戯言/雑記




2010年11月〜12月

12月28日(火)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、今年も最後だ、とお送り中!>



まずはお詫びを。

美姫 「随分と時間が掛かったけれど、どうにかPCも戻ってきたわね」

ああ。とは言え、本当に今年ギリギリにだがな。
とんだ出費だし……。

美姫 「まあ、それは仕方ないわね」

まさか、最後の最後でこんなトラブルに遭うとは。本当に今年はついていないな。

美姫 「お蔭で更新も例年になく少なかったしね」

全くだ。
来年こそは良い事がありますように!

美姫 「まあ、まだちょっと早い気もしなくはないけれどね」

さて、随分ぶりになるが今年最後の……。

美姫 「CMいってみましょう♪」







何処までも広がるのは緑の絨毯。
そよ風を受けて揺れる風景はのどかで、それだけでも心を癒してくれる。
草原の上空に広がるのは、これまた何処までも続く青い空。
そこに色を添えるのは白くたなびく雲。
こちらもまたそよ風に流されながら、ゆっくりとその姿を変えていく。
本当にのどかな景色と言えるであろう。
尤も、ここに立っている恭也の心がそれで癒しを得ているのかと聞かれれば、即座に否定の言葉を口にするだろうが。
ぽつんと草原に一人立ち、恭也は行くあてもなく空を見上げ、暇を持て余す。

「本当にろくな事にならないな」

初めから嫌な予感はしていたのだが、今回は大丈夫だろうと高をくくったのが間違いだったか。
それとも、珍しくなのはや美由希までもが一緒であり、且つ賛同した事によって判断を誤ったか。
どちらにせよ、恭也はこうしてまた忍の巻き起こした騒動に巻き込まれた訳だが。

「……はぁ、まだか」

ぽつりと零れた声はすぐさま掻き消え、恭也の待ち人の姿は未だに見えない。
ただ立ち尽くすのも馬鹿らしくなり、どうせ向こうが見つけるだろうと体を倒して寝転がると空を見上げると、
ぼんやりと事の起こりを何となしに思い起こすのだった。



それは一本の電話から始まった。
と言うには大げさな話で、単に長期休暇で暇を持て余した忍からの遊びの誘いだった。
こつこつと作っていたゲームが完成したという事で、仕事の桃子を除く高町家全員でお邪魔したのが午後一のこと。
月村邸に着くと、そこには那美や久遠も呼ばれてきており、ろくな説明もなしに地下へと連れて行かれる。
そして部屋に入るなり見せられたのが天井すれすれまで高さのある頂点に行くほど細くなって行く塔のような機械。
そこから伸びた幾本ものコードは、塔を中心に円形に配置された12個の人が入れそうなカプセルへと繋がっており、
少し離れた位置には大型のコンピュータが壁に沿って並んでいる。
この時点で嫌な予感を抱きつつも恭也は静観する事を決め込み、逆になのはたちは興味深そうに機械の周りを回る。

「……で、これは?」

「ふっふっふ。バーチャルゲームの筐体といった所よ。
 そうね、恭也にも分かる様に説明するなら、これでゲームの世界に入るみたいな間隔で良いわよ」

忍の言葉になのはや晶、レンといったゲームをする者たちは更に目を輝かせ、
逆に美由希などは過去の発明品を知っているだけに思わず機体から離れる。
それらの反応を眺めつつ、忍は胸を張って更に続ける。

「まあ、物は試しって事で早速やりましょう。
 操作はそう難しくはないわ。基本的な動作は運動する感覚で勝手に動くから。
 後は追々説明していくわ」

強引にカプセルに入らせようとする忍に対し、恭也や美由希は渋るものの、他の面々が既にカプセルの中へと入り、
恭也たちが位置に着くのを待っている状況を見て、仕方なしに恭也と美由希もカプセルに入り込む。
カプセルの中で寝転がると、半透明のカバーが蓋をする。
恐らくは耳元にスピーカーでもあるのか、そこから忍の声が聞こえてくる。

「で、ゲームのジャンルはRPGって所ね。何をするのかは自分たちで調査していく事になるから。
 ちなみに、普段の運動能力を考慮して、ちょっと初期値を弄ってあるから」

「初期値?」

忍の説明に疑問を口にする恭也を含め、忍は全員へと説明を続ける。

「そうそう。いつもいつも恭也や美由希ちゃんばかりが戦闘では強いんじゃ面白くないじゃない。
 だから、色々と数値を弄ってあるのよ。
 簡単に言えば、恭也や美由希ちゃんは普通に殴り合いをしたら村人と互角かそれ以下の能力に設定しているって訳。
 逆になのはちゃんとかの能力値は高くしてあるわよ」

そんな訳だから、初っ端から町の外に一人で出るのはやめておきなさいと恭也と美由希に言い放つ。

「さて、それじゃあ、後は実際にプレーしながら追々説明していくわ。
 ノエル、スタートさせて」

忍の声に応え、ノエルがゲームを起動させる。
カプセル越しに重い音が響き始め、徐々に視界が白くなっていく。
そして、いよいよゲームがスタートするというその時、

「あっ!」

ノエルの声がして、あっという間に意識が途切れた。
そして気が付けば、草原に一人立ちつくしていた訳である。
そんな恭也の耳と言うよりは頭の中に直接ノエルの声がしたのは数秒とせずにである。

「大丈夫ですか、皆さん」

ノエルの声に問題ないと返す恭也だが、他の者の声は聞こえない。

「皆さんの無事をこちらで確認しました。ですが、少々問題が発生したようです」

言って、ノエルは現状を説明し始める。
簡単に言えば、魂、もしくは精神だけがゲームの中へと入ってしまったと。
恐らく、戻るにはこのゲームをクリアしなければいけないだろうと。
原因は忍がこっそりと叔母の家から持ち出した材料である事までノエルは解析していた。
と言うよりも、その叔母に連絡して救出方法を尋ねたらしい。
忍には後で話があると伝えておいてと言われたと口にした後、

