確実に近づくソレの気配を感じ、
恭也はようやく両手を使ってそれの進行を食い止める。
掌に伝わる体温や思ったよりも細く柔らかな感触に鼓動が早くなるのを押さえつけ、
出来る限り下は見ないように恭也はようやく口を開く。

「こ、こういう事はそのお互いをもっと理解してから……」

だが、恭也のその言葉は目の前の金糸の正体、金色の髪の少女には届いていないのか、
今まで逃げていた恭也の突然の行動に顔を赤くして照れ、思わず顔を伏せるも覚悟したようにぎゅっと目を閉じる。

「きょ、恭也様、お世継ぎを作るためとはいえ、私も初めてなのです。
 出来る限り優しくしてください。も、勿論、私も我慢はしますから」

言って恭也が何もしていないのにベッドの上に倒れこむ。
その衝撃で少女の豊か過ぎる胸が揺れ、ベビードールの前がはだけておへそが丸見えとなる。
後ろ向きに倒れる少女を支えようと思わず手を伸ばした恭也は、それをまともに見てしまい顔を赤くさせる。
目の前で身体を緊張に強張らせつつも、決して恭也から逃げようとしない少女を前に、
どうしてこうなったのだろうかと思わず考えてしまう恭也であった。



事の起こりは本当に突然の出来事であった。
と言うよりも、本当に何がなんだかといった感じで、気が付けば目の前に五人の少女が居た。
どうやら倒れていたらしい自分を囲むように地面には何やら怪しい紋章のようなものが描かれている。
呆然と少女たちを見詰める恭也に、少女の一人がゆっくりと喋り出す。

「成功……したみたいね」

意味は分からないが、それが今の現状を指しているのだろうという事は何となく分かった。
故に詳しい説明を求めようとしたのだが、少女の一人が鋭い声を上げて空を睨みつける。
その声につられる様に他の少女たちも空を見上げる。
何事かと恭也も同じ方向へと目を向ければ、そこには想像上にしか存在しないはずの翼竜の姿があった。
数秒とは言え放心していたのか、恭也は先程自分を囲んでいた少女の一人、
ショートカットのどこか気の弱そうな少女に手を引かれて、ようやく我に返る。

「王仕さま、逃げましょう。ここを下って行けば味方の軍がいますから」

少女に手を引かれるまま森の中へと入っていく恭也。
他の少女はどうするのかと振り返れば、他の四人は空を飛んで行く。

「HGS? いや、翼がないという事は違うのか」

思わず足を止めた恭也が見詰める先で、少女たちはそれぞれに大きな武器を何処からともなく取り出す。
その事にも驚いた恭也であったが、更に彼を驚かせる出来事が目の前で展開される。
てっきりその武器で戦うのかと思った恭也であったが、少女たちは向かってくる飛竜に武器を構えてその場に留まる。
代わりにという訳ではないが、少女たちの構えた先に魔法陣が浮かび上がり、そこから炎や雷が飛び出す。
それらを喰らった飛竜――よく見れば人を乗せていたらしい――が落ちていく。
信じられないようなものを目にしつつ、恭也はそれが魔法と呼ばれるものだと漠然と理解する。

(父さん、今までも色々な経験をしてきたが、とうとう魔法と呼ばれるものまで見てしまったよ。
 それ以前に、ここは地球ですらないかもしれん)

しみじみと遠くを見詰めるように空を見上げる恭也であったが、
さっきから必死に自分を引っ張っていこうとする少女に気付き、

「ああ、すみません」

「い、いえ。それよりも早くここを離れましょう。
 狙いは王仕さまなのですから」

よく分からないながらも、その王仕さまと言うのが自分の事なのだと理解し、
恭也は困ったように手を引っ張る少女に促されるまま後に付いて行く。
途中で少女がアルトという名前である事を聞き、他の四人が姉妹だという事も聞いた。
更にはやはりここは異世界らしく、五人の少女によって召喚されたのだとも。
しかし、元の世界に戻す方法はないらしく、恭也は溜め息を吐く。
必死で謝るアルトに、どうして呼ばれたのかと尋ねる恭也であったが、その目の前に飛竜が降り立つ。



