戯言/雑記




2011年1月〜2月

2月18日(金)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、後二回、とお届け中!>



あー、もう既に花粉症の症状が出始めてる。

美姫 「今年は下手すれば十倍だって前から言われているわよね」

うぅぅ、想像するだけで恐ろしい。
今週所か、先週辺りから既にそれらしき前兆は出ていたというのに。

美姫 「アンタの場合、杉以外にもあるからね」

冬以外は駄目です、はい。
という訳で、後は任せた。

美姫 「あら、本当に良いの? なら無茶苦茶な宣言を」

やっぱりやめて!
うぅぅ、目と鼻だけじゃなく再びPCも可笑しいのに。

美姫 「やけに処理が遅いのよね」

一時的なものだと信じたい。

美姫 「昨年と同じ感じだし、再発かしら」

なら保障期間内だし、すぐに修理に持ち込むさ。
しかし、画面をスクロールさせてもすぐに動かず、こうゆらゆら〜と動くというのもやり辛いな。

美姫 「やっぱり既に故障じゃないの?」

うぅぅ、怖いな。後で再起動してみよう。

美姫 「で、そのまま起動しなかったりしてね」

いや、もう本当に勘弁してください。
まあ、何はともあれ今週も頑張っていきましょう。

美姫 「そうね。それじゃあ、早速だけれどCMよ〜」







唐突に、そう本当に唐突に目が覚める。
今まで眠っていたという感覚もなく、不意に意識が浮上したかのごとく恭也は目を覚ました。
体に可笑しな所も感じられず、五感もいつものように働いている。
が、目覚め方があまりにも不自然であったと感じたのだが、それも体を確認する内に消えてしまう。
考えても分からない、それ以前にその違和感さえ既に感じなくなったので改めて恭也は周囲を見る余裕を取り戻す。
とは言え、周囲には何もなく強いて言うのならば光のみだろうか。
何せ、見渡す限り、足元さえも白一色の世界なのだ。
目印となるものも当然なく、遙か彼方にあるはずの空と陸との境界線さえも同色で塗りつぶされて定かではない。
こうなってくると、自分が立っているのか、それとも寝ているのかさえも怪しくなってくる。
唯一、足裏に感じる地を踏みしめる感覚が辛うじて立っている状態である事を教えてくれる。
とは言え、ここはどこなのかという疑問が氷解するはずもなく、恭也はどうするか悩み出す。
そこで先程の違和感を思い出そうとして、それとは別に違和感を抱く。
もう一度、自分の掌を見る。ごつごつとした固い感触、鍛え上げられた四肢。
実戦を掻い潜った事で更に研ぎ澄まされた感覚。何処にも以上はないはず。
古傷であった右膝も手術により完治し、右膝を庇う動きも修正済み。
何処にも可笑しな所はない。にも関わらず、恭也は違和感を抱いていた。
軽く体を動かし、思うとおりに動くか確認するも、脚の先から指の先に至るまで思うように制御できる。
それこそ細かい動きまでも精密に思い描くように。
けれども違和感は消える事無く頭の中で燻りを見せる。
何に感じているのか改めて思考しようとする恭也の目の前に、不意に一人の女性が姿を現す。

「ようやく目を覚ましたみたいね」

一種厳かな雰囲気を携えた女性であったが、口を開いて言葉を発するなりその雰囲気は消し飛ぶ。
何処がどうという訳ではないのだが、恭也は確かにそう感じた。
とは言え、初対面の人を相手にそんな事を口にするはずもなく、恭也はとりあえず無難に挨拶しておく。

「こんにちは。所で、ここは一体……」

「うん、その事も踏まえて今から説明するからよく聞いてね」

「はぁ」

「うーん、ここが何処かという前に、簡単に告げると貴方は死にました」

「はぁ…………はい?」

あまりにも軽い口調で言われた為にそのまま流す所であったが、意味を理解して恭也は思わず素っ頓狂な声を上げる。

「ああ、その反応だと予想したように覚えてなかったみたいね」

「はい、いえ、ちょっと待ってください。……感じている違和感はそこか」

恭也はようやく違和感の正体に気付く。
自身の体が思うよりも軽く動くという違和感である。
年を経てどうしても落ちる体力や筋力。それをカバーする為に更なる技術を身に付けてきた。
が、さっきから体を動かせば、思うよりも早く体が動くのだ。
思考や技術は年経て会得したものだが、体が明らかに若い時のもの。
それが差異となり違和感を感じたのだろう。
そこに気付くと、徐々に自分の現状が可笑しい事に気付く。
先程も述べたように年を経たにしては、体が若い頃のもの。
恐らくは二十台前半といった所だ。しかし、死んだのならそれもあり得るのかもしれない。
あっさりとそう納得できる程に落ち着いていたし、何よりも生前の経験が大きい。
しかし、そうなると次に浮かぶ疑念がある。

「つまり、俺は浮遊霊か何かになってさ迷っているという事ですか。
 そして、貴女は退魔士の方とか」

「あー、貴方の経験からすれば、そういう考え方もあるわね確かに。
 でも残念。私は神様にお仕えする天使よ」

「そうですか。で、その天使さんか何の用でしょうか。
 地獄への案内とか? てっきり鬼とかがするのかと思いましたが、最近は何処も人手不足なんですね」

「人手不足は確かだけれど、違うわよ。
 まあ、貴方の業を考えれば地獄行きもあるかもしれないけれどね。
 業を背負って徳を積んでいるみたいだし、その辺りの判断は閻魔様ね」

「はぁ、つまりは閻魔様の所までの道先案内人ですか?」

言っている事はよくは分からないが、恭也は死んだという事を受け入れていた。
というよりも思い出したという方が正しいのかもしれないが。
しかし、畳の上で天寿をまっとうできるとは、と思わず感謝する恭也に天使はそれも違うと否定する。

「私がここに来たのは貴方の転生に関しての説明をするためよ」

「転生ですか? しかし、天使という事はキリストか何かなのでは?
 転生は確か仏教とか……。いや、俺はキリスト教じゃないから良いのか?
 しかし、それを言ったら無神教とも言えるし……」