「とりあえず、私は外から皆さんのサポートをさせて頂きます。
 現状、一番街に近いのは美由希様ですね。城島様とレン様が比較的に近くにいます。
 恭也様の近くには忍お嬢様が、神咲様と久遠様、なのは様は皆さんバラバラの位置に居ます。
 とりあえず、美由希様は街に行かれる事をお勧めします。そして、恭也様はその場から動かないでください。
 その平原は敵との遭遇はないので安全ですが、そこから出ると遭遇してしまいます。
 そして、恭也様の能力値ではまず負けてしまいます」

こうして、恭也は忍が来るまでひたすらに待たなければならなくなったのだ。
幸いな事になのはの能力値は非常に高く設定していたらしく、今の所は安全との事である。
寧ろ、一番危険なのが自分であると言われ、終いにはなのはにまで心配されてしまったらしい。
らしいと言うのは、ノエルとの会話は出来ても他の者たちとは会話できず、そうノエルに聞いたからだが。
因みに、持ち物を確認した所、何一つ持っていなかった。
どうやら、ここでも色々と差があるらしく、他の者たちは回復の為のアイテムや最低限の装備があるらしい。

「……………………」

「やっほー、恭也、お待たせ♪」

「…………」

暢気な笑顔で覗き込んでくる忍に抗議するかのように無言で睨みつけてやるも、忍は涼しい顔で受け流し、

「返事がない。ただの屍のようだ」

「はぁ」

忍の反応に恭也は深々と溜め息を吐くと体を起こす。

「お前への説教は後にするとして、これからどうすれば良いんだ」

「とりあえず、この平原を出て少し先に街道があるからそこまで行くわ。
 そしたら、後は街に向かって美由希ちゃんと合流ね。残念ながら、他の人たちはもっと先の地域にいるみたいね。
 順番的には那美かフィアッセさんが次に合流って所ね」

そう言って歩き始める忍の後に続くと、途中で忍が振り返る。

「そうそう、モンスターが出てきても恭也は後ろで見てなさいよ。
 今の恭也は現実とは違ってあまり役に立たないんだから。まあ、偶にはこういう経験も良いもんでしょう」

「ごめんこうむりたい所ではあるがな」

何故か楽しそうな忍に苦々しく返しつつも、恭也は大人しく忍の言葉に従うのであった。



――無事に帰る為に、



街の外れに人だかりが出来ており、近付くと聞き覚えのある歌声が聞こえてくる。

「あら、やっぱりフィアッセさんだった」

「あはは、フィアッセは何処に行ってもやっぱりフィアッセだね」

吟遊詩人よろしく、琴を手にしつつも楽器は一切使わず、ただ己の声のみで歌うフィアッセを見て、
美由希は笑みを零しながら言う。その意見に同意しつつ、恭也はフィアッセの無事に胸を撫で下ろすのであった。



――各地に散らばった仲間たちを探しながらも、



「なら、あなた方があの白い戦乙女様のお連れの……」

「あ、あははは。なのは、ここではもうかなり有名人みたいだね」

「さ、流石なのちゃん。ジャンル問わずにゲームは得意みたいね」


――恭也たちはそれぞれに冒険を始める。



果たして、全員揃って無事に帰ることが出来るのか。

とらいあんぐるハ〜ト3 〜ようこそ電脳世界へ〜







いやー、本当に久しぶりに書いたよ。

美姫 「とは言え、更新すべきSSは進んでないけれどね」

うぅぅ、本当に今年はついてない……。

美姫 「まあ、気持ちを切り替えて来年も頑張るわよ」

だな!
それでは皆さんも良いお年を。

美姫 「今年はこれにて。また来年〜」


11月26日(金)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、よくよく見れば日が落ちるのも早いよね、とお送り中!>



「…………」

「…………」

静寂が耳に痛い。
そんな環境に自分が置かれるなど思いもしなかったが、現在、恭也はそのような状況下にあった。
とある学園の学園長室。一般の学園長室よりも広いのではと思わせる広さを持ち、
執務机の他にソファーがテーブルの一方に置かれ、対面にはテレビまで完備されている。
その学園長室の中にあり、恭也はさっきから一言も喋らないでただ立ち尽くす。
自分から口にするような事はない為なのだが、一向に進みそうもないなと思わず思い、改めて周囲をこっそりと窺う。
この部屋に居るのは恭也を含めて五人。
内二人は少女で、一人は高齢とも取れる男。残る一人は恭也とさほど変らない二十歳そこそこの男である。
この中で最も年下に見える少女は足を組み、唯一席に着いており、その隣に高齢の男性が立つ。
顎鬚を撫でながら、困ったような顔をしている。
対する少女は不機嫌そうな顔で何も言わず、高齢の男性を睨むだけ。
残ったもう一人の少女は状況が飲み込めていないのか、
ただおろおろといった様子でこの場に居る者たちへと忙しなく視線を動かす。
が、このままでは進まないと判断し、座っていた少女――実は彼女がこの場で最も偉い学園長なのだが――が、
表情そのままに不機嫌そうに口を開く。