そこまで回想を終え、恭也は頭を振る。
あの後、やって来た長女にしてこの王国の第一王女であるユフィナによって飛竜は簡単に倒されたのだ。
だが、今考えるのはそんな事ではなく、目の前の状況に至る理由である。
とは言え、それ自体も難しい理由もないのだが。
今、恭也が居るトレクワーズ王国は女王の力によって結界で守られているらしい。
だが、今の女王が病に倒れて結界の維持にも問題が生じた。
故に一刻も早く新たな女王を擁立しないといけないのだが、その条件として世継ぎを産まないといけない。
で、代々王女は魔力の高い世継ぎを産むために国中から魔力の高い男を後宮に入れて、
その中から相手を選んでいるのだが、隣国によってその男たち――王仕さまが全員攫われてしまったと。
故に急遽、異世界から召喚する事にして恭也が召喚されたのである。
故に今の現状、つまりは王女の一人に迫られているという状況が出来上がっているのである。
改めて自身の身に降りかかった状況を確認し、恭也は小さく溜め息を吐く。
それをどう勘違いしたのか、ベッドに横たわる第二王女レイシアは不安そうな声を上げる。

「そ、その、何処か可笑しいのでしょか。
 勉強したのですが、やはり実戦は初めてで可笑しなところがあれば仰ってください」

おっとりとした外見や性格もそうなのだろうが、それとは正反対に身を起こして積極的に恭也へと擦り寄ってくる。

「い、いや、そうじゃなくて……」

「やはり私から積極的に行った方が宜しいのでしょうか。
 それでは失礼して……」

肩に手を置かれ、完全に油断していた恭也は押し倒されてしまう。
恭也の腰に跨り、レイシアはゆっくりと下着に手を掛けて脱ごうとする。
慌ててそれを止めようとしたその時、部屋の扉が勢い良く開けられる。

「本来なら貴方の方が来るのが礼儀でしょうけれど、今回は特別に私の方から来てあげましたわ。
 って、お姉さま!?」

「あら、エリスも来たのね」

やって来たのはレイシアの双子の姉妹でエリスであった。
姉と同じ金髪をこちらは縦ロールにし、姉よりも吊り目気味の瞳で鋭く恭也たちを睨む。

「出遅れましたわ」

小さく呟くなりベッドに上がり、そのままレイシアを押し退けるように恭也の上に座る。

「エリスもお世継ぎを作ろうとしているのですね」

「当たり前です。王女になるのはこの私です!」

「ああ、エリスにも民を思う気持ちが……。
 では、二人して頑張りましょうね」

国や民を強く思うレイシアが感動したように言うも、王女に固執するエリスは邪魔だとばかりに押し退ける。
そこまでは良かったのだが、その次の行動に移ろうとして動きが止まる。

「エリス、まずは服を……」

止まったエリスにアドバイスするべく何やら耳打ちをするレイシア。
何を吹き込まれたのか、顔を真っ赤に染めると、

「なっ、そ、そんな事まで! も、勿論、知っていましたわよ。
 ち、因みにその次は……え、ええ。そ、それを私が!?」

耳まで真っ赤にして恭也とレイシアを交互に見遣り、顔を俯かせて肩を震わせる。
怒りを堪えているようにも見えるのだが、恭也としては早くこの場から逃げたいという思いの方が強く、
エリスを気遣う余裕もない。
幾ら朴念仁と言われていようが、健全なる男子なのだ。
間違いなく美女と言える二人に迫られ、このままでは理性が持たない。
助けを求めるかのように壁を見詰めるも……。
その時、大きな悲鳴が響き、続いて廊下を走る音が遥か遠くからこちらに向かって近づいてくる。
そして、それは恭也の部屋の前で止まるとそのまま扉を開け放ち、

「きょ、恭也さん、助けてください。寧ろ、匿って……」

入ってきたのは恭也と同時に召喚された男性、神来恭太郎であった。
この少年も恭也と同じぐらいのカタブツで、どうやらこちらはこちらで迫られて逃げてきたらしい。
それを察すると同時に、恭也は助けの手を求めるべく恭太郎に手を伸ばしたのだが、
その腕がレイシアの胸に触れてしまう。
恭也の名誉の為に言っておくと、決してわざとではない。
腰にエリスに乗りかかられ、身体を起こす事が出来ない状況。その状況で助けを求めて伸ばした手が、
偶々エリスに場所を奪われて腕の傍に座っていたレイシアに当たってしまったのだ。
不可抗力である。
だが、不意に下から触れられたレイシアは思わず小さな声を漏らす。
入ってきた恭太郎はベッドの上の三人を見詰め、次いで先程聞こえてしまった声との意味を考え、