「はいはい、難しく考えない。そもそも宗教なんて人間が作ったものでしょう」

「あちこちからクレームのきそうな発言ですね」

「確かにね。なら今のは聞かなかった事にして。
 とにかく、今から貴方に第二の人生をプレゼントします、という事よ」

「いや、うちはそういう勧誘は間に合ってますので」

「勧誘じゃないわよ」

思わず口をついて出た言葉に律儀にも突っ込んでくれる天使。
やはり天使というだけあって良い人(?)だと一人頷きつつも、当然ながらの疑問が出てくる。

「何故、そんな事を?」

「あー、まあ細かい事は良いじゃない。
 転生できるのよ。しかも、今なら記憶を持ったままで」

「それは良い事なんでしょうか? 寧ろ辛いのでは?」

「しかもしかも、特典として違う世界へと生まれ変われちゃいます」

「余計に記憶いらなくないですか!?」

思わず勢い良く突っ込んでしまうも、そこは許して欲しいと自分に言い訳する恭也。
が、突っ込まれた方は特に気にするでもなく、若干引き攣った感のある笑みを浮かべて、

「えっと、じゃあおまけに色んな能力も付加しちゃうよ。
 死が見える目とか、どうどう?」

「いえ、ですから、というか転生するのは決定事項になってませんか?」

「あ、あははは、気付いた?」

既に当初感じた威厳や荘厳さも消え去り、恭也は長年の悪友が何か仕出かした時に向けるかのような視線を飛ばす。
態度ももう良いかといった感じで、段々と乱雑になりつつもどうにか口調だけは心掛け、

「いやでも気付きますよ。それでもどうしてという疑問は残りますが」

「り、理由は必要かな?」

「当事者ですよね、俺? なら聞いておきたいですね」

「聞いても怒らない?」

「怒るような事なんですか?」

「…………えへへへ」

「笑って誤魔化さないでください!」

最早、敬語もいらないのではと思い始める恭也に対し、天使はやや真剣な表情を形作ると、

「天使にも階級ってものがあるのよ。単純に能力だけでランクされる訳じゃないんだけれどね。
 兎に角、私も頑張ってようやく死者と生者の狭間の世界を自由に行き来できるまでになったのよ。
 次は死神への昇格か、もしくは――」

「昇格って、死神は地位が高いんですか? 以前に、死神も天使なんですか?」

「当たり前でしょう。人の死を看取り、宣告する天使よ。
 死後、人の魂がさ迷わずにあの世にいけるのは死神が居るからなんだから。
 まあ死神に看取られるのは幸福な場合だけれどね。突然の事故なんかだと死神に看取られない事もあるから。
 そういった魂の中でも現世に強い想いがあると霊になるのよね。って、今はそんな話は良いわね。
 兎も角、死神他にも幾つか候補があってね。
 体験って訳じゃないけれど、死神の先輩の付き添いって形で現世に行ったのよ」

ああ、つまりはその死神が自分を看取ったのかと思いつつ、完全に口調まで砕けてきた天使を見る。
話に聞く限り、この天使もそこそこの位だという事なのだが。
初めに言われれば信じたかもしれないと思いつつ、恭也は黙っている事にした。

「落ちこぼれと言われた私が皆を見返すチャンスとばかりに張り切ったのが失敗だったわ」

前言――いや口にはしていないが――撤回である。
嫌な予感しかしないのだが、理由を知るためにも黙って続きに耳を傾ける。

「先輩に無断で持ち出した死神の鎌がまさかあんなに重いなんて思わなかったのよ。
 しかも、途中で疲れた鎌を落とすなんて」

「おい、ちょっと待て」

あまりにも嫌な予感と不吉な単語に恭也はついに敬語さえやめて突っ込んでしまう。
が、天使の方は気付かず、寧ろ話す内にその時の事を思い出したのか、
いかにも自分は不幸だと言わんばかりに続ける。

「落ちた先に貴方がいるなんてね。しかも、綺麗に魂と肉体を繋ぐ糸を切断しちゃうなんて」

「お前の所為か!?」

「うー、そうと言えなくもないけれど実際には鎌の所為だよ」

「いや違うから、それは」

「だって仕方なかったのよ。重かったの。それでも一生懸命に落とさないように頑張ったんだよ。
 やれば出来る子だって言われているから十秒ほど耐えたのよ」

「たったの十秒!? しかも、それは完全にやらない子の言い訳だし」

「十秒粘った所為で場所も移動していて、それでこんな事になった事を考えると頑張らない方が良かったかもね。
 って、怖い顔しないで。仕方なかったの、本当に。
 だって私ってば、人にドジだドジだって言われているでしょう。
 そんな事はないと思ってきたんだけれど、まさか十秒も耐えている間にくしゃみしたくなるなんて思わないよね」

そんな事は知らないし、くしゃみとドジがどう繋がると言いたかったが恭也はぐっと堪える。
じゃないと、間違いなく怒鳴りそうであったからだが。

「それで?」

「くしゃみする時は口を手で押さえなさいって言われるじゃない。
 だから手で押さえようとしたんだけれど、重たい鎌があったからぽいっと」

「耐え切れず放したとか以前に、くしゃみの為に自分から放り投げたのか!?」

「わざとじゃないのに。必死で説明しても、先輩や神様からはお説教くらうし。
 酷いと思わない? 私は被害者なのよ」

「いや、被害者はどう見ても俺ですよね? っというか、もしかして俺はまだ寿命じゃなかった?」

「あっ! 気付かれちゃった、どうしよう!」

いや、もう誰かこいつに突っ込んでくれと投げやり且つ、敬意すら失せた気持ちで恭也は天使を見遣り、
やがて既にどうしようもないと肩を落とす。

「えっと、その辺りの事は置いておきましょう」

勝手に置いておくなと言いたい恭也ではあるが、既に諦めてさっさと話を進める事にする。

「それで、生き返らせる事は流石に神様でも出来ないから第二の人生をプレゼントという事になりました。
 でも生前の記憶がないままだとそれを意識できないので、記憶を持ったままという形になったのです」