「で、もう一度言ってみろ」

と、青年に問いかければ、その言葉に内に潜む力強さに気付いたのか恐る恐るといった様子で口を開く。

「ですから、彼、高町は俺と今まで一緒に居たんです。
 急に先生が呼び出したので、どうも一緒に巻き込まれてしまったようで」

「はぁ、アシュリー、これはお前のミスだ。私は知らん」

「おいおい、アリス。全てをわし一人に押し付けるつもりか?
 お主が急かしたからこそ碌な確認もできなかったんじゃぞ」

「知るか。幾ら急かされようと安全の確認を怠った時点でお前の責任だろう。
 仮にも大賢者なんだ、何とかしろ」

「そうは言われてものぉ」

「あ、あのー」

二人で勝手に進む話に付いて行けず、おずおずと少女が手を上げて発言を求める。
学園長の無言の視線に促され、少女は恐る恐る口を開く。

「一緒に来てしまったってそれが問題だと言うのでしたら、そのまま帰って頂いたら良いのでは。
 勿論、ここまでとそこまでの運賃はこちらでお出しして」

恭也に申し訳なさそうにしつつも、この場で最も有効だと思えた意見を口にしたのだが、

「残念ながらそう簡単にはいかないんじゃよ。まあ、その辺りは今は良いとして……。
 しかし、本当に困ったものだ」

「はぁ、この場でそれを言っても始まらんだろう。
 この際、この学園に止めておくしかあるまい。それよりも、さっさと事情の説明を始めろ」

「それしかないか。とりあえず、勝手ながらこちらの説明からさせてもらうぞ」

「えっと、はい」

アシュリーと呼ばれた老人がそう断りを入れて話し出す。







いやー、本当にもうすぐ冬って感じだよな。
クリスマス絡みの飾りなんかも目に付くようになったし。

美姫 「そうよね。って、何普通に始まってるのよ。何、今回のこれは?」

少し趣向を変えて、CMとCMの間に放送を入れてみました。

美姫 「何、それ」

珍しいだろう。CMに挟まれる番組。

美姫 「いや、珍しいのは確かだけれど」

変った試みをモットーに。

美姫 「しなくても良いから。と言うか、これって締める時どうするの?」

そりゃあ、いつも通りに締め……あ、あれ?
締めた後にCM後半が来てしまうな。となると、やはりいつものようにCMですというコメントでCMに?

美姫 「はぁ、いきあたりばったりも大概にしておきなさいよ」

……反省。いやいや、諦めるのはまだ早い!
CM後半はこの後と宣言してから続ければ。

美姫 「かなりの無茶振りね」

まあまあ、物は試しだ。という訳で、頼みます。

美姫 「はぁ。気が重いけれど仕方ないわね。それじゃあ、CMはこの後です!」

という訳で、CMへの振りはこれでOKとして。

美姫 「本当にOKなのかしらね」

まあまあ。と、それはそうともう11月も終わりですよ。

美姫 「本当に早いものね。毎回、言っているけれど」

今年も後約一ヶ月。
まだまだ頑張っていかねば。

美姫 「気合を入れた所で、えっと、時間で良いのかしら」

おうともさ。
それじゃあ、今週はこの辺で。

美姫 「また来週〜。…………って、やっぱり変よこれ」

ですよね。







アシュリーから聞いた話を纏めると、魔王が復活しようとしているという事らしい。
何でも昔勇者と呼ばれる存在が七つのパーツに分けて封印したのだが、それが解けるとの事。
事実、国軍は壊滅したという知らせもあったらしい。
そこで政府は勇者の子孫であるカズマ、この場に居た青年の身柄を要求。
魔王を倒すには勇者の力以外では無理との理由からだが、学園側はこれを拒否したらしい。
勇者の力をこの場に居た少女に受け渡す方法があり、それで魔王と戦うという方法を取る事で。
あらかたの事情を説明し終えると、カズマと少女は退室を促された。
その方法を聞いてから顔を赤くして言葉少なくなった二人を送り出し、恭也は二人と向き合う。
正直、その方法の是非を問いたい部分もあったが、完全な部外者である以上、何も言う事は出来ないからだ。
それが顔に出たのか、アリスは少しだけ面白そうに唇を上げるも、すぐに元に戻すと、

「さて、問題はお前の方だな、高町」

「ですね。大体の話はランセットからここに来るまでの道中で聞きましたが」

「どの程度聞いておるかね」

「ここが俺の居た世界ではない事。ランセットは元々、この世界の住人で勇者の子孫である事。
 その力を操れない事から暴走する危険がないマナの少ない俺の居た世界で暮らしていた事ぐらいですね。
 後はさっき離された魔王という存在が居るという事でしょうか」

「そうか。では、話を戻すがお主を元の世界に戻す事はできる、できないで言うのならばできる」

「その言い方でしたら、何か問題があるようですね」

「中々察しが良いではないか。あの小僧よりも話が早そうで助かるな。
 アシュリー話してやれ」

「やれやれ、途中で遮るのなら最後まで言えば良いだろうに。
 世界間を移動する魔法は禁呪として存在しており、それをわしは扱える。
 尤も他の者たちはそんな魔法すら知らんからわしいがいには知っておる者自体がおらんじゃろうが」

「政府はそんな世界があるという事すら知らんからな」

「はぁ」

恭也はとりあえず生返事に近い返事を返す。
その上で話の続きを促し、それに答えて再びアシュリーが話し始める。

「じゃが、問題なのはその魔法に掛かるマナの量じゃな。
 今すぐどうこうできるものではないし、少なくとも魔王との戦いが終わるまではできる限り温存したい」

「つまりだ、小僧。お前を元の世界に返すのは全てが片付いてからという事だ。
 異例ではあるが、今回の非はアシュリーにあるし、それまでの生活に関しては一応保証してやろう。
 だが、当然ながら無償で与える訳にはいかん。
 この禁呪の事も他の世界の事も口外できん以上、お主の存在をここに止める理由も必要になるからな」

「さしあたり、カズマの補佐という名目になるだろうの。
 とは言え、こちらの事を知らぬ高町ではそれにも限界があるぞアリス」

「だろうな。全く面倒な事ばかり積み重なってくれる。
 あの小僧の話を聞く限りでは、あちらの世界は平和のようだし、さて、何をさせるか。
 まあ、それは追々アシュリーが考えるだろうから、お前は邪魔せんようにさえしてくれれば良い」

「わしが考えるのか。まあ、良いが。とりあえずは急ぎ部屋を用意させるとしよう。
 それまではここに居てくれ。という訳で、アリス後は頼んだぞ」

「こら、待てアシュリー! って、本当に行ったのか。はぁ」

アリスは長い髪を掻き上げ面倒くさそうに息を吐く。
じろりと恭也を睨み付けるも、恭也としても面倒を掛けているとは思うものの完全な被害者だ。
それでも文句を言わずに口を閉ざすと、アリスはそれ以上は何も言わず、学園長室に静寂が再び訪れる。

「…………ええい、ぼさっと突っ立てないで適当に座れ」

目障りだといわんばかりに手を振られ、恭也はソファーに腰を下ろす。
異世界とは言え、そう大きな違いは見られず、他に鑑賞するものもなく恭也はすぐに飽きてしまう。
居心地の悪さを感じつつ、恭也は早くアシュリーが戻ってきてくれる事を切に祈るのであった。



カスタムハート


11月19日(金)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、本格的に冷えてきた、とお届け中!>



何か最近、体がおかしくてな。

美姫 「頭が可笑しいのはいつもの事じゃない」

そうだったかな〜。って、今、さらりと主語が変ってたよね。

美姫 「で、どう可笑しいのよ」

あ、あれ、こっちの質問は?