「お、お邪魔しました!」

結果として来た扉を急いで締めて出て行く。

「ま、待て、待ってくれ恭太郎。これは誤解だ。
 寧ろ、助けてくれ」

「きゃっ」

突然の事に思わず起き上がった恭也の勢いに負け、エリスが恭也の上から落ちてしまう。
それを好機と見たのか、恭也は一言謝罪を口にすると素早く部屋を飛び出すのだった。
後には呆然とそれを見送る二人の姉妹だけが残された。
だが、恭也も恭太郎もまだ知らない。
これはほんの始まりに過ぎないと言う事を……。



H+P ハ〜トパラ 恭也と恭太郎の後宮生活







うぅぅ、凄く痛い。体中が悲鳴を上げている!

美姫 「はいはい、大変だったわね〜」

全然、心が篭ってませんが?

美姫 「今更何を」

うぅぅ、改善要求します〜。

美姫 「うりうり〜」

って、意味もなくつむじを押すな!

美姫 「はいはい。それよりも、何か連絡があるんじゃなかったの?」

おう、そうだったな。
実は…………、来週のハートフルデイズはお休みします。

美姫 「えー! 何でどうして!?」

色々とあるのだよ、色々とね。

美姫 「むぅ〜」

う、す、拗ねないでよ。

美姫 「後でお仕置き」

いやいや。

美姫 「横暴〜」

そ、そんな事を言われても、色々と用事があってですね。

美姫 「職務怠慢〜」

いや、職務ってアンタ。
それだったら、労災降りても良いよね?

美姫 「そうやって誤魔化す」

いや、別に誤魔化してはないんだけれど……。

美姫 「む〜、嫌だけれど仕方ないとしても、やっぱりこの憂さは晴らさないとね」

って、やっぱりかー!
お、落ち着け、美姫。そ、そう、野球中継の為に放送は……。

美姫 「そんなくだらない冗談じゃ、私もう笑えないよ」

色々と違うからそれ。

美姫 「笑えないから、浩の冗談って言うんです」

いや、意味分からん!

美姫 「とりあえず、吹っ飛んどけ♪ って事よ」

ぶべらっ!
や、やはりこうなるのねー!

美姫 「まだ気はまらないけれど、それは後でアンタで晴らすとして」

ま、まだやる気かよ!?
い、いつもいつも大人しくやられてばかりと思うなよ!
バカの一念お前にも一撃与える!
って、ぶべらっ!

美姫 「何をしても私に勝てないから浩なのよ♪ その自然の摂理に逆らうなんて出来る訳ないじゃない」

いや、もう摂理レベルでの決定事項なのかよ!
まだだ、まだ終わらんよ……ぶべらっ!
せ、せめて台詞ぐらいは待ってよ……ぐげっ!
お、追い討ちですか、よ、容赦なしで……ごぼらっ!
ふっ、中々やるじゃ……ひぎょぇっ!
きょ、今日はこのぐらいでかんべ……にょぎょわっ!
も、もうゆるし……びょぎょがっ!
ご、ごめ……ぶぎゅるぅっ!
あ、あが……ごげばぁっ!

美姫 「ふぅ〜、すっきり!」

あ、あががが。

美姫 「あら、もう時間じゃない。ほら、さっさと締めなさいよね」

う、うぅぅぅ。

美姫 「ほらほら」

…………って、鬼かお前は!
全くもって容赦なしですか! 俺には情けのなの字すら勿体無いですか!
そうですか、そうですか。なすすべもなくやられる俺の無様な姿を見て楽しんでいるんですか。
あーっはっは、笑いたければ笑うが良いさね!
ほら、笑え、笑いなさいよ、あーはっはっは。

美姫 「うざい! キャラぱくるな!」

ぶべらっ!
…………えっと、すまん、少し混乱してた。

美姫 「はいはい、元に戻ったところでさっさと締めてよね」

はいはい。って、何か納得し辛いが、これ以上は流石に身体がきついしな。
それじゃあ、こ……ぶべらっ! な、なぜ?