「はぁ、分かりました。なら、もうそっとしておいてください。
 お願いですから、何もしないでください。転生もいりません」

疲れきった表情で告げる恭也に、天使はそれだと自分が怒られると強引に転生させようとする。
正直、そんな事知るかといった心境の恭也に気付き、天使は転生を受け入れたら特典を付けると言いだす。

「貴方の家族や親しい人の死後、先に逝った家族も含め天国行きという事でどうでしょうか?
 無事に二度目の人生を終えれば、また会えるようになりますよ?」

それは不正ではないのかと思わなくはなかったが、その条件にはちょっと心が動く。
とは言え、殆どは何もせずとも天国に行きそうな気がするが。

「今、心が動きましたね。分かります、分かります。それでは転生は了承してもらったという事で」

「いや、してないですから」

「えー、我侭ですね。何が望みなんですか。ま、まさか私ですか!?
 天使を襲うなんて、何と恐れ多い。流石は神さえ切り捨てると言われる剣士。
 しかし、六十を過ぎても衰えぬその性欲には感服です。
 まあ、今は二十歳ちょいになっている事を考えれば凄くもないかもですが。
 何よりも、この私の美貌が怖い」

「……とりあえず、天国にせよ地獄にせよ閻魔様に会わなければいけないんだな。
 場所はこっちか?」

天使の言葉を無視して恭也は勝手に歩き出す。
どうか閻魔様はまともな人(?)であって欲しいと切に願いながら。

「って、お願いですからいかないでください〜。
 今ならチートと言われる能力も付けますから〜」

「は、離して下さい。というか、人の足を掴まないでください。
 俺はあの世でのんびりと過ごすんです」

「駄目です、それだけは駄目です〜。断られたら、私は降格の上に左遷されてしまうんです〜」

あまりにも必死に泣きながらしがみ付いてくる天使に根負けし、そもそも行き先も分からないので仕方なく、
恭也はその提案を本当に嫌々ながらも引き受ける。

「じゃあ、どこの世界に行きますか〜。破滅と救世主が戦争している世界が良いですかね〜。
 それとも剣戟や魔法が飛び交う世界にしますか?
 悪魔や魔神といったものが居る世界というのも楽しいかもしれませんよ」

「何故、どれも物騒な感じの世界なんですか」

「え? だって剣を振るえる世界の方が良いでしょう。
 それで俺よりも強い奴に会いに行くとか」

「……平穏な世界を望みます」

「それじゃあ、面白くないじゃないですか」

「貴女を楽しませるつもりはありませんから」

「そこを何とか」

「なりません」

「もう一声」

「もう一声も何も、最初から何も言ってません」

「大丈夫、そう簡単に死なないように体は丈夫にしてあげるから」

「そういうのもいりませんから」

恭也のかたくなな態度に頬を膨らませ、天使はいつの間にか取り出した本をペラペラと捲る。

「じゃあ、どんな世界が良いんですか」

「平和で平穏な世界が良いですね。縁側で日永一日、お茶を啜りながら猫を愛でる日々を。
 付加してくれる能力には、二度とドジな天使と遭遇しないというのをお願いします。」

「むー、分かりました。能力及び世界は私にお任せコースですね」

「誰も言ってません!」

「もうこっちでばばばんと決めちゃいます!」

「って、勝手に決めるな! 要望は言っただろう!」

叫ぶ恭也を無視し、天使はこれまたいつの間にか取り出したキーボードのような物を叩く。
良く見れば、それは空中に描かれた物であったのだが恭也にとってはどうでも良い事である。
不機嫌な天使の手を止めるべく襲い掛かるも、相手も天使と言うだけの事はある。
恭也の腕を掻い潜り、背後へと回るべく体を屈め、そこで見事に転ぶ。

「わぷっ!」

そして、転んだ先には恭也の足があり、恭也をも巻き込んで倒れ込む。

「うぎゅ〜……#!$%!! は、はな、はなれ、て、てててて手を!」

慌てふためく天使の声に、ふらつく頭を振りながら手を付いて体を起こそうとして、
その手が柔らかい物を掴んでいる事に気付く。
見れば、転んだ拍子にどうやったのか仰向けになった天使の胸を鷲掴みにしており、天使の方も混乱していた。

「す、すまない、わざとでは」

「あうあう、だ、誰にもまだ触られた事なかったのに。
 う、うぅぅ……」

「い、いやこれは事故だ。そもそも最初に転んだの貴女……」

「えっちー!」

恭也の言い分も尤もだが、得てしてこういう場合男性の方が立場は悪くなる。
故に恭也も強くは出れず、結果としてありがたくない言葉を貰う。
同時に天使は上半身を起こして恭也の頬を引っ叩き、恭也も素直にこれを受ける。
これで終われば気まずいながらも何とかなったのだが、起きる拍子に着いた天使の手の下には、
先程まで操作していたキーボードが存在しており、恭也を叩いた衝撃でか、ピッと音がなる。

「って、あれ? あれ?」

「あの、もしかして……」

「あ、あははは、やっちゃった。ごめんね。
 本当なら行く世界の事や能力に関して色々と説明しないといけないんだけれど時間ないわ」

「ごめんって、そんな軽いノリで謝られても」

言っている間にも恭也の視界は白く染まっていき、やがて意識さえも遠ざかっていく。
声に出ないと分かっていても、恭也は思わず天使に文句を言う。

「……え、か、神様。ええ、ちゃんと高町恭也の希望通りに……って、見てたんですか!?
 え、えぇぇ、ご、ごめんなさい、それだけは許してください。
 えぇぇ! 許す変りに私も後を追って説明するんですか!? そ、それってやっぱり左遷!?
 も、戻ってこれるんですか? 説明が終わったら戻ってきても良い? 本当ですか、本当ですね!
 嘘だったらセクハラされたって泣きますよ! って、お茶目な冗談、いえ、嘘です、そんな事はしません!
 だから、永久追放はやめてください。す、すぐに後を追います!」

既に殆ど失われ行く意識の中、慌てる天使の声を恭也は確かに聞き、あんな部下を持った神様に思わず同情する。
が、同時にまた会う事になるのかとうんざりした気持ちを抱いたとしても、それは許して欲しい所である。