美姫 「聞かなくて良いのなら、さっさとCMに行くわ」

待て待て。
実はな、寝ていても痛みを感じるんだ。

美姫 「あー、それは私が殴っているからよ。特に問題ないから安心しなさい」

できないよ! 今、別の問題が見つかったよ!
何だ、殴っているって! あまりにも自然すぎて聞き逃す所だったぞ。

美姫 「そのまま聞き逃せば良いのに」

おいおい。って、それよりもどういう事だよ。

美姫 「昼寝しているアンタが悪い」

おおう、だから昼間に寝ている時だけ痛みを感じるのか。
って、どんな理由だよ!

美姫 「人が起きている時にぐーすかと気持ち良さそうに寝ているアンタを見ていると、こう自然と手がね」

いやいや、笑顔で言う事じゃないから。

美姫 「でも、原因も分かったから良かったじゃない」

アンタが原因ですけれどね!

美姫 「それじゃあ、今週もCMいってみよ〜」

いやいやいや!







夜中、ふと目が覚めた恭也は音もなく上半身を起こし、周囲を見渡す。
そこが見慣れた自室であると分かると、小さく嘆息を漏らし、

「はぁ、またか」

そう呟かずにはいられなかったその声には、相当の疲れや達観が見えた。
そのまま眠る気にもなれず、そもそも眠気などとうになくなっており、布団に体を倒すとぼんやりと天井を見上げる。

「今回は結構、良かったと思ったんだがな」

少し思い出すように遠くを見詰めた後、何か忘れているような気がして思考に耽る。
程なくして、何を忘れていたのかを思い出すと、恭也は静かに起き上がり部屋を出て行く。
途中、桃子の部屋に寄って毛布を持ち出すと、そのまま足音を消してリビングへと向かう。
真夜中を過ぎた時間にも関わらず、僅かに開いた隙間から明かりが漏れているが、
それを不審にも思わずに恭也はただ足音もなくリビングへと踏み込む。
そこには何度も見慣れた光景が映っており、恭也はやっぱりという思いでそっと近付く。
テーブルに突っ伏し、お酒の入ったグラスを片手に握り締めたまま眠る桃子に持ってきた毛布をそっと掛けてやる。
桃子の前には士郎の写真が入った写真立てが置かれており、その前にも申し訳程度に注がれたグラスがある。
よくよく見れば、桃子の頬には涙の跡も見える。
そんな光景を見ながら、恭也は起こさないように電気を消すと、入った時と同じように静かにリビングを出て行く。
再び自室に戻った恭也は確認するように隠すように置かれた小太刀を手に取る。

「八景……」

幾度となく共に死線を潜り抜けた自らが振るい続けた小太刀の名を確認するように呟き、すぐに元に戻す。
恭也は布団の上に胡坐を組むと、再び思考に耽る。

「今回は確か……、青山さんの依頼を果たす為に神咲家の力を借りる事までは出来たんだったな。
 が、古に封じた鬼が復活して、那美さんを庇ったまでしか記憶にないという事は、それが死因か」

奇妙な事を口にするも、それを聞く者は誰も居ない。
勿論、恭也も分かっているからこそ口に出して自らの記憶を整理していたのだが。
でなければ、夜中に自室で独り言を口にする危ない小学生になってしまう。
思わず浮かんだくだらない考えを自嘲し、次に自分の体を確認する。

「やっぱり小さくなっているな。時期は今まで同様に父さんが亡くなって葬儀も済んだ一ヵ月後。
 無茶な鍛錬を始めようとした瞬間か。
 そして、例によって理由は分からないが今までに鍛えられたものは蓄積しているようだな」

理屈は分からないながらも、自分が過去に取ったあの無茶な鍛錬を悔いていたという事だろう。
だからこそ、この日を何度も繰り返すのではないかといつか考えた事があったな。
恭也は自らの思考が堂々巡りになる前に打ち切り、布団に横になる。
そう、高町恭也は何の因果か人生を幾度となくやり直しているのだ。
死んだと思った瞬間には、この日に戻りまた日々を繰り返す。
始めは驚き、困惑したものの死の間際の夢かと思ったものだ。
が、それも十を超える時には何の嫌がらせかと思うようになった。
どうやっても死なないのなら、大きく歴史を動かしてみようと思い、色々と試した事もあった。
更には自分のこの状況を解決するべく、那美経由で神咲家へと協力を求めた事もある。
普通ならば信じてもらえるような話でもなく、どうにか信じてもらえたとしても解決策などは見つからなかった。
諦めて美由希の鍛錬や、自身の鍛錬のみに励んだ事もあったし、やけになった時もあった。

「今にして思えば若気の至りとも言えるか」

そう呟くと目を閉じる。
既に達観してしまった頃もあったが、まだ希望が残っている事も分かった。
この世ならざる力。それを頼るべく、ここ数回はそういった力を持つ者を探し回ったものだ。
その甲斐あってか、手掛かりらしきものは掴めた。
まだ解放されると決まってはいないが、何百回と繰り返した果てに手に入れた僅かな希望。
だが、時期としてみるならばまだ未来の話しだ。
その為に幾つかしなければならない事もある。
まずは自身の鍛錬。これは今までの積み重ねが残っているので問題となるのは体が小さくなったという点である。
が、既に繰り返している今では体が多少縮んだ程度の修正など一日もあれば事足りる。
次に美由希の鍛錬。教えない事もあったし、徹底的に鍛え上げた事もあった。
今までに色々と試したが、今回もまた美由希の意志に委ねる事にする。
そして、やっておかないといけないのが留年である。
これをしないと忍との縁が作り難い。尤も、その場合も色々と方法はあるのだが。
一応、恭也の中で仲の良い知り合いと呼べる者たちの手助けは今回もしたい所だ。
そんな事をつらつらと考えている内に、ようやく睡魔が戻ってきたのか恭也を夢の世界へと誘う。
それに抗う事無く身を委ね、恭也は眠りに落ちるのだった。

とらいあんぐるハ〜ト3 外伝 〜ループする魂〜







痛い、痛い、痛い!