美姫 「一言多いのよ。さっさと締めなさい」

うぅぅ。酷い……。って、流石にもう良いよな。
それじゃあ、今週はこの辺で。

美姫 「また来週〜」

だから、来週は休みだって……ぶべらっ!

美姫 「それじゃあ、また次の放送でね〜」

な、何で今殴られたの?


9月12日(金)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、今度は天気が続くな〜、とお届け中!>



先月発売した本を新刊コーナーに置かれると困るよね。

美姫 「今回の出だしはなんて言うか、今までにない実感があるわね」

まあな。いや、間違って既に購入していた小説を買ってしまったんだよ〜。
表紙を覚えていなかった上に、他の新刊と並んでるんだもん。
すっかり新刊が出たんだと思うじゃないか。
最近の本屋さんは立ち読み防止用なんだと思うけれど、ちらりとも中を見れないからな。
あらすじとかが折り返しにあるパターンのだと見れない。
しかも、運悪く残り二冊という状況。
あれ、先月も新刊出てたけれど、二ヶ月連続刊行か〜、と思って急ぎ手に取った訳だよ。

美姫 「で、家に帰ってみれば、って訳ね」

ああ。何か読んだ事があるような〜、既視感ってやつか〜。
みたいな感じで読み進めたんだけれど、2、3ページも読めば、あれ、もしかして……。
で、ガサゴソと探ってみれば、あったよ同じのが!?
ってな感じですよ。いや、もう落ち込むね。

美姫 「これで何回目かしらね。本当にバカね〜」

いやいや、俺以外にもきっと同じ経験者がいるはず!

美姫 「そう言えば、逆に集めていたシリーズ物の新刊を買って読んだら、ってのもなかった?」

そうそう。あれれ、話が繋がらないな〜。
と全巻を必死で探し出し、読んでみたらやっぱり繋がらない。
で、巻末や折り返しの既刊情報を見てみると、全巻買ってないよ!
というか、いつ出たんだ!? ってパターンもあるな、うん。
得てして、そういう時に限って本屋にその巻数だけがなかったりするんだよ。
これもまた、きっと経験者はいるはずだ。
らきすたとかでも、こういうネタはやっていたような気もするし。
うん、俺だけじゃない、俺だけじゃない。

美姫 「はいはい、自分で自分を慰めてないで」

だってさ、よくよく考えてみたら、持っている本を買った代金で買い忘れた本を買えるんだぞ。
特に今回は両方同時のパターンだっただけに、その思いが強くて強くて。
マネー、カムバーック!