とらいあんぐるハート3超番外
高町恭也の転生黙示録







さて、そろそろ時間もなくなってきたけれど。

美姫 「その前に連絡事項ね」

ああ。来週の24日木曜日、サーバーのメンテナンスが行われます。

美姫 「この日は繋がったり、繋がらなかったりするようなのでご了承ください」

という訳で、恐らくは更新も出来ないかと。

美姫 「ヴァージョンをアップさせるって事だったわよね」

ああ。多分、掲示板やカウンタには影響は出ないと思うが、メンテナンス後に確認しないとな。

美姫 「という訳で、ご迷惑をお掛けしますが宜しくお願いします」

お願いします。

美姫 「さて、それじゃあ、そろそろ締めましょうか」

だな。
それじゃあ、今週はこの辺で。

美姫 「また来週〜」


2月4日(金)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、後三回、とお送り中!>



寒い日が続くけれど、少しは温かくもなっているような感じがする今日この頃。
皆さんはどうお過ごしでしょうか。

美姫 「体調が心配よね」

確かにな。最近は新型インフルエンザとかも聞くし。
俺も気を付けないと。

美姫 「さて、そんな当たり障りのない始まり方をしたけれど」

身も蓋もない言い方だな、おい。
と、それは良いとして昨日の節分はよくも。

美姫 「鬼に豆をぶつけて何が悪いのよ」

知らない間に鬼にされていた事と、本気で豆をぶつけられた事だな。

美姫 「ちゃんと手加減してあげたのに」

いやいや、普通に額に豆を喰らって後ろにのけぞるとかないから!

美姫 「ひ弱よね」

豆でコンクリートに穴を開けるアンタが可笑しい!

美姫 「そこまでいってないでしょう」

いや、穴開いてましたよ?

美姫 「あれは豆じゃなくてもっと硬い物を投げたのよ。普通に考えて豆の強度が持つわけないでしょう」

あ、それもそうか。
って、既に豆まきですらなかったのかよ!

美姫 「あ、えーっと、それじゃあ今週もCMいってみよ〜」

って、流すな、流すな!







悲しみの慟哭。
そして、少年の口から問い詰めるような口調と共に吐き出されるのはどうしてという疑問。
それに答えるのは少年と向かい合う男女の内、男の方。
女は僅かに俯き、己の兄が喋り終わるのを待つ。やがて、全て語り終えた男は静かに武器を構える。
最早、語る事はないとその目が、全身から溢れ出る闘気が物語っていた。
対する少年はやり切れない思いを閉じ込め、こちらも武器を構える。
その二人に合わせるかのように、女も静かに兄の後ろへと下がり、こちらも小さく構える。
口から流れ出すのはこの世の理を曲げ、不可思議な現象を可能とする魔法の呪文。
女の呪文に応じるように、二人と少年の間に鮮烈な紅色の蝶が幾つも生まれ出る。
その一匹一匹が下手な魔法使いの使う魔法よりも濃密な魔力を内包しており、弥が上にも汗が滑り落ちる。
だが、それを拭う余裕などあるはずもなく、少年は構えた武器を握る手に僅かばかり力を込める。
術士である妹と剣士である兄。
共にその技量は並大抵のそれではないという事を師事した事のある少年はよく知っている。
互いにやり合いたくはないがその目的故に敵対せざるを得ない状況。
それが少年の方は特に顕著に現れているのだが、男の方はその感情さえも押さえ込み少年へと剣を振り下ろす。
幾分か加減された一撃を捌き、距離を開ける。
その直後、さっきまで少年の居た箇所に三匹の蝶が飛び込み爆発を起こす。

「これでもまだ本気でやらないというのなら、それでも構わない。次は確実に仕留める!」

言って剣を構えなおす男を前に、少年も自身の譲れない目的を思い出して構えなおす。
その目にはまだ迷いは見えるものの、強い力が宿っている。
二対一という状況を踏まえ、時間の事も浮かび焦る心を少年は無理矢理押さえ込む。
緊迫した空気が部屋に充満し、ちょっとした切欠で弾け飛びそうな程に張り詰める中、

「……ここはどこだ」

「ふむ、どこかの迷宮か?」

「どちらにせよ、またしても、ですわね」

その緊迫した空気の中にはやや似つかわしくない呑気で何処か疲れた声が突然する。
新たな侵入者に警戒する兄妹と、時間を掛けすぎたのかと不安気な表情を見せる少年。
三対の視線に晒され、恭也たちは何となくだが緊迫した空気を感じ取り、

「あー、申し訳ありません。何やらお邪魔をしてしまったみたいで。
 ですが決して怪しい者ではありませんので。言っている自分でも説得力はないと思いますが」

「まあ、確かにの。このような状況で現れては敵と思われても致し方あるまい」

「えっと沙夜たちの事はお気になさらず」

「いや、その通りなのだが出来ればその前に聞きたい事があるのですが」

「そうじゃ。全く、お主は少し抜けておる」

「あらあら、恭也様ではなくアルシェラさんにそんな事を言われるとは」

「ほう、気に障ったのか?」

「ふふふ、どうでしょうか?」

行き成り自分を間に挟んで火花を散らす二人を恭也は慣れた様子で引き離し、呆然となっている少年を見る。

「行き成りで申し訳ありませんがここは何処でしょうか?」

「あー、えっとベルビア王国にある舞弦学園のダンジョンですけれど」

突然の事態に思考が追い付かなかったのか、少年は聞かれた事に答える。
対する恭也たちはやはり聞いた事もない国にやはりかという思いと僅かな落胆を込めて溜め息を零す。
一方、勝負を邪魔された形となっていた少年たちは突然の闖入者に最初は驚いたものの、
兄妹の方は共に敵と見なし攻撃を繰り出し、少年の方はそれに対処する事で構っている余裕を無くす。

「行き成り攻撃されるとはな」

「ふむ、余たちが邪魔をして怒らせたというよりも、戦場に乱入してしまったという感じじゃな。
 しかし思い切りのよい二人じゃ。味方、もしくは無関係者という可能性を全く考慮せぬとはな」