美姫 「それは気のせいよ!」

気のせいじゃねぇよ! 実際に腕が、腕がー!

美姫 「むぅ、これ以上は曲がらないわね」

当たり前だ! というか、やめてー!

美姫 「じゃあ、次は足にいきましょう」

いきましょうじゃないよ!
何故に、こんな目に!?

美姫 「ほら、常日頃から痛みを与えておけば、今後は眠っているときに私が殴っても痛みに慣れているじゃない」

ああ、なるほど、耐性を作る訳か。

美姫 「そういう事よ♪」

じゃあ、どうぞ。……なんて言うか!
何故に俺が耐性を付けないといけないんだ。お前が殴らなければ良いだけだろう。

美姫 「うん、無理」

即答!?
いやいや、それは可笑しいでしょう!

美姫 「私が正義! って言葉は素敵だと思わない?」

思わないよ!

美姫 「細かい事は気にしちゃ駄目よ」

細かくもねぇし!

美姫 「いいから足を出しなさいよ。CM終わっちゃうでしょう!」

言われて誰が出すか!
CM終わるまで死守してやる!

美姫 「ほほう、そんな事が出来るとでも?」

あ、やめて、本気の目は止めて。
…………って、あれ?

美姫 「隙あり!」

うぎゃぁぁっ!
ちょっ、おま、それムリムリムリ! 人の足は構造上、そっちには曲がらないから!

美姫 「なせばなる、よ」

ならないっての!
って、言うか、気付け、気付け!
CM、終わってる!

美姫 「えっ、嘘!? …………やめて〜、浩が暴力を振るう〜」

いやいやいや、絶対にありえないだろう。
もし、本当にそんな事したら、手を振り上げた瞬間に俺が吹っ飛んでますよね!

美姫 「酷い、CMの間に虐められる私、よよよ……」

うわーい、何て真実味のない嘘だ。
絶対に誰も信じないと思うぞ。

美姫 「……だったら、もう関係ないわ!」

ぐぎゃぁぁぁっ! しまった、まだ足離してなかったのか!
って、やめ、やめてー。本当にそれ以上は曲がらないから!

美姫 「折れちゃえ♪」

なに、可愛く物騒な事を言ってるかな!
と言うか、既に当初の目的からずれてるから! いつの間にか折る事が目的になってるし!

美姫 「とと、そうだったわね。あまりにも折れそうだったから、つい」

ついでお前は人の足を折るのかよ!

美姫 「うん」

って、あっさりと肯定!?

美姫 「勿論、アンタ限定だけどね」

嬉しくない限定だな、おい。

美姫 「って、それはそうと時間がなくなっているわよ」

そりゃあ、CM終わったのに気付かずに人の足を折ろうとしていればな。

美姫 「そんな事してないじゃない。何の事かしら?」

いやいや、数分所か一分も前の事じゃないよね。

美姫 「酷い、人が親切にマッサージをしてあげたのに」

あんなマッサージは絶対にないよね。

美姫 「でも、よく見るマッサージって皆痛がっているわよ」

いやいや、だからって痛い=マッサージじゃないから!
あれはちゃんとツボとかを押しているはずだ。

美姫 「じゃあ、私もツボを押せば」

お前の場合、押しちゃいけないツボを押しそうだからな。
と言うか、何でやる事を前提に言ってるかな?

美姫 「良いじゃない。折角してあげるって言ってるのに」

激しく遠慮させてください。

美姫 「むー」

ほらほら、本当に時間がないんだから拗ねるんじゃない。

美姫 「仕方ないわね。メイドマッサージは諦めるわ」

その話を詳しく聞こうじゃないか。

美姫 「ふふふ、なら後でゆっくりと教えてあげるわ」

そうか、そうか。なら、とりあえずは締めるとしよう。

美姫 「そうね、そうしましょう。……くすくす。とりあえず、今日は手足を徹底的に……」

それじゃあ、今週はこの辺で。

美姫 「また来週〜」







で、メイド服は?

美姫 「まあまあ、慌てない、慌てない」

あ、あのー、どうして剣の手入れをしているのかな?

美姫 「気にしない、気にしない」

どうして、俺はいつの間にか縛られているんでしょうか?

美姫 「気にしない、気にしない」

ああー、ちくしょう、やっぱりかよ!
騙された!

美姫 「いやー、本当にアンタってバカよね」

だ、誰か、誰か助け……ふごふごふご!

美姫 「口が塞がれても気にしない、気にしない」


11月12日(金)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、日中はそこそこ暖かかった、とお送り中!>