美姫 「あまり格好良くない叫びね。寧ろ、パロディ先に謝れ!」

はぁ〜、ある程度騒いで落ち着いたよ。
さて、それじゃあ今日も頑張るぞ〜。

美姫 「もっと早くにやる気は出して欲しいけれどね。まあ、そんなこんなでCMにいってみましょう♪」







むか〜し、むか〜し、ある所におじいさんとおばあさんが住んでおりました。

「なの……じゃなかった、おじいさん、そろそろ山に行く時間だよ」

「うん、それじゃあ行って来るね、フェイ……おばあさん」

とっても仲の良い二人は、川に洗濯に行くおばあさんと途中まで一緒に手を繋いで歩いていきます。

「それじゃあ、頑張ってねおじいさん」

「うん、おばあさんもね」

いつものように途中で別れ、おばあさんはそのまま川へと洗濯に向かいます。
丁寧に洗濯をするおばあさん。

「……なのはの下着。じゃなかった、ゴシゴシ、ゴシゴシ〜♪」

おばあさんが洗濯をしていると、川から大きな桃がどんぶらこっこ、どんぶらこっこと流れてきました。

「わぁ、美味しそうな桃。持って帰っておじいさんと食べよう」

おばあさんは川に入って桃を取ると、両手で抱えて家まで持って帰りました。
おじいさんが帰ってくると、おばあさんが見せた桃にびっくりしてしまいます。

「凄いよ、おばあさん。どうしたの、これ」

「川で拾ったんだ」

「川で? だ、大丈夫かな? 最近、衛生面で色々と問題になっているし」

「大丈夫だよ。ちゃんとスキャンして安全だって分かってるから」

「そっか、それなら安心だね。じゃあ、切るのはわたしがしてあげるね」

「いいよ、おじいさん。私が切るから。いくよ、バルディッシュ。はぁぁぁっ」

おばあさんが包丁で桃を切ると、何と中から小さな赤ちゃんが出てきました。

「はっ! 何の躊躇もなく大上段から振り下ろすとは。あと少し反応が遅かったら、綺麗に頭を割られていたな」

「し、真剣白刃取り!? さ、流石です、恭也さ……じゃなかった。
 桃から生まれたから桃太郎と名付けましょうか、おじいさん」

「そうだね、桃太郎と名付けよう」

「しかし、考えてみれば安直な付け方だな。
 白い犬ならシロ、黒い猫ならクロと名付けるご老体だったに違いない」

「な、何か生まれたての赤ちゃんにしては可愛くないんですけれどー」

「そ、そんな事ないよ、おじいさん。ほら、こんなにも可愛い。良い子、良い子」

「フェイ……おばあさん、流石に頭を撫でるのは止めてくれ」

「あ、ずるい。わたしもやる!」

「こら、おじいさんまで一緒になって、や、やめろ」

桃太郎はおじいさんとおばあさんに育てられ、すくすくと成長しました。
そんなある日の事、悪さをする鬼の話をおじいさんが聞き、おばあさんと二人で怖いねと話をしていました。
それを聞いた桃太郎は、それなら僕が鬼退治をしてくるよと名乗りをあげます。

「普通に考えて、桃太郎の成長速度に疑問を覚えるが、桃から生まれた時点でそれを指摘するのは意味がないか」

「うぅぅ、おばあさん、桃太郎がとってもひねくれた子に育ってるよ」

「そ、そんな事ないって。おじいさんと同じぐらい優しくて良い子だよ」

「失礼な。俺はふと思った疑問を素直に口にしただけだと言うのに」

鬼退治に行くと言った桃太郎の為に、おばあさんはきび団子を作って持たせました。

「鬼を退治しに行くというのに、食料の心配とは。
 やはりここは武器と路銀を渡すべきだと思うんだが」

「あ、それはわたしも思う。とは言え、武器も棍棒とかだと本当に倒して欲しいのかなって思うよね。
 ましてや、お城の扉の向こうに結構強い武器とかがある場合だと余計に。
 初めからそれを渡してくれてれば、もっと楽に序盤は進めたんだけれどな、とか」