「本来ここに居るのは敵のみという可能性もありますけれどね。
 しかし困りましたわ。向こうの二人は完全に沙夜たちを敵として捉えているようですが」

事情が分からない内に敵対するような事はしたくないというのが恭也たちの考えではある。
だからと言って、下手をすれば死んでしまいそうな攻撃を喰らう事も出来ず、三人は喋りながらも躱す。

「男の方はあっちの少年と切り結んでおるから当面は大丈夫じゃろうが、問題はあの女の方じゃな」

「男の援護をしつつ、こちらを攻撃してきますね」

「どうやら、こちらに集中してくるみたいだぞ」

沙夜が言った直後、恭也が二人に注意を促すような事を口にする。
見れば、男の援護を一旦止め、新たなに何やら呪文を唱えている。
女の呪文の声に合わせ、魔力が膨れ上がる。

「む、流石にまずいか。アルシェラ、沙夜!」

恭也の呼び掛けに応えて二人がその姿を小太刀に変える。
刀身に女の魔力に匹敵する力を集め、女の攻撃に備える。

「行き成り戦場というのは初めてではないが、行き成り襲われるのは初めてだな!」

やけにも聞こえる声で叫ぶ恭也に返る肯定の声は脳内に響く。
その間も視線は女と女が繰り出すであろう攻撃から離さず、男と少年の気配も捉える。
状況が分からないながらも、とりあえずはここを無事にやり過ごさない事には始まらないと、
思考を戦闘モードへと移行させる。言い訳も考えるのも後回し。
今はとりあえずの敵と思える相手を無力化する事のみを考えるのであった。

こうして恭也たちは帰還の為に協力するのではなく、否応なしに巻き込まれると言う形での今回の旅が始まる。



恭也と剣の放浪記 〜響く鐘の音〜







…………。

美姫 「返事がない。ただ眠っているだけのようだ」

お、お前が殴って意識を飛ばしたんだよね?

美姫 「知りません。記憶にございません。全て浩が独断でやりました」

何でもかんでも秘書のじゃなくて、俺かよ!
あれか、俺はアホの子なのか?
どこに自分で自分を殴って意識を刈り取る奴がいるんだよ。

美姫 「本当に驚きよね。私も目の前で見ても未だに信じられないもの」

いやいや、本当にあったかのように言わないで。
って、何で哀れな子を見るような目で!?

美姫 「良い感じに当たったと思ったら、記憶障害まで……」

え、またまた。そんな手には乗りませんよ。

美姫 「そうね、あなたはそんな事はしてないわ、うん。疲れているだけよ、きっと」

う、うぅぅ、絶対にやってない、やってないよね? やってないはず。
やって……う、うぅぅ。いやー、そんな可哀相な目で見ないで!

美姫 「さて、来週は祝日だから休みか。残念ね」

ねぇ、やってないよね。本当にやってないよね?

美姫 「それじゃあ、今週は締めましょうか」

うぅぅ、自分の記憶に自信が……。
いやいや、これもいつもの手に違いない! 俺はやっていない! ……はず。

美姫 「どうでも良いから締めるわよ」

いや、良くないんですけれど。

美姫 「はいはい、やってない、やってない。だから締めて」

その言い方が逆に不安になるんだが。とりあえず、締めるよ。締めれば良いんだろう。
それじゃあ、今週はこの辺で。

美姫 「また再来週〜」







なあ、本当にやってないよな? な?
って、何で目を逸らすんだよ! 応えてくれよ!

美姫 「どっちでしょうね〜♪」

うわぁぁん!


1月28日(金)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、寒い日が続きますね、とお届け中!>



今回で296回目、三百回までは後四回!

美姫 「数えるのも大変だったわね」

まあな。しかし、まさかここまで続くとは思ってなかったが。

美姫 「確かにね。ほんの冗談のつもりだったのに。まあ、今の冗談のつもりなんだけれど」

…………冗談でここまで続けさせられたのか。

美姫 「いや〜ね〜、半分冗談よ」

という事は半分は本気かよ! って、何故に目を逸らす。

美姫 「まあまあ。あ、そろそろCMに行かないとね。それじゃあ、いってみよ〜」







「さて、神とて万能ではないと分かった訳だが」

憮然とした声で無表情のままそう言い捨てるのは不破恭也その人であった。
それも彼の境遇を知れば仕方ないと思ったかもしれない。
現に彼と同じ境遇にある二人の女性は共に苦笑を浮かべつつも、その言葉には肯定的であるのだから。

「ここまで来ると、何かしらの見えざる手の存在を感じてしまうのぉ」

「これもまた運命かもしれませんね」

「まあ、彼女は自らを精霊と言っていたし、全知全能という訳にもいかなかったんだろう」

「そうですね。もし神でそうであれば、魔王に好き勝手にされるなんて事事態起こり得ませんでしたしね」

「しかし、魔王退治の報酬がまたしても他世界への移動では納得がいかん」

知らず愚痴が出るアルシェラであったが、それは恭也や沙夜も同じである。
故に咎める事もなく、恒例となりつつある周囲の探索から行う事にする。
薄暗いというか、天井で覆われた空。建物自体からもそれなりの文明を感じさせる。
とりあえずはこの世界の事を知らないといけないのだが、これがまた苦労することでもある。
今までは比較的、話を聞いてくれるような状況や人に出会えたから良かったが、果たして今回はどうだろうか。
そんな不安を抱きつつ、一向は足を進める。

「それにしても、かれこれどのぐらい放浪をしておるのだろうな」

「世界を飛び回っている所為か、年を取った感じがないのが救いだがな」

「それに関して少し沙夜は不思議に思うのですけれどね。
 世界同士の時間の流れが違っていたとして、その世界に居る間は普通に年を取ると思うのですが」

「余たちの世界の時間は他と比べても遅く流れており、恭也の肉体はそちらの時間通りに流れておるか」

「そのような事が起こり得るのでしょうか。もし、その通りならば空腹なども感じないはずでは」

「むむ、そう言われると難しいのぉ。そもそもこのような状況になった者が他におらんと比較できんし」

「世界を飛び越えている間に、体が変質したのかもな」

結論の出ない論議を繰り広げる二人に挟まれた恭也は、小難しいのは良いとばかりに冗談めいてそう口にする。
が、それを言った途端に二人揃ってピタリと口を噤み、

「ふむ、可能性としてはどうじゃ」

「ない、とは言えませんね。先程のアルシェラさんの言ではありませんが、今までに例がない事ですし」

「ならば、検査してみんといかんのぉ。どれ、今夜にでもじっくりと……」

「ずるいですよ、アルシェラさん。私も絶対に参加しますから」

余計な一言を言ったと気付いた時には既に遅く、恭也は二人に挟まれた上に迫られると言う状況に陥る。
話を変えないといけないと思い周囲を見渡せば、丁度と言うべきか、店らしき建物を見つける。