そろそろHPのページを整理しようかなと思っているんだが。

美姫 「唐突ね」

いや、今SSに関してはそれぞれ部屋が二つあるだろう。

美姫 「全部表示しているパターンと、分けているパターンよね」

ああ。それを一つにしちゃおうかなと。

美姫 「どっちが良いのかしらね」

とりあえず、一つにするなら分けているパターンを残す形になるけれどな。

美姫 「まあ、もう少しこのままでも良いんじゃないかとも思うけれどね」

うーん、どうなんだろうな。
まあ、暫くはこのままで行くか。

美姫 「って、あっさりと撤回したわね」

あはは〜。まあまあ。ちょっと考えていただけだしな。
こう言いつつも不意に変わっていたりしてな。

美姫 「あり得そうよね、アンタの場合」

流石に今日明日に変更はないがな。

美姫 「あったら驚くわよ。さて、無駄話はこの辺にして」

ですね。

美姫 「それじゃあ、今週もCMいってみよ〜」







「そこから先は全くの未知の世界。
 行ったは良いけれど、戻って来れると言う保証は一切なし。
 まさに一方通行の片道切符。それでも君は行くんじゃね」

国守山の山頂付近、これから夜を迎えるという事もあるが、元より私有地であるここには関係者以外は立ち入れない。
その地にありて行われたのは神咲の秘術。
それにより生み出されたのは波一つない水面のように澄んだ高さ二メートル、横幅一メートルばかりの楕円形。
厚さは殆どなく、横から見れば紙一枚が宙にあるように見えなくもないといったもの。
神咲の秘術と言ったが、正確には元よりあった残滓を再構築し、神咲の術にて少しに時間だけ補強したもの。
故に元々の効果がきちんと発揮されるのかは不明で、まさに出たとこ勝負である。
しかも、先の説明通りにこれを潜れば戻ってこれると言う保証もない。
それでも恭也は行く事を止める訳にはいかなかった。
大事な家族の一人が不意に姿を消したのが数日前。
始めは悪戯かと思われたが、半日経っても連絡がないとなると悪戯ではないと誰もが思った。
悪戯で周囲を驚かせる事はあるものの、心配させる事はないというのが共通した認識だったからだ。
失踪した人物はフィアッセ・クリステラ。
幸いな事は世界を回るコンサートを終え、海鳴へと顔を出した時だった事だろうか。
今では世界中の多くの人に知られる存在となったフィアッセが失踪などと知られれば、マスコミが騒ぎ出しかねない。
こうして、恭也たちが知り合いの力を借りて探すこと二日。
もたらされた情報は少々信じ難い事であった。
即ち、こことは異なる世界へと飛ばされた。
一笑するような戯言とも取れるような話だが、恭也を始め全ての者がすんなりとその言葉を信じた。
その手の事を幾つか経験したという事と、それを口にしたのが神咲薫と綺堂さくらの二人という事で。
そこで更に詳しく調べた結果、事故が故意かは分からずともフィアッセが巻き込まれたらしい現象の元を見つけ、
僅かに残った残滓とも呼ぶべき物をどうにか再構築した結果が今、恭也の目の前にあった。

「何度も注意したけれども、その先は本当に未知の世界。
 分かっているのは、この世界と似たような環境で人が普通に生きていく事は可能という事だけ。
 文明や進化なども含め、他の事は何も分かっとらん。くれぐれも気を付けて」

薫の言葉に頷くと、恭也は装備を多めに淹れたバックを手に持つ。
その隣に並ぶ美由希もそれよりも少しばかり大きめのバックを手にする。
フィアッセの救出へと向かうこの二人を、桃子たちは不安を押し殺して見送る。

「恭也、美由希、ちゃんとフィアッセを見つけて帰って来るのよ」

「ああ、分かっている」

「すぐに見つけて帰って来るから」

桃子の言葉に二人揃って返し、目の前の楕円形の入り口へと踏み出す。
その先に待つ未知の世界へ向かって。
二人が踏み出し、その姿が消えたと同時にその場に強大な力の渦が巻き起こる。
それに真っ先に反応したのは薫とさくら。続けて忍と那美が反応する。
始めはきょとんとしていた他の面々も、不意に感じられる圧力に体を強張らせる。

「この巨大な力は何?」

声を上擦らせる那美と無言で高町家の前に立つ忍とノエル。
一方、このような状況下で最も経験を持っているであろう薫とさくらは何故か呆然として立ち尽くす。

「この力をうちは前にどこかで……」

「はい、私も何故か一度会った事があるような気がします」

二人してそんな事を口にするが、あまりにも力の大きさにすぐに気を引き締める。

「とりあえず、皆さんは急いで山を降りてください。
 これだけの力なら、きっと耕介さんも気付いているはずです」

「私たちはその間、ここでこの力の主を食い止めるわよ、忍」

鋭く周囲を見渡しながら、薫とさくらが構えたその時、力の流れが一気に変わる。
二人が動くよりも早く、力は今しがた恭也たちが消えた扉の中へと飛び込んで行き、扉が消え去る。
後にはさっきまでの威圧感が嘘だったかのような静寂さが残される。

「……何、今のは」

「……って、恭也たち大丈夫なの!?」

呆然としていた忍が那美の言葉に我に返ってその危険性を口にする。
一方、薫とさくらはすれ違った力と共に一緒に飛び込んだ優しい気配を感じ取っていた。

「季節外れの雪……」

「神咲先輩も、ですか」

二人して脳裏に僅かばかり浮かんだ情景に首を傾げる。
が、もう一つの気配を思い出すと、多分大丈夫だろうとやや楽観的な考えが浮かんでくるのであった。
どちらにせよ、この場に居る者たちにはもうどうしようもないのは変わらない。
ならば、少しでも安心させてあげる方が良いだろうと、二人は心配ない事を教えるのだった。



「……さて、美由希」

「あまり良い予感はしないけれど、何かな、恭ちゃん」

二人して息を潜め、言葉を交わす。
少し前に異世界と注意された世界へと来たばかりの二人には、ここがどのような世界なのかは分からない。
分からないが、今の現状だけは嫌でも理解できた。
ゆっくりと恭也は隠れていた岩陰から顔を出し、まだ自分たちを探しているらしいソレを目にする。

「俺たちの目的はフィアッセを見つけ出して無事に連れて帰る事だな」

「うん、そうだよ。何を今更」

「だとすれば、ここで取れる選択肢は、一つ、お前が囮となって俺が逃げる。
 二つ、お前が注意を引いている間に俺がこの場を去る。
 三つ、お前が食べられている間に俺がフィアッセを探す。
 このどれかだと思うが、どれが良い。選ばせてやろう」

「どれも嫌だよ!」

恭也の言葉に思わず突っ込むも、ちゃんと声は抑えている。
岩陰に隠れたままでも、ぐるるという唸り声は聞こえてくる。
見たくないと思いつつも、恐怖からか思わず岩陰から顔を出して今どこに居るのかと見ようとすれば、

「…………」

「ぐるるるぅぅぅ」

「……あ、あははは、どうもこんにちは。本日はお日柄も良く……」

ばっちりとソレと目が合い、美由希は場違いな挨拶を始める。
それを隣で感じ取り、頭を抱えたくなるのを堪えて美由希の腕を掴むと岩陰から走り出す恭也。

「バカか、お前は」

「そんな事を言われても! 目が合って混乱したんだもの」

「くっ、こうなったら本当にあの案を実行するしか」

「や、やめてよ!」

「流石に冗談に決まっているだろう。とりあえず、逃げるぞ。
 今の段階でアレに刀が通じるとも思えん」

言って逃げる恭也に並走する美由希も全くの同意見だった。
見るからに固そうな鱗。その鋭い爪だけで自分の体の半分はあるだろうと思わせる大きな手。
その手に見合った巨体に怖いほど縦に瞳孔の開いた瞳。
突き出た顎はワニを彷彿させながらも、その大きさ牙の大きさなどは桁違いである。
まさか話の中にしか出て来ないような想像上の生物に出会えるとは。
これが襲ってこないのなら、美由希もしみじみと異世界だなと感心する所なのだが、
如何せん、今はその生物に自分たちは食料と見なされている最中なのだ。
そんな暢気な考えなど出来る筈もない。