「ふ、二人とも何の話をしているの。ほら、早く鬼退治に行くんでしょう」

「ふむ、おじいさんの意見はかなり的を得ていて興味深いがおばあさんを困らせるのも何だしな。
 では、行ってくる」

こうして桃太郎は鬼退治に出掛けました。
桃太郎が鬼の居ると言われる鬼ヶ島に向かっていると、途中で犬と出会います。

「ワンワン。桃太郎さん、桃太郎さん、お腰につけたきび団子を一つください」

「……はんっ! 欲しければ奪ってみろバカ弟子」

「ぐるるる」

「甘い、甘いぞ!」

「って、このままじゃあ話が進まないよ、恭ちゃんじゃなくて桃太郎」

「仕方ないな。浅ましい犬にきび団子を恵んでやろう。ほら、ありがたく食え」

「くぅぅ、何故ここまで言われないと……」

「食ったか、食ったな。なら、鬼退治について来い。
 って、よく考えてみれば凄い話だな。鬼退治の報酬がきび団子だぞ」

「確かにそうだよね。普通、そこまでして団子が欲しいとは思わないかも」

こうして犬を仲間に加えた桃太郎は、更に鬼ヶ島を目指していきます。
そんな調子で猿を仲間にし、雉とも出会ったのですが。

「お前なんかいらないんだよ、とっととうせろ!」

「それはこっちの台詞や、このお猿! って、ああ悪かったな、今は本当に猿やったな」

「てめー、泣かす」

「できるもんならやってみい!」

「えっと、話が進まないんだけれど……」

「ふむ、これが雉じゃなくて犬なら正に犬猿の仲といって強引に終わらせる事もできたがな」

「そんな、今時そんなオチって」

「全く、お前が犬の所為で」

「ええ、私の所為なの!?」

そんなこんなで鬼ヶ島に辿り付いた桃太郎たち。

「あれ、鬼たちが全滅しているよ」

「ふむ、どうやらおじいさんとおばあさんの仕業みたいだな」

「もう遅いよ桃太郎。途中で喧嘩なんてするから、時間がなくなっちゃったんだよ。
 だから、先に鬼は倒しちゃったよ」

「でも、これで桃太郎が危険な事をしなくても良くなったし。
 早く帰って、また頭を撫でてあげるね」

「激しく遠慮しておこう」

「あ、わたしも撫でたい」

「だから、遠慮すると……」

「あ、私も参加し……」

「黙れ、役立たずのごく潰し弟子!
 そんな事をされるぐらいなら、貴様の腹を掻っ捌く」

「って、そこは自分のじゃないの!?」

無事に鬼を退治した桃太郎は、お宝を持って帰りおじいさんとおばあさんと仲良く暮らしましたとさ。
めでたし、めでたし。







さてさて、明日から三連休だけれど、皆はどうするのかな。
俺? 俺は勿論、ごろごろと……ぶべらっ!

美姫 「クリティカルヒットね。全くすぐにサボろうとするんだから」

う、うぅぅ。すみません。

美姫 「これからたっぷりとお仕置きの生中継をしたい所だけれど、残念ね」

た、助かった! 今日はもう時間がないもんな。

美姫 「嬉しそうに言わない。中継はなくても、お仕置きは出来るのよ」

……シクシク。

美姫 「泣いている暇があるのなら」

言われんでも分かってらぁ〜。
それじゃあ、今週はこの辺で。

美姫 「また来週〜」


9月5日(金)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、最近雨が多いな〜、とお送り中!>



流石にもうネタ切れしても良いよね。

美姫 「いきなり弱気発言ね」

いやいや、流石に冒頭一文ネタはそろそろ限界だよ。

美姫 「まだ十回もしてないというのに」

もうゴールしても良いよね。

美姫 「駄目に決まってるでしょうが!」

ぶべらっ!

美姫 「ゴールはまだまだ先よ」

うぅぅ、ゴールが見えないよ。

美姫 「と、冗談はこれぐらいにして」

だな。にしても、最近雨ばっかりだよな。
まるで梅雨に戻ったみたいだ。

美姫 「集中豪雨が多いような気もするわよね」

夕立とかな。行き成りドバーと降られても、こっちが困るっての!

美姫 「まあ、天気に文句や事情を説明した所で仕方ないでしょう」

そうなんだけれどさ、いきなり降られてみろよ。
もう、なんかもう! って感じだぞ。

美姫 「ごめん、全く意味が分からないわ」

いや、だからだな。こう、もう! うがー! ってな気分に。

美姫 「いや、さっきとの違いすら分からない」

えぇぇ! こんなにも急な雨に困る感情を如実に現しているというのに!?

美姫 「擬音だけで何を感じ取れと」

いや、だから、こうもう! うがー! って。

美姫 「さっきと同じじゃない。もう少し違う例えをしなさいよね」

えっと、じゃあ……、もう! がぁー!

美姫 「いや、やっぱり違いが分からないわ」

全く、これだから感性のない奴は……。

美姫 「私の感性じゃなくて、アンタの表現力がないんでしょうが!」

ぶべらっ!

美姫 「全く、相も変わらず馬鹿ばっかりしてからに」

うぅぅ、すみません……。

美姫 「それじゃあ、憂鬱な天気を吹き飛ばすべく、今週も――」

雨だから憂鬱というのはどうかな〜。雨が好きな人だっているだろうし。

美姫 「細かい事を。と言うか、最初に雨に関する文句を言ったのはアンタでしょうが!」

ぶべらぼげぇぇっ!

美姫 「何はともあれ、CMいってみよ〜」







「おーほっほっほ。山賊如きがこの私に勝てると思ってますの。
 全軍、突撃ですわー!」

「ちょっ、姫、待ってくださいよ。
 確かに相手は陣形も何もしらない有象無象な山賊かもしれませんけれど、
 馬鹿正直に正面から突撃なんてしたら、こちらの被害だって大きくなってしまいますよ。
 相手も数ばかりは多いのですから、少しでも被害を抑えるために……」