「とりあえず、あそこで色々と聞いてみよう」

この世界の通貨を持っていないので、何か買う事は出来ないが話をするぐらいは可能だろう。
幸い、今まで移動した先でも言葉は通じてきたし、文字に関しても自然と変換されるみたいだったので、
その辺は気にしていない。
故に気楽に店へと入れば、どうやら酒場らしく数人の客の姿が見えた。
しまったなと思いつつ、カウンターへと進むと黒髪の女性が注文を聞いてくる。
それを申し訳なさそうに断りつつ、この世界に関して聞く為にとりあえず地名など怪しまれない所から話し出す。

「なに、もしかして迷子なの?」

「それに近いかもしれませんね。色々とあって、気が付いたらここに居たという訳なんです。
 だから、ここが何処でどのような場所なのか教えて欲しいんですよ」

「んー、まあ良いわよ。困ったときはお互い様だしね。
 でも、少し待ってね。一応、私の店だしお客さんを放っておくってのもね」

「勿論です。俺たちの事はお気になさらずに」

言ってカウンターの隅に座らせてもらい、とりあえずは店が落ち着くまで待つことにする。
その間、店に居る人間をそれとなく見詰め、

「あの人は何かやっていそうだったな」

「確かにの。そこそこの腕前と見たが。にしても、見ているとお腹が空いてくるの」

「我慢しましょう、アルシェラさん」

そんな話をしていると、最後の客も店を出て行く。
どうやら店じまいらしく、ようやく話を聞く事が出来そうであった。
そして、この後ティファと名乗った少女に話を聞く事となるのだが、
それにより恭也たちはアバランチという組織の協力者となってしまうのであった。



恭也と剣の放浪記 〜星命の輝き〜







ぶべらっ!
って、いきなりCM明けになに!?

美姫 「いや、また文句を言われる前に意識を飛ばしちゃえと」

いやいや、なにこの子。かなり無茶苦茶だよ。

美姫 「今更何を言っているのよ。短い付き合いじゃないのに」

そうだけれど……って、そうじゃなくて!
何故に殴られたのかと言う事をですね。

美姫 「理由はもう言ったじゃない」

いやいや、だから……はぁ、もう良いです。

美姫 「あらやけにあっさりと引き下がったわね」

引き下がらないと、また殴られるしな。ぶべらっ!

美姫 「失礼ね、それじゃあ、まるで私がすぐに暴力を振るうみたいじゃない」

い、今のは何ですか?

美姫 「お仕置き♪」

……あの、お仕置きと暴力は違うんですか?

美姫 「当たり前じゃない。お仕置きにはアイがあるのよ」

ん? ちょっと片言だったような。って、それは良いとしても、そう言えば許されると思ってないか!?

美姫 「よよよ、酷いわ」

誰がその手に乗るか!

美姫 「か弱い女の子を怒鳴るなんて!」

ぶべらっ! きょ、恐怖に……ぼべっ、お、怯え……ごぱぁっ!
る前に、ぶぎゅるぅ! あ、相手を……みょぎょっぱぁ! な、殴る……ぐぎょりょっ!
や、奴の……びょばらっ! ど、どこが、がばげぼばぼぼっ! か、かよわ……ぎゅりょみょぎょっ!
せ、せめて……りょばゃぼぉっ! 普通に……ぐごらぴょっ! しゃ、しゃべらせ……ぶべらぼげぇっ!

美姫 「シクシク、酷いわ……」

……ど、どっちがだ? ガクッ。

美姫 「って、もう時間がないじゃない。ったく、アンタが変な事を言った所為で」

俺が悪いのよ!

美姫 「良いから、さっさと締めるわよ」

シクシク、優しさが欲しい。

美姫 「はいはい、後であげるからね」

嘘だ! ぶべらっ! し、締める、締めますからその手を下ろして!
って、違う、俺に向かって下ろすんじゃなくて――ぎゃぁぁぁっ!

美姫 「ほら、寝てないで締めなさいよね」

うぅぅ、こ、今週はこの辺で。

美姫 「また来週〜」


1月21日(金)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、まだまだ冬は続く、とお送り中!>



流石にお正月気分などとっくの昔になくなった今日この頃。

美姫 「その話題事態が既に遅い気もするけれどね」

やっぱり?
まあ、その辺りはおおらかにいこうじゃないか。

美姫 「それをおおらかと言うかどうかよね」

まあまあ。それは兎も角、そろそろ去年果たせなかった300回が迫ってきたな。

美姫 「本当なら去年達成する予定だったものね」

ああ。後少し頑張るぞ。

美姫 「そうそう、頑張りなさい」

おうともさ!