「潜り抜けた先が行き成りドラゴンの足元ってどう思う、恭ちゃん?」

叫びつつ気を紛らわせるためにも尋ねてみれば、恭也もまたそれに返してくれる。

「理不尽だな。これも全てお前の日頃の行いだ」

「寧ろ、私じゃなくて自分だと思わないの!?」

「思わん!」

そんなやり取りをしつつ斜面を登っていく。
舗装もされていない山肌剥き出しの道。隠れるような木々もなく、片側は見事な崖となっている。

「何処まで逃げれば良いのかな?」

「とりあえず、向こうに見える森か林か分からんが、そこまで走れ!」

恭也が指差すのは二人の前方に見えてきた緑の群れである。
あそこならば自然の障害物も増え、振り切るなり隠れるなり出来易くなる。
問題は、そこまで逃げ切れるかだが。
ふと後ろを振り返れば、結構追いついて来ている。

「でかい図体のくせに、思った以上に早いよ!」

「一歩のリーチが違うと言うのもあるが……」

二人して不満を口にしつつ、懸命に足を動かす。
やがて、ギリギリの所で森へと辿り着いた恭也たちは、木を利用してどうにかドラゴンと距離を開ける。
とは言え、ドラゴンの方はあまり気にせずに真っ直ぐに突っ込んでくるのでそれなりに苦労はしたが。

「…………近くには居ないみたいだな」

「よ、良かった〜」

木の根元に腰を下ろし、美由希は本当に安堵した表情を見せる。
その隣に腰を下ろした恭也もまた、あまり変化は見えないが安堵する。

「それにしても、ここはどんな世界なんだ」

「せめて人が居てくれると良いんだけれどね」

二人して前途多難な事を痛感しつつ、フィアッセの心配をするのであった。
更なる災難が、同じ世界から二人を追ってやって来て、すぐそこまで迫っているなど思いもせずに。



フィアッセを探して異世界に







最近、肩が痛いんだよ。

美姫 「五十肩ね」

そうだったのか!?

美姫 「で、実際はどうなの?」

いや、お前が言ったんだよな?
それと痛いと言うだけで何とかはないから。肩こりかもしれん。

美姫 「こるような事してないじゃない」

失礼な。こうごろごろしている内に肩に負担が――ぶべらっ!

美姫 「世間の肩こりしている人に謝れ」

い、いや、冗談だろう。

美姫 「それじゃあ、真面目に聞いた私に謝れ」

何故に……。

美姫 「ああ、もう時間が無駄だったわ」

そこまで言わなくても良いじゃないか。
実際、肩が気持ち悪いと感じているんだから。

美姫 「はいはい。あ、それはそうと」

うわー、あからさまに話題を変えられた。まあ、良いけれどな。
で、何だ。

美姫 「はぁぁっ!」

ぶべらっ! な、なぜ……?

美姫 「わざと変えたんじゃないわよ!」

そ、そうでしたか。と言うか、何も殴らんでも。

美姫 「ったく、それじゃあ言うわよ」

うぅぅ、どうぞ。

美姫 「うん、どうも時間がないみたいよ」

…………えー、それを言うために話を遮られた上に殴られたのか、俺!?

美姫 「そうよ。文句あるのなら、もう一発ぐらいやっておこうかしら」

何もないです、全くない!

美姫 「そう、良かったわ。それじゃあ、締めてね」

うぅぅ、分かりました。
それじゃあ、今週はこの辺で。

美姫 「また来週〜」


11月5日(金)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、秋も深まる今日この頃、とお届け中!>



紅葉所か、所によっては雪さえ降ったという。

美姫 「もう秋なのか冬なのか」

喜ばしい事ではあるがな。

美姫 「でも、私この間飛んでいる蚊を見たわよ」

頑張っているもんだな。で、思わず見逃してやったのか?

美姫 「ううん、こう近づいてきた所をバンと」

……だよね。お前はそういう奴だよ。

美姫 「何よ、幾ら寒くなってもまだ頑張っているとは言え、刺されたら痒くなるのよ」

へー。

美姫 「むか。だったら、アンタは大人しく血を吸わせてあげるっての!?」

いやいや、夏の眠れぬ夜の恨み、とばかりに――ぶべらっ!

美姫 「私と同じ事をしているじゃないのよ!」

ですよねー。

美姫 「ったく、本当に疲れるわ」

さて、早速だが今日は元から時間も少ないしさっさと行くぞ。

美姫 「分かってるわよ。という訳で、CMで〜す」







ゆっくりと意識が浮上していく感覚が、これから目覚めるのだと恭也へと教える。
俄かに取り戻しつつある意識の中、殆ど無意識に自身の体をチェックして異常を確認する。
続けて武装の確認を動かない体ながらも感触や重さから計る。
が、これはまだどうも上手くいかずに後に回す。
次に周囲の気配を探るべく感覚を鋭くする。
それらを数秒で終える頃には意識もはっきりと覚醒し、恭也は静かに目を開ける。
最初に飛び込んできたのは天井で、作りとしては少し昔の和風建築の様相が見出せる。
どうやら地面に倒れているのではなく、どこかに寝かされているようできちんと布団の中にいた。
顔だけを動かして周囲を見渡せば、襖に障子の張られた引き戸、畳の上に敷かれた布団と和室の姿を見せる。
体を起こして周囲に気配がない事を確かめて体を見下ろせば、自分の最後の記憶にある服装とは違う格好をしている。
当然ながら背中に隠すように背負っていた二振りの小太刀を始め、隠しポケットなどに忍ばせておいた暗器の類もない。

