『横断歩道』






横断歩道で、信号待ちをしている女の子、なのはは何かを決心したかのような顔つきになる。
そして、信号が青に変わるや否や、両手を大きく振り、少し大股で歩き始める。

(白い所だけ踏んで渡れたら、今日は良い事があります!)

そう思い、半分以上渡った頃、後ろから声を掛けられ振り返る。
そのはずみで、踏み出していた足が白いラインから出てしまう。
途端に、なのは残念そうな顔へと変わった。
それを見ながら、呼びかけた人物──恭也は、

「どうかしたのか、なのは?」

妹に尋ねるが、なのはは何でもないと答え、兄が自分を呼んだ理由を尋ねるのだった。

「忘れ物だ」

そう言って恭也はなのはのハンカチを差し出す。
礼を言いながら、それを受け取り、二人は横断歩道を渡る。
その途中で、恭也はふと尋ねるのだった。

「所で、何のお呪いをしていたんだ?」

「分かってて呼び止めたの!」

なのはの言葉に恭也は答えず、すぐ横に引かれた自転車が通行する為の白い区切りラインを指差す。

「ここを渡れば良いんじゃないのか?」

「そんなずるは、よくありません!」

「ずるなのか、これは?」

恭也の言葉にも答えず、なのはは少し剥れて歩みを速める。
それに余裕で付いていきながら、恭也はなのはの頭に手を乗せ、撫でると、

「すまなかったな。ついでだから、途中まで送って行こう」

恭也のこの言葉になのはは表情を崩すと、恭也の手を繋ぐのだった。
突然、機嫌の良くなったなのはに首を傾げながらも、恭也もどこか嬉しそうな顔で一緒に歩いて行った。

(えへへ〜。良い事があったから、さっきの事は許してあげるよ兄ちゃん♪)





チャンチャン♪


















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