美姫 「そんなこんなでめでたい状態で、CMいってみよ〜」







二、三分の違いはあれどいつもと同じ時間になれば、いつものように自然と目が覚める。
既に体で覚えているかのように起きると意識するまでもなく一連の支度を整え、恭也は部屋を出る。
が、いつもと違い普段なら遅れるにしろ、五分と待たないはずなのだが今日に限って美由希の姿がない。
それでももう少しだけ待つことにして、恭也は靴を履いたまま玄関先で時間を潰す。
が、更に二分経っても美由希は姿を見せず、恭也はとうとう靴を脱いで美由希の部屋へと向かう。
多少の違和感を覚えつつも見慣れた美由希の部屋の前に立ち、扉をノックしてみるも反応はない。
まさかまだ寝ているのかと思いドアノブに手を伸ばして回す。
開いた扉の先、ベッドの上には布団に包まるように眠っている美由希の姿があった。
確かにもうすぐクリスマスという冬の真っ只中。
特に早朝ともなれば寒さも一入だ。美由希が布団に包まりたくなる気持ちも分かる。
分かるが、鍛錬をさぼるとは何事か。
恭也は遠慮なく眠りこけている美由希へと近付くと、掛け布団に手を伸ばして一気に剥ぎ取る。

「きゃぁっ!」

可愛らしい悲鳴を上げてベッドから転がり落ちる美由希を静かに見下ろし、

「ここまで簡単に接近を許すな馬鹿弟子。それといつまで寝ている」

「……あれ、恭ちゃん? えっと、もう朝?」

まだ寝ぼけているのか、美由希は恭也の顔を見た後、キョロキョロと半信半疑といった感じで周囲を見渡す。
そして、その目が時計に止まると、

「ま、まだ早いじゃない。どうしてこんな事するの?」

泣きそうな顔で体を起こしてベッドに腰掛ける。

「何を言っているんだ、お前は。もう鍛錬の時間だろうが」

「鍛錬って何? それに起こすなら起こすで、いつもみたいに優しく起こしてよ」

ぶつくさと文句を言いつつ、美由希は拗ねたように恭也を見上げ、ようやく納得したとばかりに頷く。

「早く起きてお腹が空いたんだね。仕方ないな〜、すぐに準備するから下で待ってて」

準備と聞いてようやく目が覚めたのかと思うも、その前の言葉が気になり恭也は美由希の肩を掴んで押し止める。

「準備と言うのは、勿論鍛錬のだよな」

「だから鍛錬って? 準備っていうのは朝食の準備に決まってるじゃない」

恭也は嫌な予感が当たったと顔を引き攣らせ、

「落ち着け。お前は唯一、この家で料理を苦手としているだろう」

真剣な恭也の顔に美由希は首を傾げ、すぐに可笑しそうに笑う。

「もう冗談ばっかり言ってどうしたの?
 お腹が空いて起こした事を気にしているのなら、気にしなくても良いのに。
 身寄りのない二人きりの兄妹なんだから協力し合わないとね」

「……はい?」

思わず疑問を口にするも、美由希は特に可笑しな様子も見せずにパジャマに手を掛けようとして動きを止める。

「恭ちゃん、その着替えたいんだけれど……」

恥ずかしそうに告げてくる美由希に恭也は若干慌て気味に部屋を出る。
未だに頭の中は疑問符が飛び交っているが、とりあえず下へと降りる。
程なくして美由希も下に顔を出すも、制服姿になっており、恭也が尋ねるよりも早くキッチンへと向かう。
思わず呆然と見送った恭也だったが、慌ててその後を追えば、エプロンを付けた美由希が手際よく材料を切っていた。
その手付きはやけに慣れた様子で、危なっかしい所も見受けられない。
思わず信じられないと見入っていると、切った材料を油をひいて熱したフライパンへと入れる。
これまた手際よくフライパンを動かし、箸で上手に炒めていく。
恭也は信じられないとばかりにずっと美由希の造作を見ていた。
その視線に気付き、美由希は時折恥ずかしそうにはにかむも特に何を言うでもなく、そのまま朝食を仕上げてしまう。

「出来たから向こうで待っててね」

「あ、ああ」

目の前の光景に驚くあまり、既に何を言うでもなく大人しく従ってしまう。
気が付けば、目の前には朝食がずらりと並んでおり、恭也は殆ど条件反射的に頂きますと口にしていた。
流石にそう言った上に、作らせてしまった以上は無碍にも出来ずに恐る恐る料理に手を伸ばして口に放り込む。

「っ!」

その美味しさに思わず驚き、気が付けば次々と手を伸ばしてしまっていた。
片付けをする美由希をぼんやりと見ながら、恭也は今更ながらに誰も起きて来ない事を不審に思う。
同時に美由希が口にした言葉を思い出し、家の気配を探るも人の気配は何処からもしない。
一体何がどうなっているのか。真っ先に思いついたのは皆で恭也をからかっているという可能性である。
が、これだと急に美由希の料理の腕が上がった事が可笑しい。
密かに練習していたと言われれば納得するかもしれないが、あの手際はやり慣れた者のそれであった。
こうなると考えても分からないととりあえずは様子を見守る事にする。
やがて学校に行く時間となり、恭也も制服へと着替えると美由希と二人揃って学校へと向かう。
道すがら周囲を見るも、それは記憶にある物と変りはなく、恭也は益々不思議そうに首を傾げる。
不思議と言えば、美由希の料理の腕もそうなのだが、それとは別に美由希の持つ気配が少し変っていた。
気配というよりも、その強さというべきか。多少は動けるようだが、本格的な戦闘など無理という程に。
それを感じ取り、恭也は目の前の美由希が別人だと確信するのだが、他の記憶はどうやら美由希と同じらしい。
ただし、高町家としての記憶はないようだが。
士郎に育てられ、桃子と出会う事無く士郎がフィアッセを庇って亡くなったとなっていた。
なのに高町性という事を不思議に思い聞けば、士郎が変更したという回答が戻ってくる。
信じたくない可能性を抱きつつ、学校へと付いた恭也は美由希と分かれて自分の教室に向かう。
クラスに関しては恭也の知る記憶の通りで間違いないようで、赤星が挨拶をしてくるのに返す。
自分の席に鞄を置き、隣で寝ている忍に声を掛けようとしてまだ来ていない事に気付く。
いや、そこには席そのものがなかった。
一番後ろの窓側、月村忍の席がない事を赤星へと尋ねてみれば、赤星は心底不思議そうな表情を見せる。

「何を言っているんだ高町。そこは元々席も何もなかっただろう」

「……からかっている、という訳ではないみたいだな」

親友が本気で言っていると理解し、恭也はまたしても驚くもそれを何とか堪える。
確かめなければいけない事が出来たと恭也は教室を後にし、二年の教室へと向かう。
が、E組の生徒に尋ねても神咲那美と言う生徒はいないという返答が返って来る。
ある意味、予想していた事態だったが故に思った以上に動揺はせずに済み、尋ねた生徒に礼を言うと教室へと戻る。
その道すがら、恭也は現状の整理を行っていた。