「全ての武装を解除されたという事か」

誰かは知らないが当然の事であろう。
見ず知らずの行き倒れを見つけ、手を差し伸べるような者だとしても武装をそのままにはしまい。
寧ろ、そんな武装を見て尚、こうして助けてくれた事に感謝するぐらいである。
そんな事を考え、恭也はここがどこなのかという疑問を今更ながらに思い出す。
数日前、どれだけ気を失っていたのかは分からないが、仮に一日程度だとしたなら四日前の事になる。
知り合いの警察関係者、さざなみ寮に居る二人の魔王の片割れから連絡が入ったのはその日の二日前。
依頼の内容自体は護衛と言うある程度、経験したものであった。
が、今回は少しだけ変わっていて、恭也以外にも依頼された人物が居た。
その人物は恭也もよく知る神咲那美その人で、恭也は思わず首を傾げてしまった程である。
退魔を生業としている家の者とは言え、護衛は素人である。
そんな那美がリスティから依頼されたというのだから。
だが考えればすぐに分かる。那美に依頼するという事は今度の仕事は退魔絡みであると。
そうなると、護衛対象は那美になるのだろう。
そう結論を出したのだが、これもまた簡単にリスティによって否定された。
どうやら今回の護衛は少々ややこしい事態になっているらしく、襲撃者が霊かもしれないとの事であった。
つまり、人であったのなら恭也が、霊障であったのなら那美がという事だ。

「確か依頼を引き受けて、人里離れた山の中まで行ったんだったな」

多少あやふやになりそうだった記憶を掘り起こし、恭也は口にしながら自分自身整理を行う。
昔は信仰のあった神社が建っていたとすら言われる山の中にある屋敷へと赴き、仕事に就いた所までは問題ない。
一日目は何事もなく過ぎ、二日目の夕刻に事件が起こった。
結果として、今回は霊障であると判断されて那美が無事にそれを祓ったのも覚えている。
問題はここからだ。念の為にと周囲を探索した恭也の感覚に何ともいえない引っ掛かりを覚え、そこへと向かった。
そこで眩暈のようなものを感じ足がふらついた所で、またしても可笑しな感覚を覚え、咄嗟に小太刀を振り抜いた。
その後、激しい眩暈を感じて地面に手を着き暫くして、眩暈が治まったと顔を上げたら、
さっきまで居た山の中ではなく竹林の中に居たという訳である。
そこからずっと歩き続け、流石に空腹と精神的肉体的両方の疲労から倒れたのである。

「で、気付いたらここに居たと」

訳の分からない事に巻き込まれるのには慣れたと冷静に現状を把握し、
またそう出来てしまう己の境遇に思わず溜め息の一つも吐きたくなる。
が、それを飲み込んでこちらへと近付いてくる気配を感じて大人しく待つ。
程なくして控え目に声が掛けられて扉が開けられると、入ってきた主は恭也が目覚めている事に多少驚きつつ、
さして問題ないとばかりに恭也の傍に座ると、その腕を取り脈を取る。

「大丈夫のようね。まあ、単なる疲労だったみたいだし後は食べる物を食べれば問題ない」

「そうですか、ありがとうございます。それで、行き成りで申し訳ないのですが、ここは何処でしょうか?」

恭也に問い掛けられた長い髪を一つに纏めてみつあみにした女性は恭也を一瞬だけ見詰め、

「まさか迷子だったとはね。ここは迷いの竹林とも呼ばれているわね。
 迷子なら里まで戻れるかどうかも分からないだろうから、後で連れて行ってあげるわ。
 偶々、今日は薬を販売しに行く予定だったから、話はしておく」

助かりますと頭を下げつつ、恭也は里というのは何なのかと尋ねる。

「…………はぁ、どうやら姫の予想が正解だったなんて。どうやら、あなたは外の人間のようね」

「外、と言うのは?」

恭也の言葉にどうしたものかと考えたのも一瞬で、女性はここが何処なのか説明してくれた。
幻想郷と呼ばれる人と妖怪が生存している世界だと。

「では、俺が戻る方法は」

「さあ? それよりも、どうやってここに来たのかを私が知りたいわ。
 また何かの異変が起こる前触れでなければ良いけれど」

恭也としても何故ここに居ると聞かれても答える事が出来ない。
気付けばここに居たとしか言えないのだから。
本来なら特別に里まで案内してやってお終いであったのに面倒な事にならなければ良いなと女性はこっそりと思う。
が、現実とは大抵がそういった理想を裏切るように出来ているらしく、
今の外の事に興味を抱いてしまった一人の少女により、恭也の滞在が許される事となったのである。
恭也としてはその気紛れに救われ事になったのだから、その少女、輝夜と名乗った姫には感謝するしかない。
一方、恭也と話をしていた女性、永琳は面倒事が起こらないことを祈りつつも姫の決定には従うしかなかった。



「見た事もない盆栽だな」

「これは優曇華と言って月の都にしかないのよ。だから恭也が知らなくても仕方ないわ」

帰る手段を探す傍ら、話し相手や、

「鈴仙さん、こちらは全て売れましたが」

「こっちも今、終わりました。師匠の薬はこれで完売ですね。それじゃあ、帰りましょう」

手伝いなどをしていく内に永遠亭の者たちと少しずつ親しくなっていく恭也。

「ちょっと気づき難かったけれど、異変が起きているようね」

が、それも束の間の事。妖怪の賢者が小さな異変に気付き、事態は動き出す事となる。

「直接の原因は違うけれど、多少はその人間も今回の異変に関わっているみたいね。
 目覚めてしまった能力、あらゆるものを斬る程度の能力の所為で今回の異変は起こり、
 そして幻想郷と外との境を切ってしまった事で、こちらに来てしまったのでしょう」

原因の一端が自身にあり、目覚めた能力が少しは役に立つかもと言われ、恭也は事件解決に手を貸す事に。
果たして、無事に事件を終結に導く事ができるのか。

東方Xとらハ 〜小さな異変〜







うーん、本当に日の落ちるのが早くなったものだ。

美姫 「しみじみしている所を悪いけれど、もう時間ないわよ」

おおう、早いな、おい。

美姫 「初めから言ってたじゃない」

いや、分かっていたんだがな。こう実感するのと……。

美姫 「はいはい、御託は良いからさっさと締めなさい」

へいへい。
それじゃあ、今週はこの辺で。

美姫 「また来週〜」










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