「斗詩〜、面倒だから正面からの突撃で良いじゃんか。
 大丈夫だって、私たちが前に出れば」

「あら、猪々子さんにしては良い事を言うじゃありませんか」

「ちょっ、文ちゃん何を言うのよ。姫、だめですってば」

「全く我が軍が誇る顔良将軍ともあろうものが、そんな及び腰では困りますわ」

「及び腰とかそういう事じゃなくてー!
 そ、そうだ。晶ちゃん、あなたの意見は?」

「え、お、俺!? うーん。俺もあまり考えたりするのは得意じゃないけれど、
 このまま正面からぶつかり合ったらこっちの兵士にも被害が出るんだよな。
 だとしたら、やっぱり被害は少ない方が良いだろうし、
 斗詩さんに何か案があるのならそれを聞いてから考えても良いんじゃないかな」

少年のような格好をした少女、晶の言葉に斗詩は味方が出来たとばかりに嬉しそうに頷くと、
改めて自分の主、袁紹へと視線を転じる。

「まあ、二人がそこまで言うのなら聞くぐらいはしてあげても良いですわ」

傲慢とも言える態度で手を口に当てて高笑いすると、袁紹は顔良に策を述べるように命じる。
その策を聞き、袁紹は数回頷くとまた高笑いを上げる。

「おーほっほっほ。流石は顔良さん。私も全く同じ事を考えていましたわ。
 我が袁家の兵があの程度の敵を相手に被害を受けるなんてあってはならない事ですもの。
 という訳で、その策で行きましょう。指揮は顔良さんに任せますわ。
 我が袁家の力を見せておやりなさい」

袁紹の言葉に顔良は慣れた様子で頷くと、すぐに指示を伝えるべく伝令を呼ぶ。
それら一連のやり取りを眺めていただけの文醜と晶は、知らず顔を見合わせると互いに肩を竦めるのだった。



「はいよ、新しい小籠包ができましたよ!
 それと炒飯も完成や」

「ははは、相変わらず手際が良いな、レンちゃん」

「いややわ、おっちゃん。そない褒めても何もでませんよ」

出来上がった皿をカウンター越しに渡しながら、
レンは隣で同じように出来上がった品を出しているこの店の店長の言葉に笑顔で答える。

「いやいや、本当に大したもんだって。
 公孫賛様の頼みという事でお嬢ちゃんを使ってみたが、ここまでやるとは思ってなかったよ」

「あははは。そない言われると照れますな〜」

照れながらもレンの腕は別物のように動き、次の料理を作り上げていく。
店長もまた同じように料理をしながら、

「早く探している人が見つかると良いな」

「ええ。公孫賛さんが周囲の探索とそれらしい情報がないか調べてくれると言ってくれはるんで、
 そのお言葉に甘えさせてもらってますけど。まあ、何人かはうちなんかよりもしっかりしてはりますし、
 一人は馬鹿やけれどもやたらと頑丈なんで大丈夫かと思います。
 問題はなのはちゃんやねんけれど。せめて久遠かお師匠か美由希ちゃんとと一緒なら良いんやけれど……」

ついつい考えに耽りそうになるのを頭を振って追い払い、レンは無理矢理にでも良い方向へと考える事にする。
その内、公孫賛にお願いして自分も探索に加えてもらおうと考えながら、レンは料理を作るのだった。







いやー、先週うっかり忘れていた二人を慌てて――ぶべらっ!

美姫 「このお馬鹿!」

うん、やっぱりね。
このミスをお前が見逃す訳ないよな。いい口実とばかりに俺に対して殴る事ぐらいは予想していたさ!

美姫 「いやいや、爽やかに言う事じゃないからね」

だからといって、暗く言っても仕方ないだろう。

美姫 「変な所で前向きというか、無意味な所で前向きというか。その前に、前向きと言えることなのかしら」

まあまあ、深く考えるなよ〜。
ほらほら、それよりもそろそろ時間じゃないか?

美姫 「それもそうね。って、まだ早いわよ!」

ぶべらっ! お、お前、手を出さずに口だけ言えないのか?

美姫 「アンタが悪い」

ひ、酷いわ!
と、冗談はさておき、早いけれどネタも特にないだろう。

美姫 「じゃあ、残る時間は延々とアンタを殴るという事で」

いやに決まっているだろう!

美姫 「またまた〜」

いやいや、まるで本音は違うというような言い方はやめて!

美姫 「ったく、仕方ないわね」

思いっきり理不尽さを感じるんだが、とりあえず殴られないのなら良しとしておこう、うん。

美姫 「ほら、さっさと締めるわよ」

はいはい。
それじゃあ、今週はこの辺で。

美姫 「また来週〜」










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