(今、分かっている事は美由希と赤星以外、俺の親しい友人たちの消息は不明という事。
 後は美由希が御神流をやっていないらしいという事だけか。さて、まずはどう動くべきか)

一瞬、異世界という単語がちらつくも、どちらにせよ元に戻る為には動かねばならず、その最初の行動をどうするか。
それだけを考えて恭也は授業中も過ごす。

(こういう異変なら一番頼りになるのは那美さんなんだが、その那美さんが居ない。
 となると忍辺りに聞きたい所だが、その忍も居ないか)

何ともままならない事だと嘆息一つ。
とりあえずの方針として異常な事態には同じくらい慣れているであろうさざなみを訪れてみる事にする。
面識があるのかどうか怪しい所ではあるが、事情を話せば何か助言ぐらいはもらえるかもしれない。
駄目なら次は月村邸へと行ってみれば良い。
そう考え、恭也は放課後に取るべき行動を決めるのであった。



果たして、恭也は一体どのような状況へと追いやられてしまったのか。
そして、無事に戻る事が出来るのか。



高町恭也の憂鬱 〜消失の美由希〜







さて、今年の当面の目標は300回突破を目指す事として。

美姫 「後は完結させてもらわないとね」

ですよね。せめて一つぐらいは完結させないとな。

美姫 「精々、馬車馬の如く書くが良いわ」

嫌な言い方だな、おい。もっと普通に励ましてくれよ。

美姫 「なら、お尻に鞭入れてあげましょか?」

お前の場合、揶揄でも何でもなく本当にそうするから全力で遠慮します。

美姫 「遠慮なんてしなくても良いのに」

いやいや、本気でいらないから。っと、そろそろ時間だな。

美姫 「それじゃあ、締めましょうか」

だな。それじゃあ、今週はこの辺で。

美姫 「また来週〜」


1月14日(金)

美姫 「美姫ちゃんの〜」

ハートフルデイズ〜

美姫 「はっじまるよ〜」

<この番組は、PAINWESTの雑記コーナーより、今年もよろしく、とお届け中!>



気が付けば新しい年になって二週間。

美姫 「本当に早いものね」

だな。で、これが新年最初のハートフルデイズという。

美姫 「何て言う体たらくなのかしら」

いや、まあ色々とあってな。
ともあれ、とりあえずは新年の挨拶を。

美姫 「今更感があるけれどね」

それを言うなよ。さて、気を取り直して。
新年、遅くなりおめでとう。

美姫 「遅くなんてものじゃないけれどね。ともあれ、今年も頑張っていきましょう」

ああ。にしても、去年は本当についてなかった……。

美姫 「いつまでも引き摺ってないの。年が明けて挨拶早々に去年の話って何よ」

だってよ〜。

美姫 「だってもないの! うだうだ言わずに、とりあえずCMよ!」







あの戦いが今再び、装いも新たなに甦る。

それは町外れの林道から、

「誰か、声が聞こえたら誰か力を貸して……」

高台の奥、滅多に人の訪れない平原から、

「誰でも良いから、あの子を助けてよ!」

共に助けを求める切実な声。
それに答える者を大きな運命へと誘う事になる願い事。

答えたのは、たった一人の少女。

「この子、怪我しているみたい」

答えたのは一人の青年。

「ふむ、喋る犬とはまた珍しい」

同日、違う地にて新たな出会いをした二人は、

「にゃにゃにゃっ! あれは一体なに? ってフェレットが喋った!? くーちゃんと同じ子?」

「僕はフェレットじゃな……って、今はそれ所じゃなくて、お願い力を貸して!」

未知なる力と出会い、それを知る。

「……遂に自分自身が可笑しな存在になってしまった」

「魔導師が可笑しなとは聞き捨てならないけれど、今は後回しにしておくよ」

奇しくも、その出会いは兄妹での対立をも意味していた。

「ジュエルシード発見! って、お兄ちゃん!?」

「なのは?」

共に詳しい理由は知らぬまま、ジュエルシードと呼ばれる宝石の収集に乗り出す二人。

「危険だと言っているだろう」

「にゃー! だからって今更やめるなんて出来ないよ!
 それにお兄ちゃんこそ、どうして」

事態は加速し、周囲を巻き込み、

「魔法少女、高町美由希♪」

「さて、新しい反応はここから……」

「わぁ〜、お願いだから無視しないでよ!」

「くーちゃん、宜しくね」

「くぅん、……がんばる」

更なる力を求め、

「という訳で、異世界の技術らしいのだが何とかなるか?」

「ふっふっふ、久しぶりにやりがいのある仕事だわ。
 とりあえず、見せてもらうわね、恭也。その上でどういう改造をして欲しいのか聞くわ」

二人は知り合いへと助けを求める。

「なのはちゃんに霊力技を、ですか?」

「はい。詳しい事はお話できませんが、お願いします那美さん!」

全てのジュエルシードが集う時、そこで何が起こるのか。
今、新たな歴史が幕を開ける。

リリカル恭也&なのは NOVIE 1st

同時放映、IFストーリー 〜さざなみの魔王始動、願いは私が叶える〜







うーん、しかしまだ正月気分が抜けないな。

美姫 「いや、幾らなんでも遅すぎよ!」

ぶべらっ!
じょ、冗談なのに……。

美姫 「いや、目が本気だったわよ」

うぅぅ、初殴りが冗談に対する突込みで来るなんて。

美姫 「今のは自業自得だと思うけれど。まあ、それはそれとして、今年はバンバン更新してもらうわよ!」

適当にそこそこで頑張ります。

美姫 「全く頑張る気がしないわよ!」

ぶべらっ!

美姫 「ったく、本当に今年もバカのままね」

本当に先が思いやられるな。

美姫 「アンタの事よ!」

ぶべらっ!

美姫 「はぁ、今年もこんな感じですがよろしくお願いします」

お願いします。
それじゃあ、今週はこの辺で。

美姫 「また来週〜」










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